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『俺』とゴブ『リン』~俺のスキルは逆テイム?二人三脚、人助け冒険譚~   作者: 新谷望
4章 セイルス王国の野望編

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7話 ペンダントの奇跡



 双子山の頂上にあるヌシ様の住まい。ここにかつての英雄達が集っていた。


「……うん、これでよし。どうだい?ハロルド、タヌ男」


ビアトリスが付与を終えた小さなペンダントを差し出す。可愛らしい猫の装飾が施されたそれを受け取ったヌシ様がじっくりと眺める。


「……ふむ、魔力は問題ないじゃろう」


「術式も大丈夫カネ。これなら装着すれば、速やかに効果を発揮するカネ」


「そうかい。ならこれで最後だね」


二人の言葉を聞き、安堵したようにビアトリスがペンダントを丁寧に箱にしまった。


や、やったー!とうとう完成したぞ!このペンダントがあればネモク病に罹患し、失明してしまった人々が再び視力を取り戻すことが出来るんだ!


「本当に……本当にできたんですね……。俺だけだったら何もできなかった。皆さんのお陰です。これを持って近く譲渡会をひらこうと思います。本当にありがとうございました!」


 改めて皆に協力してくれたお礼を述べる。


 ベルドとカンナがペンダントを作り、ハロルドが術式を書き、さらにタヌ男が術式に手を加え、ビアトリスが付与する。皆のリレーがあってこの「幻術が付与されたペンダント」が完成する事ができたのだ。


 そして、このペンダントの効果は幻術をかけるだけでなく、一度身に付けたら本人にしか使用できないようにできている。悪意の有るものが取り上げて他人に売却しないようにする為だ。そういう事も含めて、現状できる最高の魔術の技術が使われている。ここに居る人たち以外では、誰も作る事ができないものなのだ。


「やれやれ、これで全ての仕事が終わったね?ハロルド?」


「ああ。ご苦労じゃったな。ほれ、お茶を淹れたぞ。一息つくがいい。ビアトリス、ベルド、それにタヌ男もな。おっと、お主はミルクがいいか?」


「ふむ。我のはぬるくしてくれればいいカネ。まあ、我は大したことはしとらんカネ。術式の助言をしただけカネ」


「でもあんたの術式は今までにないものだったよ?あれだけの術式を半分近くにまで圧縮したんだ。魔族ってのはこんなに魔術が発達してるのかい?」


「魔族は人族より長命でその分、体内魔力は高い者が多いが、魔術に関しては基本的に人族とたいして変わらんカネ。これは我が独自に組んだ術式カネ」


「何だって?これは一朝一夕で組めるような術式じゃないよ。タヌ男、あんたひょっとしてかなり高位の魔族だったんじゃないのかい?」


「昔の話カネ。今はただのドッグウルフカネ」


「ただのドッグウルフは喋ったりしないさ。それに私らをもってしても及ばない知識もね。あんたがただの魔族でないのはこれだけ見ればわかるよ」


「買いかぶりカネ。さて、我はそろそろ昼寝の時間カネ。朝早くから引っ張り出されて眠くてかなわんカネ。ふぁ~あ」


 口を開け大あくびをするタヌ男。


「……ふっ。ま、いいさ。それにしてもこれだけの数の付与をするなんざ、久々だよ。さすがに肩が凝ったわ」


そう言って自分の肩をとんとん叩くビアトリス


「やはり寄る年波には勝てねぇか、ビア?」


その姿を見てベルドがニヤニヤとビアトリスをからかう。


「もう一度言ってごらん。あんたの自慢の髭に脱毛剤をぶっかけるよ」


「はっはっは!それそれ、そういうところだぜ。歳をとると口ばかり達者になっていけねぇや」


 この二人、会えばいつもこの調子だ。言い合いになることもよくある。多分信頼してるからこそだろう。またケンカになりそうな二人にヌシ様が、コレコレお前達……、とのんびりと仲裁にはいる。


「……まぁ、私達がこうして再び集まれたのもミナトのおかげだね。ありがとよ。ただ、今回はアンタに力を貸したって事は、いいかい?これからアンタで稼がせてもらっても文句はナシにしておくれよ」


「えっ、え?俺そんなに、稼がせてあげられますかね……?できるかな……?」


「何言ってるんだい!かねヅルの鉱脈に当てがあるんだろう?コンラッドから報告を受けてるんだよ。ふっふっふ。楽しみだねぇ~!」


「え、う、う~ん……まだ、調査もしてなくてですね、あの、もう少ししたら……」


「何言ってるんでい!すぐ行けミナト!男だったら冒険して来い!がっはっはっは!」


 誰~!?元英雄たちにお酒飲ませた人!!お茶に何か入ってた??それともこれで素面なの!?


