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『俺』とゴブ『リン』~俺のスキルは逆テイム?二人三脚、人助け冒険譚~   作者: 新谷望
4章 セイルス王国の野望編

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34話 あなたがいるから



 俺が部屋に入るとラナはベッドで上半身を起こしていた。ベッドのわきにはポン太が寄り添うように座り、ラナを見つめている。


「ラナ!良かった、目が覚めたんだな!」


「……あ、サード」 


「双子山に帰ってきたんだ。もうミナトで大丈夫だよ。調子はどうだい?」


「……ん~、んん~?なんか体がだるいかも」


 まだ意識がはっきりしないのか眠そうな顔で答えるラナ。


「そりゃ、そうだよ。あれだけすごいスキルを使ったんだもんな。あの時のラナの「覇王の眼光」!いや~すごかったよ!」


「がおーのがんこー?ガオー?クマー?」


 ラナが両腕を挙げて、熊の声真似をしながら聞いてくる。


「ははっ。ガオーじゃなくて覇王はおうね。「覇王の眼光」さ。アーサーの「魔王の眼光」にも対抗できたんだ。あの光景は圧巻だったなぁ」


「そもそも眼光は誰にでも使えるものではないカネ。しかも魔王の眼光に比する力を発揮するスキルなどそうあるものではない。大した奴カネ」


 ベッドのラナを見上げながらタヌ男も頷く。


「……そうなの?……私、すごい?」


「ああ凄いよ!ラナのスキルで兵士が動けなくなったんだ。そのお陰で俺達は、あの場から撤退できたんだからね」


「ラナが「はおーのがんこー」でアーサーと戦ってたのすごい迫力だったよ!ラナが頑張ってくれたからみんな助かったんだよ!ありがとね、ラナ!ああ、リンも「はおー」やりたいな~!ラナ今度やり方教えてよ~!」


