16話 冒険者ギルド本部にて
追跡者イルドとの一悶着の後、彼等を伴いローザリアの冒険者ギルド本部を訪れた俺達。そして一階の受付で本部からの招待状を提示した。するとすぐに「グランドマスターがお待ちです。こちらに」と上階へと案内された。
一階が総合受付と冒険者の待機ロビー。二階もランクごとの冒険者受付があり、ここも冒険者が大勢ひしめいていた。うーむ。さすが人口が多いだけあって施設がでかい。そして、冒険者もたくさん登録しているんだなぁ。
ひとまずコタロウとツバキには一階で待っててくれと言いつけて、俺とリン、そしてイルド達が三階のグランドマスターの部屋へと案内された。
「……そうか。任務ご苦労だったな、イルド、ジャック」
「はぁ、酷い目に遭いましたぜグランドマスター」
「まったくだ。相手がSランク級の実力者だって分かってりゃ、それなりの対処をしたってのに」
「ははは。最初から相手の実力が分かる偵察任務なら他の連中に任せていたさ。Aランクのお前達に依頼した時点であたりをつけておくべきではないかな?」
「ケッ、そりゃあそうだけどよ」
「たった一度の油断でパーティが全滅するなんて事態は往々にして起こるものだ。お前達は最近、Aランクという地位に慢心し、態度に驕りの色が見えていたのでな。一度、気を引き締めねばと思っていたのだよ。どうだ?良い経験になっただろう?」
「あ〜。はいはい、よ〜く分かりましたよっと!」
広い部屋の奥、上座に当たる場所には高級感あふれる一人用のテーブル。そしてその後ろの壁には「生涯現役」と書かれた大きな額縁が飾られていた。その他にも役員用とみられるテーブルが四組並べられている。しかし、この部屋で待っていたのはたった一人。
グランドマスターのテーブルの前に居たのは長身でやや細身の初老の男だ。へ~。荒くれた冒険者たちを束ねるトップのグランドマスターってのはルークさんみたいに鍛え上げた肉体をもった、頑健な元冒険者か、老獪で権力闘争を勝ち上がってトップにのし上がる上昇志向の塊みたいなタイプっていうのを想像してたけれど、街ですれ違っても何の違和感もないおじさんというように見える。
ああ、でも纏まとう空気が違うかぁ。動きに無駄がない。ついでに隙もなさすぎる。んん~。やっぱり元冒険者ではあるんだな。リンも念話で『わわっ。ミナト油断しないでね!抑えているけどすごいよ、この人』って伝えてきた。俺たちの思惑を知ってか知らずか、彼はイルドとジャックの悪態を穏やかな表情で受け流している。
そういえば、ここに来る途中、イルド達から「理由もなく尾行なんてされたら誰でも気を悪くするのは当然だ。俺達も任務とはいえ悪かったな」と言ってもらっていたのでそこは許した。いざこざはあったけどギルドの任務として俺達を監視していた訳だしね。
そして、一通りイルド達の愚痴を聞き流し、グランドマスターが俺の方へと視線を向けた。
「よく来てくれたなミナト君。私がローザリア本部、そしてセイルス王国の冒険者ギルドを統括するグランドマスター、マックスだ。君の来訪を歓迎するよ」
そう言って右手を差し出す。
「ノースマハ支部所属の冒険者ミナトです。この度はお忙しい中、お時間を作って下さり感謝申し上げます。Sランクを拝命していただけるとの事で、私のような若輩者に過大な評価をしていただき、誠に有難きことと感激し、取るものも取り敢あえず馳せ参じました」
握手をし、こちらも慎重に相手の出方を見ながら挨拶する。
「フッ、ミナト君。冒険者に貴族のような堅苦しい口上は不要だ。冒険者とは口先ではなく行動で己の働きを示すものだからな。君はこれまで数々の貢献をしてきた。それゆえの招待だからな」
そう言いながらニッと笑うマックス。その貴族的ではない屈託のない笑顔に俺はほっとした。腹黒いものを隠すような、自分の本心を見せない笑顔ではなかったからだ。
いや、気を抜くな。俺。魔王リデルにより王都がじわじわと魔に浸食されつつあると聞き、すべてが罠かもしれないと気を張っていなくては。笑顔一つで心を許しちゃダメじゃん。はい、気を引き締めるよ!
