56. 隣国王太子エドワード
「ヘレナ!」
ダヴィネス城の玄関に居並ぶ迎えの列の中からヘレナを認め、まっすぐ歩いて来る。
隣国王太子エドワード。エリックと同じ少し癖のある明るいブロンドに灰色の瞳を持ち、明るく人懐っこい笑顔だ。
「…会いたかったぞ、ヘレナ、我が女神よ」
大きく手を広げてヘレナの前に立つ。
「…」
ヘレナは無反応だ。
?!
お姉様??
カレンは思わず姉の方を見てしまった。
ジェラルドや城の者達もギョッとしている。
エドワードは笑顔のまま固まっている。
「…ヘレナ?」
「…あなたが鳩を飛ばすなんて…」
ヘレナはエドワードの顔を見つめた。
エドワードは真面目な顔になり、広げた手でヘレナの両手を取り、キスする。
「そなたに会うためならば、何でも飛ばす」
「…エドワード」
ヘレナはエドワードの腕に収まり、一同は安堵の息を漏らした。
「母上!」
「グレッグ!」
エドワードの後ろから現れたのは、7才になる長男のグレゴリーだ。
ヘレナと同じライトブラウンの髪に灰色の瞳、ヘレナと良く似た理知的な面差しをしている。
母と息子は抱き合い、再会を喜ぶ。
フリードの足に小猿のように絡み付いていたエリックも、「ちちうえ~」と言い、エドワードに飛び付く。
どうやら、“包み隠せない”性格は父譲りのようだ。
カレンは姉一家の再会の光景に胸が熱くなり、目の奥がじん…とする。
「久しいな、ダヴィネス」
エドワードがジェラルドに向き直る。
「はっ、エドワード王太子殿下におかれましてはご尊顔を拝し奉り…「よいよい非公式ゆえ、」」
とジェラルドの王族への挨拶を遮り、握手を求めた。
「此度は妻と息子が世話になった…ここは聞きしに優る壮麗な城だ…しかしそなた…」
と、ジェラルドの顔をしげしげと見る。
「相変わらず惚れ惚れする様な男ぶりだな」
「ご冗談を」
「いや、此度の領土平定といい…辺境伯閣下とダヴィネス軍の名は我が国にも轟いておる。素晴らしいことだ。陛下もさぞお慶びのことだろう」
と、エドワードはジェラルドの隣に控えるカレンにふと目を移した。
「そなた…カレンか?」
と目を丸くする。
「…はい殿下、お久しゅうございます」
カレンは数年ぶりに会う義兄に微笑んで礼を取る。
「なんと!最後に会った時はまだほんの少女だったぞ、美しくはあったが。それが…」
と、カレンの頭から爪先までまじまじと眺める。
「すっかりレディではないか…!」
エドワードはカレンと親愛のチークキスを交わす。
カレンは、なんとなくジェラルドからひんやりと冷たい空気を感じるが、ここは我慢してもらう。
「身ごもっておるのだったな…体調はどうだ?」
「お気遣いありがとう存じます。妃殿下がお越しくださり、お陰さまですっかり元気になりました」
エドワードは「それは良かった」と言うと、再びジェラルドに視線を向ける。
「ダヴィネスよ、この色男めが」
と、ジェラルドにニヤリと微笑む。
「エドワード...!」とヘレナが小さな声で諌める。
「…身に余るお言葉です」
ジェラルドは冷静に答えた。
と、横から母との抱擁を終えたグレゴリーが
「辺境伯閣下、ジェラルド叔父上、初めまして。グレゴリーです」
と幼いながらにしっかりと、加えて爽やかに挨拶を述べる。
「殿下、お初にお目にかかります」
「叔父上、どうかグレゴリーとお呼びください」
…なんと利発な王子だろう、父王太子とはまたタイプが違う。ジェラルドはそのまっすぐな眼差しに感心する。
「叔父上、辺境のお話をお聞かせください。…あと、僕もスヴァジルが見たいです」
母とエリックからの手紙で知ったのであろう。最後は子どもらしく、ジェラルドに願い出る。
「もちろんだグレゴリー」
ジェラルドはグレゴリーの頭を撫でた。
「ありがとうございます!」
さも嬉しそうに礼を述べた。
「グレゴリー」
