54 立ち向かった俺、黒幕の最後。
「きゃああああ! イナバちゃん!!」
『イナバ!』
シャァアアアアア!!!
青いイナズマが俺に落ちる。
──あ、これ死んだかも。
でも妹のようにかわいがっているステラちゃんを守れたなら本も………。
って、あっれれ? おかしいな。いつまでたっても痛みがこねーぞ。
俺は雷の直撃を受けたはずなのに、無傷でじゅうたんの上に着地した。俺以上に、ジャンが口をあんぐりあけて硬直している。
「はああああぁ!!? 俺の最大の魔法が無効化された!? なんで庶民がそんな希少なマジックアイテム持ってんだ!! 材料だってボス級のモンスターからしかドロップしないレアものなんだぞ!?」
『にゃ、よくわからんがこのチョーカーは魔法を無効化してくれんのか〜。ラッキー! ジャン覚悟!』
魔法が俺に効かないならこっちのもんだ! 思い切りジャンのスネに噛み付く。
「ぎゃ!! なにしやがる、この!」
ジャンが俺に気を取られている隙に、ステラちゃんが杖を振り上げた。
「イナバちゃん、キシリアさま! 目を閉じて! 我願うは護りの光、闇に蠢くモノを留め給え、背くものに神罰を与えん!!」
ステラちゃんの杖から放たれる閃光が、部屋を白く染め上げる。
「ああああぁあああああぁぁ! 目、目があああああ!!!!」
ステラちゃんの魔法は、ダメージを与えることはできないが激しい光を放つ。眩しさに目をやられ、ジャンが両手で目を覆い叫ぶ。
ジャンがキシリアから手を離した。キシリアは泣きながらステラちゃんの腕に飛び込む。
『イナバ、ステラ!! ありがとう、本当に、ありがとう』
「キシリアさま。ご無事でよかった……。さぁ、早くここから離れましょう」
キシリアを抱き上げたステラちゃんに向け、雷が走った。片腕で目を庇いながら、ジャンが雷を乱発する。
「よくも、よくも、よくも、俺の計画を邪魔したな!! 小娘風情が!」
しばらくの間は魔法の効果で視界を奪われる。見えていないから、ジャンの雷はあさっての方向にばかり飛ぶ。壁に、床に、置物に。雷の当たった箇所が焼け焦げる。
そして五発目がカーテンに当たり、発火した。
「ステラ、そのネコをつれて早く退避しろ! 火はアルベルトたちが消し止める」
「は、はい!! イナバちゃんも、行こう!」
『にゃ!』
駆け込んできたヴォルフラムの指揮で、アルベルトや他の水魔法士たちが水の魔法を放つ。
「団長……いや、ジャン。大人しく投降していただきたい。仲間だった者に手荒な真似をしたくはない」
「くそぉ、くそおおおおおお!!!!」
団長になるほどの実力者とはいえ、たった一人で、魔法士団十数人を相手に敵うはずもない。
事件の黒幕、ジャン・ブリッツはこうしてお縄となった。
ネコのキシリアはようやく家族の元に帰れることになった。
キシリア嬢が禁術にかけられていたことも、魔法士団長になったヴォルフラムを交えて話し合わないといけないわけで。
ステラちゃんと俺も、白猫が本物のキシリアだという証人として立ち会うことになった。
鬼島inお嬢様(体はキシリア嬢だから動物の声がわかる)とキシリアinネコ(精神は本物)カオスとしか言いようのない展開である。