 それはそうと、ペンダントの材料代やカンナの施す装飾の技術料は、前にベルドが俺から買い取ったヒュプニウムの鎧の代金から捻出できた。当初の計画ではルカ様が制作費用を負担してくれるはずだったのだが……。


 例によって財務担当官のレビンに「ミナト殿はミサーク地方の政務官になられたのですよね?ですが、バーグマン領の財政状況はお分かりになっていない様です。ルカ様が何と仰られたのか分かりませんが、ここは財務担当として一歩も引けません。ミナト殿の思いつきによる財政支出は、現状の財政上、優先順位は高くありません。もっと他に……(以下略)」とクギをさされてしまったため結局、自腹購入になったのだ。全くどこの財務官僚だよ。


 あの人、一体、政務官を何だと思ってるのかなぁ。双子山方面こっちの財政がほぼ独立会計になっちゃってるんだぞ。バーグマン領の中に独立した領地があるようなもんだ。レビン的にはきちんと税収ノルマを納めてくれさえすればいい、って考えかも知れないけどさ。


 まぁ、考えようによっては収支以外は口を出してこないので、好きにやれるとも言えるけどね。それだけ信頼してくれてるのかもしれない……いや、ないな。ないない。……それにしても政務官の仕事、そろそろ部下を使っていかないと間に合わないよねぇ。うむむむむ……。


 それにしても「視力を失った人達に幻術を使って現実の景色を見せる」机上の空論だった俺の案がヌシ様達の協力で形になった。俺だけじゃ何も変えられない。でも皆が助けてくれてこの素晴らしいペンダントができたのだ。元英雄の皆さん本当にありがとうございました!



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 双子山のふもとにある礼拝堂。女神パナケイアを祀るここは診療所も兼ねている。パナケイアの像が安置された礼拝所には訪れた人達が持ってきてくれる花でいつも一杯だ。


 その礼拝堂に沢山の人々が訪れていた。パナケイア像の前に一組の母子がやって来る。母親に手を引かれた女の子はずっと目を閉じたままだった。その子供の首に聖女アラバスタがそっとペンダントをかける。その瞬間、ペンダントは淡い光を放ち、すぐに収まった。


「さぁ、ゆっくりと目を開けてみてください」


 母親に促されゆっくりと目を開ける。そして辺りをキョロキョロと見回す。そして母親の顔に目を向けた。


「……お母さん?」


 驚きとも喜びともつかない表情の少女。


「……ダリア、私が、お母さんが見えるの!?」


「……うん、見える!お母さんが……!見える、見えるよ!お母さん!!」


「ああ……!ダリア、ダリア!!」


「お母さん!!お母さん!!」


 母娘は崩れ落ちるように抱き合って泣いていた。周りにいた人々から歓声と祝福の拍手がわき起こる。


「うまくいったね、ミナト!」


「ああ、大成功だよ!」


 俺も目頭が熱くなってくる。良かった……本当に良かった!!レビンにも見せてやりたい、庶民の苦しみや喜びをじかに見ればさ、思いつきにお金を出せない!なんて言わなくなる気がするんだけどな。


 「聖女様!本当に、本当にありがとうございました!!このご恩は生涯忘れません!」


 アラバスタが優しく微笑みながら母娘を見つめる。


「……すべては女神パナケイア様のお力によるもの。感謝を捧げるのであればパナケイア様に」


「はい、ありがとうございます!パナケイア様!アラバスタ様!」


 母娘に続いて順番を待つ人々からも再び歓声が起こる。本当はヌシ様達のお陰だが、本人達から「我々は表に出たくないし、女神の力だとした方が良いだろう」と言われたのだ。


 うんうん、いい感じだ。「うぅ……大勢の人の前は緊張し……。あわわわわ!で、でもケイトさんが、ケイトさんにいろいろと教えてもらったので……が、がんばります!」と、言っていたけどしっかり聖女様できてるじゃん。


「そして、地上にてこの日の為に多大な貢献をされた、女神の選定者ミナト様にも感謝を!」


 そう言って俺の名を高らかに宣言するアラバスタ。


 え!?ちょっとアラバスタ!?それは余計だって!俺に振らなくてもいいのに~!別にそれ要らないよ、パナケイア様のお陰、でいいじゃん!


