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『俺』とゴブ『リン』~俺のスキルは逆テイム?二人三脚、人助け冒険譚~   作者: 新谷望
6章 英雄ミナト編

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7話 女忍びツバキ



「いやはや、4000を超えるリビングアーマーやシャドウ達をもれなく従魔にしてしまうとはのぉ」


「ミナトはテイマーとして頂点を極めたのではありませんか?ヌシ様」


 リビングアーマー達への新名授与をヌシ様とルカが感嘆しきりに俺を褒めそやす。


「頂点だなんて……!ルカ様、やめてくださいよ~!コタロウからもシャドウの任務の遂行に必要だと言われましたし、リビングアーマー達も兵士や街の人達と円滑にコミュニケーションがとれた方がいいと思いまして。なんにしてもこれでバーグマン領を護る任務がはかどりますよ」


「そうだな。彼達は今やバーグマン領の警備において欠かすことのできない存在。昼夜問わず、忠実に警備にあたることができるリビングアーマー達はバーグマン軍の中核を担うことが出来るだろう。実に心強い限りだ!ミナト、感謝するぞ」


 ルカが俺の手を取り力強く握りしめた。その力強さにふと、出会った時に籠の鳥として守られてきた少年が、自分の羽で大空に飛び立てるほどに成長してきたのだな、と感じた。時がたつのは早いな。あっという間だ。そして、嬉しいような、誇らしいような、少し寂しいような気がするのだった。


「それにしても、これだけ沢山のリビングアーマーやシャドウに名前をつけるなど大変な労力じゃったろう?」


「ははは。それが案外そこまででもなくて、ウィルのように前世の名前を覚えているケースがかなりあって、そういう人達はその名前をそのまま付けました。名前を忘れてしまった場合は自分で考えてもらって、それを俺が授与するって感じだったんですよ」


「ほほぅ。なるほどな」


「でもシャドウ達はちょっと特殊で……」


 当初はウィル達のように自分達で決めてもらおうとしたが、シャドウ達はコタロウのように俺に日本的な名を付けて欲しいと望んだのだ。しかし、シャドウはざっと三百人はいる。


 そこで昔の商家で丁稚や手代、番頭が名前の後に「吉」や「助」などを付け、その時、その人物の地位がすぐに分かるという命名を拝借した。コタロウを首領として直接指示を与えるいわゆる上忍クラスには「〜蔵」。その下の中忍クラスには「〜兵衛」。そして、下忍には「~助」といった具合。


 しかし、本当に大変だったのはここからだった。後ろに付ける字は階級によって決まっているから後は漢字で一文字ひともじ程度なのだがなにせ人数が人数だ。


 まず、上忍は人数も少ないので数字を順番につけていく「一蔵」「二蔵」という感じにした。


 で、中忍や下忍には上に来る一文字を全員分考えた。分かりやすいところで、数の単位、干支、十干じっかんなどなど……。そんな塩梅でなんとか全員の名前をつけ終えた。


「ふむぅ。そのような要求をするとは、ミナトのシャドウは他とは違って個性的じゃのぉ。やはり、主人の影響じゃな。ほっほっほ」


 俺の話を聞いてなんとも楽しげに笑うヌシ様。それって褒め言葉なんですかね?


「しかし、これだけの数の従魔契約じゃ。ミナト、身体にどこか負担はかかっておらんか?」


「いえ、特になにもないですよ?リンやウィルの時も何もなかったですし。ひょっとしていっぺんにしちゃうのがまずかったですか!?」  


「いや、これほどの数の従魔契約をこなして何ともないのなら良いのじゃよ。しかし4000もの数の従魔契約とはのう、ワシもこんな話は伝説のたぐいでも聞いたことがない。お主はまさに英雄の名に相応しいぞ。「伝説のテイマー誕生!」と言ったところかのう。ほっほっほ!」


