468話 金創医坊丸 準備奔走中 七ノ段
ども、坊丸です。
メスが加藤さんの義父さん作の剃刀になりそうな予定で話が進んでいる坊丸です。
まぁ、いろいろありましたが手術器具類はなんとかなりそうです。ほぼ加藤さんの技術力のおかげですが。
消毒には喉を焼くような強さの焼酎がありますので、これも大丈夫。
麻酔?なにそれ?佐久間盛次殿に三国志の関羽の逸話と同じように酒呑ませる&誰かと碁か将棋でも打ってもらいう予定ですが、なにか?はい、これは決定事項です。大丈夫、そのための何度も蒸留した高濃度エタノールな焼酎が手元にはあるのだから。飲みやすいように何か夏の果物の汁でも加えて呑んでもらいましょう。あ、酩酊期くらいで処置したいですね。昏睡期や泥酔期には至らないように注意したいところ。
急性アルコール中毒、駄目、絶対!ってやつですな。
さて、後は異物除去後の洗浄などに使う生理食塩水ですが…。
現状、尺貫法がとても壁になっております。生理食塩水って、0.9%の食塩水ですよ?重さの単位一匁とか一両と容積の単位一合、一升をどうやって換算しろと?
知ってますよ、一合が180ミリリットルで一合が1.8リットルだということは。仮にも平成令和のときには日本酒呑んでましたから。
でもね、壱匁が何グラムなのか知らんのよ。平成令和の時代に日常生活で使った?重さの単位としての匁を?
尺貫法が日常生活で使わなくなった時代に生きていてたら一匁が何グラムとか知らんでしょ、普通。
日常生活には、メートル法!そして、国際単位系!
ま、そんな事を熱弁しても戦国時代では何この子、大丈夫?となりますので、どうにかして壱匁の具体的なグラム数を知りたいところ。
今までの生活からの経験値的には五グラムくらいなのかなぁ…ってところですが。
とりあえず、水一升が何匁くらいなのか知りたい。
と、なると…。聞きに行くのはお滝さんかな?文荷斎さんや次兵衛さんに聞きに行っても良いけど…。戦の準備しているだろうからなぁ。
というわけで、やって参りました。いつもの厨。
お滝さんが鍋に向かい合っております。うん。この香り、鰹出汁を取っているのかな。
「お滝さん。今、いいですか?」
「ん?坊丸様かい。そうだね。鰹出汁を取ってるから、耳だけなら貸すよ」
「あ、今回は質問があるだけなんで、耳だけで大丈夫だと思います」
「あら、そうかい。また、何か何か新しい料理の相談かと思ったけど、違うのかい。まぁ、戦が近いからね。さすがに料理の相談はないかねぇ。で、何事かねぇ?」
「まぁ、大したことではないですけどね、水一升ってどれくらいの重さなのかなぁ、と」
「あ?そんなことかい。水一升ってのはね、だいたい三斤の重さだね。そんな事も知らないのかい?」
おおう!知らない単位出てきたぁぁぁ。斤ですとぉぉぉ。パンを数えるときの単位でしか聞いたことないやつ!
待て待て待て。水一升が三斤ということは、一斤という重さは単純計算で六百グラム相当のはず。
後は、斤と匁の関係性だな、うん。
「いやはや、お恥ずかしい。水一升は三斤。うん、覚えておきます。で、あまり馴染みがないのですが一斤とは何匁ですかね。匁の方が慣れておりますので…」
「ああ、そうだね。一斤は十六両、匁で言うと百六十匁になるね。これでいいかい、坊丸様」
「はい!とても為になりました。ありがとうございます」
「なに、大したことじゃないよ。まぁ、お侍さんたちや商人にとっては斤よりも貫の方が使い慣れてるだろうからね、知らなくても仕方がないさね」
「ありがとうございました!」
「はいはい、また何にあったらおいでね」
ふむふむ、一斤は百六十匁。一斤が六百グラムだからっと。縁側の土の上で棒切れで筆算筆算っと。
出ました!一匁は3.75グラムです!やったよ、ついに一匁のグラム数がわかったよ!
ということは、水一升に塩五匁で1.03%くらいかぁ…。
塩四匁だと0.82%くらいになる、と。
と、なるとその間、水二升に塩九匁が良さそうだな。
良し、生理食塩水もどうにかなりそうだ!
水二升に塩九匁だと正確には0.928%になりますが、どうせ戦国時代なのでそこまで一升枡の精度管理ができていないだろうから、あくまで0.9%に近似出来れば良いということになります。
しかし、まさかの単位だけで話がほぼ終わるという回になりました…。地の文で巻いてもよかったんですが、いまだに坊丸君のあれ?そこ知らないの?って感じを出したかったので、お滝さんとの会話メインにしました。
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