142話 奇妙丸様の小姓役、こいつらが同僚ですか…
ども、坊丸です。
来年の新年の儀、奇妙丸様のお披露目の第二弾があるらしいのですが、その際の小姓役をやることになりそうです。
昨年の新年の儀は、連枝衆や家老格から白い目で見られた気がしますから、正直またか…って気がします。ハァ~。
火縄銃の修練からの帰路、柴田の親父殿は機嫌が良いご様子。
「親父殿、いかが致しました?機嫌が良いようですな」
「おお、坊丸。そなたが奇妙丸様の小姓に選ばれたのが嬉しくてな。奇妙丸様を将来支える連枝の一人と信長様も本格的にお認めになられたのだろう」
「しかし、仔細は後日とのことでしたが、今日話していただいても良かったと思いますが。後日、清須城に伺うのは二度手間ではありますまいか?」
「坊丸。先程、殿は奇妙丸様の小姓衆とおっしゃられたのだぞ」
柴田の親父殿は、こちらを一瞥し、少し目を細めて諭すようにそう言いました。
「小姓衆ということは、それがし以外にも小姓が居る、ということですな。だから、後日、全員を集めて話をするから本日は仔細を話せない、ということですか」
「そういうことであろうなぁ。我が殿は、言葉が少ないことがある。
だからこそ、我ら家臣は殿の言葉の意味をよく考えて動かねばならん。
それができるものは良いが、出来ぬものに取っては難儀なお方に見える。これから、そなたも殿のお側に行くこともあろう。よく考えて動く癖をつけよ」
「はっ。親父殿の言葉、胸に刻みまする」
小姓役が自分一人ではないことは良かったけど、誰が同僚になるのかな。
それと、信長伯父さんの言葉が少ない少ないのはわざとなのかな。
命令や指示の言葉が少ないことで家臣に考えさせて、いちいちその人物の行動や能力を評価しているのかも。
ま、なにはともあれ、小姓が一人でなくて良かったよ。また悪目立ちするの嫌だったし。
そして、指定の期日。
柴田の親父殿と一緒に清須城に登城です。
小姓の岩室長門さんに先導され、いつもの大広間に到着です。
するとそこには、森可成殿とそのお子さんらしい顔つきが良く似ている男の子が居ました。さらにその横には、佐久間信盛殿と少し所在無さげな雰囲気の男の子が居ます。
たぶん、二組とも雰囲気が似ているから親子か親戚の子なんだろうな、と予想。
森可成殿、佐久間信盛殿からの目礼に答えた後、二組の隣に座ります。
自分達が最後かな、と思っていたら佐久間盛次殿と理助が登場。
理助は佐久間盛次殿の隣でちょっと落ち着かない感じ。
清須城に初めて来たのかな?
いつもの元気一杯で活発至極なガキ大将っぷりが鳴りを潜めているのが少し可笑しい感じ。
四組揃ったところで、小姓の長谷川橋介さんから信長伯父さんが来るまで暫し待つよう声がかかります。
とたんに、キョロキョロし始める、理助。
やっぱり理助は理助でした。
佐久間盛次殿が辺りを見渡し始め、立ち上がりそうになる理助の後頭部をめっちゃ良い音で張り飛ばしました。
「大人しくしておれ、理助。森殿、信盛殿のところは大人しく座っておる。もちろん、坊丸殿もだ」
「はい、父上」
そう答えながら、一瞬、こちらを恨めしそうな目で見る理助。
いやいや、これから信長伯父さんに初お目見えになるんだろうから、もう少し緊張しろよ。
相手は第六天魔王だぞ。いや、信長伯父さんもまだこの頃はそんなお茶目な名乗りはしてないはずだけど。
それを差し引いても、尾張のほとんどを手中にいれた将来の主君に会う前だぞ。普通緊張するよな?
あ、理助、そこら辺わかってますか?わかってませんか?やっぱり残念な子ですか?
そんなこんなで、待っている間も森可成殿の隣の子は、背筋を伸ばして、きちんとしている感じ。
佐久間信盛殿の隣の子は、違い棚や天袋の細工を眺めている様子。
「殿のおなぁ~り~」
小姓の加藤殿が、木村庄之助、式守伊之助の千秋楽の結びの触れ並みに声を長く伸ばしながら信長伯父さんの登場を告げます。
信長伯父さんの着座に合わせて一斉に平伏。
「一同、面を上げよ。来年の新年の儀にて、今年も奇妙丸の顔見せを行う。ついては、その際、奇妙丸の小姓衆の役を今、此処に呼び出した四名に命じることとする。ここにいる重臣衆は昨年、そこにいる坊丸が佐脇とともに小姓役をやったことを覚えておろう。あのような感じだ」
一瞬、皆の視線を浴びた気がしますが、ここは知らない体で乗り切ります。
「何故に坊丸が、と言う声があったのは知っておる。儂としては、あの信行の子が我が子の小姓を勤めるのは面白かろうと思ったのだがな。それを踏まえ、今年は、重臣衆の子らで年のころが良いもの数名で行うこととした。良いな、皆のもの」
「「「「はっ」」」」
「佐脇、今一度、此度の小姓役の子供どもを確認したい。名を呼び上げよ」
「はっ。では、今の席順にておよびいたします。森可成殿嫡男、森虎丸殿。御年8つ」
「はっ」
「続いて、佐久間信盛殿嫡男、佐久間牛助殿。御年4つ」
「はい」
「続きまして、柴田勝家殿預り、故織田信行様嫡男、津田坊丸殿。御年5つ」
「はっ」
「最後に佐久間盛次殿嫡男、佐久間理助殿。御年6つ」
「おぅ、じゃなくて、はい」
うん、さすが理助。
しかし、重臣の息子揃い踏みかよ。
佐久間盛重殿と林秀貞殿以外の重臣が揃っていますからね。
森家から一名、佐久間家から二名、柴田家と織田の連枝として自分。
信長伯父さんにしては、案外と無難なバランスを意識した人事案件ではないでしょうか。
それにしても、一時とはいえ同僚になるのが、全員重臣格の嫡男かよ…。大丈夫か?
森可成殿の虎丸殿はしっかりものっぽいけど、佐久間信盛殿のところの牛助殿は何かふわふわした感じだし、理助はどこにいっても理助だし…。
この後が少し思いやられるなぁ…。はぁ。
森可成の嫡男、森可隆の幼名は不明なので、なんとなく虎丸に。三男、四男、五男が蘭丸、坊丸、力丸だから、何とか丸だろうと言うことで、虎丸になりました。
佐久間信盛の嫡男、佐久間信栄の幼名は不明ですが、信盛自信の幼名が牛助らしいので、家系的に同じ幼名を使うパターンを採用。
佐久間盛次の嫡男、佐久間盛政の幼名は理助もしくは理介らしいのでそのまま採用。
理助は、柴田の屋敷に時々遊びに来てるから名前は既に出てきてますね。
森可隆、佐久間信栄の幼名について情報がある方居ましたたら、教えて下さい。
7/27 7:00から数時間程度、感想受付okにしておきますので、そこで教えて下さい。
幼名の報告以外の感想は、できればご遠慮願いたく存じます。一応、それ以外の感想にも目は通させていただきますが、返信等は期待しないで下さい。悪しからずご了承いただきたく。