「……さて、そんな事より君は私に聞きたいことがあるんじゃないかな?何故自分を監視し、冒険者をけしかけたんだ、とね」
そうそう、何で冒険者ギルドが俺を監視しなくちゃいけなかったのか、そいつを聞かせてもらわないとな!
「そうですね。ローザリアに着いた時からいきなり監視されたのはこちらも当惑しました。どのような理由からですか?」
その問いに笑みを浮かべたままマックスは答えた。
「うむ、イルド達に聞いただろう。そのままだ。君の実力を測りたかったのだ。彼達はあれで非常に優秀でね。今まで密偵として数々の実績を上げてきたAランクの冒険者。それをこれほど容易く見破るとは、さすがハロルドの薫陶を受けた愛弟子だ」
「……えっ?」
マックスがそう言った時だ。
「なんだとコラァ!」
「俺達が無能だと!?黙って聞いてりゃつけ上がりやがって!」
突然部屋の外から怒号と騒音が響き渡った。
「な、なんだ!?ケンカ!?」
「ふっ、冒険者は血の気の多い連中が多いからな。こんな事は日常茶飯事だよ。私もおちおち業務をしていられなくてね。君のギルドもそうだろう?」
「いえ、ノースマハはギルドマスターが代わってから、冒険者同士の揉め事は少なくなったと聞いています」
クローイさんがマスターになってからは何だかんだ手を打ってるみたいで、ルークさんの時の10分の1くらいの揉め事率になっていると聞いた。クローイさんやっぱりやり手なんだよねぇ。ルークさんは血の気が多い奴らは喧嘩して出血した方が少しは大人しくなるさ!と、喧嘩は容認派だったからね。(もちろん遺恨の残るような案件は起こさないようにギルド内で根回ししていたみたいだけど)
「ふむ。ノースマハというと、確かマスターはルークだったか?」
「いえ、今はクローイさんがギルドマスターです。トラブルがあってルークさんはマスターの座を退きました」
「それは妙だな。こちらにはマスター交代の申請は出ていないが」
「え……」
「おおかたルークが独断でマスターの座を押しつけているのだろう。まったく困った奴だ」
あれ?これって言っても大丈夫なやつだった?別にこの事はルークさんに口止めされていなかったよね?もしかしてお叱りを受けたらごめんね!ルークさん。てへぺろ(死語)
と、バタバタと足音が聞こえると、部屋の扉が勢いよく開かれる。顔に青アザを作った冒険者達が倒れ込むように部屋に転がり込んできた。
「マ、マスター、助けてくれ!よそ者が暴れてやがるんだ!」
「奴らめちゃくちゃ強ぇ!俺達じゃ手に負えないんだ!イルドさん、あいつらをなんとかしてくれ!ひ、ひー!来たー!」
口々にイルドに助けを求める冒険者達。そこへ件の人物がやって来た。
「我らが暴れている?何を言ってる、最初に突っかかってきたのはお前達だろう?」
「まったくだわ。主様の実力を見抜けない連中にとやかく言う資格はありませんわ」
冒険者の後からゆっくり現れたのはコタロウとツバキだった。
「コタロウ、何かあったのか!?」
「いえ、ミナト様への悪口を捨て置けず、そ奴らに少々灸を据えたまでの事」
「え、灸を?」
話をよくよく聞くと、一階ロビー待機していたツバキに酔っ払った冒険者がしつこく絡んできたらしい。ツバキ達は相手にしなかったようだけど、その冒険者が「あんな頼りなさそうなゴブリン野郎なんかより、俺とパーティを組もうぜ、ねぇちゃん。うひひ」と言ったらしく、それを引き金に大乱闘に発展した。いわゆる「もう一度言ってみろ」ってやつだ。
「お前ら、こいつらに喧嘩を吹っかけたのかよ。そりゃ負けるわ。相手が悪すぎるぜ」
イルドが半ば呆れたように冒険者に声をかける。
「まったく。相手メンバーへの侮辱はトラブルの引き金だと何度いっても弁わきまえないからこうなるんだ。なぁ、マスター?」
「それはお前にも言えるがなイルド。まぁ彼らも身に染みて分かったことだろう。ひとまず彼等を医務室に連れて行ってくれ」
「ああ、分かった」