カレンが話しかけると、グレゴリーはぱぁっと喜びに顔を染めた。
「叔母上!」
カレンは屈み込んでグレゴリーを抱き締めた。
「…本当に大きくなられたわね。もう立派な紳士だわ」
「…叔母上…」
グレゴリーは大好きな叔母の言葉に頬を染める。
「グレッグ、カレンにキスをして差し上げて」
ヘレナがグレゴリーに勧める。
「…はい」グレゴリーは恥じらいつつも、カレンの頬にちゅっとキスをした。
カレンはあまりの可愛さに、すぐさまグレゴリーの頬へキスを返した。
「あー!!あにうえ、ズルい!!」
走り回っていたエリックが、カレンとグレゴリーの様子を目にして、またもや絶望の色を浮かべる。
「カレンおばちゃまは、ぼくと“けっこん”するのに…」
半泣きだ。
「…あらやだリッキー…まだ諦めてなかったの?」
ヘレナは苦笑いだ。
「…カレン叔母上は、僕と結婚すると思います!」
グレゴリーが静かに割って入る。
「美しい義妹は大人気だな、ダヴィネスよ、お主立場が危ういぞ、ははは」
明るく、軽い。
ジェラルドはにっこりと微笑む。が、目が笑っていない。
喜びの渦中、それに気づいたのは…フリードだけだった。
・
「ごゆっくりお寛ぎくださいませ。ご用がごさいましたら何なりとお申し付けに」
カレンは如才なく客人をもてなす。
王太子エドワードを迎えての晩餐までは時間があるので、ヘレナ達には家族水入らずのひとときを過ごしてもらう。
多忙な中駆け付けた王太子は明後日には隣国へ立つので、姉も一緒にダヴィネス城を去る。
姉には十分面倒を見てもらったが、別れはやはり寂しい。
ジェラルドは東部平定の残務があるので執務室だ。
帰城から慌ただしく王太子を迎えたので、まだゆっくりと話はしていない。
カレンは夜の晩餐のための、正餐室のセッティングのチェックをしていた。
フローリストのフローラの提案で、冬の終わりのテーブルセッティングらしく、ダヴィネスらしく...緑と白い小花をキャンドルで照らして…
・
執務室では、膨大な書類にジェラルドがサインをしていた。
領地平定はダヴィネスだけに留まらず、国の大事だ。国へ提出する正式な書類も多い。
黙ってペンを走らせるジェラルドを、フリードは横目で見る。
いつもと変わらない様子だが、なんとなく雰囲気が重い。
夜を通して東部から馬を駆け、すぐに王太子達を迎えた後の執務だ。王太子の軽口も気になるが、なによりカレンと落ち着いた時間を過ごしていない。
フリードは短いため息を吐く。
「ジェラルド」
「…なんだ」
「少し休憩してきてください。1時間程度なら構いません」
「…」
「…カレン様は正餐室におられらるかと」
パタっとペンを置くが早いか、いきなり立ち上がると何も言わずに執務室を後にした。
「まったく手間の掛かる…」
フリードはまたもため息を吐く。
と、ガチャリと扉が開きジェラルドが顔を出した。
「! なんです?」
「お前も今日はパメラの邸へ帰れ」
それだけ言うと、また扉を閉めた。
「…言われなくても帰りますよ」
フリードは口許に笑みを浮かべた。
・
「それじゃ、後はお願いね」
はいカレン様、と使用人達が口々に言い、カレンは正餐室を後にした。
飾り付け用の余った白い小花を手にしている。
寝室に飾ってみようかしら、と考えながら歩く。
「お嬢様、晩餐会のご準備まで少しお休みになられては?」
ニコルが気遣う。
「…そうね」
準備は楽しい。
しかし疲れを感じないうちに休みを取る、ということをカレンは覚えた。
廊下の角を曲がろうとした時、誰かとぶつかりそうになる。
「おっと」「きゃっ」
ぶつかる前にとっさに庇われた。
「すまないカレン」
ジェラルドだ。
「ジェラルド様!、どちらへ?」
「…いや、あなたの顔を見たかった」
カレンは両手をジェラルドに持たれたまま、その顔を見つめた。
…少し疲れてる?
