表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〈第二部開幕〉転生聖女の逃亡放浪記  作者: 宮本高嶺
第三章 イングズ共和国動乱記

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/388

84 更なる出会い

展望台から少し離れた場所にちょっとした東屋があった。

どうやら休憩所として開放されているらしく、ハルヴィルに案内された私はそこで彼と向かい合って座っている。

他に人影は見えないけれど、よく手入れの行き届いている机も椅子も据え置かれていて、ハルヴィルはいつの間にか用意していた茶器を使って手慣れた手付きでお茶を淹れてくれた。

「さぁ、どうぞ遠慮無く」

「ありがとうございます」

あまりにも自然な流れに戸惑う隙すら無く流されていたけど、出されたお茶は美味しかった。

終始にこやかな笑みを浮かべるハルヴィルではあるけど、柔らかな雰囲気を纏うせいか下心は一切感じない。

それどころか、こちらの警戒感さえ解きほぐされてしまいそうな程彼が無防備な物だから自然と毒気が抜かれてしまう。

「お茶淹れるの上手ですね。習われた経験でも?」

「いえいえ、ただの趣味ですよ。お陰で父からは嫁が来ないのはそのせいだと散々に言われてしまっていますよ」

見た目も悪くないし、まだ若そうなのに独身とはこれまた。

年齢と地位を考えれば寧ろ向こうから寄ってきそうな位なのだけど、まさか正確に問題でもあるのだろうか。

少し気になるし、それとなく探りを入れてみるか。

「それは何と。お仕事も忙しいでしょうし、そういう出会いの機会にも?」

「それもあるのですが、お恥ずかしながら私の出自に少々難がありましてね」

「それは、、、すみません、不躾でしたね」

「お気になさらず。私は寧ろ誇りに思っていますから。まぁ、だからこそこの年まで独り身なのですがね」

爽やかに笑う彼ではあるけど、どうにも色々抱えているらしい。

これはあまり迂闊に話を振れないなぁ、と改めてどうするか考えるけれど。

(いや、そもそも何故無理してまで会話をする必要が?そもそも、どうして私はそうしないといけないなんて()()()()()?)

ようやくそこで違和感に気付いた。

まるでそれが当然のように考えていたけれど、それは一体何故?

いや、思い当たる事など一つしかない。

(この男、言葉に魔力を乗せてる?でもそんな感じはしなかった。それ以外で他人の思考を誘導出来る芸当なんて思い当たる事は、、、まさか)

少なくとも、最初の会話の時点では何も感じなかった。

だけど逆に言えば、その時点で既に術中に嵌まっていた可能性もある。

そして、私相手にそんな事が出来る可能性がある方法何てそれこそ一つしかない。

(、、、聖痕。共鳴しなかったって事は、もしや自覚してない?無意識で力を行使している?)

「ああ、本当にお気になさらず。何だか気を使わせてしまいましたね、申し訳ありません」

思いがけない可能性につい考え込んでしまったからか、ハルヴィルが困り顔で頭を下げてきた。

「ああ、私もすみません。少し考え事をしてたものですから」

つい深く考え込み過ぎて目の前に人が居る事を完全に忘れていた。

どちらにしろ、今の時点では何もハッキリとはしないし、あまり深く突っ込み過ぎると危険でもある。

とりあえず、変な空気になりかけてしまったから話題を変えた方が良さそうだ。

「ところで、ハルヴィルさんはどうしてここに?」

「あ、そういえば。実は人と待ち合わせをしてましてね。とは言っても相手も男ですし、仕事の話なのであまり楽しくは無いんですがね」

いや、それは私と暢気におしゃべりしてる場合ではないのでは。

しかも、恐らくだけど彼の背後から件の待ち合わせ相手と思われる大柄な男がこちらに大股で近付いて来ていた。

遠目に見ても怒りの空気を纏っている彼は私の姿に気付いたのか、坊主頭を落ち着きなく撫でながらも真っ直ぐこちらの近付いてくる。

「まぁ私が議員になる前からの付き合いなのですがね、年齢は倍近く離れてはいるのですが何と言うか腐れ縁と言いますか」

そんな事など露知らずハルヴィルは暢気に話を続けているけど、ああ、後ろの人が右手を大きく頭上に掲げて何かしようとしているけども。

「あのー」

「はい?」

「俺をほっぽって逢引たぁ随分偉くなったなぁハル坊?あぁん?」

遅かったかぁ。

坊主の人の右手がハルヴィルの頭に振り下ろされて鷲掴みにされている。

「や、やぁアグル。別に君との約束を忘れていたわけではないよ?でも麗しい女性との一時も大事じゃないかい?」

「喧しい。ったく、お嬢さんすみませんねぇ。迷惑してたでしょ?」

「いえ、なかなか面白い方でしたので」

にこやかに話しかけてくるけど、その手は相変わらずハルヴィルの頭を抑え付けている。

いや、それそのまま握り潰したりしないでしょうね。

「ああっと、俺はアグル・ラグルってんだ。これでも魔獣討伐協会の会長をしててなぁ。ま、よろしくな!」

ニカっと野性味溢れる笑顔で自己紹介してくれたけど、いや待って欲しい。

どうしてこうも大物が次から次へとやってくるの。

それも共和国議員と魔獣討伐協会、渦中の組織の人物がこうして密会してるとか、これもう明らかに騒動のど真ん中に巻き込まれてるじゃないの!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