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『俺』とゴブ『リン』~俺のスキルは逆テイム?二人三脚、人助け冒険譚~   作者: 新谷望
3章 バークマン領の騒乱編

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17話 双子山炎上




 双子山から2キロ程離れた竜神川に掛かる橋のたもとに、ベルド率いる反乱軍の別動隊100人が陣を構えていた。


 ベルド達はもともと近くの山中に伏兵として伏せていたが、バーグマン兵が騎士団との戦端がひらかれると活動を開始。バーグマン軍の退路を断つ為、武装した領民達と共に橋に障害物を置き、逃げてくる兵を捕らえる任務を負っていた。


 その彼等からも双子山の異変がはっきりと見えた。


「なんだ……?いきなり双子山の辺りが暗くなりやがったぞ」


「おい、オヤジ!あれを見ろ!黒い……炎だ!双子山が凄い勢いで燃えている!!」


 カンナが指差す先、双子山のふもとに激しく燃える炎が見えた。


「黒い炎だと……?ありゃあ、ただの火事じゃねぇぞ。魔法の炎だが、そんじょそこらの魔法じゃねぇ。大賢者が使うような大魔法だ」


「大魔法?……ならハロルド様が?」


「馬鹿野郎!あそこはな、ハロルドにとって特別な場所なんだ!火なんてかけるわけがねぇ!きっとロビィルの野郎が何かやったんだ!」


「どうする?私達も双子山へ向かうか?」


「……いや、だめだ。あっちはミナト達に何とかしてもらうしかねぇ」


「いいのか、オヤジ?」


「俺達には俺達の任務がある。ここの指揮を放り出すわけにはいかないだろう!」


「……分かった」


『くそっ、もし、俺一人だったらすぐにでも駆けつけてやるってのに!……だが、アイツ等ならきっと何とかできるはずだ!頼むぞハロルド、ミナト!』


 心のなかで歯噛みしつつ、双子山を眺めることしか出来ないベルドだった。 




  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 

 もちろん当事者である双子山の者達も、すぐに異変に気付いた。


「なんだ?急に暗く……」


 突然、周囲が暗くなった。騎士団やバーグマン兵も事態が飲み込めず、辺りを見回している。


「ん?下の方で何かが……光った……?」


 不意に山の麓が光ったように見えた。


「ミナト、あれ何!?山の下の方!」


「はっ!?何だ!?……あれは黒龍……?いや、黒い炎!?」


 双子山の麓から見えた黒い炎は、凄まじい速度で双子山の麓に沿って這っていく。その姿は意思を持った生き物のようだった。瞬く間に双子山は、周囲を炎の壁に囲まれてしまった。


「う、嘘だろ……。どうなってるんだ……!?」


「……大魔法」


「え?」


 呆然と炎を見つめるエリスが、呟くように言った。


「魔法の中で最上位クラスの魔法よ……。こんな大きな魔法をここで……!?」


 最上位クラスの魔法!?えっ……?一体誰が……!?


『……ミナト!聞こえるか!?』


 ヌシ様の念話が入る


『あれはな、炎獄之舞踏場インフェルノフィールドという火魔法じゃ。周囲を脱出不可能な魔力の炎で囲い、その中の物を残らず焼き尽くす。更にその炎から、火炎兵士ファイアソルジャーという魔物を産み出す大魔法なのじゃ』


「何ですって!?脱出不可能な魔法!?」


 それじゃここにいる全員焼け死んじゃうって事!?しかも、火の魔物まで来るって!?


