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『俺』とゴブ『リン』~俺のスキルは逆テイム?二人三脚、人助け冒険譚~   作者: 新谷望
3章 バークマン領の騒乱編

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15話 双子山防衛戦


「勇敢なるバーグマン軍の兵達よ!我輩は元軍団長ヒューゴである!軍団長ロビィル殿に一言申し上げるべき事あり、ここに推参した!何卒、お取り次ぎ願いたい!!」


 ウィルの愛馬に跨がったヒューゴは、自陣を飛び出すとバーグマン軍の手前100メートル程まで駆けた後、立ち止まり、後方の俺にも聞こえるような大音声だいおんじょうをあげた。


 すると兵達の間にさざ波のようなざわめきが起こる。と、その隊列の中央が割れ、妙に派手な甲冑に身を包んだ太った男が、白馬に跨り姿を現した。


「謀叛人ヒューゴではないか!よく図々しくも我らの前に姿を現せたものだ!まぁ、大人しくばくくというのであれば、ダニエル様の格別のお計らいもあろうというもの。神妙にせよ!」


「ぬけぬけとよう言うたな、ロビィル!ダニエルの威光を傘に、軍の経験もない貴様が軍団長に座るなど笑止!貴様のような者に率いられる兵共も、さぞ不満であろうよ!」


「ぐぬっ……!貴様こそ、投獄されていたミナトとか言う小僧と共に、ルカ様をたぶらかし、あろうことかルカ様を館から連れ去った大罪人ではないか!大人しく投降せい!」


 ロビィルの物言いを鼻で笑うヒューゴ。


「我輩が大罪人?片腹痛いわ!己の野望の為、二年前、ミサーク村に刺客を放ち、村を滅ぼそうとしたのは誰か!バーグマン家の家宝「風殺の腕輪」を無断で持ち出し、村に滞在していたルカ様の叔母であるエリス様を拉致し、ネノ鉱山の封印解錠の生け贄に捧げようと画策したのは、ダニエルであろう!?」


「な、何を馬鹿な事を……」


「此度の出兵の真の目的も、反対する村人ごとミサーク村を焼き払い、エリス様を捕え、生贄にし、ネノ鉱山の封印を解除する為!その件に反対した我輩を理不尽に解任しておいて、ダニエルの側近であるお主が、知らぬとは言わさぬぞ!」


 バーグマン兵の間にどよめきが走る。ヒューゴは軍団長を先日まで務めている。当然、上層部しか知らない情報も知っていた。その彼からの証言だ。動揺するのも無理はない。


「だ、黙れぇぇっ!皆の者、奴の言うことは全てでっち上げだ!そうか、貴様、投獄されたミナトとか言う小僧と共謀しておったのだな!罪人を脱獄させるは重大な犯罪行為!皆の者、このような謀叛人の虚言に耳を貸す必要はない!奴の狙いは動揺を誘い、我々の士気を下げることぞ!」


 ヒューゴとロビィル、二人の間で揺れるバーグマン兵にヒューゴが語りかける。


「我輩はルカ様に真実を知って頂く為、また真の領主となっていただくべく、ダニエルの監視から同志であるミナトと協力し、ルカ様をお救いした!すでにエリス様も我が陣営にて保護している!賢明なるバーグマン軍の兵達よ!我らとダニエル、どちらが本当の悪か、今ならば解るであろう!」


 その後もお互いに一歩も譲らない舌戦が続いた。


「ヒューゴさんもやるなぁ。……しかし、あのロビィルとか言う男のゴテゴテとした派手な感じ、どこかで見た事があるような気がするんだよな……」


 彼らの舌戦を遠巻きに眺めながら思った。ヒューゴの身に万が一の事態が起きた時に備え、俺達もゆっくりと前進しバーグマン軍との距離を詰める。


 ヒューゴの評によれば「ロビィルは他人の弱味を握る事だけに長けた小者であり、ダニエルの腰巾着」だそうだ。ロビィルは軍務の経験はなく、軍団長のポストもその能力を遺憾なく発揮し、他人を陥れ手にいれたらしい。今回の本当の目的はミサーク村の襲撃だ。「戦と違い、村人が相手なら苦もなく手柄をあげられると踏んでの就任だろう」とヒューゴが言ってたが、なるほど、悪知恵が働くのは確かなようだ。


