440話 バテレンが来た! 弐の段
ども、坊丸です。
この時期に来ている南蛮人と言うとフランシスコ・ザビエルを筆頭に宣教師の方々のイメージなんですが、岐阜に来てたのかなぁ。
宣教師ってザビエル以外の個人名は歴史の授業とかで習わないし。ザビエル以外にも何人か来てたって程度かなぁ。わざわざ岐阜に来るくらいなんだから、京都や堺の有力者の紹介状とか持ってるんじゃないでしょうか。ノープランでは普通来ないと思うし。
そんな感じで考えていましたが、なんと、後々、我が身にこの問題が直撃しやがりました。この時点ではそんなこと全く予想してなかったんですがね。
それはさておき、一日、二日経つと、桃花さん情報(甲賀衆情報)にて南蛮人の一行は和田惟政殿の岐阜の屋敷に寄宿していることが判明しました。
そういえば、京都で和田惟政殿が、信長伯父さんが指揮する建築現場に南蛮人を連れてきた的なことを柴田の親父殿が言ってたなぁ、と思い出したわけです。
そして、その時には、和田惟政が取次の段取りしてるだろうからそのうち、岐阜城にやってきた南蛮人を見かけるかもな、くらいの感じで居たわけですよ。
で、小姓衆仕事で宿直を終えて帰ってきたある日。
帰宅後はなんか、屋敷の中がバタバタしておりました。お妙さんや若衆の人達に理由を確認すると、南蛮服を来た日の本の人間が自分の帰宅前に訪問してきたとのこと。で、柴田の親父殿に取次を願ったらしいのです。でも、こういう時に限って、親父殿も次兵衛さんも近江国に行っているわけですよ。
南蛮服の人が言うには、「親父殿に宛てた書状があるから会わせてほしい」とのことだったそうで、また、明日来ると言い残して、立ち去ったそうです。
でも、親父殿も次兵衛さんも居ないからなあ。どうするんだろう?
等と思っていたら、婆上様から呼び出しが。全くもって悪い予感しかしません。
「婆上様。お呼びとのことで、坊丸、参りました」
「坊丸。南蛮服の者が当屋敷に参ったこと、聞きましたか?」
「はい。皆が噂話をしておりましたので、それなりには聞いております」
「なら、話が早い。明日もそのものが当屋敷に参るとのこと。今、権六も次兵衛も近江に行っており、その者に対応できるものがおりません。坊丸。確か、明日はそなた、休みのはず。その者への対応、宜しく頼みますよ」
「はっ。と、言いたいところではありますが、それがし、預かりの身にて。また、奇妙丸様の小姓衆でもありますれば、柴田家を代表して対応するには、いささか荷が重いかと」
「ふむ。それもそうですね。では、勝定と中村殿も呼びましょう。一門衆と名のある寄騎が居ればそれなりに形になるでしょう」
「そのお二方が居れば、自分はその場にいなくても良いのでは…」
「二人には使いの者を出しますが、間に合うかわかりませぬ。そなたは明日、休みでしょう?屋敷に居るのだから、何時でも対応できるではありませぬか」
「は、はぁ。お二方が間に合わない時は自分も対応致します。それで、宜しゅうございますか?」
「それで良いので、宜しく頼みますよ、坊丸」
ああ、この感じだと宿直明けの休みが無くなりそうです。頼む、頼むぞ!勝定さん、文荷斎さん二人とも、揃ってくれ!そして、自分にゆったりした一日を!
等と願ったわけですが、予想通り、無理でした。
勝定さんは岐阜に控えていたんですが、文荷斎さんは夕方近くならないと岐阜には来られないらしく。リザーブメンバーの自分の出場が決定しました。
そんなわけで、南蛮服の日の本人に会う羽目に。
辰の刻には勝定さんも屋敷に来て、婆上様に挨拶しておりました。
すると、中間の人から南蛮服の人が来たと報せが。
急いで、支度を整えて柴田家大広間に勝定さんと着座です。
「勝定殿、宜しく頼みます」
「すまねぇな、坊丸。めんどくせえ仕事を手伝ってもらってよ。儂も本来は戦働きが得意で、こういったのはそれほど得意じゃねぇんだが…。今からでも、文荷斎の奴、来てくれねぇかなぁ」
「向かっているようですが、夕方になるようですよ、文荷斎さんの到着は。とりあえず、会って話を聞くだけですから、話だけ聞いて、確約や言質を与えないように聞き流して、のらりくらりとやりましょう」
「分かった。すまねぇが、うまいこと補佐してほしい。頼んだ」
勝定さんもこれからは文官や代官仕事をこなさないといけない立場なんですがねぇ。長光寺城の城番もするようになるはずだし。
そんな話をした後、二人で待ち構えていると、南蛮服を着た日の本人らしい人物が登場。頭がツルンとしているのは突っ込んじゃ駄目なポイントでしょうね。
「本日は、お目通りの許しをいただき、ありがとうございまする。イエズス会の修道士をしております、了斎と申します。洗礼名をロレンソと申しますので、よろしければ、ロレンソとお呼びください」
洗礼名ロレンソと名乗った方が深々と平服しました。
この対応の感じ、この人、こういうのに慣れてそうですな。
「ご挨拶、ありがたし。それがしは柴田家家臣にして一門衆、当主柴田勝家の従兄弟にあたりまする柴田勝定と申す。本日は、当主柴田勝家が不在にて、代理を務めさせていただきまする。なお、隣に控えるは、当家預かりの津田坊丸。以後、見知り置き願いたい」
そう言うと、手をこちらに向けて紹介してくれる勝定さん。あ、ここは、そのまま自己紹介の流れですね、理解しました。
「津田坊丸にござりまする。織田家当主織田信長の甥にして、訳あって今は、津田を名乗り柴田家預かりの身の上。また、織田家嫡男、織田奇妙丸様の小姓衆もあい務めまする、津田坊丸と申しまする。以後、見知り置きを」
自分も深々と礼をします。
で、ロレンソさんで、ツルツルな感じの了斎さんって、誰?
奇妙丸の小姓衆は、坊丸のおかげで、特にイベントが無い時は近代的な日勤、夜勤、夜勤明け、その後一日休みと言うシステムが採用されております。
信長の小姓衆?そんなのは無いから、日勤と夜勤が数日事に交代。休み?信長の小姓衆に、そんなものは基本的に無いのです。
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