『落ち着つくんじゃ、ミナト。炎獄之舞踏場インフェルノフィールドは周囲からじわりじわりと燃焼していく魔法。全ての範囲を焼き尽くすには時が掛かる。まだ時間はある。すでに幻術は解除した。まずは全員を北山の山頂に避難させるんじゃ。おぬしらの居る南山から尾根づたいに北山を目指せ。火の魔物にも気をつけるようにな』


 げえっ、このじわじわ攻めてくる炎といい、火の兵士といい、人間の恐怖心と絶望を煽る為にあるような魔法じゃんか。魔法の作り主は絶対、嗜虐的思考者だ。もしくはとんでもないヘンタイだな!やだやだ。


 そこへロビィルを捜索に出ていたグラントが、血相を変えて駆け戻ってきた。


「ミナト!ヤバイぞ!ロビィルのヤツ、魔法を使いやがった!ヤツが妙な巻物を取り出したと思ったら、そこから炎が吹き出したんだ!」


「ロビィル!?あいつが!?」


「ああ、このままじゃ全員焼け死んじまうぞ!」


 巻物ということは即席魔法か、あいつそんなヤバい物、持ってたのかよ!いや、今はそんな事よりみんなを避難させないと!


「今、ヌシ様から連絡がありました!全員、北山の山頂に避難しろと。あそこにはヌシ様の住まいがあります。きっと避難できる場所があるんです」


「なるほど、そこへ行けばいいんだな?分かった」


「ええ。でもその前に……捕虜にした兵士の拘束を解きましょう!」


「何?せっかく捕虜にした兵士の拘束を解くのか?」


「だって、このままじゃ、折角せっかく殺さずに捕えた兵士たちが、炎に巻かれて焼け死んでしまいますから!」


「しかし、人数で言えばこいつらの方が多い。危険だぞ!」


 グラントが異議を唱える。


「確かにバーグマン軍とは今、戦ったばかりです。しかし、いくら敵だとは言っても、むざむざ死ぬのが分かっていて、兵士を置いていく訳にはいかないでしょう!」


 呉越同舟って言葉もあるくらいだ。ここに至ればもう、敵だ味方だなんて言っている場合じゃない!


 その時だった。


『みんな、聞こえているだろうか?俺……いや、私はバーグマン家当主のルカだ』


「なっ、何だ?突然どこからか声が……!?」


 ルカの声の念話が届く。突然聞こえた声に困惑するグラント。兵達にも届いているのか、周囲を見回している。


『今、双子山のヌシ様の念話スキルを通じて双子山に居る者、全員に話しかけている。どうか私の話を聞いて欲しい』


 一呼吸入れた後、ルカは話し始めた。


『此度の件、全ては私の領主としての力不足から起きたもの。ダニエルの言葉のみを信じ、領内で何が起きているか自らの目で確かめることをせず、全てを任せてしまっていた。先日、軍団長ヒューゴから真実を聞かされ、領民が如何いかに苦しんでるかを思い知らされた』


 ゆっくりと噛み締めるように、ルカが語りかける。


『そして今回の戦いだ。私はこれまで領内の事を知っているつもりだった。しかしそのじつ、何も知らなかった。今回の出来事でそれを思い知らされた。全ては領主である私の責任である。これまで領民に悪政を敷き、苦しめてしまった……』


 一端、話が途切れた。グラント達も兵士達も静かに聞き入っている。


『しかし、これからは違う!私は必ずや良き領主になる事を誓う!父アーロが目指した理想を引き継ぎ、必ずやバーグマン領を豊かで、住み良い領地に変えてみせると誓う!バーグマン領の民よ!今一度、私を信じ、付いて来てくれるか!?』


 力のこもったルカの声、手足を拘束された兵士からは歓声が、グラント達からは拍手が起こり、双子山に響き渡る。歓声が山頂まで届いたのか、それが収まるのを待ちルカが続ける。


『……念話を聞く全ての者に頼みがある。反乱軍もバーグマン兵も私にとっては同じ大切な領民だ。このような事で諍いを起こして遺恨を残して欲しくはない。反乱軍のミナト達も思うところはあるだろう。しかし、今は全てを水に流し、兵士達の拘束を解き、そして山に居る者全員、北山の山頂に避難してくれ。このような事で誰も命を落として欲しくはない。それが私の願いだ。火災と共に火の魔物も多数出現していると聞く。それらに注意を払い、一刻も早く、私のもとに馳せ参じて欲しい。以上だ』


