34 クラウド・アルベルト・シルヴァVS毒の売人!
「アタシを本気で怒らせたわね、畜生が!」
『ぎにゃーーーー!』
オカマが顔にはりつく俺を掴む。毛をむしるなコノヤロ!
『負けないにゃ! 噛んでやる! 引っ掻いてやる!
ステラちゃんのところには行かせにゃい!』
「おいネコ! そいつをそのまま押さえ込んどけ!」
『おうにゃ!』
クラウドが魔法の暴風を呼ぶ。
シルヴァが風に乗って地を蹴り、オカマの腹に剣の柄を叩き込んだ。
膝をついてしまったオカマの口から、悪態がもれる。シルヴァの足首を掴み、クロスボウの引き金に指をかける。
「ゲホ、く、くそ、家畜に等しい、卑しい獣人のくせに、人間様に楯突くんじゃな……」
「卑しいのはお前だ」
アルベルトがオカマの背後にまわり、分厚い魔法書を振り下ろす。
頭を殴打され、ついにオカマは意識を手放した。
鈍器として使いすぎて、若干本が歪んでいるように見えるが気のせいだろうか。アルベルトは本をベルトに巻いて振り返る。
「殿下、シルヴァ。怪我は」
「ない。というかお前、本は読むためのものじゃないのか」
クラウド、冷静なツッコミ。
本で敵をタコ殴りする魔法士を前に、口元が引きつっている。そうだよにゃ。本は読むためのものだよ。本来は。
「ボクも大丈夫。ソラ、この人どうする。埋めとく?」
シルヴァが真顔で怖いことをいう。アルベルトは男の落としたクロスボウを取り上げて、シルヴァに指示する。
「埋めるな。とりあえず後ろ手に縛って、連れて行こう。ガルガの毒を流通させていたなら、カイトを襲った連中と繋がっている可能性が高い。尋問する必要がありそうだ」
「うんわかった。じゃ、縛っとくね。ついでに猿ぐつわかませとこっか」
表面上笑っているけど、家畜だの卑しいだの言われたの根に持っているんだろう。オカマの手首を、紫になるくらいぎっちぎっちに締め上げている。
ついでにオカマのローブの裾を剣で裂いて、作った布切れで口元を縛る。
「二人とも、急ぐぞ。薬を手にしたらすぐに帰還しないと。毒に侵されたやつがいつまで持ちこたえられるかわからない」
「「承知しました」」
アルベルトとシルヴァが声を揃えて敬礼する。
シルヴァがオカマを担ぎ上げ、アルベルトがクロスボウの矢をオカマの頭にあてがったまま歩く。
途中、オカマが目を覚ました。自分の置かれた状況に気づいてもがく。
「むー! むぐううう! ぐぐ!」
「動くな。抵抗したら頭を撃ち抜くぞ。逃げるなら足を折る。国に帰ったら情報を洗いざらい吐いてもらうからな」
「むぐ……」
アルベルトが顔色一つ変えず、オカマの額に矢を押し付ける。
いくら裏の仕事をしていても、やっぱ死にたくないだろう。オカマはアルベルトを睨み返したが、抵抗をやめた。
脅しがよくきいたおかげで、滞りなくエルフの里に帰り着く。
先に着いていたステラちゃんとリリーナが出迎えてくれて、あとは薬の完成を待つばかりとなった。