 ……それにしてもロビィルって、遠目でも随分でっぷりとした体型だと分かるな。それに、鎧に付いた装飾品が何ともけばけばしく、その、戦場に不要なものを身にまとった姿は、彼の人生を象徴しているかのようだ。対するヒューゴは年齢こそいっているが正に軍人って風体なのに、アイツにはそんな威厳が微塵も感じられない。


 と、リンがロビィルを見て何かに気付いた。


「ねぇ、ミナト。アイツ知ってるよ!ほら、シャサイと一緒にいたアイツ!ミナトがぶん殴ったやつだよ!」


「え、あいつが!?まじで?……あっ!!」


 リンの視力は俺より遥かに良い。慌てて前方に目を凝らす。


 遠目で解りにくいが確かにあの顔は、ネノ鉱山でシャサイと一緒にいたダニエルの使者だった奴だ!てっきりブラックビーにやられたと思ってた。へぇ~!あいつ、生きてたのかよ!?悪運だけは強いんだな!


「ヒューゴさん!そいつ、見覚えがあります!以前にミサーク村を襲ったシャサイと一緒にいた、ダニエルの使者です!」


 ヒューゴに向かっておもいっきり大声で叫んだ。


「何と!?それはまことか、ミナト!……フフ、もう言い逃れ出来んぞ。ロビィル!貴様は以前起きたミサーク村襲撃事件にも関与していた。しかも貴様らはまた性懲りもなく、再び悪巧みを働いた。これはルカ様、及び領民に対する重大な裏切り行為だ、恥を知れい!!」


「黙れ黙れぇぇぇ!!ヒューゴめ!あやつこそ、バーグマン家を裏切り、反乱軍に与した裏切り者ぞ!!ルカ様をさらうのみならず、狂言を弄し、兵士や領民を誑かすその行為、断じて許しがたい!皆の者、あの謀叛人を捕らえよ!殺しても構わぬ!弓隊、構えよ!」


 そう喚き散らすロビィル。兵達にとってロビィルが軍団長としていくら信頼が置けない存在でも、戦場では上官の命令は絶対だ。弓隊がたずさえていた弓に矢をつがえ、引き絞る。


 即座にヒューゴは身をひるがええらせ


「よく考える事だ、我が同朋達よ!ではさらばだ!」


 そう叫ぶと自陣へ向かい駆け出した。


て、てぇ!!」


 ロビィルの叫びに応え、弓隊が次々に矢を放つ。しかし、矢が刺さった場所に既にヒューゴは居ない。早くも俺達の元に駆け戻ってきていた。


 弓矢での攻撃が不発に終わりバーグマン軍が突撃を開始する。


 ……よし。ヒューゴは役割をしっかり全うした。次は俺達の番だ!


「今だ!ウィル、騎士団を出撃させる!」


「はっ、ミナト様!我らの出番ですな!行くぞ、出撃だ!!」


 ウィルに呼応するように空気の震動がわき起こった。声を出せないリビングアーマー達の声なき咆哮が、ビリビリと頬を刺激する。


 それぞれが、銀色に輝く重厚なフルプレートアーマーに身を包み、バーグマン軍の物より長く太い槍、そして巨大なカイトシールドをたずさえている。リビングアーマー達、騎士団は横一列に並んだまま、前進を開始する。


 そんな中、弓矢の攻撃をかわしたヒューゴが駆け込んできた。


「ううむ、ミナトの配下の騎士達は洗練されておるな!これでは我がバーグマン軍……ではなかった敵軍も一筋縄ではいかんであろうな!」


 馬を降りたヒューゴが敵に向かっていく騎士団を見送りつつ、感心したように言った。


「そうじゃ!ミナト、我輩はルカ様を山頂へお連れする。あとの事は頼んだぞ!総大将!!」


「ええ、任せてください!」


 ヒューゴは大きく頷くとシャーロットと共にルカを伴い、安全な山頂へ向かっていった。


 その間にも騎士達とバーグマン軍との距離は縮まっていく。……そして互いの陣のほぼ中央で、遂に両軍はぶつかった。




挿絵(By みてみん)




