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『俺』とゴブ『リン』~俺のスキルは逆テイム?二人三脚、人助け冒険譚~   作者: 新谷望
5章 セイルスの闇編

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41話 奇縁、仮面の女




 次の日、俺達はアイスゴーレムの秘密を探るべく、リンの気配探知に従って切り立つ崖の下にいた。


「ほら、あそこ!あの上の方が変な感じなんだよ!」


 リンの指差す先は崖の上。う~む、めちゃくちゃ高い。20メートルはゆうにあるぞ。辺りを見渡しても迂回して、崖上にでられそうな箇所は見つからない。つまりこの崖をなんとかして登らねばならないのか。


 しかし、ここはアイスゴーレムの行動範囲内。たとえ全てのアイスゴーレムを倒しても奴等はすぐに復活する。その僅かな時間でこの崖を登らなきゃならないのだ。


 あいつらの中に弓矢を持った奴とか魔法が使える奴もいるしなぁ。そんな中で登坂なんてやったらそれこそいいまとだ。風〇たけ〇城的なやつになってしまう。


「登るにしても見た感じ、掴まれる出っ張りも少なそうだし、なんかツルツルしてる。ロッククライミングなんてしたことないしなぁ……。どうしよう?」


「ミナト!水柱を使おうよ!あれに乗ればビューって上まで行けるよ!」


「お、そうだな!リン、ナイスアイデア!」


「ミー君、水柱って?」


「フッフッフ、それは見てからのお楽しみ!さ、エリス。もっと近くに来て。……いくぞ!水柱!」


「えっ?きゃあ!」


 その瞬間、足元から凄まじい水圧の水流が溢れ出す。それはどんどんと勢いを増し、噴水のように俺たちを上空に押し上げ、あっという間に崖の上へと到達した。


 水柱から降り、地面に足を降ろす。


「ミー君、いつの間にこんな凄いことができるようになったの!?」


「前にビアトリスのおふねに乗ってドラゴンを倒した時に使ったんだよ!ごーっ!ってきたドラゴンの攻撃をぶわーっ!ってお水を吹き上げてかわしたんだよ!」


「いや~、結構前からイメージ修行をやってたんだよ。ただ水を噴き上げるだけじゃなくて、てっぺんに乗れるようにとか、乗っても服が濡れないようになると便利だな〜とか、色々考えててさ。ギルメデスとの戦いから実戦投入したけど、良い感じに使えたんだよ」


「そうだったの。ミー君もいつの間にこんな事までできるようになったのね!」


「まぁ、俺もそれなりに頑張ってるんだぜ?なんてね」


「ふふっ、そうね。間欠泉をやろうとして魔力が枯渇してたあの頃とは違うわね!」


「初めて魔法を使った時だよね!あの時、ミナトいきなり倒れちゃったもん!」


「ははは、そんな事もあったねぇ。でも昔の俺とは違うのだよ!……多分」


「もうっ。ミー君!そこは、ちゃんと自信を持って言うところよ!」


 そう言って皆で笑う。


「それにしても、びっくりしたわ。崖の上にこんな場所があるなんてね」


 エリスがつぶやく。崖を登った先にも少し開けた場所があり、それを取り囲むように森が広がっている。


 ……ん?木々の間で何か動いたぞ?何かの気配を感じた。


「ミナト、あっち!敵がいるよ!」


 とっさに木刀を構える。と同時に目の前に5体の影が音もなく現れる。前世の忍者とよく似た黒装束を纏っていた。


「シャドウだ!エリス、気をつけろ!」


 おいおい、アイスゴーレムの次はシャドウかよ!でもこれではっきりした。こいつらは明らかに野生の魔物とは違う。この近くにこいつらを生み出している存在がいるに違いない!


 シャドウの放つオーラがかなりの手練れである事を言外に示す。シャドウは忍び刀を抜き放つと、俺達を取り囲むようにジリジリとにじり寄ってくる。俺達のすぐ後ろに崖が迫っていた。崖下にはアイスゴーレムが待ち構えている。


「退路はない。ここは一気に仕掛けるぞ!」


 二人が頷き、エリスは詠唱を始める。シャドウは魔力で動く人形だ。死の恐怖などない。俺達が一体づつ相手にしようとすると、その隙に別のシャドウが襲いかかってくるだろう。やつら連携が得意だからな。


 それなら強力な魔法で一気にカタをつけるまで!


