56:山頂へ。
そっぽを向いたレオン様の横でポークジンジャーをしっかりと食べ、腹拵え完了です。
片付けに向かおうとすると、皆がクスクスと笑います。
なんだろうと思いつつ辺りを見回し、レオン様をチラリと見ると、サッと視線を逸らして、またもやそっぽ向き。
「ええっと?」
「っ、気にするな…………その、美味かった」
「はい!」
またクスクスと聞こえましたが、レオン様が腰に差した剣に手をかけた瞬間、シーンと静まりました。そして一斉にそそくさと何かしら準備をしている風の動きをしだしました。
良くわかりませんが、レオン様のお耳が赤いので、何やら恥ずかしかったのでしょう。
休憩が終了し、さぁ出発だ!とレオン様が号令をかけた瞬間でした。
空気を切り裂くような咆哮と、身体にビリビリとくる殺気のような圧力。背筋がぞわりとするとともに、腕に鳥肌が立ったのがわかりました。
支援部隊の面々が「ひっ!」や「ぎゃっ!」といった悲鳴に近い声を上げ、ワーワーと話し出しました。
「っ、ふぅ。静かに!」
「「…………」」
支援部隊がシュンとしつつも、口を噤みしっかりとこちらに視線を向けてくれました。
「戦闘部隊の方々を見なさい!」
彼らはただ一点を見つめていました。
――――山頂。
「まだ向こう側だな。地面の揺れ方から、地には落としているようだ。急ぐぞ!」
「「はっ!」」
ここからは、赤龍がどう動くかわからないため、支援部隊は少し距離を置きながら移動することになりました。
先程までの行軍スピードとは全く違います。先程までは、ある程度私たちに合わせてもらっていたのだと痛感しました。
「っ……ふぅ。早いですね」
体力は、男性にも引けを取らないと思っていました。特に山での行動は。ですが、彼らはこの道で生きてきた戦士たち。遅れないよう必死についていくことしかできません。
それは私はもちろんのこと、見習い騎士たちも。徐々に距離が離れているように感じます。
同行してくれている隊長いわく、充分についてこれている、とのことでした。予想外だったとも言われましたが、わたし的には、まだまだだと思いました。
この戦い以降も、支援部隊は続けたいですが、今は眼の前のお肉に集中です。
山頂はもうすぐ。
肉はすぐそこに。





