27話 しんこきゅーだよ!
領主の屋敷にある大広間。ここにオーサム男爵と長男ジョアンがリビングアーマー達に連行されてきた。
「お、おお!ミナトではないか!貴殿が守将であったか!いやいや、久しぶりよのぅ!」
俺を見つけ居丈高に声をかけてくるオーサム男爵。西セイルスを、そして俺達を裏切った将とはとても思えない。降伏し、俺達の前に引き立てられてきたというのに。
ここに居るのは俺とリン、それに護衛のウィルとギースだけだ。俺は視線をそらさずオーサム男爵を鋭く睨めつけた。
「早速ですがオーサム男爵。貴方は西セイルスの民を王家の侵攻より護るという責務を負っていたはず。にも関わらず、我々を裏切り、挙げ句にバーグマン領に攻め込んできた。貴方の胴と首が繋がっていられるのは俺が温情をかけているからではありません。西セイルスの盟主であるエドワード辺境伯の裁決を待っているからです」
そうオーサム男爵に告げると、ギースが忸怩たる表情で俺をちらりと見た。この期に及び今だ領主という権威にすがり虚勢を張る父。その哀れな姿を目の当たりにし、軽蔑と侮蔑が混じった表情を浮かべている。
「いやいや、それは違うぞミナトよ!我がオーサム家はエドワード辺境伯より、遊撃隊として西セイルスの守り手を任された。我らがノースマハに入ろうとしたのは王軍が侵攻し、領内の守りが手薄になっていたのを懸念し、我らオーサム軍が守備をかってでようとしたまでの事。決して裏切りなどではない!」
「は?城門を叩き壊そうとしたり、兵を突入させておいてですか?あれは間違いなく重大な反逆行為に他なりませんが。市民も我々も一部始終見ていましたが?」
「……それは互いに齟齬があったのだ!私は逆にお主らがギースを抱き込み、西セイルスを裏切ったのではないかと思ったのだ。いやいや、誤解が溶けたからよかったものの、ルカ殿も我らを勘違いさせるような行動は慎んでいただかねばな!」
「お、親父……!」
たまらずギースが父の言葉を遮ろうとする。
「もういいよ、ギース。分かっているから」
「……すまない、ミナト」
うつむいて耐えるようにこぶしを握りこんでいるギース。
息子の思いなどさっぱり分からぬオーサム男爵は、自らの髭をなでながら頷き、しおらしい様子など微塵も見られない。
おいおい、なぁにが「慎んでいただかねばな!」だ!言ってる事がめちゃくちゃじゃねぇか!自分で攻め込んで来といて、負けたら「勘違いさせたお前が悪い」だと?こっちは全部わかっているんだぞ!?
しっかし、守将が俺だとわかると急になめくさりやがって、丸め込めるとでも思ったのか!?それともいつもこうなのか?こんな支離滅裂な理論でも領主という権力でまかり通るとでも思っているのか?
と、心の中でめちゃくちゃ悪態をつきながら、いくらギースの父と言えども話にならないなと、ため息をついたその時。
「オーサム軍を降伏させたんだね。感心感心」
「……えっ?えええっ!?ハ、ハロルドさんっ!?」
聞き覚えのある声にその方を振り向くと、いつの間にかハロルドがにこやかに立っていた。
「なんでハロルドさんここに!?ハロルドさんは双子山から出られないはずじゃ……!?」
「まぁまぁ、その話はあとでゆっくりとね。それよりオーサム男爵を捕らえたようだね。うんうん、よくやった。さすがミナトだ」
「ええ。それが……」
「話は聞いたよ。なかなかに面白い与太話だ。いかにも権力をかさに着た小物が言いそうな捏造だねぇ」
「小物だと!?無礼な!私を誰だと心得る!?」
「ははは、弱い犬ほどキャンキャンとよく吠える。そうそう、ミナトにお土産だ」
騒ぎ立てるオーサム男爵を無視してハロルドが大きな袋を取り出す。麻でしっかり編み込まれた丈夫そうな袋だ。
「お土産?なんですか、これ」
「トヨーカ男爵」
「……へ?」
「だから、トヨーカ男爵。いや〜、そのまま闇の底に沈めてやろうかと思ったけど、それだと証拠が残らないからねぇ。気は進まないけどそれだけ取り出してきたんだ」
それだけって……!?いやいやいや、まさかそんな……。
「って!うぁあああー!?」
恐る恐る覗きこんだ俺は思わず持っていた袋を慌てて閉める。少しだけ見えた物は確かに人のものだったからだ。やだやだ!これミサーク村の時のヴィラン2号じゃん!心臓きゅってなるから!頼むからこんなお土産は止めていただきたいっ!