「あとはケンカは相手をよく見てする事だ。イルドからもよくよく諭しておくように」
「了解。じゃあお前ら行くぜ。ほれ、肩を貸してやる」
そう言いながら床に倒れている冒険者を抱き起こす。
「イテテ!もっと優しく!骨が、骨が折れてるぞ!チキショウ!」
「この程度なら折れてねーよ。いいからちゃんと歩け」
イルド達は傷ついた冒険者を連れ、部屋を後にした。
「マックスさん、すいません。ウチの仲間達が……」
「いや、相手への侮辱はギルドでも戒めている。仲間を蔑まれれば腹が立つのは誰しも同じだ。今回は私の顔を立てて許してやってほしい」
「こちらこそ、普段はこんなに喧嘩腰ではないのですが……。申し訳ありません」
「うむ。しかし、次からはもう少しお手柔らかに頼む」
そう言ってコタロウ達に視線を移す。
「我が主君への侮辱、何人たりとも許すわけにはいかぬ!」
「まったくだわ。主様の素晴らしさが一目で理解できぬ愚か者!それに私のすべては主様のもの。そうですわよね、主様?」
「ははは、中々に頼りがいのある仲間だな。ミナト君」
「いや〜、ははは……。やりすぎないようにね……」
ま、まぁ、俺も従魔のみんなを馬鹿にされるとすごい腹が立つし、我を忘れてしまう気持ち、わかりすぎるんだけどさ。だからコタロウ達を責められない。そういうところマスターに似ちゃうのかな?なんかごめんよ~。
「さて、部外者も居なくなったことだし、話を戻そう。君は英雄ハロルドの弟子。そしてハロルドは生きている。いや、正確には生き返った。そうだろう?ミナト君」
そう聞かれて返事に窮した。困ったな……。ハロルドさんが生きている事は公にはしていない(正確にはヌシ様に転生したんだけど)。正直に答えるべきなのか?
「おや、彼に口止めされているのかな?そんな事に気にするような男ではないと思ったが」
俺の心を見透かすようにマックスが問いかけてくる。
「えっと……、あなたはなぜハロルドさんが生きていると思ったのですか?その根拠は?」
「根拠か……。そうだな。彼と私は少なからず因縁があってね。ああ、かつての彼はセイルス王国でも屈指の実力者、そして当代随一の魔術士だった。そのハロルドがそう易々(やすやす)と自分の死を受け入れる性格とはとても思えなかった。くせ者の彼の事だ。きっと何か細工をするはずだと思っていた」
「は、はは……」
「そして最近になって西セイルス、特にバーグマン領が急激に発展してきた。その情報は各地のギルドを通してここにも届いている。そして、彼のお膝元であるノースマハの、そして君の人智を超えた活躍。それらを聞いた時、感じたのだよ。ああ、あの男は生きているのだな、と」
「いや、でもそれは現当主のルカ様が中心となって領を改革していったからですよ?俺は彼の部下ですし、彼の指示通り行動しているだけです」
「バーグマン領の若き領主が優秀なのは無論知っている。流石はハロルドの孫よ、と思う。しかしそれだけではない。いくら領主が有能とはいってもまだまだ幼い。その彼が活躍しているのは補佐するブレーンが優秀だからに他ならない。そして、あのやり口は、おそらくハロルドが補佐役としてついているからなのだろう……とな」
「ちょっと待って下さい、マックスさん。バーグマン家には有能な人材が沢山います。彼等がルカ様を補佐してバーグマン領を豊かな領地へと発展させたのです。今の説明は全て推測にすぎず、ハロルドさんが生きているという決定的な根拠にはなり得ません」
「ならば決定的な根拠を話そう。彼の従魔であったホーングリフォンが目撃された事だ。あれはハロルドの死と共に双子山に封印された。そのグリフォンの封印を解くことができるのはハロルドただ一人。これは彼以外誰にもなし得ないことだ。そして、君はノースマハ支部所属の冒険者だ」
「マックスさん。失礼ですが、貴方はハロルドさんを知っているような口振りですが、どのようなご関係だったのですか?」
どうしてマックスはハロルドさんにこんなに執着しているのだろう?ハロルドさんが生きていたと知ったらマックスは……。
