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『俺』とゴブ『リン』~俺のスキルは逆テイム?二人三脚、人助け冒険譚~   作者: 新谷望
6章 英雄ミナト編

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42話 カストールの円形闘技場




「神速の矢、貴方にかわせますかな?炎の矢(ファイヤーアロー)!」


 カストールの炎魔法が空気を切り裂き、無数の矢が俺達を貫かんと殺到する。


「いくぜ!水の壁(アクアウォール)!」


 目の前に水の壁が噴き出し、正面から飛んでくる無数の火の矢(ファイアアロー)を水の壁が吸収する。


 ふっはっはっは!いくら神速を誇る矢と言っても、分厚い密度のある水の壁は越えられまい!


「ミナト、よこっ!!」


「うおっ!?」


 リンの声に反応し、身体を屈めると矢が頭上を通り抜ける。


「げぇっ!あの矢、誘導型だ!まだ横からも来るぞ!」


 直線的な魔法ではない、矢はあらゆる方向から俺達を執拗に狙う。あいつの魔法は目標(ターゲット)に誘導できるのか!?汚い!カストールの魔法汚い!で、でもそれが分かっていれば、こんなもん全部防げる!


「来るよっ!」


 その次の瞬間、小さな竜巻のようなものが水の壁を貫いてきた。そこからねじ込むように炎の矢が俺を襲う。だが、リンが瞬時に矢を光刃で叩き落した。


 ぐっ、風の回転が水の壁をこじ開けた、だと!?


 これは風の刃(ウインドカッター)だ!風の刃を回転させて水の壁に穴を開け、そこから炎の矢(ファイヤーアロー)を当てる気なのか!何なの!複合型魔法!?一発で二度おいしいのかよ!


 その風の刃(ウインドカッター)を仕込んだ炎の矢(ファイヤーアロー)が我先にと俺をめがけて飛んでくる。


 ……でもな!


「えーいっ!」


 リンが光刃を発動させ、俺を操り回転する。長く伸びた光刃が風の刃(ウインドカッター)を次々と弾く。炎の矢(ファイヤーアロー)は威力を失い、その場で消え去った。ぽっかりと空いた水の壁の向こう、カストールが更なる魔法を発動させているのが見えた。


 ……ちっ!さすがリデルの側近を名乗るだけの事はあるぜ!次から次へと魔法繰り出せるのね!


 でも、俺達だってな、ドラゴンだって倒せる実力が……!


「ミナト後ろ!当たるっ!!」


「なにっ!?うわっ!」


 背中に強い衝撃が走る。押し出されるように前につんのめったが辛うじて踏みとどまった。


 真後ろからの攻撃!?何だ、伏兵がいるのか!他に敵が潜んでいやがるのか!?咄嗟に周囲に視線を走らせる。


「フフフ、どうしました?意識が乱れていますよ?地獄の業火(ヘルファイア)!」


 そう言うやいなや、俺達の方に構えたカストールの掌からドラゴンのブレスかと見まごうばかりの凄まじい勢いの炎が噴き出した。


 なめんなよ!意識を集中瞬時に魔力を指先に集める。


「喰らっとけ!水の魔弾(アクアバレット)!」


 地獄の業火(ヘルファイヤ)をかわし、放たれた水の弾丸が業火を突き破りカストールに迫る。しかし、当たったと思った瞬間、ヤツの体は蜃気楼の様に揺らぎ、掻き消えた。


「おっとと、危ないですねぇ。人間でいう()()()()()()()()でしたね?」


「……なっ!?ぐわっ!?」


 突然後ろから激しい衝撃を受け、倒れそうになるのを辛うじて踏みとどまる。


 「リン!リン、大丈夫か!?」


 後ろからの攻撃だ、肩車をしているリンにももろに衝撃が当たっているのではないか!?