心臓がばくばくして血の気が引いている俺をしり目に、ハロルドさんは飄々と話を続けた。
「トヨーカ男爵は西セイルスの裏切り者さ。それだけでも許しがたいがこいつは我がバーグマン領を我が物にしようと軍勢を差し向けてきた愚か者だ。これは西セイルスに対する明確な反逆。この姿は当然の報いだと思わないか?オーサム男爵?」
「……それが……ト、トヨーカ男爵だと言うのか!?う……、いや!3千ものトヨーカ軍はどうしたのだ!!まさか、お前が倒したとでも言い出すのではあるまいな!?」
「ははは。そうさ。前線にいた部隊は壊滅した。ま、もっとも双子山には一歩も踏み入れさせなかったけどね。他の兵士は今頃、主を失い領地に逃げ帰って頭を抱えて震えてるだろう。ただ兵士達はそれでいいけど、その決断を下した責任者たる領主の罪は免れない。それだけの事を奴は犯した。たいした価値はないけれど、その命をもって償ってもらったよ。フフッ」
「命を、もって……」
「ミナト、いい機会じゃないか、この男も同罪だ。さっさと首を落としたらいいんじゃない?エドワードに伺いを立てる必要はないさ。戦闘により戦死したことにすればいいのだからね」
「ま、待て!さっきから黙って聞いておれば私を侮辱するのみならず、トヨーカ軍を撃退したなどとホラを吹きおって!ミナト!この慮外者はなんだ!早く無礼討ちにせよ!」
「ん?私はハロルド=バーグマンだよ。さっきミナトが言っただろう?」
「はっ!何を言い出すかと思えば、ふざけるのも大概にせい!ハロルド=バーグマンはとうの昔に死んでいるではないか!」
「よーく私の顔を見てごらん?この顔、覚えてないかい?それにしても30年もたつと人間は顔も変わるねぇ。魔物なら姿かたちは、ほぼほぼ変わらないのにね。うーん、あの頃はまだ可愛らしさもあったような。……いや、別に可愛くはなかったか」
まじまじとオーサム男爵の顔を覗き込むハロルドに、気色ばむ男爵は怒声を浴びせる。
「ぶ、無礼な!私は領主なるぞ!どこの馬の骨とも知れぬ貴様など……!」
その瞬間、ハロルドの雰囲気が変わった。
「領主?それがなんだ。自らの欲望にかられ、味方を裏切り、そして敗れ、その挙げ句に自分だけ助かろうと虚言を弄する。そのような下衆な人間に生命の自由があるとでもまだ思っているのか?西セイルスを裏切ると断を下したのはお前だ。その決断により多数の兵が傷ついた。領主としての責は兵士などとは比べ物にならないほど重い。そんな事も解らないか?」
「な、何を言う!私はバーグマン領を守る為に兵士を入れようとし……ひっ!?」
恩着せがましく言い訳をしていたオーサム男爵の顔がひきつる。背筋が凍るような冷たい視線が近づくと右腕をゆっくりと伸ばす。オーサム男爵は蛇に睨まれた蛙のように固まり、立ち尽くした。ハロルドは力強く男爵の頭を掴んだその手をゆっくり自分の顔に近づけた。
「忠告だ。命を欲するなら口は慎め。私はミナトのように甘くはない。これ以上、戯れ言を並べるなら容赦はしない。トヨーカのようにその穢れた首を一瞬で斬り落としてやる」
「ひっ、ひいぃ~!」
今、少しでも反抗すればなんの躊躇もなく、命を刈り取るだろう。瞳の奥にある狂気を感じ取りガタガタと震えるオーサム男爵。
「は、ハロルドさん……!」
腹が立つ、腹が立つけれど、でも、敵対したとはいえ、オーサム男爵は既に俺達に下った敗将だ。戦いは終わった。これ以上、命を奪う必要はない。それに腐ってもギースの父親なんだ!息子たちの前でそれはしちゃいけない!!