「ニコル」
「はい」
「これを…」
と言うと、手に持った白い小花の束を渡し、水に挿して置くように言うと「これから少し休むわね」と、ジェラルドの手を持ってさっさと寝室へ向かった。
「カレン?」
カレンは手を繋いだままジェラルドを見上げ、ふふと笑う。
パタン、とジェラルドの寝室へ入ると、ジェラルドは後ろからカレンを優しく抱き締めた。
「…」
「…ジェラルド?」
カレンの肩に、顔を埋めたままだ。
いつもと少し様子が違う。カレンは心配になる。
胸の前と腰周りにある、ジェラルドの大きな手に自分の手を重ねる。
「…あなたを独り占めしたい…」
ポツリとジェラルドが呟いた。
「……!……」
カレンはピンときた。
これは…“小さなジェラルド”だわ。
一気に愛しさがこみ上げる。
でもやっぱり少しお疲れね…
「…ジェラルド様、少しお休みになりませんか?私も休憩したいので」
「…」
カレンは肩に乗ったジェラルドの頭を撫でた。
そのまま顔を向けると、ジェラルドは唇を重ねてきた。カレンは労るように、チュッチュッと音を立てて小さなキスを繰り返すとジェラルドに向き直り、その精悍な頬を両手で包んだ。
深緑の瞳は熱をはらんでいるが、揺らめく激しさはない。
カレンはにっこりと笑い、またチュッと軽く口付けるとジェラルドの両手を取り、大きなカウチへ向かった。
二人で腰掛ける。
黙ってカレンに従うジェラルドが可愛い。
カレンは自分の膝を軽くポンポンとすると
「ジェラルド様、頭をここへ」
と促す。
「…あなたは休める?」
と心配そうに聞いてくるが、カレンは心配いらないから、とまた軽く口付けた。
ジェラルドはゆっくりと横になり、仰向けになるとカレンの膝へ頭を預けた。
カレンはジェラルドの長めのダークブロンドを撫でながら、額、両瞼、鼻先、両頬へ…とゆっくりキスを落としていく。
ジェラルドは下からうっとりとカレンを見上げている。
片手はジェラルドの胸の上へ置くと、すぐにジェラルドが握った。
ジェラルドは目を閉じ、安心した顔だ。
もう一度美しい形の唇へキスすると、間もなく規則正しい寝息が聞こえてきた。
ジェラルド様、甘えてくださってありがとう…
たまにはこんな感じで甘えてほしい。
カレンはカウチに掛けてあるブランケットを空いた片手で取り、そうっとジェラルドへ掛けた。
…でも、甥っ子達の“けっこん”攻撃、少し妬いてくれたのかな、なんて。
とカレンは眠る端正な顔を眺めながら思う。
私は“ジェラルド様とけっこん”したいのよ、とジェラルドの寝顔に無言で囁く。
「好きよ、ジェラルド。愛してるわ」
カレンはごく小さな囁きをこぼした。
ジェラルドの寝息に誘われるようにカレンも眠気に襲われ、カウチの背もたれに顔を預けて眠りについた。
・
控えめなノックとともに、ニコルがジェラルドの寝室へそうっと顔を出した。
ベッドに眠るカレンに沿うように、ジェラルドは頭を支えた格好でカレンの寝顔を見下ろしている。
ニコルを認めると「シーッ」と人差し指を口に充てた。
ニコルは首肯だけすると、音を立てずにジェラルドへ近寄り『フリード卿がお待ちです』とヒソヒソ声で告げた。
ジェラルドは頷くとカレンの額へ長いキスを落とし、静かにベッドから離れる。
「よく眠っている」
ニコルに告げると寝室を去った。
・
ジェラルドはカレンの膝で、ライトブルーの瞳に誘われるように眠りに付くと20分ほどで目が覚めた。
