376 エピローグ・手紙
リターニア様へ
お久しぶりでございます、ミレイユ・ベオーク・フェオールです。
ようやくこちらも落ち着きを取り戻しまして、こうしてお手紙を認めております。
早いもので、あの恐ろしい出来事の日から三年が過ぎました。
こちらに移住してから、新生フェオール王国を興し、散り散りになっていた民を探して呼び戻したり、近隣各国へ挨拶に伺ったりと大忙しの日々でした。
勿論、それ以外にも多くの事がありましたが、特に貴女へお伝えしたい事が一つ御座います。
現在、私達の下に可愛い子供がおります。
レオーネ様との間に産まれた、第一王子です!
あ、順番が逆になってしまいましたね。
実は、今年になってレオーネ様は王位を継ぎ、正式にフェオール王国の王となられたのです。
お恥ずかしながら、私も王妃となり、日々勉強をしております。
先代国王と王妃様は激動の日々を支え、新たな時代の幕開けと共に若い世代に後を託す、と仰られご隠居なされました。
そして、そんな折に新たな、更なる嬉しい事が分かりまして、現在私のお腹に新たな命が宿っているのです。
産まれるのはまだ先ですが、もう今から楽しみで、長男もまだ幼いながらも毎日はしゃいで喜んでおります。
愛しい我が子達を貴女にお見せ出来る日が来る事を、信じております。
三年前、私達を助けて下さった救世同盟。
現在、レオーネ様もそこに加わり、この世界の事を学んでおります。
あの日以来、邪神やその眷属達は姿を見せておりません。
しかしながら、それでも尚魔物や魔獣の脅威はあり、それらの対応にも追われております。
このような存在と闘い続けてきたこちらの方々には、本当に頭が下がる思いです。
そんな中、私はここ暫くはマンベルの方々と共に調べ物をしております・・・はい、リターニア様の捜索です。
あの日、女神の聖域は突然動きを変え、貴女様の方へと向かって行きました。
それで、グレイス様は見事にお務めを果たされたのだと確信しました・・・同時に、貴女が何をしようとしているのかも。
本当は、止めたかった。
本当は、側に居たかった。
まだお話したい事がたくさんありました。
過去の事も未来の事も、叶うなら貴女と共にそれを見たかった。
いえ、まだ諦めてはいません。
貴女はきっと何処かに居る・・・本当の世界は、私達が生きていた聖域とは比べ物にならない程に広大なのです。
その全てを調べるのに、果たしてどれ程の年月が掛かるか、想像すら出来ません。
ですが、それでも必ず探し出します。
私の代で無理なら、子に託しましょう。
子にも無理なら、その子供に・・・
貴女のお陰で、私は生き永らえたどころか、子をも成す事が出来たのです。
このご恩をお返しするまで、私の想いは決して尽きる事はないでしょう。
だから・・・
だから、どうかお願い・・・
もう一度、貴女に、会いたいです。