俺の困惑を見抜くかのように、フッとマックスの表情が緩んだ。
「そうだな。自己紹介がてら私の身の上を話させてもらおうか。私もこう見えて昔は冒険者をやっていてね。魔物の大量発生にも参加していたんだ」
「ハロルドさんが参加したあの魔物の大量発生ですか?」
「そうだ。公式にはハロルドの「鋼の翼」がダンジョンマスターを倒した事になっている。しかし、あの戦いには多くの冒険者も参加した。私もパーティを組み参戦していたんだ。これでもあの魔物の大量発生モンスターインパクトまでは我々のパーティ「白き稲妻」も「鋼の翼」とはライバルの間柄と冒険者間では認知されていたのだ」
「そうだったんですか?ハロルドさん達ばかり英雄と褒め称えられてますけど、たくさんの冒険者たちが協力していたんですね……」
「そうだ。我々も必死に戦っていたのだ。自慢ではないが最下層までたどり着けたのは「鋼の翼」と私のパーティだけだった。しかし終わってみればダンジョンマスターを倒したハロルド達「鋼の翼」だけが英雄として称えられ後世に名を残す事になった。ハロルド達が英雄として歴史に名を残した陰で我々は歴史の中に埋うずもれていったのだよ!」
「……」
「まぁ、それは仕方がないことではある。しかし、私はそのことでハロルドたちを恨んだりしたことはない。一握りの勝者のみが称えられ、大半は名も残せず消えていく。歴史とはそういうものだからな。ハロルドと共に戦い、命を懸けて辛うじて勝利した私達のような冒険者の大半に与えられたのは、ほんの一時の称賛と僅かな褒賞金のみだ。まぁ、私はSランクの称号、そしてこの冒険者ギルドのグランドマスターの地位を与えられただけ、まだマシだったがね」
え、ハロルドさんを本当に恨んでないの?大丈夫?何か引っかかる物言いなんですけどっ!
「しかし、あの時、被害を被ったのは我々だけではなかったからな。セイルス王国が一丸となって再建に乗り出そうというときに我等、冒険者ギルドだけが被害を保証しろとは言えなかったのも確かだ。そのおかげで先代のグランドマスターは実質的に更迭になってしまったがな。……おっと、すっかり話が逸れたな。私はハロルドが生きている、いや甦ったと思っていると言ったな。君と話していてそれが確信に変わったよ」
「確信に、ですか?」
「ああ。君は彼の事を一貫して「ハロルドさん」と呼んでいたな。ハロルドは二十年前以上に亡くなっているはずだ。しかし、君の言葉の節々には非常に親しみが込められているように私には感じられた」
「あっ……」
「それは君が彼に会い、なおかつ良好な関係を築いているからではないのかな?」
「……」
「ははは、随分と警戒しているようだが心配することはない。私は君の秘密を誰にも話すことはない。現にこの部屋にいるのは私だけだ。見張りや盗聴は一切仕掛けていないよ。君と私のサシの話し合いだ。だから他の役員には席を外してもらっているのだよ」
そして、俺の目をじっと見ながらマックスが口を開く。
「実はなミナト、冒険者ギルドはある問題を抱えている。これはセイルス王国における冒険者ギルドの行く末を左右する非常に重大な事案だ。君は辺境伯とも知己があると聞く。それならば昨今の王国を取り巻く情勢も分かるはず。ならば我らが抱える問題も分かるだろう?」
「……冒険者ギルドが皇子側につくか、辺境伯側につくか、という事ですか?」
「冒険者ギルドは本来どこにも属すものではない。あくまで中立。どこにも属さないからこそ、我々は冒険者なのだ。しかし、何物にも属さないギルドと言えど、セイルス王国の庇護もあることは事実。アーサー皇子がすでに王座に就く事は確定しているし、本部はこの王都にある。しかし、君も知っている事だとは思うが、今の皇子はアーサー皇子ではない」
「そのことを把握していて、ギルドは俺を呼んだんですか?」