「そ、そうなんですかねぇ……。ははは」


 と、伝説のテイマーは置いておいてとにかくバーグマン軍の戦力は大幅に上がった。リビングアーマーやシャドウ達も意思疎通ができるようになり、食料も疲労も考えなくてもいい軍ってある意味最強だよね。この土地を護りたいって強く思ってくれている彼らはすごく頼もしい。でも、うん、見た目はこっちが魔王軍っぽい……んじゃないんだろうか?ううっ、でも、彼らは本当に忠義心があつい良い従魔なんだよぉ~!!(アーサー皇子は王家だけに正統派な騎士団そろえてくるんだろうなぁ……)




  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




「ミナト様、我々の願いを聞き届けて頂き、感謝申し上げます」


 ヌシ様達が去ったあと、人目をしのぶようにコタロウが姿を現した。その隣には一人の女性を連れている。


「いや、これでコタロウ達の任務がやりやすくなるんだろう?ところで君の隣にいる女の人は?」


「あら、もうお忘れになりまして?うふふ、主様。貴方様に命を頂いたツバキに御座います」


「ああ、君か!あの時はフードをつけていて分からなかったよ」


 顔を上げた女の忍び。ツバキは艶やかな肢体、そしてけだるげな瞳とぽってりとした唇が何とも言えない妖艶さと色香を漂わせていた。彼女は耳目衆じもくしゅうの中で数少ない女忍おんなしのびだ。


 彼女達、女忍衆には花や植物の名をつけた。ツバキはそれを束ねるリーダーで、実は今回の真名授与の名前を欲したのも彼女なのだそうな。元は不死者であり、生前強い憎悪を抱いたまま亡くなり、生ける屍となって彷徨って居た所をアラバスタに救われ、以降はコタロウの元、耳目衆の一員として情報収集や敵のシャドウとの戦いに明け暮れているという。


「見て下さいな。主様あるじさまと契りを結んだお陰でこの通り、肉体も艶が戻りまるで通常の人間のようになりましてよ。ふふっ、もし、主様あるじさまのお望みとあらば、私の手練手管を駆使して……」


 そう言いながらするりと俺の横に立ち、背中にそっと手を這わせるツバキ。


 !?な、この指使いはっ……!?ふおおっ……!


 その瞬間、背中に電気が走る!得も言われぬ感覚が身体をかけめぐった。


「ツバキ。いい加減にせよ。ミナト様を困らせるでない!」


「はいはい。まったく、かしらは人の恋路を邪魔するのが好きなんだから」


 コタロウの鋭い叱責に、名残を惜しむよう俺の身体から離れるツバキ。ふはあぁぁ~っ!お、恐ろしい手管だった……。これはやばいやつですよ……。ごくり。


 そして、ツバキは表情を改めると再びコタロウと共にかしこまる。


「私の願いを叶えて頂き、改めて感謝申し上げます。このツバキ、これまで同様、いえこれまで以上に主様の為に働かせて頂きますわ。どのような情報のぞみでも手に入れてご覧に入れます」


 確かに先ほどの手管で、どんな情報でも手に入れそうでコワイ……!


「ツバキ達、女忍衆は陽炎組かげろうぐみといい主にローザリアを拠点に諜報活動を任せております。王都を訪れた際はお寄りください。宿泊等の手配も抜かりなく致します」  


「おお、それは助かるよ」


「お越しの際は、我らが王都をご案内いたします。我ら陽炎組かげろうぐみ総出で主様をおもてなししますわ」


「そ、総出で……、ははは」


 ……ついついハーレムっぽいものを想像をしてしまった。いかんいかん。うん、心の中をエリスに見られなくって本当に良かった!


