44 黒幕からステラちゃんを守るために
キシリア嬢に魔法をかけた犯人に繋がっているかもしれない男が死んだ。俺にも衝撃がでかい。
ありえないだろ、そんなの。だってあいつが捕まって数日だぞ? 聴き取りもこれから本格的にはじまるはずなのに。
まるで……。
『ステラちゃん。辛いと思うけど、カイトに聞いてみて。あの男は、黒幕に口封じされたんじゃないかにゃ。普通は獄中に入れるのに持ち物を全部回収するし、唯一の情報源を自害なんてさせないにゃ』
ショックで震えているステラちゃんにお願いするのは気が引けるけど、きっと黒幕を放置するのはステラちゃんにもこの世界にも良くないことだ。
ステラちゃんは深呼吸して、カイトに聞く。
「カ、カイトさん。イナバちゃんが、“黒幕に口封じされたんじゃないか”って」
「ああ。普通じゃ考えられないよね。この国の法律上、投獄される際、危険物はすべて没収される。マクベに毒を売った先を話されたら困る誰かが無理やり飲ませたと考えるのが正しい」
ひと呼吸置いて、カイトは続ける。
「極秘に調査すると口止めされていたから、俺たち新聞社は、まだマクベが投獄されたことを記事にしていない。つまり、投獄されていると知っているのは、あいつを捕らえるのに関わった人間と、魔法士団、騎士団しかいない」
考えたくもない状況だった。
城で国を守る仕事をしている誰かが、マクベを毒殺した。
カイトは、恐ろしい事実に怯えるステラちゃんの両肩に手を乗せる。
「落ち着いて聞いてくれ、ステラ。魔法の勉強で城に行っているんだろ。黒幕が捕まるまでは、近づいちゃだめだ。キシリアがああなっている以上、聖女としてまともに聖獣探しをできるのはステラしかいない」
「で、でも、私は魔法のこと何も知らないから、きちんと学ぶように陛下から……」
「ならその教師に、家まで教えに来てもらえばいい。今のエスペランサ城は危険だ」
もう一度念を押されて、ステラちゃんはつばを飲み、うなずいた。
それから会話も特になく、カイトはステラちゃんを家まで送り届けた。
ルークとシルヴァにも城で起こったことを伝える。魔法の勉強については、シルヴァが陛下やアルベルトに方針を相談すると言ってすぐ城に向かった。
俺は、鬼シリアの様子を確認しに行くことにした。
鬼島のことは今でも大嫌いだけど、あの体はキシリア嬢なんだ。万一のことがあったら、キシリア嬢がもとに戻れなくなってしまう。
日が傾いてきた街を、小さな猫の俺が横切る。
走りながらも考える。
真由子がプレイしていたこの乙女ゲームに、こんな身の毛もよだつようなストーリー展開なんてあっただろうか。
俺が横で見ていた限りでは、女の子が好きそうなあたたかくて優しい、恋愛ゲームだった。
それともここはあのゲームに似て非なる、平行世界なのだろうか。
とにかく、ステラちゃんの身の安全を確保するためにも、俺は俺にできることをしないといけない。