「う、うん!大丈夫!ごめん気配探知遅れちゃった……。でも分かった、ミナト!後ろからもアイツの魔力を感じた!……()()()()二人いる!」


「おや、死角からの攻撃でもあまり効果がないですねぇ。防具の力……ですかな?」


「ゴブリンだけでも仕留められたら良かったのに……。フフッよそ見してはいけません。私はここですよ」


 目の前のカストール。そして、振り返ると確かにそこにはもう一人のカストールが笑みを浮かべていた。げ、幻覚!?幻覚にしてはどっちが本物か分からない。


「リン、俺を思いっきりつねってくれ。幻覚なら目を覚まさせてくれ」


「おけ」


 あだだだだだっ!肉肉、ちぎれる!!ほっぺた、ほっぺた!こぶとり爺さんになっちゃうぅぅ~!!


 しかし、強烈な痛みを感じてもカストールは二人のままだった。


「フハハハハ!愚かな貴方でも理解出来ましたか?そうです。私はもう一つの私を作ることができるのです。いわゆる分身ダブルというやつです」


 なっ!?分身だって!?先に言ってくれよ!分身……?でもそれって幻覚と違うの??本人、じゃないよね?


「フフッ。その顔、その表情、たまりませんねぇ。さぁ、油断は禁物ですよ!」


 前方のカストールが再び無数の炎の矢を放つ。広範囲に放たれた矢が俺達を標的に殺到する。


「またか!くっ!?水の壁(アクアウオール)!!」


 正面からの攻撃は水の壁でやり過ごし、回り込むように側面から飛んできた矢はすんでの所でかわす。


 しかし、


「まだだよミナト!また横から飛んでくる!」


 かわした矢は地に落ちることなく弧を描き、再び俺を狙ってくる。そうだよねぇ!この矢、逃げるだけじゃだめだったわ!


「アイツが分身ならこっちだって!水球乱舞!」


 俺を狙う炎の矢をたくさんの水球で消滅させる。見たか!しかも矢を追う迎撃機能も付けた!カストールの真似だけどな!


「アイツはリンにまかせて!り〜んぱーんち!」


 リンがそう言うと、カストールの真下から巨大な土の拳が突き上がる。完全に捉えたかに見えたが、まるでダンスを踊るような軽やかな動きで、攻撃をかわすカストール。


「もいっちょ!り〜んぱーんち!」


 再び湧き出した巨大な腕が唸りを上げながらフックを繰り出した。その強烈な一撃にはマージナイツすら吹っ飛ばされる威力なのだ。


 カストールが構える。


「ふんっ!」


 そして、拳が接触する瞬間、飛んできた拳をいなすように押し叩く。すると、まるで弾かれたように拳の軌道が変わってしまった。


「む〜!まだまだぁ!どんどんいくよ!」


 リンが次々に仕掛けるが、りんぱんちはカストールに届かない。まるで合気道の達人が大男の攻撃をいなすかような身のこなしで、どちらのカストールもリンの攻撃を弾いてしまう。


「あ、当たらないよぉ~!なんで~!!」


 カストールの動きにリンが珍しく焦りを感じている。


「どんなに力のある攻撃でも、軌道を変えれば当たることはありません。そこにさほど力など必要ないのですよ。」


 別の場所からもう一人のカストールも不敵に微笑みながら口を開く。


「ホホホ、このような単調な攻撃、ヒト族には通用しても魔族の私には児戯に等しいですねぇ」


 ぐぬぬ、でもなぁ、俺達の力はまだまだこんなもんじゃない。二人でいつもどんなピンチも乗り越えてきた!考えろ、考えるんだ!二人のカストールを倒す方法を!


 そうだ!リンにあの攻撃方法を試してみよう、と念話で語りかけたその時。


「さて、お遊びはここまでに致しましょう。せっかく私の能力を披露できたのです。貴方がたには最後までご堪能頂きましょう。こちらです」


 カストールが右腕を天に掲げた。


「空間移動!!」


「なっ!?うわっ!!」


 肩からふわり、とリンの感触がなくなっていく。


「ああっ、リン!?リーン!どこだ!」


 肩に手を伸ばすが、その手は空を掴むばかりだった。


 嘘だろう!?リン!リン!!


「ミナト!ミナトー!」


 リンの悲鳴が聞こえる。それとともに視界が歪み、意識が飛んだ。




  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




 気がつくと俺は戦場とは全く別の場所に立っていた。


 えっ……ここは……!?どこだ??