そう思った時、俺の肩をピョンと飛び降りたリンがハロルドにテテテッと近づくと顔を見上げて言った。
「ハロルド!そんなに怒っちゃだめだよ!おちついて〜、おちついて〜。しんこきゅ〜、しんこきゅ〜!」
リンがす~っ、は〜っと深呼吸する。リンの頭に乗ったブロスも同じようにハサミを動かし、同じ仕草をした。
「ほらほら!ハロルドも一緒にやるの!」
「えっ?」
「早く早く!だけどゆっくり吸うんだよ~」
ハロルドの表情に困惑の色が浮かぶ。それに構わずリンがにっこりと笑顔で促した。
「あ、ああ。……す~っは~っ。す~っは~っ。こうかい?」
「そうそう~じょうず!そう、ゆーっくりはくよ~。もう一回。リンの真似してね!」
リンと一緒に深呼吸を繰り返すハロルド。その顔と身体に纏うオーラから段々と険が取れていく。
「……どう?落ち着けた?カァ~!ムカムカ〜!ってしたら、一度しんこきゅ〜をするといいよって、ミナトから聞いたの!ハロルド!この街を守ったのはミナトだよ。だからあとの事もミナトに任せて?だいじょーぶだから!」
リンがニコニコと笑いかける。すると、あれだけ冷酷な表情だったハロルドの顔が緩んだ。
「……そうだった。確かに、ルカから守将を任されたのはミナトだったね。私が出しゃばる幕ではなかった。すまなかったねリン。ミナト」
「うん!」
「それじゃミナト、あとは頼む。君に任せるよ」
「分かりました!」
はぁ〜、よかった。危うくオーサム男爵まで殺されるところだった。あのハロルドさんの昂った感情を抑えられるなんて。やっぱりリンはすごいや!
「オーサム男爵。貴方がいくら虚偽の主張をしようが貴方が西セイルスを裏切った事に変わりはありません。これ以上、自分を不利な状況に追い込むのはやめたらいかがですか?」
「な、ならばそれがトヨーカ男爵の首とは本当の事なのか!?」
「では、貴方の目で確かめてみては?」
「うっ、そ、それは……」
言葉に詰まるトヨーカ男爵。やはり見知った者の生首を見るのは躊躇するようだ。
「ミナト殿、ならば私にあらためさせて頂きたい。トヨーカ男爵とは知己もありますゆえ、顔もしっかり覚えていますので」
名乗り出たのはジョアンだった。
「へぇ、父親と違って息子の方は少しは肝が据わっているようだね。ミナト、見せてやってよ」
ハロルドに言われるまでもなく、袋を渡すと中をあらためるジョアン。偽首ではないか確かめるように時間をかけじっくり検分する。その表情にはいささかの揺るぎも感じられない。検分がおわると袋を閉じ数秒の間、悼むように黙とうした。
「……父上、これはトヨーカ男爵に相違ありません。我々の目論見は既に破綻してしまったようです」
「ジ、ジョアンいったい何を……」
「この上はもはや言い逃れはできません。我らは敗れたのです。覚悟をお決め下さい父上」
その場に、へなへなと力なく座り込んでしまうオーサム男爵。
「オーサム男爵。今の貴方の立場はエドワード辺境伯にとって、いや、西セイルスにとっての裏切り者。それは頑然たる事実であり、言い逃れする事はできません。ただ貴方の処遇を決めるのはエドワード辺境伯です。それまではこの戦いが終わるまでは屋敷の一室にて過ごして頂くことになります」
「や、館の一室?牢獄ではないのか?」
「ええ。それが領主たる貴方に俺ができる精一杯の敬意と誠意です。ただ逃亡しようと謀ればどうなるか……。それはよく肝に銘じておいてください」
「わ、分かった」
ウィルに引き立てられ、オーサム男爵とジョアンが退出していく。去り際にジョアンと目が合った。
「ミナト殿。父への配慮、感謝する」
「……いえ」
「私が言える立場ではないが、ギースは領主としての資質がある。どうか宜しく頼む」
それだけ言うと、父の後を追って扉の外へ去っていった。
オーサム男爵等を見送り、傍らで佇むギースに声をかけた。