「おお!さすがパナケイア様の選定者だ!」


「ミナト様、ばんざーい!」


 そんな感じで女神パナケイアと俺を称える歓声が何度も繰り返されたのであった。


 その後は、ペンダントの希望者たちの列をアラバスタの助手を務めるケイトが誘導し、次の希望者に同じようにアラバスタがペンダントを授ける。目が見えるようになった人達は驚き、そして大いに喜んでくれた。


 こうして授与式は大きな反響の元、つつがなく修了した。


 ただアラバスタは沢山の人々と接した疲労の為か、次の日から数日間、寝込んでしまったが。


「た、大変でしたが聖女の務めが果たせて幸せでした。ミナト様、ありがとうございました」


 お見舞いに行くとアラバスタはそう言って笑っていた。その隣では甲斐甲斐しく世話を焼くケイトがいる。「大丈夫です。アラバスタ様のお世話は、私が引き受けますから!」と力強く返事をする。まだ10歳にも満たないケイトだが、既に礼拝堂で住み込みで働いており、診療所を含めた雑務の切り盛りにも一役かっている、まさに小さな聖女様だ。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



「ミナト、この箱はまだ開けないの?」


「うん、エリスが帰ってきてからね」


「分かった、楽しみだね!」


 エリスはルカやヒューゴに請われてバーグマン軍に新たに新設された魔術部隊の講師として定期的に基礎的な魔術を教える役に就いた。


 エリス教官の厳しさを身をもって体験した俺としては、新兵達が心が折れる事なく一人前に育ってくれるのを願うばかりだ。うう、あの頃の事は今でも軽くトラウマなんだよなぁ。


「あ!エリスが帰ってきたよ!エリス、おかえり~」


 屋敷の扉が開きエリスが帰ってきた。


「ただいま、リンリン、ミー君」


 リンが嬉しそうに出迎える。そんなリンをエリスは笑顔で抱きかかえた。


「お疲れ様。今日の訓練はどうだった?」


「う~ん、まだまだね。とにかく今は基礎固めだから。兵士の中でも素質がある子を集めたから、覚えは結構早いと思うけど」


 最初は兵士の中で特に魔術に適正のある者を5人選抜し、少人数で集中して鍛練を施す。そして一通りの課程を修了した段階で、今度は修了者が教官になり後進を育てていく、という段取りだ。だから最初の魔術士を育てるエリスの責任は重大だ。