 リンもエリスの詠唱と同じように「ん〜」と唸っている。


 エリスの詠唱が終わったその直後、


「りーんちょーっぷ!」


 一瞬早く、リンが土魔法を放つ。地中から飛び出した長い土の腕が手刀となって地表スレスレを薙ぐ。その攻撃を察知したシャドウ達が攻撃をかわし飛んだ。と、同時に、


「いくわよ!トルネード!」


 上に飛んだシャドウを捕らえるように足下から暴風が湧き上がり、シャドウを包み込む。既に上に飛んだシャドウ達には避ける事は叶わず、風の渦に呑み込まれた。


 うねる暴風は嵐となり、多くの石や木の枝を巻き込み、荒れ狂う。激しく暴れ、のたうち回る強風の中、シャドウ達はなすすべなく翻弄され続けた。


 やがて風が収まると、そこには木々の破片や石に混じりシャドウが身に着けていた黒装束の切れ端が残された。


「シャドウたちは木っ端みじんか……。エリス流石さすがだな!」


「ふふっ、ありがと。それでこれからどうする?」


 シャドウを倒し、改めて周囲を見回すが、うっそうとした森が広がっているだけで道らしい道も見当たらない。しかし、雪原の崖の上にこんな森が広がってるのはおかしい。絶対にあやしい。俺達、どこか別の場所に飛ばされて来ていない?


「……!ミナト、あれ!誰かがいるよ!」


 リンの指さす方向に、いつの間にか一人の人物が立っているのが見えた。突然現れたのはフリルの付いたスカートを身に着けたメイド風の女だ。その女が俺達の前に歩み寄る。


「よくぞ、ここまでいらっしゃいました。主人が首を長くしてお待ちです。どうぞこちらに」


 警戒している俺達をよそに女は恭しくお辞儀をする。しかし、その顔には素顔を見せるのを拒むかのように、ペストマスク(?)のようなものをかぶっていた。


「わぁー!面白いおめんをかぶっているね、ミナト!」


 リンはなぜか楽しそうにしてるけど、ペストマスクのようなくちばしのようなものが着いた仮面。そんな物を被ったメイドって……。胡散臭さが半端ない。怪しさ100%じゃないか。


「……シャドウをけしかけたのはあんたか?」


「そうです。主人から「実力を試せ」とのめいを受けておりました」


「主人?いきなり襲いかかってきておいて、私達を待ってるっていうの?あなたの主人は随分と自分勝手な人物のようね?」


 エリスが警戒を緩める事なく問いただす。


「我が主人は、こう言っておりました「この程度の敵ならば苦も無く突破出来よう。我が子ならばな」と」


「は?我が子?」


 思わずエリスと顔を見合わせる。なんのこっちゃ?俺の前世は日本人だし、エリスはれっきとしたハロルドの娘だ。まさか……リン?


「案内致します。どうぞこちらへ」


 そう言うと、踵を返し困惑する俺達を置いたまま、ゆっくりと森の奥へと歩いていく女。


「どうするミナト?ついて行ってみる?」


「何者かも分からないけど、あの人についていけばアイスゴーレムの秘密を知っている人に会えるかもしれない。危険だけど行くしかないか」


 と、隣のエリスを見ると一瞬たじろぐほどのピリピリとした空気に包まれている。


「ええ。ミー君の言う通りよ。行かなきゃいけないわ。私は絶対にその人に会わないといけないから」


 エリスのいつもと違う雰囲気に、どうしたの?と、聞く前にエリスは歩き出していた。俺達も慌てて彼女を追って森に足を踏み入れた。


 


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




「おおっ!いきなり道が現れたぞ!」


「すご〜い!さっきまでなんにもなかったのに!これゲンジュツなの!?」


 森に入った直後、鬱蒼とした草木が割れるように無くなり森の中に一本の道が現れた。


「はい。普段は侵入者に備え、森には幻術が掛かけられております。もし、招かざる客が森にやって来た時は速やかに排除します。シャドウやアイスゴーレムは、それぞれの場所を死守するよう命じられておりますので」


 前を歩く女が淡々と答える。なるほどアイスゴーレム達が敷地の外まで追ってこないのは、そのせいだったのか。


「ミナト、あっちこっちに気配があるよ。ずっとリン達を見てるみたい」


「そうね。森のあちこちから視線を感じるわ」


 エリスも気配を感じ取っている。おそらくはシャドウがあちこちに伏せられているんだろう。


 それにしても、なんで彼女の言う主人はこんなにも厳重にこの辺りを守っているんだろう。そもそも「我が子」ってどういう事だ?


 森を暫く歩くと突然開けた場所に出る。そこは森の中にありながらポッカリと空いた空間のようになっていた。そこには立派な館が建っていた。


「あのやかたです」


 女と一緒に館の玄関に立つと、音もなく扉が開いた。


「ミナト、戸が勝手に開いたよ!便利だね〜」


 リンは無邪気にそういうけど、この演出はあんまりいいイメージがしないんだけどな。幻術とか俺、わりとあっさりかかる方だから、幻術士相手だったら困るんだよなあ……。と考えながら後についていく。


「さぁ、どうぞ」


 女に導かれ、中に入る。うん、立派な造りだ。床も窓も磨きぬかれ、置かれた壺や絵画にも気品がある。しっかりと管理された邸宅といったおもむきだ。


 客間に通されるとそこにも様々な調度品が置かれ、来客を愉しませるようになっていた。来客用の豪華なテーブルには既にアフタヌーンティーセットが用意され、良い香りを漂わせている。