「ギース、君に頼みがある。エドワードが帰還するまでの間、オーサム領を治めてほしいんだ」
「は?俺がか?でも大丈夫なのか。俺だってもともとは敵対した側の人間だぜ?」
「俺はオーサム領の事はよく分からないし、領主でもない。男爵の息子で領内を一番よく理解している君がこの中では一番適任だろう。今回の事で兵士達はもちろん、領民にも少なからず動揺があるだろう。領主代理としてそれを鎮めてほしいんだ。この戦いが終われば正式な沙汰が決まると思うけど、それまではしっかりと領地を治めておいてくれ」
「しかし……」
「いつか三人で約束したろ?三人で西セイルスを盛り上げていこうって。エドは今、大変な局面にいる。エドを俺達が内側から助けるんだ。力になってやってくれ」
「……分かった。お前とエドの期待に添えるように努めるぜ!そうと決まれば兵達を纏めなきゃな。ひとまず兵はサウスマハに撤退させるからな」
「ああ。宜しく頼むよ」
「それと親父達の事、ありがとな」
そう言って、ギースは足早に屋敷を出ていった。
「ははは、ミナトも甘いなぁ。やった事を鑑みればせめてオーサム男爵くらいは斬首刑でも全然構わないのに」
「例え裏切り者とはいえ、一応は膝を屈したんですからね。無慈悲に殺したらオーサム領の領民の中には納得出来ない人々もでてくるでしょうし。それにルカ様の評判をこんな所で落とす必要もないと思って」
「あ〜、そうか。ルカの事もあったね!しまったなぁ。にしてもミナト、私より君のほうが余程、冷静に対処できるね。領主に向いてるよ。この戦いが終わったら何処かの領地をあてがってもらったらいい」
「か、勘弁して下さいよ!にしてもハロルドさん、どうやってここへ来たんですか?」
ハロルドのその身体は元々双子山の主だったハンプーサという魔物から譲り受けたものだ。ただこの身体には制約があり、双子山とその周辺しか移動できないというものだったが……。
「ふふふ。実はね、今の私はシャドウなんだよ!」
「へ?シャドウ?」
「そう!魂を生前、私が身につけていた衣服に乗り移らせたんだ!いや〜、アーロが遺品として冒険者時代の服をちゃんと保管してくれてたみたいでね!ルカに頼んで出してもらったのさ」
コタロウは敵のシャドウが身につけていた黒装束に憑依して今の姿になった。それと同様にハロルドさんも自分の衣服に憑依する事で自分の身体を再現した。この状態ならばヌシ様の時のような制限はないってことらしい。
「へ〜!シャドウになっちゃうなんてハロルドすごーい!」
「要はコタロウと一緒って事ですよね。でもそんな事して大丈夫なんですか?」
「まぁ、問題ないよ。この術はキャサリンの魔術書に記してあった魔術でね。こんな方法まで編み出しているとは、さすが古の大魔導士キャサリンといったところだよ」
あ~、あの本かぁ。キャサリンはダンジョンマスターで、いつ終わるともしれない永遠と思える時間の中で、自分を見失わずに魔術の研究に没頭しその成果を書き残していたのだ。彼女の聡明さと意思の強さは、どことなくタヌ男に似ているかもしれないなと思った。二人がいれば時空魔法という人の手には余るような魔法が研究により解明され、ごく普通の魔法になったりする未来もあったのかな。なんてね。22世紀のどこでもドアみたいなさ。
と、そこへシンアンが駆け寄ってきた。
「ミナト様!バラム子爵より速報です!」
「バラム子爵から?西で動きがあったのか!?」
ノースマハの攻防戦より少し前、王軍の挙兵に呼応するように西セイルスと国境を接するレニング帝国が国境を越え攻め込んできた。迎え撃つのは西セイルスの誇る猛将バラム子爵。彼は居城コーサイ城に依り籠城戦を展開していた。
「吉報です!国境を越え侵入してきた帝国軍と戦いになりましたが、無事撃退したとの事!」
「本当か!やった!バラム子爵は居城を守り抜いたんだな!」