 互いに相手の持つ得物を叩き落とさんと、槍を叩き合う。ガツッ!ガツッ!という槍同士がぶつかる音が戦場に響き渡る。


 バーグマン兵がつき出す槍を、リビングアーマー達が払いのける。


 見た限り情勢は騎士団が有利だ。まず槍の長さが違う。槍合わせにおいてはリーチが長い方が圧倒的に有利だ。


 そして、練度の差。リビングアーマー達は元騎士であり、生前はかなりの場数を踏んでいたようでその経験はバーグマン軍とは比較にならない。


 バーグマン兵が両手で槍を持っているのに対し、大盾を持っている騎士達は片手で長槍を握っている。だがそれでもバーグマン兵に遅れをとることはない。その技量にも明確な差があった。


 前線で戦っていたバーグマン軍の第一陣が早くも崩れ、それと入れ替わるように、第二陣が投入される。バーグマン軍は兵士を四陣に分け、交代で騎士団にぶつけてくる。数に勝るバーグマン軍が波状攻撃や矢による攻撃をしかけるが騎士達は怯まない。カイトシールドで攻撃や矢を防ぎつつ、反撃を加える。


 彼らはウィルの指揮により自在に動き、また死を恐れない。リビングアーマー達は疲れを知らないように攻撃を跳ね退け続ける。


 その姿はまさに立ち塞がる要塞の如し。バーグマン兵は岸壁に打ち寄せる波のように押し寄せては弾かれ続けている。


 しかし、兵士を交代させ繰り返し波状攻撃が出来るバーグマン軍に対し、騎士団は交代要員はいない。やがて敵の勢いに押されるように、横一列に並んだ橫陣おうじんの中央付近が徐々に押され始め隊列が「へ」の字を逆さにしたように凹み、少しづつ後退を始めた。この機を逃すまいと、バーグマン軍はさらに攻勢を強める。状況は膠着から、バーグマン軍が一方的に押しまくる展開にと移行した。




  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




「わははは!いいぞ!いくら分厚い鎧を着込もうと所詮見かけ倒し。よし、兵どもよ、押せ!押して、押して、押しまくれ!反乱軍など蹴散らしてしまえ!」


 正に意気揚々といったロビィルが叫ぶ。


 突然、前方より現れた騎士の一団には驚いたものの、数に勝る味方は騎士団を圧倒し、反乱軍はずるずると後退を始めていた。


「ふははははっ!フルプレートメイルに身を包み、完全装備の騎士団が現れた時は一瞬、ヒヤリとしたがそれもどうやら杞憂だったようだ!おおかた領民に鎧を着せて、進攻を食い止めようとの算段であったのだろう。しかし、そんな虚仮脅こけおどしなど我が軍には通用せんぞ、ヒューゴよ!大人しく縛につけい!!」


 馬上で勝ち誇るロビィルは、得意の絶頂にあった。


「……なぁ、本当にそう思うか?」


 ロビィルの笑い声を聞き、前線から交代した中年の兵士が隣の同僚に呟いた。見れば敵である騎士からの攻撃を受け続け、身体中が傷だらけだ。全力で戦っているため疲労困憊しきっている。


「味方は優勢、勢いにのっている。何か気になる事でもあるか?」


 隣で槍をもつ同い年くらいの兵士が返す。彼もまた何ヵ所かに傷を負っている。しかし、こちらは優勢にすすめる戦局に高揚し、痛みを忘れている様子だ。


「奴らは俺達より長い槍を片手で軽々と使いこなす。槍を合わせた時は、衝撃で腕が痺れたよ。槍の柄で殴られ、腕や足を怪我して、後方に退いた負傷兵も多いからな。ひるがえって奴らはずっと戦い続けている。にも関わらず動きに乱れがない。本当にロビィル殿の言うように見かけ倒しなのか?」


