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信孝なんかに『本能寺の変』のとばっちりで殺されていられません~信澄公転生記~   作者: 柳庵


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137話 搾り搾るぜ、菜種。

ども、坊丸です。

ニホンミツバチの分蜂が終わったらしい石田村に訪問していた坊丸です。

養蜂関連でいろいろ作らないといけないことが判明しました。

頑張って作りたいと思います。主に加藤さんが。


そんなこんなで、石田村訪問の数日後、乾燥した菜種が柴田の屋敷に運び込まれました。


最近はほぼ毎日、柴田の屋敷に顔を出してくれる加藤さんも運び込みのときにちょうど同席。


石田村の皆さんの手で柴田の屋敷の蔵に俵に入った菜種が積まれていきます。


早速、加藤さんと以前に作った圧搾する機器を取り出します。


搾油機は、鉄砲から得られた技術を流用したもので、鉄の筒に穴をあける火道の技術と銃床を固定するネジの技術が活かされてます。

ま、自分はその技術を使えば作れるよって言っただけで、主に加藤さんの技術と工夫の賜物ですが。


搾油機の筒の中に菜種を入れて、ネジをしめ上げる様に取り付けた鉄のハンドルというか鉄の棒というかそんな感じのものをグルっと廻して圧搾開始。


力の限り回していきます。加藤さんが。


搾油機の孔に取り付けた漏斗から少しづつ液体が流れ出てきましました!


やったよ、菜種油が出てきた!


急いで、壺で出てきた油を受け止めます。黄金色の粘性の液体がボタポタとツボに落ちていきます。


って、途中で止まった。

ん、機械の故障かな?

と思って油の流出孔から目線を上げて加藤さんの方を見たら、加藤さんが肩で息をしていました。 


「坊丸様、それがし、怪我を負ってから以前に比べると力が落ちた様に存じます。鍛冶屋として鎚をふるってきましたが、このような動きは、つろうございますな」


うん、そうでした。

加藤さんは長良川の戦いで足と胸に怪我をして、武士としての立身出世を諦めて、故郷で鍛冶屋をしていたんでした。

いろいろやってもらってるから、時々怪我をしていた事を忘れてしまいます。


「加藤さん、すいません。無理をさせてしまったようで、申し訳ない。少し休んでいてください。柴田家の人達に頼んで見ます」


「申し訳ござりません。縁側で少し休ませていただきます」


加藤さんを縁側に座らせた後、柴田の屋敷で搾油を手伝ってくれそうな人を探します。


まず見つかったのは、伊介、理助達。


「伊介、理助、久六、ちょっと手伝ってほしいんだけど」


「えぇ〜!やだよ」「ヤダな」

理助と久六が即答しやがりました。


「じゃ、良いよ。3人とも自分より力持ちだと思ったから頼んだんだけど、やっぱり力仕事は大人に頼むね」


む、やはり子供に頼んだのは意味がなかったか。自分も子供だけど。


「待て、坊丸。力仕事なんだな?なら、任せろ。お前と違って、力なら負けねぇ」

理助が胸を張って答えるので、一応、搾油機このことを簡単に説明の上、置いてある場所まで連れていきました。


「ふう〜ん、これか。これを廻すんだな。で、するとこの下から油が出来ると。まずは俺からだ」


理助がそう言うと、搾油機のハンドルを廻します。

数回転したところで、ギブアップ。


「なんだコレ。すぐに回らなくなったぞ」


うん、でも、少し油が流れ出てきたから、まぁ、良しかな。


「次は俺が」

理助の弟の久六が次に挑戦する様子。

ま、力は理助より弱いに決まってるから、無理でしょう。


「ふん〜ぬ、兄上、半回転しかできません」


うん、数滴。


「ならば、俺が」

吉田次兵衛さんのところの伊介も挑戦。

はい、一回転。

理助の数回転って実はスゴいんだな。


「どうだ、廻してやったぞ。でもな、疲れるだけで、面白くもない。これで手伝いはおしまいだ」


そう言う、理助は肩をいからせて離れていってしまいました。久六も兄の後について行ってしまいます。


「理助がああ言うからね、これで。ちなみに坊丸は何回廻せた?」

と伊介がこちらに向かって言うと立ち上がりました。


「一回転だね」


「ちぇ、俺と同じか。てっきり勝ったと思ったんだけどね」


ごめん、伊介。

本当は廻してない。だから、何回廻せるか、わかんない。


その後、若党、中間、馬丁の人とかに少しつづ手伝ってもらいましたが、後半になると力持ちの若党の人でも4〜5回転がやっと。


そんな感じでワイワイやっていると、柴田の親父殿がご帰宅。


「これ、皆で何をやっておる」


「「殿、お帰りなさいませ」」

「親父殿、お帰りなさいませ」


若党の人達と一緒に頭を下げて、こちらに近づいてくる柴田の親父殿をお出迎えです。

縁側に腰掛けていた加藤さんも、片膝ついて出迎えてました。


「坊丸、また、何やら怪しげなものを」


「親父殿、怪しげなものではありませぬ。この機械は、菜種から油を搾るもの。当屋敷の力自慢達に協力いただき、初めて菜種から油を搾り取ってみました。これ、このように」


と、壺に貯まった油を見せました。


「ふむ、油とな」


壺に小指を突っ込み、それを一舐めする親父殿。


「む、油であるな。油は、大山崎出入りの商人から買うものとは風味がかなり違うがな。こちらの方があっさりした香りと風味よな」


「大山崎の油座から購入するものは、胡麻油でございますから、胡麻の風味が強うございます。食べ物に使う時はこちらの方が、他の食べ物の風味を邪魔しないかと」


「まぁ、油が手に入るなら、食べ物に使うよりは燈明として使う方が多いとは思うが。そうか、食べ物にも使うか」


「はっ。それも可能、ということにございます。まぁ、当面は燈明や鉄砲の手入れに使う方が多いとは思いますが」


「あいわかった。で、これ回せば、油が搾り出るのか?」


「左様でございます」


「では、儂も回してみるか」

そう言うと、親父殿は半肩を出し頬を叩いて気合を入れると、搾油機のハンドルを回し始めます。

一気に数回転。その後、息を整えながら更に数回転。

油がボタボタと流れ出ます。

凄い、凄いよ、親父殿。


「ハッハッハ、これで良いか、坊丸」


「流石は親父殿の剛力。御見逸れいたしました」


親父殿は笑いながら母屋に帰っていきました。

若党、中間が柴田の親父殿を憧れの目で見送るのが、微笑ましい感じです。

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