 そして念話が途切れた。グラントを見る。彼はため息をひとつついた後、頷いた。


「ああ、そうだな。領主様の頼みじゃ断れんな。みんな!兵士の拘束を解いてやれ!」


 そう叫ぶと防衛隊を指揮し、兵士の拘束を解きに行った。


「ウィル。君たちもグラントさんと一緒に兵士を解放して欲しい」


「御意!早速、取りかかります!」


「頼む。それともうひとつ。もしその中に負傷者がいたらコン……」


「私の出番ですね!」


「わっ!?コンラッドさん、いつのまに……!?」


 いつの間にか隣にコンラッドが立っていた。


「ふふふ。商人は神出鬼没なのですよ。それより負傷者の手当ては我々にお任せ下さい!」


「助かります。ところで俺はこれから、ロビィルを見かけたという場所に行ってみようと思います」


「ロビィルの?しかし、危険では?」


「奴が魔法を発動させたなら止める事も出来るかもしれない。俺は水魔法が使えますから、火には対処できますし。コンラッドさん、あとの事はお願いできますか。ラナもまだ見回りから戻っていない。彼女の事もお願いします!」


「分かりました。避難誘導もお任せ下さい!しかし、ミナトさん、いいですか?決して無理は禁物ですよ?」


「分かっています。それじゃリン、行こうか!」


「うん!」


 この場をコンラッドに任せ、俺達はロビィルを探しに山を駆けおりた。




  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 

 

 場面は変わってここは北山の中腹。


「本当に俺達は避難していいのか?」


 そう聞く兵士にゲッコウが頷く。彼とガウドにより拘束から解放された兵士達はゲッコウの言葉を聞き困惑しているようだった。


「ああ。領主様の念話を聞いただろう?間もなくここにも火と魔物が来る。お前達は早く山頂に避難するんだ。魔物は我々が食い止める」


「しかし……」


「あんたらの武器は取り上げてしまったからな。まぁ、身軽な方がいいだろうさ。なあに、避難できる時間くらいは、俺達で稼いでやるよ」


 ゲッコウの隣でガウドも答えた。


 双子山の異変にはゲッコウ達もすぐに気付いた。山の麓が炎に包まれた直後、ただ事ではないと直感したゲッコウは、ルカの念話が届く前からすぐに動けるよう、拘束した兵士達を解放していた。


「ゲッコウ様。兵士達の治療、完了しましたよ」


 ゲッコウに一人の老女が声をかけてきた。


「ああ、ありがとう、御婦人レディ


「あらあら、この歳で御婦人レディだなんて、照れるわぁ」


 そういって老女が穏やかに笑う。彼女はコンラッドが所属するフリール商会の家人の一人だ。見た目は腰が曲がった老人のように見えるが、全くそれを感じさせず、いかにも重量がありそうな背負子しょいこを軽々と担ぎ、負傷した兵士に持っていたポーションを渡していた。


「師匠!」「父さん!」


 そこに、周囲を偵察に出ていたフィンとガウラが戻ってきた。


「やっぱり麓の方から炎が登ってきてる。脱出出来そうな道は、見つからなかったぜ!」


「うん、それと火に包まれた兵士みたいなのがいた!苦しんでるようには見えなかったし、あれが火の魔物だったのかな?」


「分かった。ありがとう二人共、では、解放された兵士達を双子山の山頂まで避難させてくれ」


「えーっ!?俺も師匠と一緒に戦いますよ!」


「そうだよ!僕だって戦えるよ!」


 二人はそう主張するとゲッコウは首を振った。


「いや、まだ早い。敵は未知の魔物だ。いざという時、お前達を守ることができるか分からないからな」


「俺達だってもう自分の身ぐらい自分で守れますよ!」


「僕だって、父さんと一生懸命修業したんだ。役に立ちたいよ!」


「それなら兵士達を山頂まできちんと送ってやれ。お前達が居ないと、道に迷うかもしれないだろう?護送も立派な任務だ。分かるな?フィン、ガウラ」


「……ちぇ、分かりましたよ」


「う~、父さんと一緒に戦いたかったのにぃ」


「お前達はまだ若い。冒険者になるのならば、これからいくらでも機会はあるはずだ」


「あ~あ、俺はまだまだ師匠の相棒にはなれてないなぁ」


「何だ。いきなりどうした?フィン」


「俺、目標があるんです。師匠の相棒になれるくらい強くなりたい。今はまだ足手まといだけどいつかは追いつきますから!それで「お前が相棒で良かった」って言ってもらうんです!それに師匠は口下手だから俺がついてないと、街で苦労するし!」