「おもてなしだって!それじゃ、美味しいご飯がいっぱいあるの!?」


 俺とは違って純真なリンはキラキラと目を輝かせる。


「ええ。国内外のあらゆる食材を取り寄せ、妙味珍味も揃えるわ」


「わぁ、楽しみだね!ミナト!」


「そうだね。ギルドの件で王都に行く予定もあるし、その時は報せるよ。……コタロウ、ツバキ。改めてこれからもよろしく頼む」


「ははっ!ミナト様の仰せのままに!」


 


  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




 そして、それから数ヶ月が過ぎ、双子山の役所の会議室にはシンアン、レビン、オスカーとバーグマン家の内政を担う重臣が集まった。そして、アドバイザーとしてビアトリスも参加している。


「おお、ミナトさん。忙しい中、時間を作って頂き申し訳ありません」


「いや、全然大丈夫だよシンアン。各地の物資集めもあらかた終わったしね。ああ、オスカー!どうだいこの役所は?」


「うん。初めて中に入ったけど立派な役所だね!」


「ここにはテイマーズギルドも併設されてるんだ。以前、オスカーから「ここの将来性を考えて、建物は余裕をもって作ったほうがいい」ってアドバイスを貰ったけどその通りにしてよかったよ」


「そうだろう?バーグマン領はまだまだ発展の余地がある。ここの役所もまた手狭になるくらいにしなきゃいけないからね」


「ははは。さすがオスカーだ」


 シンアンからの呼び出しを受けて双子山の役所にやって来た。ここではシンアンを中心とした役人達が俺の管轄区の業務を行っている。シンアンの目利きでなかなかに優秀な人材を取り揃えているのだ。


「さて、本題に入りましょうか。まずはアダムス辺境伯より要望のあったバーグマン領とアダムス領を直接結ぶトンネルの開発計画からです」


 シンアンが概要を説明する。現状では鉱山で採取された鉱石や精錬された金属、その他物資をアダムス領に輸送する場合。一度、川を下り、トヨーカ男爵領を経由したのちアダムス領に運ばれている。


 このルートは南に大きく迂回するような行程であり、船を使った後、また陸送するなど結構時間がかかってしまうのだ。


 実は地図的にはバーグマン領とアダムス領は隣り合っている。しかし、その接点には高く険しい岩山がそびえ立っているため、通行が難しく、ましてや物資を運ぶ事など不可能だ。


 それを解決する為の手段が岩山をトンネルで貫く「縦貫鉄道計画」なのだ。トンネルを貫通させ、そこに線路を敷設し、物資を輸送する魔力列車を走らせる、という非常に壮大な計画だ。


 俺とシンアンで書き上げた計画書をオスカーとレビンに手渡す。


「……なるほど。双子山とアダムス領を結ぶトンネルかぁ。確かにアダムス領とは直線距離ならそれほど離れていないしね。これならここで生産された物品を直接、大都市のワイダに運べるから大幅な時短になるね。物流が活発になればバーグマン領がさらに栄える。うん、いいんじゃかいかな?」


 オスカーが計画書に目を通しながら頷いている。それに疑問を挟んだのは財務官のレビンだ。


「しかし、ミナトさん。魔力鉄道の導入とありますが我がバーグマン家にはそのような技術があるのですか?確かに我々はネノ鉱山、そしてミサーク鉱山を操業させ技術を蓄積させてきていますがあの岩山を掘削するとなるとかなりの難事業になります。さらに我々は魔力鉄道など保有していませんが?」


「ええ。なので今回の事業は、ガルラ王国の技術を導入して行います」


「ほう。そのような事が可能なのですか?」


「つい先日、西セイルスとガルラ王国との間に協定が結ばれました。それに付随し、ガルラ王国から魔結晶の鉱脈の共同開発の話が来ています」


「なんと。ガルラ王国との共同開発ですと?」


「はい。いずれルカ様から話があると思いますが、ガルラ王国のハンマ家を通じて、魔結晶の鉱脈を共同で開発したい、との打診がありました。条件はガルラ王国が持つ採掘技術のノウハウを使って開発を行う。つまり、ガルラ王国の持つ技術を我々も経験する事が出来るということです」


「ミナト、それはひょっとして縦貫鉄道敷設の協力の見返りいうことかい?」

  

