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信孝なんかに『本能寺の変』のとばっちりで殺されていられません~信澄公転生記~   作者: 柳庵


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177/484

177話 我を殺すは、ここには居ない三男坊。

タイトルの話数が間違っているという指摘を頂きましたので、訂正しました。

合わせて後書きに小ネタを追加(10/25 13:00)

ども、坊丸です。

奇妙丸様が妹に会わせたいという希望があったので、帰蝶様の私室に来ております。


「奇妙、口上承りました。そちらにいる坊丸以下の四名が奇妙の小姓衆ですね。坊丸以外の方を紹介してくれますか?」


と、義理とはいえ嫡男の成長を感じられる様子に、少し微笑み、落ち着いた声で奇妙丸様に語り掛ける帰蝶様。うん、慈母って感じ。


「はい、母上。坊丸の隣にいるのが、森虎丸でございます。森可成殿の嫡男でございます。虎丸、母上にご挨拶を」


「お初にお目にかかります。森可成の嫡男、森虎丸にございます。奇妙丸様の小姓役を仰せつかっております。以後お見知り置きを」


如才なく、きちんと答える虎丸君。


「虎丸の隣にいるのが、佐久間理助でございます。佐久間盛次殿の嫡男でございます。ご挨拶を」


「佐久間理助でございます。宜しくお願いします」


うん、必要最低限なのね、理助らしくていいんじゃないでしょうか。


「理助の隣が、佐久間牛助でございます。佐久間信盛殿の嫡男でございます」


「佐久間牛助です。お方様にお会いでき、嬉しく存じます。年少ですが、奇妙丸様の小姓役、頑張って務める所存です。宜しくお願いいたしましゅ」


あ、牛助君、噛んだ。せっかく丁寧な挨拶なのに、最後で噛んだ。

って、ここは突っ込んじゃいけない場面か。


「坊丸以下のお三方、奇妙丸のこと宜しく頼みます」


「「「「はっ」」」」

帰蝶様の言葉に応えて、四人で平服しました。

ちょっと、虎丸君や理助が微妙な表情してますが。


「帰蝶様、恐れながら。小姓役の中では自分よりも虎丸殿、理助殿が年長ですので、自分は筆頭ではございませぬ故、お含み置きください」


一応、虎丸君や理助に気を使っておきました。

今回は、いつもの順番じゃないからね。こういう序列って大切だから、帰蝶様に一応、ご一報。


「そうなのですか、奇妙丸?」


「確かにそうですね。そういえば、父上の小姓達は、虎丸を先に呼びますね。そういうことだったのですか」


あ、奇妙丸様、そういう順番の大切さをまだおわかりになってなかったのですね。

世の中、色々とメンツやら何やらでそういう順番って大切なんですよねぇ。


帰蝶様が困ったような感じで、微妙な感じで微笑んでますよ。困りアルカイックスマイルとでもいう感じの微笑みですね。

嫡男の成長を感じたとたん、ちょっとダメな面を見せられたせいでしょうか。


「奇妙、今の話では、森殿が筆頭なのでしょうから、今後、小姓役の名を出すときは森殿を最初に挙げるようにしておきなさい。

それに、坊丸。そなたは、津田の名乗りではありますが、妾の甥。お役目や表であれば妾を帰蝶様と呼ぶが正しいですが、今は奥向きですな上に奇妙丸の私用に付き合っているのですから、ここは伯母上と呼んで構いませんよ」


そういうと、こちらに良い笑顔を向けて頂きました。なんというか、微妙に圧のある笑顔。

帰蝶様の整ったお顔でそれをやられると、帰蝶様のお話した通りにしないといけない感じを受けてしまいます。


うーん。そして、わざわざ帰蝶様が自分を伯母上と呼べと言ってきたよ。


多分これは、小姓役の他の三人に、役目や家柄とは別に自分には連枝としての特異性があることを分からせるための一芝居でしょうか。ここは乗っておくのが上策ですかね。


「はっ。伯母上が宜しければ、そう呼ばせていただきます」


「そう、それで宜しくてよ。さて、奇妙。そちらの紹介が済みましたので、皆に茶筅丸と五徳の紹介を致しましょう。茶筅丸、これへ」


伯母上の右手の方にいる二人の腰元さんのうち、伯母上に近い方の後から、三歳児くらいの男の子が顔をのぞかせました。


茶筅丸と呼ばれた男の子は、ずっと腰元さんの後に隠れてた様子。

人見知りなのかな?