「ねぇ、ミナト!アレ、早くエリスに見せようよ!」


「なに?リンリンあれって?」


「実はこれなんだけど」


 そう言いながらエリスに例の物を取り出す。


「わぁ、綺麗な箱ね!これは……あら、かわいいペンダント!」


 ゆっくりと蓋を開けるとそこにはお揃いのペンダントが3つ収められていた。五角形の星が緻密にそして可愛くデザインされている。


「3人で同じ物にしようって思ってさ。ね、リン」


「うん!デザインはリンが選んだんだよ!さ、エリスも着けて着けてー!」


 ペンダントを取り出し、エリスの首にかける。


「うん、エリスによく似合ってるよ」


「えへへ~、三人おそろい~」


「ありがとミー君、リンリン!」


 そう言うとリンを抱き上げ頬ずりする。リンも負けずに頬ずり仕返した。


「ラナやライの分もつくってもらったんだよ。ラナ、ライ!エリスにも見せてやってよ!」


 呼ばれてやって来た二人の首にもペンダントがかかっていた。ラナが首にかかったペンダントを見せてくる。


「わぁ、ラナとライもペアなのね!」


「……うん。これどう?」


「これは……あ!このデザインはドッグウルフね?タヌ男そっくり!とっても可愛いわ!」


「……タヌ男にも着けた。……ほら」


 見るとタヌ男にも首輪がつけられていた。首輪にはラナ達と同じデザインの装飾がついている。


「何で我の彫られた首輪など身に着けねばならんのカネ……。我を何だと思っているカネ……」


 ブツブツと愚痴をこぼすタヌ男。


「……お揃いにしたかったんだ。嫌なの?タヌ男」


 そう言ってタヌ男を抱き上げぎゅっと抱きしめるラナ。


「分かった分かったカネ!着ければいいんだろう着ければ。だから早く降ろすカネ!」


「あ、照れてますね。師匠」


「こら、ライ!お前も要らんことを言うなカネ!」


 その姿にみんなが笑った。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 そして、数日後。屋敷の執務室……。


「ミナトさん!今からミサーク大森林に行きましょう!今すぐに!」


 俺の座る執務用テーブルにバン、と手を置き勢い込んで話すのはコンラッドだ。


「いや、そうは言ってもまだネノ鉱山がやっと稼働を始めたばかりですし、また新しい鉱脈となると……。あ、ビアトリスさんに何か言われました……?」


「何を言っているんですかミナトさん!ネノ鉱山が操業を始めたからこそ、次のミッションを始動しなければならないのですよ。むしろ今からでは遅いくらいです!」


「うーん、確かにレポートにはミスリルの鉱脈がありますが、ここは大森林の奥の方で、まずはしっかりとした地質調査から入らないといけないでしょう?それにネノ鉱山とは違って施設も何もいちから作り上げないといけませんし、それこそ資金が……」


 コンラッドの言うことも分かるんだよ。オスカーのレポートには大森林の中にミスリルの鉱脈がある事が記載されている。ミスリルはフォルナでも大変貴重な鉱物で、これが採取できればバーグマン領は一気に裕福になるだろうからね。


 ただ、その場所は大森林の中、具体的には俺が以前シャサイと戦った時に利用したブラックビーの巣の有った場所のさらに奥だ。


 地質調査から始まって、道を造り、敷地を整地して、採取の為の設備を建て、人を集め……。あ~!それこそいくらかかるんだぁ!まだ酒の醸造所やネノ鉱山で生産された魔鉄を使った武具や農具を生産する工房、それに岩塩を精製する工場等々……他にもまだまだ、やりたいけどお金がなくて進まない計画が山ほどあるのに~!


「ミナトさん、やらねばならない計画が沢山あるからこそ、ミスリル鉱山は早期に開業せねばならないのです。つまり!利益幅の大きい事業から手をつけ、大幅な利益をあげる事により、他の事業への参画も早まる。ここは勝負の為所しどころですよ!」


「いや、しかし、それこそ資金がですね……」


「ふふふ、そこは心配ありません!実はわたくし、この度、フリール商会から独立いたしましてね」


「えっ!?コンラッドさん、フリール商会から独立したんですか!?」


「独立とは言っても正確には、商会内で新たに商会を立ち上げたという形です。私は正式にミナトさんつきの商会になりました。あ、名は「ツインズ商会」です。双子山から頂きました。改めてよろしくお願いしますね」


「そ、そうなんですか。それはおめでとうございます!」


 聞けばこのような独立形態はフリール商会初の試みだそうで、資本関係はあるものの、フリール商会とは別にコンラッドを総帥とした独自の運営ができるそうだ。


 そして、資金はツインズ商会がフリール商会から融資を受ける形で調達する。つまりコンラッドがビアトリスに資金を融通してもらう事で、俺自身は借金を負わなくても済むようになる。えええ~っ!いいの~!?


「でもそれじゃ、コンラッドさんが莫大な負債を抱える事になりますよ?それに大きな目で見れば、これは結局フリール商会の負債になるんじゃないですか?」


「それだけ私共も覚悟を持って臨んでいる、と解釈していただきたいのです。以前、ミサーク村でオスカーさんと話した時、彼の熱意に私の心も大きく揺り動かされました。私もミナトさんと共にこの双子山を大きく発展させたいのです。何卒、お聞き届け下さい!」


「……分かりました。近い内に調査に出向きましょう。その際は同行をお願いします」


 コンラッドもオスカーもこの地を豊かにしようと心血を注いでくれている。もちろんそれは彼等だけじゃない。双子山にいる皆が頑張ってくれているからな。俺もそれに応えなきゃ!何かあったら責任を取るために俺がいるんだし!