 俺が立っているのは石板で出来た直径100メートル程の巨大な円でできたフィールドの中心。そこをぐるりと取り囲むように階段状の観客席がみえる。


 これは……!?まるで円形闘技場コロッセウムじゃないか!?


 いや、それよりもリンは!?


 いないとわかっていてもリンを探してしまう。まだ肩にリンの温かさが残っているのに、ここにリンの気配は一切感じられなかった。


 くそっ、何がどうなってるんだ!?


「フフフ、どうです?驚きましたかな?」


 後ろから声に飛びすさる。その先には姿勢を正したカストールが佇んでいた。


「ここは時空の狭間のコロシアム。私が創り出した秘密の空間へようこそ」


「秘密の空間だって?」


「いかにも。ここには滅多に客人をお招きすることはありません。いやいや、貴方は実に運が良い」


「てめぇ、リンをどこへやった!?」


 さあ?とでも言うように高笑いするカストールに怒りがわく。


 また幻術か、それとも本当にどこかへ連れ去られたのか俺には判別できなかった。もしかして、双子山にかかっていたの幻術みたいに俺が自覚できないだけなのか!?近くにリンはいるのか!?


 ゆっくりと息を吸い、そして吐く。全神経を集中させ、カストールに向き合う。こいつ以外の気配は感じない。相手は一人だ。


 リンのいない今、俺が、カストールの一挙手一投足を見逃すわけにはいかない。


 俺の緊張とは裏腹にカストールは余裕たっぷりに笑顔で指を一本立てた。


「一つヒントを差し上げましょう。ここは私が創り出した空間と言いました。貴方ほどの人物ならば収納魔法はご存知でしょう?マジッグバッグに代表される魔力で空間を創り出し、物質を収めるスキルや魔法の事です。それらをさらに発展させたものがこちらなのです」


「収納魔法……?」


「ええそうです。魔力で隔絶させた空間を作り出す事までは同じもの。しかし、通常の収納魔法では生きている生物は入れることができません。しかし、私の持つスキルはこの空間の中に生物を収める事ができるのです。人族にはない我々だけのスキルです」


「それがあれば俺をこの空間に閉じ込めておく事も可能ってわけか?」


「そうです。そして貴方が出る方法は……」


「元凶である、お前を倒さないといけない」


「御推察の通りです。ちなみにこの空間には鍵をかけました。今は私もこの空間から出ることはできません。私と貴方、どちらかが倒れた時にこのスキルは解除されます」


「リンはどこへやった?」


「フッフッフ。あの従魔も今頃、ここと同じ空間で戦っている頃でしょう。もう一人の私とね」


 ぐっ……てことは別の場所でリンもこいつと戦っているって訳か。俺とリンを分断させて各個撃破を狙おうってのか?


「どうです面白い趣向でしょう?テイマーと従魔を引き離した方がより、自分たちの力のなさを自覚して頂けるかと思いましてね。テイマーが従魔を使役できないで、従魔がテイマーの指示なしで、どこまで戦えると思います?おっと、私の分身ダブルを甘く見ないほうがいいですよ?片方が幻覚というわけではありません。貴方の目の前にいるのもあのゴブリンの元にいるのも両方とも正真正銘の私です。」


 幻覚じゃない?てことは両方とも実体があるのか?そんなの魔力でどうにかなるのか?魔族特有のスキルなのかもしれないけど、コピーロボットみたいな感じだと思えばいい?


 いや、そんなことはどうでもいい!とにかく今はヤツを倒して一刻も早くリンと合流するぞ!


 木刀を構え、足元に水の魔力を集める。狙いはカストールが魔法を発動するわずかな隙!


「おりゃあぁぁ!!」


 圧縮した水圧を一気に解放し、前方に向かって飛ぶ。肉薄したカストールに向かって木刀を斬り下げる。が、俺の一撃は空を斬る。


「こちらですよ」


「……!?はっ!?」


 意識を向けると同時に複数火球が襲ってくる。そのうちの一つをかわしきれずに喰らってしまった。リンに操ってもらわないとどうしても動きのキレが悪い。リンならギリギリでかわしてくれたのに!


