51:チャンス到来。
見習い騎士たちに弓や短剣の使い方を指導したりと、わりと忙しい日々を過ごしていたある日。
演習場にカーンカンカンと金属を力強く叩いているような音が鳴り響きました。
「警鐘ですね」
警鐘信号というものがあるそうで、鳴らし方の組み合わせによって意味がわかるのだとか。
私はもちろんのこと、見習い騎士たちもまだ簡単なものしか覚えられておらず、急いで『警鐘信号帳』というポケットに入れている小さな冊子――と言っても数ページしかないもの――を慌てて取り出しました。
「え? 危険、大型魔獣、飛来?」
「……何が飛来しているんですかね?」
「わからないわ……指示があるまで待ちましょう」
私のサポートに付いてくれていた隊長さんが、見習い騎士の一人を騎士団本部に走らせていました。
彼が戻るまでに訓練道具などを片付けて、何があっても直ぐに動けるよう装備品のチェックをするように見習い騎士たちに伝えました。
「「はっ! 承知しました!」」
全員がハキッとした返事とともに行動を開始しました。
統率が取れている部隊は、見習いでもこのようにしっかりと動くのだなと、感心するばかりです。
ある程度、後方支援の準備が整ったところで、確認に走らせていた見習い騎士とレオン様が戻って来られました。
「お前たち、警鐘は聞いたな?」
「「はいっ!」」
「大型の飛行型魔獣は……赤竜だ」
レオン様がそう言った瞬間、ザワリとした動揺の声が上がりました。ですが、直ぐに静まって全員がレオン様をジッと見つめて指示を待っています。
「隣国――ラングス帝国軍が討伐しそこね、こちらに向かっていると早馬で連絡が来た。ラングス軍が追走・追撃をしているが、国境である山頂を超える可能性が大きく、共闘したいとの提案があり、受けることにした」
「「っ! 隊長!」」
見習い騎士たちが一斉に私の方を向きました。
形式的に付けられた『隊長』という役職名を呼んでくれるのは嬉しいのですが、なぜに今なのでしょうか? と思っていましたら、一人の子がオレンジ色の瞳をキラキラとさせながら言った言葉でハッとなりました。
「隊長! ドラゴン肉! 来ましたよ!」
「っ!」
辺りを見回すと、全員がとびきりの笑顔です。
見習い騎士たちは、お肉大好きメイツ。
もともとの素質なのか、私の指導のせいなのか…………全員が、ドラゴン肉を待ち望んでいました。
「後方支援がメインです!」
「「はいっ!」」
「ですが、楽しみがあるからこそ、希望があるからこそ、頑張れます」
「「はいっ!」」
「希望はしっかりと抱いて、気を引き締めて、取り組みましょう」
「「はいっっっ!」」
皆のハキハキとした返事と、キリリとした表情にうんうんと頷いていると、レオン様とサポートの隊長さんが苦笑いをしていました。
「お肉大好きメイツ……ありえないほどに増えているな…………」
「ハハ…………ハハハハッ」
騎士たちは命をかけた真剣な戦いになります。
それに対して、私たちの目的は『ドラゴン肉』。あまりにもすぎてちょっと申し訳ない気分です。