 俺は考えを巡らしつつ、調査の計画を押し込むべく詰まったスケジュールの整理を始めた。


 それにつけてもやっぱりオスカーの抜けた穴がでかいなぁ。今まではこういう事は彼が調べてくれたりしてたから……。ちくしょー!オスカー、カムバーック!!



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 数日後、大森林に眠るミスリル鉱脈を求め、調査団が結成された。メンバーは俺達を筆頭に、エリス、コンラッド、そしてベルドとその弟子で鉱石や地質に詳しいドワーフのレンチの6人だ。


 早速、大森林に潜入した調査団。大森林には凶悪な魔物が潜む。鉄のように硬質化した皮膚をもつアイアンスネーク。その拳は大岩をも簡単に破壊する猿の化け物キングゴリル。粘着する糸を吐き出し獲物を補足、捕らえた獲物を容赦なく噛み砕くキラースパイダー……。


 そんじょそこらの冒険者なら足を踏み入れた直後、これらの魔物が牙をむき、大森林にむくろを晒すことになるだろう。大森林は奥へ行けば行くほど魔素が高まる。その濃密な魔力の中にひそむ魔物は、人族を寄せ付けず侵入者を拒みつづける。


 ミサーク村の書庫に収められた大森林にまつわる調査報告書の数々は、その危険を掻い潜り、命を削って得た貴重な代償なのだ。


「てか、オスカーはここまで来たのかよ!よく生きて戻ってこられたな!」


「いや、この鉱脈に関しては、おそらく過去の文献を分析し精査した結果でしょうね」


 レポートにあった鉱山の場所。それは以前、俺達が利用したブラックビーの巣の位置から更に1キロ程奥にある。あの時はリンが魔物の気配を察知し、上手くかわしてくれた。もし、あの魔物達に見つかったら当時の俺達は瞬殺されていただろう。……ひぇ~、知らぬが仏ってこの事だ。


 知れば知るほど危険な森。……のハズだったがこの工程は極めて平穏だった。


 現れた魔物達をリンが、りんぱんちでふっ飛ばしたかと思えば、エリスの風魔法が魔物をバラバラに切り裂き、ベルドが得物の大金槌(おおかなづち)で粉砕し、音もなく魔物に近づいたコンラッドが持っていた暗器で急所を一突きし、葬り去る……。正しく「ヒャッハー!まものだー!」状態だった。


 ……なんなの、この狂戦士(バーサーカー)軍団。俺、疎外感半端ないんだけど?


「なぁに、あんちゃんが弱いんじゃない。親方達が規格外すぎるんだ」そう言って俺の肩を叩いたレンチさんの言葉が痛い。まぁ、俺の心の葛藤はともかく、一行は無事に目的地にたどり着いた。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



「……ミスリル鉱脈だ。それもかなり良質のな」


 レンチがむき出しになった鉱脈を観察しながら言った。


「良質なミスリルですって!すごいわよ、ミー君!」


「やりましたね、ミナトさん!」


 皆が満面の笑みで俺を見る。うおおー!やったぜ!ミスリルがあればさらにバーグマン領が豊かになるぞ!


 鉱脈の大きさから埋蔵量もかなりのものだろうとのレンチの見立てを聞き、小躍りする俺達。


 と、そこに突然ベルドの怒号が響いた


「お、おい、レンチ!こっちに来てみろ!」


 ベルドの元に駆け寄る。指差す先、ミスリル鉱脈に混じり不思議な色彩を放つ鉱脈が顔を覗かせていた。


「まさか……こんな所に……なんてこった、こいつは……」


 それを見たレンチの顔が引きつる。


「ああ、こんな光り方をする鉱物、俺は一つしか知らねぇ」


 ベルドの顔も青ざめている。呟くように言った言葉が震えていた。


「……間違いない。……ヒュプニウム鉱脈だ」







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― 新着の感想 ―
[良い点] ペンダントでみんなの目が治って良かったです。 新しい展開にも期待してます。 ヒュプニウム鉱石はミスリルよりも貴重なんでしょうね。
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