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『俺』とゴブ『リン』~俺のスキルは逆テイム?二人三脚、人助け冒険譚~   作者: 新谷望
1章 ミサーク村編 

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25話 説得



「ガアアァー!!」

 

「リン!?」


 威嚇の声をあげ転がるように飛び込んできた小さな影、その正体はリンだった。


 ナイフを片手に俺を守ろうとするリン。シャサイと対峙した後、かなりの疲労で二階で寝ていたが、俺たちの異常な雰囲気を察して飛んできたようだ。


 その矛先はエリスさんに向けられている。


「リン、違うんだ!俺は大丈夫だから!!」


 リンのただならぬ様子に、エリスさんの魔法の拘束が緩む。その隙をついてリンの方に駆け寄り、慌てて抱き上げる。しかし俺を守ろうとする気持ちが強いのか、魔物としての本能か興奮がなかなか収まらない。鋭い目つきで威嚇し続ける。普段とまるで違うリン。このままでは本当に攻撃しかねない雰囲気だ。


「エリスさんは俺を攻撃しようとしていたわけじゃないんだ、だから落ち着いて。すぐに警戒を解いてくれ!」


 リンを抱き、必死に説得する。俺の思いが通じたのかリンの逆立っていた毛が落ち着き、高ぶった感情が徐々にゆるやかになるのを感じる。


『本当?ミナト、大丈夫ナノ?』


 リンが俺の顔を見上げ聞く。どうやら落ち着いてきたらしい。


「もちろんだよ。俺はエリスさんと大事な話をしていただけなんだ。エリスさんだって俺を傷つける気はないよ」


 リンを安心させるため明るく笑いかながら話す。


『大事ナ話ヲスルト、怒ッタリ攻撃シタリスルノ?』


「話し合いをしていると意見がぶつかる事もあるし相手の意見に納得できない事もある。討論がヒートアップすると時には手が出てしまうこともあるんだよ。でもほら、俺はこのとおり、何ともないし怪我もしていない。だからエリスさんに敵意を向けるのはやめてほしいんだ。少し意見の行き違いがあってケンカしてただけなんだよ。心配させちゃってごめんな」


 もう大丈夫そうだ。ホッとしつつ優しく頭をなでる。


『ミナト二闘気ガブツケラレタカラ、急イデココ二来タノ。興奮シテテ、エリスッテ分カラナカッタ。ゴメンナサイ』


 状況を理解したのかシュンとするリン。


 まさか闘気を放っていたのがエリスさんだとは思わなかったのだろう。俺を守ろうとそのまま戦闘態勢に入ろうとしたようで、リンも相当慌てていたようだ。エリスさんにも事情を説明する。


「リンリン、あなたは少しも悪くないわ。あなたがミー君を守ろうとするのは当然だもの。本当にマスター想いのいい子ね」


 傍らにやってきたエリスさんもそう言って優しくリンの頭をなでてくれる。その暖かい眼差しはいつものエリスさんだった。


「さて、それじゃミー君、討論の続きを始めましょうか」


 ハプニングはあったが俺達は再びテーブルを挟んで向かい合い座る。リンは俺の膝の上だ。また興奮しないようしっかり抱きしめた


「さっきも言いましたが俺はシャサイは相当に強いと思います。グラントさんでも歯が立たない。これに勝つのは困難かと」


 エリスさんが俺の懸念を遮る。


「ミー君は思い違いをしているようね。本当は秘密だけど私、魔法抜きでも剣でグラントに勝てるのよ。つまり村一番の剣の使い手は私なの。元冒険者を舐めないでほしいわね」


 エリスさんが髪をかき上げながら微笑む。


 エリスさんはどうしても自分がシャサイに負けない、と俺に思って欲しいらしい。でも……。


「エリスさんが村人の前で披露した瞬間移動ですが、あれは砂を巻き上げ視界を封じた上での目くらましでしょう。あんなのはリンの気配探知や危機探知があれば見破れる程度のものです。シャサイには通用しない、そうじゃないですか?」


