428話 永禄十二年 新年の儀 前段
ども、坊丸です。
一月一日は、家中の新年の儀。
といっても、加藤さん父子と弟達に少しお話して、お餅やお菓子、金子を配るだけですが。お妙さんも、柴田家の新年の儀や宴会の手伝いを切り上げてこちらに顔を出しております。
今年から、弟の竹丸も奇妙丸様の小姓衆になったわけですが、竹丸には俸禄がでないことが判明。まぁ、自分と竹丸以外は織田の譜代家老格のお子さんクラスですからね。俸禄無しでもいいんですが、ね。
自分もなんだかんだで五人扶持だし。
え?もしかして、竹丸が小姓衆として体裁を整えるのって、自分が払うのかな?どうなんだろう。
後で、柴田の親父殿か次兵衛さんに確認だな。
それを言うと、佐々清丸くんはどういう扱いなんでしょうか?成政さんのところから何か支援あるのかな?
そんな疑問が沸き立つ年始なわけですが、今年はお市の方様から回収していた婚礼調度の遊具部門があるのです。
なので、子供四人で一遊び。うむ。正月らしい。野郎ばかりな上に、大人数で遊べるのは、自然とカルタになるわけですが。
そして、いつの間にか音もなく入室してた桃花さん。お妙さんと投扇興で遊び始めた音で初めてそこにいる事に気付く驚きですよ。心臓に悪いから、一声かけて欲しい。
そして、帰宅する加藤さん父子。
お妙さん達と遊具を片付けて居ると竹丸が神妙な顔で近づいてきました。
「兄上。明日、奇妙丸様の小姓役、うまくできるでしょうか?ここ数日、不安で」
「竹丸。そなたらはしっかり準備できておると思うぞ。松永久秀殿の訪問の際には、我らが模範を示した。その後の四日、しっかり準備も積んだ。安心せよ。それにお主は佐々家の清丸殿と後列。それほどは目立たぬ。安心して役目を務めるが良い。我らも近くで見守るし、直前まで側におる」
「しかし、なかなか、新年の儀の小姓役は、気が重いものですな」
「で、あろう。それを数年にわたり、自分は務めたのだ。もっと敬っても良いんだぞ。竹丸。それにな、自分が小姓衆をやった最初の年は、柴田の親父殿の隣に座らされていたのが、いきなり名前を呼ばれて奇妙丸様の退出のお供だぞ。あれは、本当に突然でな、参ったぞ」
「そ、それは、驚きますな」
「ま、あの時は伯父上の突然の命だからな。どうにかやり切るしかないというわけだ。そんなわけで、準備万端しているお主らは恵まれている、とおもうぞ」
「兄上のお話を聞いたら、少し安心できました。明日、頑張りまする」
「おう、広間の近く、袖の辺りにでも控えている。伯父上の小姓衆もその辺りに控えると言っていたからな」
そんな話をしたら、ホッとした様子の竹丸。
「坊丸様、竹丸様。明日のご予定の確認がお済みでしたら、お片付けをお願いしますね!お口ばかりで手が動いておりませんようですから」
あ、お妙さん、すんません。チョット、怒ってますね、その口調。あ、はい、とりあえず片付けますね。
そんな感じで、翌日、いつもの新年の儀ですよ。
去年との違いは、奇妙丸様の小姓衆とは言え、立体曼荼羅をしなくて良いことでしょうか。まぁ、近くに控えては居るんですけどね。
新年の儀がはじまり、信長伯父さんとその小姓衆、奇妙丸様と二期生達が大広間の上手袖から入場して行くのを見守りました。
上手袖には自分と山口飛騨殿が、下出袖には森虎丸君と堀久太郎殿が控えております。
いつも、奇妙丸様の斜め後ろから眺めていた新年の儀を違う視点で見るのが少し不思議な感じです。いつもなら、この時点で信長伯父さんの後ろ姿を見ているからね。直接姿を見ないで声だけ聞いてるわけですよ。
「新年にあたり、皆々の顔を見ることができ、恙無く新年を迎えられたこと、誠に目出度い」
うん、いつものごとくシンプル。これぞ、信長伯父さんスタイル。
「新年にあたり、殿のご尊顔を拝することができ、誠に嬉しく存じ上げたてつかまつりまする。家臣一同を代表し、ご挨拶させていただきまする。明けましておめでとうございまする」
重臣筆頭の森可成殿がそう言うと、一斉に明けましておめでとうございますの発声です。うん、いつものごとく。これぞ、様式美。
「昨年は義昭様を京の都までお連れした。そして、義昭様は将軍となられた。実にめでたい。義昭様は将軍就任の宴にて、儂に『父と思う』とまでおっしゃられた。これもひとえに、皆の奮戦努力のおかげである。このこと、実に大儀である」
「「「「「ははっ」」」」」
「今年は、幕府の威光を五畿内、わが領土のみならず、さらに広く知らしめねばならん。が、まずは六角の残党どもとそれにつながる北畠である。これらを征さねばならん。皆の奮戦を期待する。励めよ!」
「「「「「ははっ」」」」」
声の様子だけだと分かりづらいけど、いつものアジテーションや今年の目標的なやつが終わったご様子。
でもなぁ〜。『信長公記』の知識だと、いきなり年明けに六条の戦いがあるんだよなぁ。本国寺に三好三人衆の軍が殺到するやつ。
まぁ、現状、京都方面は史実通りっぽいから、史実通りに本国寺に詰めている幕臣の方々、織田から派遣されている方々、あとは若狭からの人達?が持ちこたえてもらって、そこに長岡の細川藤孝殿や河内の三好義継殿、和田惟政以下の摂津衆が援軍に来て、足利義昭様が助かるって流れは維持できると思うけど。
一応、本国寺の変については簡単に注意喚起はしますね。
その後は、将軍の御所造成と伊勢攻略戦だったはず。
しっかし、最近は信長伯父さんが偉くなった上に京都に行ってる時間が長いし、岐阜にいても直接お話する機会が少ないから、あんまり歴史の流れに関与できないんだよなぁ。
信長伯父さんが京都に行ってる時は、奇妙丸様が岐阜留守居役なわけで、我々小姓衆はその補佐、手足みたいなもんだからね。当然、岐阜から離れられないわけで。
まぁ、しゃあないね。
少しでも「面白い!」「続きが気になる」と思った方は、下の★でご評価いただけると、作品継続のモチベーションになります。
宜しくお願いします。