「わぁ!おいしそー!」


 リンが目を輝かせる。アフタヌーンティーセットにはスコーンやクッキーなどの焼き菓子、そしてカットされたアップルパイなどお茶うけに最適なお菓子が飾り付けられていた。


「ねぇねぇ!これ食べてもいいの!?」


「もちろんです。どうぞご遠慮なさらず」


「わーい!……わぁ!さっくさくだぁー!おいしー!」


 リンが両手にスコーンとクッキーを持ってウキウキと口に運ぶ。リンの勘に引っかからないという事はこれは普通に食べられる物なのだろう。俺もおそるおそるスコーンを口に運んでみた。うん、バターたっぷりの香りや、さっくりとした焼き加減からもなかなかの腕前だな!


「お気に召したようで嬉しく思います。それではおかわりをお持ち致します。暫しお待ち下さい」


「いえ、お茶は結構よ。それよりこの屋敷の御主人に会わせていただけるかしら?」


 客間を出ようした女をエリスが引き止めた。


「……分かりました」


「一つ、質問してもいいかしら?あなたの主人が言っている「我が子」と言うのはトーマの事よね?私がトーマを引き取り育てたの。私が知りたいのは、貴方の主人はなぜトーマを大森林に置いて姿を消したのか、その理由よ」


 彼女エリスは真っ直ぐに女を見つめて言い放った。


 え、ええっ!?な、何だと?その昔、赤ちゃんのトーマを森に置いていったのがこの屋敷の主人ってこと!?


 エリスの衝撃発言に慌ててスコーンを飲み込もうとしてむせる。お茶、お茶!ゲホ!ゴホ!

 

 俺のことなど意に介さず女はエリスを見つめ返す。


「そうですか。あなたが……あなたが母親の代わりをして下さったのですね?しかし、それにしてはあなたは……」


「若いって言いたいんでしょ?それは呪いの副作用のせいよ」


「呪い?それは魔族からですか?」


「ええ。今は呪いが解けて不老ではなくなったけど、それでも身体の老化には20年くらいズレがあるわ」


「なるほど、見た目とは違う、と。どうりで身体と精神に違和感を感じたはずです」


「それはあなたもよ。……あなた、本当は随分前に亡くなっているでしょう?あなたの肉体は既にない。その身体は魔力人形マジックドールに魂を憑依させたものでしょう?」


「……!?」


「館の主人って本当はあなた自身よね?あなたは私達に怪しまれないように使用人を装い、ここに連れてきた。そうよね?」


「えーっ!それホントなの、エリス!?」


「ええ、この人の体内魔力は普通とは違うの。どちらかというとシャドウと似た魔力循環なのよ」


 まじかよ。じゃあこの人もシャドウなのか?シャドウであり、この館の主人で、トーマの関係者(親?)な訳!?ふお~、混乱してきたぜ!


「あなたは上手くカムフラージュしていたつもりでしょうけど、私の身内には転魂の秘術を使った人がいてね。違和感に気づけたのよ」


「そこまで分かっていましたか……。それではなぜ、シャドウが跋扈する中、リスクを冒してまでここに来たというのですか?」


「さっきも言ったわよね?もし、あなたが本当にトーマの母親だとしたらなぜ危険な大森林にあの子を置いて言ったのか、母としてきちんと聞かせてほしいと思ったからよ。……後はあなたの勘違いも正さないと、そう思ってね」


 そう言うとエリスはすっかり冷めてしまった紅茶に口をつけた。





  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇




「……なるほど、つまりこの子は姿型は似ているが、我が子ではなく別人である、そういう事ですか」


「ええ、これははっきりさせておくけど、彼……ミー君は確かに、瓜二つだけどトーマじゃないわ。別人よ。言っておくけど、ミー君はあなたには渡さないわよ」


 そのエリスの言葉に女はマスク越しに俺をジッと凝視した。まるで内臓まで見透かされているような視線に、俺は何とも言えない、いたたまれなさを感じる。


「むむ……。確かにこの子の「魂」に私との繋がりは感じられない。しかし、その器からは確かに絆を感じるのですが……」


「色々あってね。魂と器が違う人間は私の周りに何人もいるのよ。私だってこんな容姿すがただけど、実年齢はずっと上だしね。いい?トーマは私が赤ちゃんの頃から育てたんだから。産んではいないけど私はあの子の母親だって声を大にして言える。ずっとずっと母親として精一杯愛してきたの。……ね?そうでしょ、トーマ君?」


 え、トーマ君?ここにトーマなんていないけど……。


「まったく……なんで、気配探知も使ってないのに存在に気づけるんだよ」


「あっ!トーマ!?」


 その声と共に頭をかきながら物陰から姿を現したのは、トーマ本人だった。



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