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信孝なんかに『本能寺の変』のとばっちりで殺されていられません~信澄公転生記~   作者: 柳庵


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95話 後家殺し 再臨

ども、坊丸です。

加藤さんが、信長伯父さんからの勧誘を断った時は、何で?って思いましたが、自分と一緒にもの作りをしたいって言われたので、なんか嬉しかった坊丸です。


そして、信長伯父さんがお怒りモードに入らなくて本当によかった。


なんてったって、「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」の織田信長だからね。

まぁ、仕官断ったくらいで殺さないだろうけど、さ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふん、感謝の言葉はもう良い。脱穀を行う装置とやらは、どうした?ここで見れるか?」


「はっ、今すぐ準備致します。加藤殿、千歯扱きの準備、宜しくお願いします」


「承りましてございます」


そういうと、加藤さんは持ってきた荷車まで歩いていき、それを陣幕の中に入れて、荷ほどきをし、いくつかのパーツに別れた千歯扱きを手早く組み立ててくれます。


千歯扱きの金属部分の下に、籾を受けるための筵とザルを置いて、完成した千歯扱きの金属部分や台の高さを確認すると、こちらを見て、うなずく加藤さん。


「伯父上、脱穀を行う装置、名を千歯扱きと申します。

使い方は至って簡単なもので、乾燥させた稲の穂を多数の飛び出た金属の先に引っ掻ける様に置き、茎の部分を引くだけでございます。

早生の稲穂を僅かばかりですが、持ってきておりますので、実際に使ってお見せ致したく存じます」


「で、あるか。では、やって見せよ」


「はっ、加藤殿、手はず通りに」


「承りましてございます」


加藤さんは仁左衛門さんにもらった稲穂を、信長伯父さんに一度見せた後、千歯扱きに引っ掛けるように置いて、一度手を止め、一呼吸します。


「では、まいります」


みんなが、加藤さんの様子を興味津々に見てます。

柴田の親父殿は、自分が一度NGを出した装置のせいでしょうか。ちょっと渋い顔をしてますが、まぁ、おいておきましょう。


加藤さんが、千歯扱きに引っ掛けた稲穂を勢い良く引くと、ほとんどの種もみが、ザルの中に。

一部、勢いよく外れたためか、筵に落ちてるのもありますし、少しだけですが、稲のほうに残っているものも見受けられます。

稲に残った籾をチラッとみた加藤さんは、何事もなかったかのように、もう一度、二度と同じ手順を繰り返し、すべての種籾が落ちたのを確認すると、脱穀が完了したの稲穂を信長伯父さんのほうに見せました。

その後に、筵に散った種もみをザルに集め、ザルと藁になった稲穂を小姓の長谷川殿にわたしています。


床几に腰かけた信長伯父さんは顎に左手を当てながら、右手で長谷川殿から渡された藁と種籾を検分しています。

そして、籾になったものを何度かつまんで確認した信長伯父さんは、こちらに視線を向けました。


「坊丸、この千歯扱きとやらは、脱穀の作業が扱き箸とは比べようもないくらいに早いな。

うむ、これはよい。作るのもそれほど難しくないのであれば、村に一つあっても良かろう。

これが普及すれば、脱穀にかかっていた時間と人間を違うことに使える、ということだな。例えば、早合の製作などに、な」

そういうと、すこし悪い顔で、ニヤリとする、信長伯父さん。


「はっ、伯父上のおっしゃる通りでございます」


わざと大げさに頭を下げ、うまいこと調子を合わせて応えますが、なんだか、悪代官と越後屋さんが山吹色のお菓子をやり取りするときの様な共犯感。


「あいわかった。内政のことだ、林にも諮ってからになるが、この千歯扱きとやら、我が領地に速やかに普及させる。坊丸の後見役だしな、勝家、お主も手伝え」


視線を柴田の親父殿の方に向け、顎をしゃくる信長伯父さん。


「はっ、承りましてございます」


自分が一度NGを出した装置が、あれよあれよという間に、効果を実証され、自分がNGを出した理由も利点に変えられたうえで採用されていくのを目の当たりにして、当惑顔の柴田の親父殿。

それでも、主君に命じられれば、頭を下げて、しっかり拝命。

なかなかの忠誠心ですね、柴田の親父殿。

ま、信行パパを担いで一年前くらいに謀反起こしてるけど。

それはともあれ、欠点を利点に変え、立て国民よ!じゃなくて、今度は売り込みに成功です、千歯扱き。


ていうか、農作業の効率化を進める機械が、効率的過ぎるからダメってのが柴田の親父殿のNGの原因だったわけですからね。


効率化したことで生まれる、労働力を有効活用する働き口を用意すれば、オールOKなんすよね。

内職っぽい感じの労働力を必要とする早合と農作業を効率化して余剰の労働力を生み出す千歯扱きを同時に信長伯父さんにプレゼンできたのが勝利のカギだったわけですよ!エッヘン!


「では、これでしまいにするか」


あ、信長伯父さんが、満足して、今日はお終い的なこと言いだしました。まだ、焼酎献上してないけど、いいのかな?


「殿、先日、申し上げた通り、坊丸めが、新たな酒を作りましてござります。城に戻った後に、献上いたしたいのですが、如何でしょうか?」


あ、柴田の親父殿が焼酎のことを進言してくれました。


「また、酒か。子供のわりに酒ばかり作りよるな、坊丸は」


って、ひどいよ、信長伯父さん!

自分、酒ばっか造ってるわけじゃないからね?ほかにもいろいろ現代知識で改良改善してるからね!

それに、自分が作ったお料理、いろいろ美味しく召し上がってますよね?信長伯父さん!

「後家殺し」って、千歯扱きの異名なわけですが、前後の文脈を無くして、いきなりこのフレーズだけ抜き出すと、そこはかとなくエロさがありますね。


「後家殺し」

なんか、すこし裾がはだけた感じで科を作って鬢をさわる後家さんがいるイメージ。

って、そんな風に思うのは自分だけですか?

そうですか、そうですよね。

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