「……余計なお世話だ。ほら、早く行け。御婦人レディ、すまないがこの連中のおりを頼む」


「はいはい。それじゃみんな、行きましょう。このババに遅れないようにね」


 そう言うとフィン達を連れ、飄々と山を登っていった。


「相棒か……。昔の私を見ているようだな」


「どうした、ゲッコウ?」


 ガウドが尋ねる


「いや、何でもない」


「あんたの相棒はなかなか見所がありそうじゃないか。将来が楽しみだ」


「まぁ、そうだな。しかし、まだまだだ。あの性格を直さないと先々が不安だ」


「そうか?しかし、あんたも少し堅物すぎる。フィンと居るくらいのが丁度いいと思うがな」


「……全く、みんな揃って言いたいことを言ってくれる」


「ははは、俺は良いコンビだと思うぜ。……さて、敵が来たようだ。軽くあしらってやるか」


「ああ、そうしよう」


 そして、ゲッコウとガウドは武器を構え、姿を現した火炎兵士の群れに向かい勢いよく突っ込んでいった。


 


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




「ミナト、どこかで声がするよ!それにこの気配……多分アイツ!」


「本当か!」


 リンがどこからか聞こえる声と気配に気づいた。急いで辺りを見回す。火の手が回り、この辺りもいつまでもいられない。


 すると、見下ろすの斜面に小道があり、誰かの姿が見えた。


「あれだ!リン、急ごう!」


「うん!」


 リンと共に斜面を駆け下りる。急いでその人物のもとに駆けた。


「ひゃははは!!燃えろ燃えろ!私は死なんぞぉぉぉ!みんな燃えてしまえぇぇ!」


 山を見上げ、狂ったように笑う男。


「ねぇ、ミナト、アイツ……!」


「ああ、間違いない!ロビィルだ!」


 奴の前には護衛のように魔物が取り囲んでいる。黒い炎を纏った兵士のような風貌の魔物だ。ロビィルを守るように、剣を抜き、刺突せんと構えている。


「ミナト、いくよ!」


 リンに言われるまでもなく、素早くホルスターからハンドガンを取り出す。


水魔弾アクアバレット!」


 標準を定め水魔弾(アクアバレット)を放つ。弾は火炎兵士の一体に命中し、その身体を霧散させる。よし、やっぱりこいつらの弱点は水だ!


 俺達を認めた火炎兵士が次々に殺到してくる。


「ウォーターボール!」


 水の玉を発動し次々にぶつける。被弾した火炎兵士が、シューッという音を立て消えていく。しかし、黒い炎から兵士は次々に産み出される。


「くそっ!これじゃ埒があかない!どうしたらいいんだ?」


 火炎兵士に阻まれて、ロビィルに近づく事も、魔法を当てる事も出来ない。


「ミナト、ロビィルを止めればいいの?」


「そりゃそうだけど、火炎兵士が囲んでいて、魔法が奴に届かないんだ!」


「分かった、リンに任せて!」


 そう言うと俺の頭上で「ん~!」と力を込めるリン。そして……


「いくよー!『り~ん、ぱーんち』!!」


「ひゃははっ……ふぎゃーっ!?」


 リンがそう叫び、腕を振り上げる。それと同時にロビィルの足元から大きな土の拳が沸き上がり、ロビィルを吹っ飛ばした。


「え、ちょっ……リン、今のは……?」


「『りんぱんち』っていうの!土の魔法だよ!」


 魔法って……今のが?りんぱんちって、あれが土の魔法……?ええ~?








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