25 結成、解毒薬をもらい隊!
「あわわわわわっ、お、王子さまだったんですか!? その節は大変お世話になりました!!」
「……お前、なんでここに!?」
ステラちゃんてば意外な形で再会したから、びっくりして何度もまばたきしている。クラウドは陛下だけでなくステラちゃんがいるのを見て、トーンの低い声で陛下にくってかかった。
「いきなりひきずって来られたと思ったら、いったい何なんです母上! まさか今すぐここで見合いをしろとでも?」
クラウドはすごく不機嫌だ。腕組みして鼻を鳴らし、いらだちを隠そうとしていない。
「あらあら。ジャンってば何も説明していないの?」
「いえね、詳しく知らないおれから又聞きするより、ここで直接聞いたほうが早いと思いまして」
「それもそうね。クラウド、ちょっとお座りなさいな」
頬に手を当てて、困った風を装う陛下。肩をすくめてしれっと言うジャン。
クラウドのみけんに縦ジワがふえた。
陛下が咳払いして、町で毒薬が使われたこと、森に行って薬をもわらなければならないことを話して聞かせた。
「……なるほど。それでぼくとこの娘に、聖心の森まで行ってこいと。それも今すぐに」
「ええ。今、すぐに」
ニッコリ微笑み合う母子。傍から見ていると美女と美少年の麗しき光景だが、二人とも目が笑っていない。内心火花バチバチ。
もしかして殴り合いか魔法合戦にでもなるのかという空気を終わらせたのは、シルヴァだった。
「失礼します。ソラ……じゃなかった。アルベルトさまを連れてまいりました」
「事情はシルヴァから聞きました。わたしが適任とのこと。勅命、謹んでお受けいたします」
ひざまずく二人に、陛下が頷く。
「魔物が出たら実戦になる。ステラ、これを。初心者向けの杖だ。わたしが見習いの頃使っていたものだ。お前にやろう」
アルベルトはステラちゃんの身長よりもいくぶん長い杖をステラちゃんに手渡す。細長い金属製で、金色。杖の上には翼を模した飾りがついている。
「ありがとうございます」
「魔力切れを起こしたらこれで殴ればいい。金属製だから、物理でもそれなりにダメージを与えられる」
「ふふっ。わかりました」
有事の際は殴れ。魔法士なのに脳筋だなおい。ステラちゃんもクスクスと笑う。
アルベルトは懐から、鎖がついた透明な宝石を取り出した。石は先が尖ったひし形をしている。
「本当ならもう少し魔法の基礎知識をつけてからやりたかったが、これを持ってくれ。魔力の属性を検知する道具だ」
「はい」
ステラちゃんの手のひらに乗ると、透明だった石はキラキラ光り、虹色がかった白に変化した。
「ほう。治癒魔法の素質があるか。それと光魔法。光魔法に攻撃系の魔法はないが、仲間をサポートするのに長けている。それに、同時にいくつもの属性を持てる者はとても貴重だ」
「そう、なんですか?」
まだ勉強をはじめたばかりなので、ステラちゃんはいまいちピンとこないみたいだ。
「ああ。私の場合水、ヴォルフラム参謀は炎、ジャン団長は雷。殿下なら風。ほとんどの人間は一人一属性しか持たない。ステラのがんばり次第では、魔法士団長の座も夢ではない」
「アハハ。冗談きついぜアルベルト。そうかんたんに越されたら、おれの立つ瀬がないぜ」
ジャンが腹を抱えて笑いだす。見たところ三十そこそこだから、十五歳の女の子に座を奪われたらほんと立つ瀬ないよな。
ここに来る途中五十過ぎの騎士や魔法士も見かけたから、この世界は年功序列ではなく実力主義の社会なのだ。
ヴォルフラムの方は冷静そのもの。茶化すでも反論するでもなく、表情をほとんど変えない。
「初心者のお前を前線に立たせるような真似はしないから、安心していろ。前には私と殿下とシルヴァがいる」
「殿下とステラさんをお守りできるよう、ボクもお手伝いさせていただきます。頑張りましょうね!」
「ありがとう、アルベルトさま、シルヴァくん。うん、がんばろう」
自分以外の三人が森に行くつもりで手を取り合う。
この状況で自分は行かないなんて言えるはずもなく、クラウドはとうとう折れた。
「わかりました。エルフの森へ、行ってまいります」