「でも、今はこちらが押しまくってるだろう?」


「どうにも嫌な予感がするんだ。あの後退も奴らが俺達を誘い込もうとしているような気がしてな。それに反乱軍に合流したはずの領民も姿が見えない。反乱軍の元には、それに同調する領民が集まっているという情報があった。もし、あれが全てだとすれば数が少なすぎはしないか?」


「お前、よく見てるな。俺は生き残るのに必死で、周りなんか見てる暇なんかなかったぞ」


「……それに知ってるか?双子山に偵察にでた連中がまだ一人も戻っていないらしい。にもかかわらずロビィル殿は挑発に乗り、戦いを始めてしまった。ロビィル殿は軍の経験もない。もし、何かあった時にヤバくないか?適切な対応がとれるのか?」


「う~む、言われてみれば確かにそうだ。だが、だからと言って今さら隊列から抜け出すわけにはいかないだろ?」


「しかし、ヒューゴ殿が言っていた事も気になるんだ。もし、ヒューゴ殿の言い分が正しければ俺達の方がルカ様に弓を引く反乱軍なんじゃないか?」


「おいおい、あまり難しく考えるなよ。今の俺達の上官はロビィル殿だろ?俺達は目の前の敵を倒すだけに集中すればいい。まぁ、このまま奴らを退けて、ルカ様を助ければこの戦いは(しま)いだ。早く終わるに越した事はないさ」


「それはそうなんだがな……。ん?なんだ、霧か?」


 いつの間にか辺りに霧がかかっていた。その霧は前進するごとにどんどん濃くなっていく。


「くそっ。さっきまではあんなに見通しが良かったのに、ええいっ!これじゃ前が見えないぞ。」


「全くだ。この分だと双子山も同じだろうな……。この霧じゃ、ルカ様を探すのも大変だ……」


 そう言っている間にも、霧はますます濃くなる。霧に視界が遮られ、槍を合わせる音と喚声ばかりが妙に耳に入ってくる。


 その時、前方から歓声が聞こえてきた。


「よし、騎士団を打ち破ったぞ!」


「逃がすな!一気に山をかけ登れ!ルカ様を救出するぞ!」


 その声に励まされるかのように、前進速度が上がっていった。


「おい、やったな!敵を打ち破ったってよ!」


「ああ、これで後は、ルカ様を救出するだけだ!」


 同僚の弾んだ声を聞きながら、深い霧の中、疲労した身体に鞭を打ち、かろうじて見える前列の兵士の後に続いて、導かれるようにバーグマン軍は、続々と双子山に侵入していく。


「それにしても何なんだ。この霧は……。いや、それより前線はどうなったんだ?先頭の連中はかなり先まで行っているのか?ひょっとしたら、もうルカ様の所か?」


 突然、霧が薄くなり視界が徐々にクリアになっていく。不思議な事にあれだけ騒がしかった喧騒がピタリとやんだ。


「……?声が止んだ……。って事は奴らを追い払ったのか?にしては歓声も聞こえないが……。どうなってるんだ?ん……?あれ?」


 いつの間にか隣にいた同僚が居なくなっている。それどころか前に展開していたバーグマン軍までもが煙のように消え失せてしまっていた。


「お、おい!?いったいどうなって……。な、なんだこりゃあ!?」


 兵士が口を大きく開けたまま固まった。彼の眼の前にある、ただの山だったはずの双子山は、石垣と堅牢な石壁がそびえる大要塞とその姿を変貌させていた。


「そんな……。嘘だ……」


 兵士の手から滑り落ちた槍が、カラカラと音をたてて転がっていく。


 突如、双子山に姿をみせた巨大な要塞。その正面にある大きな門の扉が、ガラガラと鎖が巻き取られる金属音と共に引き上げられる。その奥から見えたもの……。それは完全装備の騎兵隊の姿であった。


「バカな……。バカなバカなバカな!!うぁぁぁっ!!」


 へたり込み、半狂乱になった兵士の元に、騎兵隊が突撃していった。





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