「はっ!攻城戦が三日続いた後、ベルド殿が率いるドワーフ隊が参戦し、ガルラ王国より取り寄せた大砲の働きにより、敵の指揮官を狙撃したとの事。ガルラ王国の旗を掲げた事も奏功したようです」
「おお!アダムス辺境伯の用意した切り札が、効果を発揮したんだな!」
そう、アダムス辺境伯の切り札とは、ガルラ王国から取り寄せたガルラ王国の軍旗だった。それをもとに大量に軍旗つくり、ベルドに持たせ、500人のドワーフ隊と共にバラム子爵の援軍に向かわせたのだ。これを攻め寄せてきた帝国軍に向け掲げたのだ。これはガルラ王国が西セイルス側として参戦した事を意味する。
帝国軍からみれば、バラム子爵を攻める事はガルラ王国とも戦う事。それはすなわち強大な武力を誇るガルラ王国との宣戦布告と断交をも意味していた。
ドワーフ隊は、バーグマン領とアダムス領を結ぶトンネル掘削の技術者として以前からバーグマン領に滞在していた。もちろん、技術者は仮の姿。彼らの本職はガルラ軍の工作員。もちろん兵器の扱いはお手の物だ。
そして、俺が予め城内に運び込んでいたガルラ王国の兵器を用い、帝国軍を散々に撃ち果たしたというわけだ。それまで意気盛んに攻め立てていた帝国軍は、突然のガルラ王国の参戦と砲撃により前線で指揮を執っていた指揮官をはじめ多くの幹部将校を一瞬で失う事になった。その凄まじいばかりの攻撃を目の当たりにした帝国軍は、進軍をあきらめ撤退したという事だった。
「更に、海戦におきましてもビアトリス率いるフリール船団とアライの守備船団により、帝国の艦隊を打ち破ったとの事。こちらも新たに換装した兵器が活躍したようです」
「そっかぁ!ビアトリスさんもブリトニーさんもよくやってくれた!じゃあ、この事を早くみんなに知らせなきゃだな!」
ノースマハの街では勝利に沸き返っている。戦闘中も領民達が平静を保っていられたのは、ルークやクローイ、それにレオ達、冒険者ギルドの面々、それにパメラや街の有力者が奔走してくれたお陰だ。彼らにも一刻も早くこの吉報を届けなきゃ!
大広間をでようと扉に手をかけようと手を伸ばすと扉がバン!と勢いよく開かれた。
「あ、ミナト!いたっ!」
「あれ、ジョリーナ?どうしたんだ?」
そう聞くと肩で息をしながらジョリーナが叫んだ。
「ミナト!マジ大変だよ~!エリスっちが突然、倒れたって!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
報せを聞き、俺達は取るものも取り敢えず双子山の教会に走った。ジョリーナの話では戦いの後、ロイから降りた直後に倒れ込んでしまったようだ。ロイがエリスを乗せ、アラバスタのいる教会まで運んだようだ。
教会に飛び込むと、医務室へと急ぐ。ちょうど部屋から出てきたアラバスタと鉢合わせになった。
「アラバスタ!エリスが倒れたって!?エリスは大丈夫なのか!?」
「だ、だだ、大丈夫なわけない、ですよ、ミナト様!どうしてこんな、こんな状態のエリスさんをロイに乗せたんですか!?あ、安静にしてなきゃいけないのに!ああ……!」
おろおろ歩き回るアラバスタ、普段の彼女からは想像できない怒りの籠もった表情に思わずたじろぐ。
「えっ?安静にって……俺は何も聞いてないけど……」
「そ、そうなんですか?……もう、ミナト様がミナト様なら、エリスさんもエリスさん……です。あんな状態で無理したらどうなるか……。か、考えていただきたい……です!」
「えっと、アラバスタ?それでエリスはなんの病気なんだ?どこが悪いんだ?」
「び、びょう?病気じゃないですよ?」
「え?だって安静にしてなきゃって……」
「ミナト様。落ち着いて、よく聞いて下さいね。エリスさん、あの、お、おめでたなんです」
…………ほぇ?おめで………た??
俺は、アラバスタの言った言葉の理解が追いつかず固まってしまった。