頭の下はカレンの柔らかな感触だ。
…ずっとこうしていたい
見上げると、カレンはカウチへ持たれかかり、すうすうとあどけない寝息を立てている。
顔色はずいぶん良くなったが、まだ少しやつれた印象だ。
ただ、長い睫毛が影を落とした寝顔は、抗しがたく震えるほど美しい。
出会えたことだけでも奇跡のようだが、こんなに早く私の子を宿すとは…
愛しいカレン
ジェラルドは思わず手を伸ばし、カレンの頬を指で撫でた。
「…ん…」
カレンは眠ったまま、その感触に微笑む。
甥達が憧れるのも無理はなかろう。
王太子は…あの軽口は生来のものだろうが、小国の君主となるべく者の処世術と言える。
なかなか侮れない御仁なのはわかっている。
カレンへの親愛は身内だからだと自分を納得させた。気持ちの良いものではないが。
ジェラルドはそっと起き上がり、起こさないよう静かにカレンをベッドへ移動させ、傍らに横たわるとその寝顔を心行くまで眺めた。
・
王太子エドワードを迎えての心尽しの、しかしダヴィネスの粋を集めた晩餐は、大いにエドワードを喜ばせた。
「いやはや、貴国のものは大概口にしていると思っていたが、ここはまた一味も二味も違う!」
と大層な喜びようだ。
「エドワード、ワインも素晴らしいでしょう?」
ヘレナの言葉にエドワードは大きく首肯した。
「ダヴィネス産のワインは是非とも輸入の数を増やしたい」と、大乗り気だ。
「ほんと、まだまだ居たいくらいよ…」と、ヘレナが呟くと、「それは!」とエドワードが本気で焦る。
「ふふ…冗談ですわ」
ヘレナはエドワードをからかった。
「まったく、そなたは!」
ヘレナにかかると王太子も形無しだ。
カレンはジェラルドと顔を見合わせて笑った。
・
翌日、ジェラルドはエドワードとグレゴリーを城塞軍部へ案内した。
エドワードは自国とはまったく様相の異なる城塞の様子に感嘆しきりだ。
グレゴリーもスヴァジルとの対面を果たし、“辺境伯閣下”への憧れを増した。
その夜も前夜同様、しかしメニューは異なる晩餐を心ゆくまで過ごした。
ジェラルドとエドワード、カレンとヘレナとに分かれ、それぞれ最後の夜を過ごす。
~
ジェラルドとエドワードは、撞球室でビリヤードを楽しんだ後、そのまま酒を酌み交わしていた。
「ダヴィネスよ…」
「はっ」
「ここは良いところだな。豊かな自然と食物、忠誠心の篤い部下達…私も久しぶりにゆっくりとした気分だ…」
エドワードはすっかり寛ぎソファに埋もれている。少し酔いの回った顔だ。
「もったいないお言葉です。殿下にお喜びいただけたなら幸いです」
「ヘレナが滞在を延ばしたいという気もわかるぞ。息子達もすっかりここの虜だな」
これにはジェラルドも笑うしかない。
「それもお前が滞りなく治めているからだ。お前の様な配下を持つ陛下を羨ましくも思うが…」
エドワードは少し真面目な顔になる。
「王都の小狡い連中には気をつけろよ、ここの豊かさは妬みにもなりかねない」
「…心します」
エドワードはジェラルドの律儀な受け答えにフッと笑う。
隣国は小国とはいえ商業国だ。海を介して様々な国との繋がりがあり、裏を返せば常に脅威に晒されているとも言える。
それだけ難しい政治判断も頻繁に生じる可能性がある、ということに他ならない。
国に居ては気の休まる時などないことは、ジェラルドも想像に容易い。