 興味深そうにビアトリスが話に入ってくる。


「ええ。ガルラ王国からの要求は魔結晶鉱山の合弁事業化。産出される魔結晶の取り分はバーグマン家が6でガルラ王国が4です」


「なるほど。それで鉱山の経営権の方はどうなるんだい?」


「経営権はバーグマン家にあります。そして、今回の計画ではガルラ王国から大勢の技術者を派遣してもらえることになっていまして。ルカ様やアダムス辺境伯にはあらかじめ計画を伝えてありますし、ガルラ王国の協力は取り付けられそうな事は分かっていたから、先行して宿舎は建築しています。既に大半は完成済みですよ」


「そうかい。そこまで話が煮詰まってたんなら、これはいよいよ西セイルスをアーサーから守らなきゃいけなくなったね」


「はい。まぁ、その為の今回の計画でもありますから」


 一通りの説明が終わるとシンアンが口を開く。


「それにしてもミサーク大森林は鉱物の宝庫ですな。バーグマン家が短期間でここまで成長出来たのはルカ様の政策推進やミナトさんの奔走、またフリール商会の資金力もあったがやはり、ネノ鉱山やミサーク鉱山を背景にした収入の寄与が大きい。魔鉄をはじめ、ミスリル、そしてヒュプニウム。それらがバーグマン家に富と名声をもたらしたといっても過言ではないですからな」


 噛み締めるように言うシンアンに、オスカーが頷く。


「そうですね。ただ、これはあくまでも魔物の大量発生モンスターインパクトのリスクの裏返しだということは忘れてはならないと思います。僕やミナトはミサーク大森林の恵みと怖さを身を以て知っています。今は人間側について恩恵をもらたらしている大森林が、いつひっくり返って僕達に牙を剥くか分からない。その為の研究と対策は進めておいたほうがいいと思います」


「オスカーさんの言う通りですな。しかし、こんな時ですが、この計画は確実に進めていかねばなりません。そして、いよいよ王家の禅譲の儀まで二ヶ月を切りました。アダムス辺境伯も儀式を執り行う総責任者として近くワイダを発つようです。そうなれば儀式が終わるまでは西セイルスには戻れません。仮に不測の事態が起こっても我々だけで対処せねばなりません。慎重に、かつ情報を共有しながら皆様動いて頂きたいと思います」


 シンアンの言葉で、会議は散会となった。その後、オスカーが声をかけてきた。


「ミナト、一ついいかい?ミナト騎士団についてなんだけど……」


「え、騎士団でなにかあったのか?」


「いや、そうじゃないんだ。新たに加わったリビングアーマー1000人は君が預かってもらえないかな、と思ってさ」


 元々3000程であったミナト騎士団。しかし、その後もレイスやゴースト、不死者等をリビングアーマーに憑依させ続けていた為、数が増え、今では4000人を超えるところまで膨れ上がっていたのだが……。


「一応、リビングアーマーの指揮は僕が取ることになってるけど、数が増えすぎても身動きが取りにくいんだ。正規兵として3000名までは僕が、それ以上は遊撃隊としてミナトにもある程度の数を持っていてもらった方がいいと思う。その方がいざと言う時、僕も心強いからね」


 ということで増えた1000人のリビングアーマー達は双子山やその周辺の施設の警備についてもらい。有事の際は俺の直属軍として手元に残すこととなったのだった。




  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




 そして、その数日後。ある人物がオスカーを伴い、俺の所にやって来た。


「俺に用があるって?いったいどうしたんだい、ウィル?」


「ははっ!実はこのウィル、本日は差し出がましくもミナト様にお願いがあって、まかり越しました!なにとぞお聞きとどけ下さい!」


 訪ねてきたのはリビングアーマーの指揮官ウィルだった。表情はフルヘルムで読み取れないけれど何か思いつめた感がある。


「……分かった。君が俺に頼み事するなんて滅多にない事だしな。話してみてくれ」


 俺はウィルに続きを促した。

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