 俺とリンの話を聞いて、ラナが誇らしげにムッフーと胸を張った。


「ラナ。まだ本調子じゃないんだろ?ゆっくりと休んでくれ。もし、何かしてほしいことがあれば言ってくれればやるからさ」


「……それじゃ、お願いしていい?」


「なんだい?」


「……ご飯まだ?」


「……え?ご、ご飯?」


 意表をつくお願いに一瞬キョトンとしてしまう。


「……お腹すいた。私、ミナトのご飯が食べたい」


 一瞬、シーンと静まり返った後、エリスがプッと吹き出す。それが、合図になったかのように皆が一斉に笑い出した。


「そういえばリンもお腹ペコペコだった!」


「私も幽閉生活だったから、ミー君の手料理を食べたいわ!」


「エリスはまだましカネ。我なんか飯など貰えなかったカネ。てなわけでミナト、早く食事にするカネ!」


 皆がラナの話に乗っかってくる。


「ははは、分かった。じゃあ何がいいかな?ラナ、リクエストはあるかい?」


「……トンカツ。サクサクしたやつ。お腹いっぱい食べたい」


「分かった。じゃあすぐに用意するよ」


「それならリンはから揚げも食べたい!」


 リンが元気に手を挙げる。


「我とライはホーンソードブルのステーキを所望カネ。焼き加減はレアで頼むカネ」


「それじゃ、私はレッドボアの生姜焼きかな!トーマ君も食べるでしょ?ミー君のご飯、とっても美味しいんだから!」


「え、俺!?いや俺は別に……」


「うん、決定!じゃあミー君、トーマ君の分もお願いね!よーし!私も手伝う!久しぶりにトーマ君にごはん作っちゃうぞ!!腕によりをかけて!」


「え!?え、エリスは、リンとデザートのアイスクリン作ろう!!トーマに食べてもらいたいって言ってたでしょ!?」


「そう言えば、そうだった……!あのね、トーマ君アイスクリンすごくおいしいのよ?ずっと食べさせてあげたいなぁって思っていたの!」


「俺は……母さんのごはんもデザートもいつもどっちも美味しいと思うぜ」


 さらりと凄い事を言ったね、トーマ。俺もいつもこのくらい素直に言えればもっとモテたんじゃないのかな~?なんてね。


「よっしゃ!久し振りにみんな揃って夕飯なんだ。今夜は豪勢にいこう!帰還パーティーだ!」


 皆がわ~っと歓声を上げる。そして皆で協力して食事と食器を用意した。


「ミナト!どうせならヌシ様達も呼ぼうよ!」


 とのリンからの提案でヌシ様達もお招きした。おかげでいつもよりに賑やかな夕飯となったのだった。


 アダムス伯はお酒を所望だったがラナが「……おじさん、すぐ酔っ払って大騒ぎするから駄目。お酒弱いんだから」とぶっ込み、ショックを受けているアダムス伯を見て、ヌシ様がお腹を抱えて大笑いしているその横で、俺とライそしてルカまでが揃って平謝りする羽目になったのだった。とほほ……。


 その光景を見ながら、エリスも我が子との久し振りの食事を楽しみ、トーマも楽しそうに過ごしていた。


 ブロスはあっちこっちとつまみ食いをしたり、リン達と楽しく遊んだりしていたがいたが、その途中で電池が切れたかのように突然パタッと倒れてしまった。


 突然の事にびっくりしたが、トーマいわく「寝落ちしただけだ。はしゃぎすぎなんだよ。全く、小さい子供じゃあるまいし、しょーがねぇなぁ」と口では悪態をついているが、ブロスを起こさないようにそっとベッドまで運んでいた。


 二人は天界で良い関係なのかもなぁ。とトーマの姿をみて思った。


 そして、その夜はひときわ明るく賑やかな声が遅くまで屋敷に響いていたのだった。 



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 帰還パーティーが終わった次の日。アダムス伯やヌシ様、そしてルカも政務の為、ポン太に乗り帰っていった。特にアダムス伯は領主という身分柄、なかなか時間を自由にできない制約がある中で、時間を作って頻繁にやってきてくれている。


 それはバーグマン家にとってもアダムス家との結びつきが非常に強固なものだ、ということが内外に示せる事に繋がり、こちらとしてもありがたい。本人は「気晴らし」と言っていたけどけど、確かにヌシ様とお酒を飲んで騒いでる姿は、こう言っては失礼だけど単なる酔っ払いのおっさんみたいである。昨日も西セイルスを統括する大領主には見えないくらい陽気に飲んで騒いでいた。


 西セイルスの最高権力者だからこその気苦労あるんだろう。飲みながら「最近は家臣だけでなく息子までが口煩くてかなわん」って言ってたし。


 そういえば「お子様がいらっしゃるんですね」って言ったら意味深に笑ってたっけな。


 そういえば、昨晩ルカから「急な事で申し訳ないがミスリル鉱山の初操業は三日後だ。稼働に必要な施設は既に完成し、試運転も始めている。人員確保が問題だったが、アダムス伯の協力でなんとかなった。1週間後には操業を祝って西セイルスの領主を集めてのパーティーがある。そのつもりで動いてくれ」と伝えられた。


 ひぇ~!それじゃまた操業前の総チェックに立ち会わないとじゃんか!コンラッドが居ないから今回は代理でビアトリスさんが総指揮をとっているらしい。ちなみに鉱山名は地名をとり「ミサーク鉱山」だ。


「魔鉄を産出するネノ鉱山と並び、バーグマン領を象徴する鉱山として「ミサーク」の名が飛躍する事になるぞ!我がバーグマン領をどんどん発展させていくからな!だが、それにはまだまだミナトや臣下の助けが必要だ。どうかこれからも私とバーグマン領の為に助力を頼む」


 そう言ってルカは、強い意志を感じる瞳で俺を見た。はい、と返事をしながら少年の成長を眩しく、そして頼もしく感じた。


 そんな成長著しいルカだけど、ルカがポン太と帰る時、ラナが名残惜しがっているのを見て、またすぐにポン太に乗って双子山に遊びに来るからって、二人で指切りして別れていた。そういうところを見るとまだ子供の部分があるところに少しほっとしたりする。


 本来ならもう少しの間、大人に守られて暮らしていてもいい年頃なんだよな。でも、こればかりは俺も変わってあげられない。ルカの運命なんだ。でもあの様子ならきっと大丈夫だろう。