「やはり、君は聡明だな。本来であれば魔王に乗っ取られている皇子側につくのは得策ではない。しかし、国力にも軍事力にも劣る辺境伯側についても勝算は薄い。しかし、どちらにもつかずでは決着がついた時、どちらからも冷遇される。冒険者を擁する我がギルドのような存在はどのような権力に対しても中立であるべきだ。しかし、王制や帝政を敷く国がある以上、我々の業務に対する干渉を避けるのは難しい」
確かにダニエルの一件でも冒険者ギルドは業務停止の措置をとられたことがあったしな。ましてやここは王都だ。王の膝元で権力の影響とは無縁となるのは難しいだろうなぁ。
「私は今までの皇子と王族による粛清劇を見聞し、もはや中央と西セイルスの衝突は避けられないと思っている。冒険者ギルドとしてもいつか旗色を鮮明にしなければならない時が来る」
その為にマックスさんは情報を集めているんだろう。今は少しでも味方が欲しい。マックスさんはハロルドさんが生きている事を確信している。ハロルドさんへの遺恨ではない。冒険者ギルドの存亡とこれからの選択の為だったのだ。もう隠す必要はないだろう。
「……分かりました。ハロルドさんは確かに生きています。今はバーグマン領の双子山で暮らしています」
「ははは、そうだろうな。無理やり聞き出すような真似をしてしまいすまなかった。まぁ、驚きはない。おそらく「鋼の翼」のメンバーも動いているのだろう?」
「はい。俺も微力ながら協力させてもらっています」
「そうか、西セイルスは本気で勝つ算段をつけるつもりだな。……分かった。私としても魔王リデルより辺境伯の支配のほうが冒険者も恩恵がありそうだ。それに……」
「それに?」
「私は酒が好きでな。酒好きの辺境伯ならば今より酒税を下げてくれるかもしれんからな」
「そうですね。アダムス辺境伯ならきっとそうしてくれるでしょう。俺からも頼んでおきますよ」
そして互いにニッと笑いあう。彼の言外に含まれた思惑が分かったからだ。
「うむ。あとは西セイルスで生産されている旨い酒を送ってもらえるかな?」
「分かりました。活きのいいやつを送ります。そのかわりこちらにも王都の特産品をお願いしますね」
「よろしい。引き受けよう」
おそらくマックスさんは辺境伯に賭ける決断をしたんだ。西セイルスの旨い酒とは「情報」の事。各地のギルドから集まる情報には情勢を左右する重要なものが多数含まれる。それらを交換する事でアーサーの動向もかなり把握できるはずだ。
「ミナト、君の実績と実力は間違いなくSランクだ。それは君の連れている従魔達を見ればわかる。その武力はおそらく君の想像しているよりずっと強大だ。くれぐれも使い方を誤らないようにしてくれたまえ」
「ええ。俺の大切な仲間達ですから」
「フッ。これは私からの忠告だ。中央が動けば西のレニング帝国も同時に動く可能性が高い。初動を捉え挟撃に備える事が何より重要だ。その為の備えは怠るなよ」
「そのあたりはウチの優秀な頭脳ブレーン達が動いています。細工は流々仕上げを御覧じろ、です」
「はっはっは!そうか。いらぬ世話だったか。あとハロルドに会ったら伝えてくれ。「本来お前が就くはずだったグランドマスターを俺に押しつけた事。そしてノルンの酒場娘と花屋の娘を横取りされた恨みは忘れてないぞ!」とな」
あ、マックスさん遺恨ありまくりだった。またここでも女性関係で恨みを買っていますよ~。ハロルドさーん!
「あ、はは……。分かりました。必ず伝えます」
こうして俺のSクラスへの認定が認められた。その際、「Sクラス到達の証として相応の物品を預からせてもらう」と言われたのでスカイドラゴンの眼球を渡した。
そしてマックスさんからSランクの冒険者カードを受け取った。最高峰のカードは真っ黒なブラックカード、そこに名前だけが刻まれている。「何物にも染まらず、己の道を駆け抜けた証」という意味が込められているらしい。
さぁて、これで表向きの用事は済んだ。あとは色々やって早めに帰らないと。もう時間はない。セイルス王国、そして周辺の国を巻き込む戦火が俺達に近づいているのだから。