 水の魔弾(アクアバレット)を連射し反撃する。しかし、カストールには当たらない。わずかな動きで次々に避けていく。その様は敵ながら感嘆の域だ。動きが機敏で隙が無い。くそっ、リンは足が悪いんだ。俺がいないとカストールの魔法を避けられないんじゃないか?リン、俺が行くまで頑張ってくれ!


「フフッ、足元にもお気をつけて」


「なっ?うわっ!?」


 突然、足元から極太の火炎放射が噴きだす。地面を転がり、辛うじて火炎放射をかわすがその先でも狙いすましたように炎が俺を襲う。


「ハハハ、どうですか?虫けらのようにひたすら地面を転がる気分は?」


 カストールは俺を追い詰め、痛めつけて愉しんでいるようだった。


「ふむ。このままジワジワ削るのも捨てがたいですが、せっかくですので貴方にも私のとっておきを披露致しましょう」


 とっておきだと?


 カストールに再び膨大な魔力が集まる。


光の矢の雨(アローレイン)!」


 上空に垂れ込めた黒雲が雷雲の様に光を発する。


 くっ、矢の雨か!?てことは……!?


 次の瞬間、無数の光の矢が降ってくるのが見える。文字通り雨となり頭上に降り注ぐ。危機探知を限界まで広げ、飛来する矢を交わす。だが、あまりに本数が多い。


「ぐあああああっ!」


 いてぇっ!頭部のガードを優先すると、どうしても腕や足に矢がかする!それだけでもその箇所が焼け付くように痛む。


 俺が身につけているのはハンマ合金製の軽鎧。フォルナでもっとも高品質とされるヒュプニウムに匹敵する性能を誇るベルド会心の傑作だ。その性能はありとあらゆる飛来物から俺の身体を護ってくれる。


 しかし、全身くまなく保護するフルプレートアーマーに比べると、動きやすさを重視し、主に急所を重点的に保護した軽鎧では、どうしてもガードしきれない部分が出てきてしまうのだ。


 降り注ぐ矢の雨を必死に避け続ける。


 と、突然わき腹に衝撃を受けふっ飛ばされる。


「ぐうっ!?」


 横からの攻撃!?しまった、上からの攻撃に意識を向けた隙を突かれた!


 さらに飛んでくる風の刃を咄嗟に体勢を起こし腕をクロスさせ受け止める。だが……。


「ぐわっ!?」


 今度は逆方向から襲ってきた風の刃を喰らってしまった。


 くそっ、全方向から飛んでくる攻撃に対応が間に合わない!


 何処かをガードすると別のところから魔法が飛んでくる。濃密な攻撃網に反撃の糸口さえ掴めない。防戦一方になってしまっている。やっとの事で見つけ出した隙に放つ水の魔弾(アクアバレット)も全てかわされる。急所を護るのが精一杯のその間にも俺の体力はどんどん削られていった。


「ほほう、これは驚きました。あれだけの魔法を受けてもまだ立っておられるとは。称賛に値しますよ?」


「あ……当たり前だ。これくらい……」


 憐れみの表情を浮かべたカストールに精一杯の口答えで返す。


「さて、まだ貴方と遊んでいたいところですが、私は早くリデル様の元へ戻らねばなりません。時間も押していますし、フィナーレといきましょう。貴方に相応しい素敵な舞台をご用意致します」


 カストールがすっと右腕を天に掲げた。


「闇より出でて闇で育まれた地獄の業火よ。今こそその力をここに示せ……|炎獄の舞踏場《インフェルノフィールド!!》」


 その瞬間、闘技場の外周が黒い炎に包まれる。炎獄の舞踏場インフェルノフィールド!?これって双子山でダニエルが使った……!


「フフフ、貴方にも見覚えがあるでしょう?あれは元々、私の魔法なのですよ」


「なんだって!?」


「正確に言えばあれは私の魔法を即席魔法に込め、広範囲で発動させたものですよ。いやいや、大魔法に昇華させるのはさすがに骨が折れましたなぁ。宮廷魔術士を総動員させた甲斐がありました」


 双子山を焼いた大魔法はこいつが作ったものだったのか!?てか大魔法って自作できるのかよ!?