 そして、トーマもまた天界に戻る事になった。屋敷の庭でトーマとの別れを惜しむ。


「トーマが来てくれて助かったよ。久々の地上は楽しめたかい?」


「ああ。久しぶりに土や森の香りを嗅いだわ。ああ、こんな感じだったなって」


「ははっ、またいつでも来てくれよ。歓迎するからさ」


「今度はいつ来れるか分からないけどな。今回は特別だったし。……じゃ、母さん。俺、戻るわ」


「うん。ありがとうトーマ君。また会えて嬉しかったわ」


「いや、俺はここに居ただけだって。なんにもしてねーし」


 そんなトーマをリンがニコニコと笑いながら見る。


「でも、トーマ、地上におろしてもらえるようにパナケイア様に頼んでくれたんでしょ?ブロスがそう言ってるよ!」


 頭に乗ったブロスが同意するように、うんうんと大きく体を揺すっている。


「ちょっ!?ち、違うって!母さんが危ないから助けて欲しいとは言ったけど……!」


 するとブロスがリンの肩に乗り、コショコショと耳打ちする。


「うんうん……。トーマが「母さんを助けたいっ!」て何度も何度も頼んだ、って!」


「お、おい!ブロス!余計な事を言うなって!」


 トーマが珍しくうろたえる。


「……うんうん。トーマの強い気持ちがあったからこそ「こーりん」出来たんだって!エリスを助けられたのは、トーマが頑張ってくれたからっていうことかな?ねぇ、ミナト!」


「そうだね。ブロスを連れてきてくれて、そして俺が居ない間、身代わりをしてくれて助かったよ。ありがとうトーマ!」


「そ、それほどの事じゃねーし」


 そう言いながらちょっと照れて顔をかくトーマ。


「それよりも、ミナト、母さんを助け出してくれてありがとな。……あと母さんの事、頼んだぜ」


「ああ!任せてくれ!」


「それとブロスもな。もう少し、預かっていてくれ。上のヤツラは人間とは時間の感覚が違うんだ。女神の瞬きの間くらい地上にいても問題ないはずさ」


「へ?瞬きってどのくらいなんだ?」


 トーマは苦笑して答えなかった。そして俺との会話を終えるとエリスに向き直る。


「じゃあ、母さん、またな」


「トーマ君」


「ん?……あっ!?」


 エリスがトーマをぎゅっと抱きしめる。


「……ありがとうね、トーマ君。私の子供でいてくれて」


「な……なに言ってんだよ!これからも俺は母さんの息子さ。ずっとずっとな!また会おうな!」


「……うん、またね」


 そう言ったトーマの身体がキラキラと光りだす。名残惜しそうに体を離したエリスに片手を上げ、にっこり笑いかけた。


「それじゃ、母さん、いってきます!」


「うん、いってらっしゃい!」


「体には気をつけろよ!トーマ!」


「バイバーイ!!また来てねー!」


 手を振る俺達に見送られトーマは天界へと戻っていく。エリスも笑顔で手を振って彼を見送った。


「……さて!私も頑張らないとね!しばらくお休みしちゃってたけど、バーグマン軍の魔術隊のみんなを鍛えなきゃ!ジョリーナも私が居ない間、ちゃんと修行してたかな?」


「それがさ。エリスが居ない間はジョリーナが魔術隊の指導をしていたらしいんだ」


「へぇ、あの子が?それで大丈夫だったの?」


「ヌシ様の話では基礎魔術に関してはかなり上達してきているみたいだよ。常にモチベーションを高く保てば、目を見張る程の集中力を発揮するって。「実力的には教官でも問題なかろうと思ってルカに臨時講師として推挙しておいた」ってさ」


「そうなんだ~。あの子が教官ね。ふふっ、自分の弟子が成長したって聞くとやっぱり嬉しいわね。私も久々にあの子をしごいてあげなくっちゃ!」


「お手柔らかにね。……ところで、トーマはああ言ってたけど一緒に戻らなくて本当に良かったのかい?ブロス」


 リンの肩に乗ったブロスが「え?なんで?」とでもいうように体を傾げる。


「え~、なんで~?ブロスはミナトのけんぞくなんでしょ?なんでトーマと戻らなきゃいけないの?」


「いや、ブロスってなんというか……。」


 いやいやいや、ブロスの正体ってツチガニに憑依したパナケイア様でしょーが!トーマだって「降臨は簡単に出来ない」って言ってたじゃん!?女神の瞬きの間預かってっていうけど、神力とかなんか色々大丈夫なんですかね?