「あれは、村人を納得させるためにやったもので本当は……」


 エリスさんは反論しようとするが、かまわず話を続けた。


「俺が知りたいのは勝つための具体的な策はあるんですか?って事です。リンの気配探知や危機探知は相手の攻撃を探知できるスキルです。でも相手が強いと通用しない。だからシャサイには通用しなかった。でも、気配探知でエリスさんの気配はわかりました。その意味はわかりますよね?体術においてシャサイはエリスさんの上にいるんです。さらに頼みとする魔法を封じられた状態でどうやって勝つんですか?」

 

 リンがうんうんと頷いている。俺は努めて冷静に話そうとした。しかし


「二人とも全然わかっていない!私は昔暴風のエリスと呼ばれていたのよ?あの程度の実力だと思う?」


 討論の余地はない、と言わんばかりのエリスさん。しかし、彼女の口から俺の質問に対する具体的な答えははない。あくまで、話をはぐらかそうとしているのか、それとも俺には話すまでもないと思っているのか。


 しかし俺だって引き下がれない。


「その話は聞きました。でも、その頃と比べて魔力はどうでしょう?呪いは忌むべきものですが魔力を底上げする効果があった。しかしそれはすでにない。そしてもうひとつ、例えどんなにすごい実力を持っていても毎日訓練や修行をしないとその実力は衰えていくのではないですか?エリスさんは何年も魔法を封じられていた。魔法がまた使えるようになったのはごく最近です。昔に比べて威力がかなり落ちてしまっているのではないですか?」


 どんなに凄いスポーツマンでも日々のトレーニングを怠れば最高のパフォーマンスを発揮できない。最高のポテンシャルを引き出すためには日々の鍛練はかかせない。


 アスリートだって結果を残すために普通の人ならとても耐えられないストイックな訓練を続ける。逆にいえばそれだけの事をしないと能力を維持できないという事だ。


 それは魔法の世界も同じはず。魔法が使えなかったエリスさんは現状で冒険者だった以前ほどの魔力は期待できるかといえば難しいと言わざるを得ない。


「もうこの辺でやめにしませんか?シャサイはエリスさん一人で来いと言い、あなたはみんなの前で行くと宣言した。勝てる見込みの薄い相手にたった一人で立ち向かおうとしている。あなたは全て一人で抱え込もうとしているんだ。シャサイの事もバーグマン家の事も。でも俺は真実を知りたい。この村を守りたいという想いは俺も一緒なんです。みんな不幸になってほしくない。そして俺もリンもエリスさんに危ない橋を渡ってほしくない。俺達に出来ることがあれば何だってやりたいんです。だからお願いします、本当の事を教えて下さい!」


 リンもうんうんと頷きながらエリスを見る。俺達二人の決意を感じ取ったのか、エリスさんはしばらく俺達を見つめたあと意を決したように息を吐いた。


「リンリンはミー君の言った事が分かるのね」


「ええ、前にも言いましたが、念話と会話を同時にしています。だから俺が喋る言葉は同時にリンにも伝わっています。ね?リン」


 コクリとリンがまた頷く


「そうだったわね。本当にうらやましいわ。……そうね、あなた達には伝えた方がいいのかもしれないわね。この村を救うために頼みたい事もあるし」


「そんな方法があるんですか?ぜひ教えてください!」


「そう慌てないで。順番に説明するから。なぜ私がシャサイの所に行かなければならないのか、そして、後ろにいる黒幕の事も。私の知っている全てをあなたに話すわ」


 そう言ったエリスさんは、その前にお茶を入れましょう。長い夜になるわねと言いながらお茶を淹れ始めた。その様子眺めているつもりだったが……。


「エリスさん!お茶っ葉はそんなに入れないでください!ああっ!その前に水ですよそれ!水出しじゃないんだから先にお湯を沸かして!」


 彼女から台所の主導権を奪い返し、バタバタとお茶を用意する。お茶ひとつでこの騒ぎだ。


 ……エリスさんは魔法の事より先に料理の基本を覚えた方がいいんじゃないかって気がしてきた……。







 

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