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信孝なんかに『本能寺の変』のとばっちりで殺されていられません~信澄公転生記~   作者: 柳庵


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58話 シャベルとスコップの違い知ってます?

ども、坊丸です。酒粕たい肥が失敗作になりかけましたが、アルコールが飛んでどうにか持ち直してくれることを期待しています。頑張れ、各種発酵の菌類たち!

そんなわけで、酒粕から粕取り焼酎をつくってアルコールを蒸留後の残ったもので、酒粕堆肥を作った方が焼酎も作れてお得かもって思ってます。

ま、蒸留器は、昔、十四代の蘭引焼酎 鬼兜の蘭引きってなんやねんって思ったときに見た蒸留器くらいしか思いつかないので、できるかどうかからですが。


そんなわけで、加藤清忠さんところに蒸し器と蘭引き式蒸留器のアイデアを持ち込んで、工作してくれないかな…って思ってたところなんですが、なんと、ちょうど三又鍬と曲がり鋤の試作品ができたとの連絡が。


試作品を見に行きつつ、蒸留器をつくってもらえないか交渉しにいきましょう!


与兵衛、正左衛門と呼び会う、昔馴染みの仲の中村文荷斎さんと一緒に試作品を見に行こうとしたら、なんとまあ、柴田の屋敷に試作品を持ってきてくれるとのこと。


やるな、加藤さん、気が利くぜ。でもそうすると、加藤さんを待つ間、吉田次兵衛さんの指導のもと、手習いの時間が発生してしまうんですが…


仕方ないから、待つ間くらい勉学にいそしみますよ、トホホ。


そして、四半刻ほどの後のこと。


「加藤清忠ならびに福島正信、坊丸様に頼まれたものをお持ちいたした、開門願いたい」

加藤さんが、柴田の屋敷の正門のところで、大声を出しているのがきこえました。


既に柴田の屋敷に到着している文荷斎さんが、開門の指示を出している様子。


吉田次兵衛さんが、ため息をひとつついた後、口を開いた。

「坊丸様、どうやら待ち人が来た様子、行ってらっしゃい」

「はい!」こういう時は、子供らしく元気な受け答えをしたあと、駆けていく様にしていますよ。


さて、実際の使い勝手を見るという事で、柴田の屋敷の庭の隅の方に集合です。

あれ、加藤さんのほかにもう一人、知らない人が居ますよ?


「坊丸様、お初にお目にかかります、桶職人の福島正信と申します。こちらの加藤殿の奥方とうちの家内が親戚という事で、今回、木工の部分を担当させていただきました。以後、お見知りおきを」