「まぁしかし我らには女神達の加護がある。…それがなければ…実際のところ、情けないものだ。だから迎えにまで来たのだがな」
エドワードはグラスを傾ける。
エドワードにとってはヘレナ、ジェラルドにとってはカレン。
ジェラルドはカレンの姿を思い浮かべ、知らず笑みを浮かべる。
「…お前、今自分がどんな顔をしているのかわかっているか?」
と、エドワードはからかう。
「は、いえ、失礼致しました」
「はは、よいよい。いつまでも仲睦まじくあれよ、ダヴィネス。…さもなければ…お前ももうわかっているだろうが、あの姉妹達の思い切りの良さは…」
「はい、驚異です」
二人で笑い合い、夜は更ける。
~
カレンとヘレナは、心地よいコンサバトリーにいた。
二人は肩を並べてソファに座る。
「本当に明日帰るのね…名残惜しいわ」
ヘレナはお気に入りのダヴィネス産のワインを飲む。
「…」
カレンはいけないとはわかってはいるが、滅多に会えないヘレナとの別れが堪え、暗い顔だ。
そんな妹を見て、ヘレナは「仕方ないわね」と、カレンの肩を抱いた。
「…お姉様…」
カレンは溢れる涙を止めることができない。
「カレン大丈夫よ。また会えるから」
ね?と、カレンの顔を覗く。
カレンはうんうん、と自分を納得させるように頷く。
「ふふ、カレン、もっとあなたのジェラルドに甘えなさいな。彼の愛情深さは底知らずよ、たぶん」
「お姉様ったら…」
カレンは恥ずかしいが、それは本当だろう。
「私ね...カレン、本当に楽しかったのよ、ここでの生活が。…実を言うとね、ちょっと国で疲れてたの、いろいろと」
「そうだったのですか…」
カレンは今の今まで気づかなかった。
ヘレナは頷く。
「だから、ジェラルドからの鳩便に飛び付いたってのもあるけど…」
ごめんなさいね、とヘレナは謝った。
「! そんな、お姉様…」
「でも来てみて良かったわ。なんていうか、ちょっと大袈裟かもしれないけど、心が洗われたっていうか、心機一転っていうか…とにかく感謝してるのよ、あなたやジェラルド…このダヴィネスに。息子達にもいい経験になったし」
カレンは一国の王太子妃である姉の抱える重圧や責任など想像もできないが、何でも完璧にこなす姉の言葉に驚きながらも、嬉しさを感じた。
「私にはお姉様の大変さは何もわかりませんが…何かお役に立てたなら…」
「やだ、そんなのじゃないのよ!」
だめね私ったら、妊婦に心配させたりして、と明るく否定する。
「あなたはとにかく体を大事にしてね。絶対に無理しちゃだめよ。なんでもジェラルドに相談なさい」
「はい」
「…でも、もし逃げたくなったらいつでもいらっしゃいな。最短ルートは使えるわよ」
と、茶目っ気たっぷりだ。
「お姉様ったら…!」
二人は笑い合い、別れを惜しんだ。
・
翌朝、隣国の王太子一家は、「いつでも鳩を飛ばしてね!」というヘレナの最後の言葉を後に、ダヴィネス城を立った。
エリックは最後までくずっていたが、最後は馬車へと乗り込み、皆をホッとさせた。
グレゴリーは「また来ます!」と爽やかに別れを告げた。
カレンは泣かずに見送れたが、寂しさは隠せない。
そんなカレンを見て、ジェラルドは強く抱き締める。
「ジェラルド様…」
「カレン、婚礼の時にまたお呼びしよう」
と、カレンを元気付ける。
カレンとジェラルドの婚礼は、春を過ぎ、ダヴィネスの初夏に執り行われる。




