30:レオンは訝しんだ。
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明日が休みだったこともあり、夫婦でイチャイチャしていた。
風呂上がりだったはずのクラウディアから、カラアゲの匂いがしたのは置いておくことにした。
酒のツマミとしてカラアゲを置いた者は、探し出して説教すると心に決めながら。
「クラウディア? 眠いなら寝なさい」
「んっ…………まだ……こうしていたいだけです」
胸にすり寄ってくる新妻、プライスレス! なんという可愛らしさなんだ!
もしやこれは、もう一回戦に突入可能なのでは!?
じわりじわりと持ち込んでみよう。
「明日は休みだ。私ももう少しこうしていたい。たまには一緒に昼くらいまで寝るのもいいな?」
「そうですね、少し肌寒くなってきましたし――――」
そこでクラウディアが急に言葉を切り、考え込んだ。
キュッと引き締まった尻たぶを撫でていたら、手の甲を抓まれてしまった。
「明日の夜はポトフにしましょう」
「…………う、うん。温まるだろうな?」
ソソソッと手を滑らせ太股を撫でようとしていたら、またもや手の甲を抓まれてしまった。しかも、さっきより強めに。
「レオン様!」
「っ、はい……」
「聞いてますの!? ピロートークを蔑ろにする男性は嫌われるそうですよ!」
「…………………………うん。まぁ、そうだろうが…………明日の飯の話を、ピロートークとしてカウントしていたのか?」
「へ?」
クラウディアが本気でポカンとしていた。
口を半分開いて見上げて来る顔は、いつもの艶やかな美しさとは違い、少し幼さの残る顔。
妙な支配欲が生まれてしまいそうになる。
髪をかき上げるように頭を撫で、額にキスを落とす。
クラウディアが猫のように目を瞑り、少し顎を上げた。まるで唇に欲しかったような仕草は、酷く扇情的だった。
問題なのは、本人は全くそのつもりがないということ。
「はぁ…………」
「レオン様?」
「ん……どうにも、君との間にある溝が埋められない気がする」
「え?」
ともに狩りに出掛けると、とてつもなく安心して動けることが分かった。長年の相棒とも言えそうなほどに、無駄な会話なく行動できる。
だか、夫婦としてこういった時間になると、途端に俺からの想いのほうが大きくなり…………押し付けそうになってしまう。
ふと考え込んで、『ああ、そうか』と気付く。
俺は、クラウディアに伝えていない気がする。
「クラウディア――――」