 するとまたブロスがリンにコショコショと耳打ちする。


「……うんうん。え?「主人の望みを叶えるのがじゅーしゃの役目だ?」ふ~ん。よく分かんないけど、そうなんだって!ミナト!」


「そ、そうなんだ……」


 降臨した一因はトーマの願いだけど、後の大半はパナケイア様が望んだ……っていう事、か?そういう事だよなぁ。


「じゃあ、これからもブロスは一緒に暮らせるんだね!やった~!」


 大喜びのリンと一緒に両腕のハサミを掲げバンザイするブロス。女神の瞬きくらいの時間、地上に居れる訳か……。うん、きっと上司にあたる神様が配慮してくれたんだろう。そうに違いない!


 今回の件をはじめとしてパナケイア様に色々と便宜を図ってくれるんだし、トーマが言うほど悪い上司ではないのかも?会ったことはないけどもし会えたらお礼を言わなくっちゃなぁ。


 そう思っていると……。


「あ~!ミナトとエリスじゃん!」


 道路の方からから聞き覚えのある声が飛んできた。


「おっ、噂をすれば。ジョリーナおはよう」


「おいっす!病気だって聞いてたけど大丈夫なん?」


 病気?ああ、そういやトーマが俺の身代わりしている間は極力、人に会わないように病気だっていうことにしてたんだっけ。


「う、うん、もうすっかり良くなったよ。君はこれからバーグマン家に訓練に行くのかい?」


「そうそう!魔術隊の訓練!あ~しももういっぱしの術士じゃん?いよいよ「センセイ」って呼ばれる立場になったってわけよ!いや~、やっぱり滲み出る実力は隠せるもんじゃございませんて!なっはっは!」


 鼻高々にそう話すジョリーナ。うん、確かにヌシ様も実力はついてきたって言っているらしいけど。大した自信だなぁ。それになんかえらくテンション高いし。


「ごきげんだね、ジョリーナ!何かいいことあったの?」


 リンがジョリーナにそう聞くと……。


「もちよ!今日は午後からハロ様とのマンツーマンレッスンがあるからね!手取り足取り丁寧に教えてくれるの!やっぱタマゴジジイとかロイみたいな変人連中とは違うわ~!」


「ハロ様……?」


「ちょっ!?ジョリーナ!?」


 慌てる俺に気づく事なくジョリーナが腰に手を当て、ビシッとポーズを決めると、エリスに言い放つ。


「エリス!妹のあんたには悪いけど、この分ならあんたを超える日も近いわ!次の対戦では負けないからね!私とハロ様の愛の力は絶対なんだから!」


「え?妹?あの、ジョリーナ、私の兄は……」


「んじゃ。そういう事で!あ~。楽しみ~!今日の仕事をパパパッと片付けて早くハロ様に会いに行かないと~!待っててね、愛しの王子様~」


 ルンルンで鼻歌交じりに去っていくジョリーナを見送ってエリスが俺の方を向く。


「……ミー君」


「は、はひぃ!」


「ハロ様って誰なの?ミー君は知ってるんでしょ?」


 うっ、にっこり笑ったその微笑みがなんか怖い!


「う、あの、なんというかそれは……」


「ジョリーナの言うハロ様ってひょっとしてハロルドって言うんじゃないの?」


「あうう……」


 とっさに言い訳を考えたが思いつかない!返答に窮しているとエリスがふっと笑顔を浮かべた。


「ふふっ、ごめんね。ほんとは分かってた」


 エリスが呟くようにそう言った。


「へっ?分かって……た?」


「ヌシ様ね……、ヌシ様の本当の正体は、姿を変えたお父様なんじゃないか、ってね」


「……エリス、知ってたのか?」


「うん、最初にヌシ様と出会った時。その時からなんとなく、そうなんじゃないかと思ってた」


 ああ、それってルカ様を双子山に連れ出した時か。エリスが初めてヌシ様に会ったのもあの時だったっけ。ヌシ様、泣いて喜んでたなよぁ。


「あの時、ヌシ様が私を見て「我が望みが叶った」って言ったの。その時、ああ、きっとこの人は私に近い存在なんだ。って思ったわ」


「やっぱり中身がお父さんって分かるものなのかい?」


「それは、まぁ何となくだけどね。それにね、ロイの封印を解く事が出来るのはお父様だけだから。……そのお父様が私に正体を明かしたくない、っていうならそれでもいい。ヌシ様になっても私を愛してくれた、私の大好きなお父様に変わりはないから。私もヌシ様はヌシ様として尊敬しているわ。ルカ様にとっても尊敬できる人だもの」


