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信孝なんかに『本能寺の変』のとばっちりで殺されていられません~信澄公転生記~   作者: 柳庵


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480/484

480話 金創医坊丸 執刀医頑張ります! 伍ノ段

ども、坊丸です。

盛次殿の脚の傷、そこにある異物の除去に向けて諸々準備して参りましたが、ついに当日です。


血が出る旨の説明をしたんですが、奥御殿の板の間の一室が手術室になりました。さすがに手術室みたいに立っての執刀はできないので、正座からの立膝での執刀になりました。

ちなみに盛次殿を戸板に寝かせるわけにもいかないので、畳に寝ていただきました。白い着流しっぽい夜着を着てます。不吉なんで口にはしませんが、なんていうか白装束みたいです。

うん、不吉なんで今のは、無し。


少しアルコールと柑橘の臭いを漂わせた盛次殿が畳の上に一度座ってこちらを穏やかな笑みを見えた後、一礼をいただきました。そして、部屋の端に見聞役の老臣の方が静かに座りました。


「坊丸。今日は宜しく頼む。痛みで声を上げるかとは思うが、暴れるような真似はせぬ所存ではある。家臣一同より立ち会いをつけて欲しいとのことであった。坊丸にはあいすまぬが、端に控える故、同席を許してくれ」


「盛次殿のお覚悟、あいわかりもうした。立ち会い人のこと、承りました」


「佐久間家で奉行職を務めまする鷲見源九郎重次にございます。見知りおきを」


そう言うと静かに頭を下げる鷲見さん。うん、邪魔しなければ問題ないです。


「重次、痛みに声を上げたりのたうち回るやも知れん。そのときは坊丸をとめるのではなく、儂を落ち着かせるか、押えつけるかせよ、良いな」


「くっ。う、承りました」


あ、この人、何かあったら止めようと思ってましたね?それを主命で抑えられた感じでしょうか?

重ねて言いますが、邪魔しないでくださいね?


「で、ここに横になればよいのだな?」


そう言うと畳の上に横になる盛次殿。そして、昨日見た荒縄を懐から出して口に咥えました。え?その縄、セルフ猿轡なんですか?痛かったらそれを噛み締めるんですね。なんつうか、覚悟の決まり方が半端ないんですが。いや、ありがたいことなんですがね。


「では、宜しくお願い致します」

「「「お願い致します」」」「よおすくたなむ」


盛次殿、縄を咥えながら唱和しなくていいですから。


盛次殿の大腿部、赤く腫れているところを目をつぶりながら触診。ここ、ここに、硬いものが触れる。

そこに指を置きながら刮目。指の左右一寸を切開線として想定。


「剃刀を」


桃花さんの方を見ずに手だけ出して剃刀が来るのを待つ。すぐに剃刀が手に来ないので、桃花さんの方を見ようとした瞬間、手に剃刀の柄が収まるのがわかりました。


オペ室の器械出しの看護師さんと同じ事を知らず知らずのうちに要求していたにもかかわらず、こちらの意を汲んで剃刀を渡してくれた桃花さんの臨機応変さに、少しの驚きと嬉しさを感じて口角が自然と上がっている自分。


うん、桃花さんは甲賀衆のつなぎとしてだけではなく、チーム坊丸の一員となってほしい人材になりつつあるな。まぁ、手を出すつもりは今のところはないですけどね。

そして、自分の中で、今回の手術はイケる、という理由は無いけど確信が芽生えました。


「盛次殿、参ります」

「ん」


異物の上に置いた指をわずかに自分の方にずらし、脳内で設定した切開線に沿って一気に切開。よし、皮下組織まで一気にいけた。色の変わった筋膜も少し見えるかな。あれ?転生前に救急でメスを持たされた時やあっちの世界で最後に小手術をした時より、躊躇なく思いきりいけた気がする。気のせいかもしれないけど…。


「グッ」


痛みにわずかに唸り声を上げる盛次殿。が、身体はほとんど動かさないというところに盛次殿の強い決意が感じられます。視界の片隅で鷲見さんが一瞬膝を浮かせたのを感じましたが、うん、ガン無視で。


「晒し木綿を」


「は、はい」


手だけを出しても今度はすっと手にガーゼがわりの晒し木綿が来た感じ。

ボスミン打ってないから、皮膚断端から結構血が出るなぁ。キシロカインとボスミンって本当に偉大だわ。

とりあえず、晒し木綿で圧迫!圧迫!圧迫!圧迫止血だコノヤロウ!

って、圧迫したところは一時的に出血がの弱まるけど、他のからは滲んできやがりますな。

どうする、どうする。どうする、坊丸。

ここは桃花さんが持ってきてくれたミョウバンとガマの油を試すしかないかぁ…。


どっちが正解だ?どっちが血が止まる?

って、効能効果その他詳細情報が書かれた添付文書があるわけで無し。ぶっつけ本番で試すしか無い、か。


「桃花さん。ガマの油を」


晒し木綿で創部を抑えながら、そう言って顔を桃花さんに向けると、コクリと頷いた桃花さんが薬壺の一つを開けました。

淡黄色の軟膏のようなものが入った薬壺をこちらに差し出す桃花さん。うん、これは…。指で掬い取るしてないわけね。了解。


桃花さんの手元に重ねられた晒し木綿を1枚取って指を拭ったあと、薬壺の中に指を突っ込んで掬い取ってみました。うん、やや硬めの軟膏製剤ってところでしょうか。


「蟾酥」ってどんな物質が入ってるかしらんけど、少なくとも軟膏としての効果はあるはず!

ボクシングで眉の上がパカッと切れた時に、セコンドの方がラウンドの間にワセリンで処置してるの見たことあるし。それと同じ効果くらいは出てくれよ!




鷲見源九郎重次さんは創作キャラ。

佐久間盛政が賤ヶ岳の戦いで率いた奇襲部隊で活躍した鷲見源次郎、鷲見九蔵の親か伯父という設定です。


蟾酥は前回も書きましたが、カエルの皮膚腺や耳腺の分泌物。



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