まぁ、兄貴が知らない子供をぞろぞろと引き連れて突然訪問したら、警戒するのも当然ですかね。

しかし、ちょっとばかり、キョドり過ぎてほぼ挙動不審ですよ茶筅丸様。


「茶筅丸、いつまでそう、人の後ろに隠れているのです。兄上とその小姓衆ですよ。安心なさい。そして、兄上らにご挨拶を致すのです」 


ちょっと、伯母上が強めに言うと、茶筅丸様はヒッっと怖がった様な声を出して、腰元さんの後ろに隠れてしまいました。


さっきのおばさまとお呼び!発言よりも圧強め。怒ってはいないけど強く諭す感じ?

うん、そして今の発言は茶筅丸様を完全にビビらせたヤツだ。 


腰元さんの後ろから茶筅丸様がこちらと伯母上の方を、キョロキョロ見比べております。

伯母上の視線の圧力に耐えきれなくなった様で、伯母上の隣に座ってご挨拶。


「ちゃせんです。よろしく」


三歳児くらいですから、まぁ、これで良いんじゃないでしょうか。


あ、伯母上は納得いってない感じがその体からにじみ出ていますね。

伯母上は軽く溜息をついたようにも見えましたが、茶筅丸様の方に少し微笑んで、下がらせました。


挨拶という大役を終えた茶筅丸様は、さっきの腰元の後ろに素早く退避。

そこが茶筅丸様のホームポジションですか?きっとその腰元さんは茶筅丸様の乳母なのか?そういうことにしておきましょう。


「お琴、五徳を皆に披露するように。顔を見せてあげなさい」

「はい、御方様」


お、五徳姫の観覧のチャンスが巡ってきましたよ。

奇妙丸様は無造作に近づいていきますが、小姓衆はみんなでちょっと顔を見合わせる感じ。


誰から行くかみんなして迷っております。三人の視線が明らかにこっちを見ておりますが…。

自分から行けと?そういうことですか?そういうことですね。


では失礼して。奇妙丸様の少し後をあまり赤ちゃんに刺激にならないようににじり寄る感じで近づき、

お琴さんと言われた腰元の人の脇から、そっと五徳姫のお顔を拝見。


可愛いいぃぃぃぃぃ。

ちょうど一歳くらいでしょうか。今はスヤスヤとお休み中。


だいぶ顔立ちがはっきりして、織田家らしい細面に綺麗な鼻筋。寝姿なうえに幼子(おさなご)とは言えども、一目見ればわかる顔の整い具合。間違いなく美人さんになるね、これは。


寝姿だけでなく、眼を開けて笑った姿も見てみたい。

逆側から、虎丸君も五徳姫の寝顔を覗き込んでおります。

あ、そろそろ、理助に場所変わるか。理助、俺の従姉妹の五徳姫に変なちょっかい出すなよ、せっかく寝てるんだからな!


えぇっと、「信長公記」の知識だと、奇妙丸様が織田信忠になって、茶筅丸様が織田信雄になるんだよな。

織田信雄と生まれがあまり変わらないはずの織田信孝はどこにいるの?

「本能寺の変」の後、勘違いで将来の俺を殺す、あの織田信孝は?

茶筅丸こと織田信雄は永禄元年3月頃の生まれ。

織田信孝もほぼ同時期の生まれ。

五徳姫は永禄二年10月の生まれ。


本文の時期は桶狭間の戦いの後、永禄三年の年末近くです。なので、織田信雄、信孝は満2歳9ヶ月ぐらいで五徳姫は満1歳2ヶ月くらいです。


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