「……そっか」


「私、今、すごく幸せなの。それもこれもミー君のおかげ」


「俺だけじゃないさ。リンが一緒に居てくれたから」


「もう、ほんとにミー君はそればっかりなんだから……ミー君」


「ん?なんだい?」


「これからもずっと一緒に居てね」


「もちろん!」


「リンもだよ!ずっと一緒に居ようね!エリス!」


「うん!ありがとう、ミー君、リンリン!」


 そう言って笑うエリスの顔はとても綺麗だった。まだ全てが解決した訳じゃない。でも今はこの幸せがいつまでも続くよう祈らずにはいられなかった。


「……ところで、お父様はジョリーナをどうするつもりかしら?」


「え、どうする……って?」


「あの子、完全に舞い上がっているけど、お父様どう落とし所をつけるつもりかしらって事」


「お、落とし所?」


「だってお父様は今はハロルドじゃなくて、ヌシ様でしょ?もし、その事が分かったらジョリーナは受け止められると思う?」


「あ、そういえばそうか。あのハロルド様の姿は幻術で再現したものだし」


「要はジョリーナを騙して修行させてるって事になるじゃない。つまり女の子の気持ちにつけこんで利用しているの。もし、ジョリーナを傷つける事になったら、いくらお父様といえど見過ごせないわ。それに関しては、きっちり落とし前をつけてもらわないとね」


 う、エリスの笑顔が氷の微笑に変わってる!?お、俺は何も言ってないですよ!?俺のせいじゃないですからね、ハロルドさーん!



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 俺達から少し離れた木の繁みが小刻みに震えていた。ミナトとエリスの会話をこっそりと見ていた双子山のヌシ様ことハロルドは青い顔をして、山頂で控えるホーングリフォンのロイに念話で助けを求める。


『ど、ど、どどどうしたらいいと思う?一大事だよ、ロイ!?』


 そんな念話に呆れたようにため息をつきながらロイが答える。 


『我は知らん。そもそも原因はお前にある』


 ロイから返ってきたのはなんともつれない返事だった。


『だってあの子、全然真面目に鍛練に取り組まないから!ロイだって匙をなげてただろう!?だからやる気を起こす最適解の手段を取っただけじゃないか!実際に生前の姿で指導した方が彼女だって目を見張る成長をみせていただろう!?』


『なら堂々としていればよい。それにお前も満更ではなかったろうが』


『でもエリスにはどう説明すればいいのだ!?エリスの事だから「いくら成長の為だからと言って、ジョリーナの気持ちを利用するなんてどういうつもりなのかしら?お父様?」とか言ってくるに違いないよ!どうしよう、あのはそういうところは厳しいんだ。エリスが子供の頃、街で女の子と遊んで帰ったのがバレた時だって、しばらく口を聞いてくれなかったんだぞ!』


『自業自得だ。そうなったら潔く諦めることだな』


『なら君はあの日々をもう一度、私に味わえというのかい!?娘に無視される地獄のような日々を!君はなんてひどい従魔なんだ!』


『「大好きなお父様」と思われているのだから、それに恥じない行いをする事だ。まったく、人間という奴は、喜んだり悲しんだり怒ったり、忙しいな』


『ああっ、どうしたらいいんだ……。かわいい娘に嫌われたら私は生きていけないっ……!私は一体何のために苦労して生まれ変わったんだ~!?』


『はぁ……。これが大領主と対等に渡り合い、王にも一目置かれるセイルス王国が誇る英雄か。やれやれ、まったくこの親バカは……』


 頭を抱えて悶え苦しむ主人を思い浮かべ、もう一度大きなため息をつくロイだった。





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