「津田坊丸です。こちらこそよろしくお願いしますね。木工の部分は特に問題なかったですか?」


「私が担当したのは、三又鍬と曲がり鋤の柄の部分と千歯こきの台座部分だけですから、それほど大変ではありませんでしたが」


「え、千歯こきも出来上がったですか?」


「ええ、加藤殿と相談して、組立式にしてみました。台座部分に逆さに釘を生やしたような部分を取り付ければできます。では、組み立ててしまいますから、暫しお待ちを」


やっばいぞ。千歯こきは、正直、そのうちつくってもらえばいいやと思っていたんだけど、この二人、優秀過ぎて、既に作ってきちまった。

これ、柴田の親父殿に見つかったら、怒られるやつだろう…


って、言ってるそばから、柴田の親父殿が近づいてくる…


終わった、今さら解体しても間に合わないだろうから、これは怒られるの確定や…


「す、すいません、千歯こきは、あとで見せてもらうので、今は少し片付けてもらって良いですか?菰をかけるだけで良いですから…」


意を汲んでくれたのが、すぐに千歯こきに菰をかけてくれる文荷斎さん。


「では、坊丸様、三又鍬と曲がり鋤はこちらです。とりあえず、三又鍬が二本、曲がり鋤は、持ち手を横一本にした通常のものと、持ち手に鉄を使い、孔のようにしたものです」


「おう、文荷斎、坊丸、改良した農機具の試作品を使うと次兵衛に聞いてな、とりあえず見に来た」と、柴田の親父殿。


「これはこれは、柴田様、わざわざご足労ありがとうございます」

多分、加藤さんと福島さんに、偉い人が来たことを暗に知らせるために、文荷斎さんがすごく丁寧に対応します。

その気配を察したのか、加藤さんと福島さんは、すぐに頭を下げました。

その様子を見て、文荷斎さんが柴田の親父殿に二人を紹介します。


「こちらの足に古傷をおっているのが、それがしの古馴染みの加藤正左衛門清忠と申します。以前は美濃の斎藤に仕えておりましたが、傷を負い、今は愛知郡は中村の地にて鍛冶師をしております。そして、こちらの偉丈夫が、福島市兵衛正信殿、東海郡は二ツ寺にて桶職人をしております。此度は、加藤殿のご内儀の縁者ということで、木工の部分をお願いいたしました」


「中村の加藤正左衛門清忠と申します。この度は、農機具の鍛冶を任せていただき、ありがとうございました」

「二ツ寺の福島市兵衛正信と申します。柴田様、坊丸様の仕事に関われて光栄にございます」


「織田家で家老職を務めておる、柴田勝家だ。うむ、加藤殿に福島殿だな、覚えておこう」


二人は、文荷斎さんと自分をちらりと窺った後、文荷斎さんが頷いたので、柴田の親父殿に三又鍬と通常持ち手の曲がり鋤を捧げるように見せます。


「文荷斎、お主らは試したのか?」


「いえ、まだです。せっかくですから、柴田様が試してみてはいかがですか?それがしは柴田様の後で試しますよ。剛力の柴田様が使っても壊れないか、非力なそれがしが使っても深く耕せるか両方試せることになりますので、宜しいかと存じます」


「おう、そうだな、では試させてもらうぞ」


さすが、鬼柴田の剛力、三又鋤が金属の又状になった部分のほぼ根元まで土に刺さりやがります。


「うむ、それほど力を加えなくても、深くまで刺さるし、土を起こせるな、これはいいのではないか」

それほど力加えてなくてそれなんだ、さすが、馬鹿力…

いや、口には出さないけどね。


「こちらもお試しください」と福島さんが曲がり鋤を柴田の親父殿に渡します。


ものすごい勢いで土を掘り返しては、後ろに投げ飛ばす親父殿、もはやシャベルカーですよ。

って、その土が、千歯扱きにかけた菰に思いっきりかかって、外れてしまいました。

ヤバい、ヤバいよ、気づかれちゃう!

隣の、文荷斎さんは、あちゃ~って顔をした後、天を仰いでます。


「ふむ、この曲がり鋤も良いな、普通の鋤と違い、土を運んだり、投げ飛ばしたりもできるぞ!」

と言って、投げ飛ばした土のほうを見ます。

と、そこには、菰が外れて、土を少し被った千歯扱きが。

見つかってしまいました。終わった。終わったよ、自分。


「坊丸?なぜ、ここに作るなと言った、千歯扱きなる農機具があるのだ?ん?」


「試、試作です。こちらの二人の技量を試すために、作れるか、試しただけです」

「柴田様、そうです、これは試作品です、まだ使うと決まってはおりませんゆえ、坊丸様を責めないでくだされ」


「ほぉ~、試作品とな、では、これは石田村には持って行かず、当家の蔵の奥の奥にでもしまっておけ、良いな、坊丸、文荷斎」

鬼柴田の凶悪な怒り笑顔を拝ませていただきました。

あ、そのあと、文荷斎さんが非力でも使えるかを確認して、追加発注と後日、石田村にも持っていくことが決まりました。ちなみに、現代人が知っている一般的なシャベルの持ち手は親父殿にも文荷斎さんにも評価していただけませんでした…トホホ。


そして、結局、その夜、夕食後に柴田の親父殿にめっちゃお小言をいただきました。二度目のトホホ。

JIS規格では、足がかけられる部分があるのが、シャベル。そうでないものがスコップ。

その定義だと、ほとんどの鋤はJISの定義だとシャベルになるんですね。

ま、鋤は鋤ですがね。

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