「先程の光の矢の雨(アローレイン)もそうです。あれでスレイアム率いるの旧東セイルス軍も壊滅させました。美しかったですよ降り注ぐ光が大地を血で染めた光景は……」


「ハァ……!?」


 ああ、本当に駄目だ……!魔族ってやつは全然俺の倫理と合わない。おかしいよ!耐えられない!


「しかし、些かガッカリしました。やはり貴方は一人では何も出来ない存在。あのゴブリンと引き離してしまえば、反撃一つできないではありませんか。なぜリデル様があれほど気にかけるのか……まぁ、いいでしょう。絶望して死になさい!」


 勝ち誇るカストールの顔が視界に移る。黒い炎が今にも俺を焼き尽くさんと足元まで迫ってきていた。熱に当てられた身体がすでに燃えているように熱い。


「……そうさ。俺は一人じゃ何も出来ない。何をやるにも誰かの助けが必要だ。今までもリンや周りのみんなに助けられてきたんだ。困って、苦労して、悩んで、もがいて、もがいて……やっと答えを見つける。俺はいつも誰かに助けられてここまで来たんだ」


 再び木刀を強く握りしめる。魔剣木刀は俺に答え静かに共鳴した。そして、


「でもな、だからこそできる事があるんだよ!!」


 愛刀の刀身が青白く輝き出し俺の身体に膨大な魔力が流れ込む。


「こいつも俺の相棒なんだ!俺達の力を見せてやろうぜ!頼むぜ、相棒!」


「うっ!?これは……なんという魔力……。いや、ありえぬ!こんな矮小な人間がこのような……!」


「湧き出せ、水柱群!」


 その瞬間、地面から幾多の水柱が立ち昇る。魔剣木刀の魔力が俺を満たし、その力は大量の水を作り出した。それがカストールに襲いかかる。


「ぐおおぉ!水柱……だと!?」


 カストールを攻撃するだけではない。隔絶されたこの闘技場では水の逃げ場はない。湧き出た無数の水柱によってどんどん水が溜まっていく。


「魔力の水……!くっ!これ程の量の魔力をっ……。バカな!人族如きが……!」


 あふれ出す水が炎と接触し、大量の水蒸気を上げる。それはまるで水にのみ込まれる炎が断末魔をあげるかのようだった。


 湧き出す水はフィールドを満たし、あっと言う間に炎を制圧し、膝の高さまでせり上がり、さらに高くなってくる。


「おのれ、よくも我が炎を……許さん!出でよ闇の黒龍(ジルニトラ)!!」


 黒い炎が焔となり集まっていく。圧縮された炎は生き物のように蠢き、そこから炎の飛竜を産み出した。


「ふはは!残念でしたねぇ!私の竜は全てを焼き尽くす!貴方もこれで終わりですよ!」


 カストールの高笑いが木霊する。


「さぁ、全てを焼き尽くせ!闇の黒龍(ジルニトラ)!!」


 飛竜の口から黒い灼熱の炎が放たれる。


 それに反応するかのように、木刀がより輝きを増し、さらに膨大な魔力が俺に注ぎ込まれる。


 ……ああ分かってるよ。「これ」を使って勝負を決めろって事だよな。


「くっ、なんだこの魔力量は!?まさか貴様……!?ええい、あの人間を狙え!!」


 俺を見定めた黒龍が大口を開ける。その中には魔力が凝縮された火球が見えた。


 炎を使う竜か……それなら!目を閉じ、意識を集中する。


 『呼び覚ますは、海の覇者にして、大海原の絶対支配者……。何人なんぴとたりとも、その行く先を阻む事、叶わず!!』


 流れ込む魔力と自分のイメージを……融合……成型……!!


「今こそ甦れ!大海龍ギルメデス!!」


 その瞬間、フィールドに巨大な水竜巻が巻き起こった。闇の黒龍(ジルニトラ)が放った火球は竜巻に巻き込まれ掻き消える。


 そして、上空に大量に巻き上げられた竜巻の中、青白く輝く巨大な水龍の姿が浮かび上がった。


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