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〈第二部開幕〉転生聖女の逃亡放浪記  作者: 宮本高嶺
第九章 オセリエ伝統皇国・エオール革新統国相克記 後編

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349 オセリエ蹂躙

古くから、悪い人の言葉を信じてはいけないと教えられてきた。

幻獣トゥテラリィの結末がまさにそれだ。

私などの言葉を信じてしまった結果、彼は死んだ。

まぁ、私の中で巫女と再会出来ただろうし、ある意味幸せな結末ではあろう。

「なんじゃ、所詮はあ奴も人なぞに絆されおった俗物じゃったか」

地面に転がるトゥテラリィの亡骸を足先で突きながらスコーネが呆れた様に呟く。

彼女の言う通り、アレは人を、巫女を守護する為の存在になった事で弱くなったのだ、、、人もそうだ、守るべき物、護りたい人が出来ると弱くなる、、、その存在こそが弱点となってしまうからだ。

ああ、そうか、、、だから私は強くなってしまったのだ。

何もかもを失った私が魔王などになるのは当然だったし、何一つ持たないまま転生した私がこんな末路へと辿っているのもまた当然なのだろう。

「、、、下らないわね。他人を信じるからこんな無様を晒す事になるのよ」

そう吐き棄て、それで私はトゥテラリィへの興味を一切失った。

例えどんな存在だろうが、敗者は弱者であり、それが死を迎えたのならもうどうでもいい、役立つものは既にこの身にあるのだから。

「さぁ、行くわよ。さっさと終わらせてしまいましょう」

歩き出した私の背後で炎が上がる。

スコーネが放った炎でトゥテラリィの亡骸が煤へと成り果てていくのが見え、

「アレの体は何かに使えるやも知れぬでな、焼き尽くすが得策じゃ」

仕事を終えたスコーネが横に並びながらそう話す。

確かに、ネイがアレを見つけたら何かしら利用する可能性もあるか。

気が利く彼女に頷きを返しながら、幻獣達の魔力に身を丸めて蹲っていたフェアレーターのお尻を蹴って付いてくるよう促す。


幻獣の魂を得た事で、東大陸に張られた結界を破るのも造作が無くなった。

トゥテラリィが超えてきた結界を難無く破壊し、その先の結界へと迫る。

その向こう側には町があり、そこの住人達が健気にも結界へと魔力を送り込んで強化をし続けていた。

「アラアラ、嫌われたものね」

「カカカ、涙ぐましいのう、、、ま、それも無駄な足掻きじゃがな」

私が肩を竦めながら呟くと、スコーネがそれに便乗して牙をむき出しにする。

フェアレーターは珍しく無言だけど、どうやら血に飢えているようで、結界を恨めしそうに睨んでいた。

確かに、ここまでこの子には何もさせてないし、ここらで一暴れさせておいてもいいか。

「ここは貴女の遊び場にしてあげるわ。ほら、行ってらっしゃい」

軽く指を鳴らして結界を溶かし、地面が紅に侵食される。

それを追うようにフェアレーターが飛び出し、逃げ惑う人々の中へと飛び込んでいく。

途端、血飛沫が舞い、悲鳴が連鎖していく。

「元気なものね」

「アレは魔物となってまだ日が浅い、まだまだ赤子も同然よ。人とは異なる感覚にまだ馴染んでおらぬのだろうよ、暫く遊ばせれば心身の調和も整おうて」

成る程、魔物の感覚というのがどんなものかは分からないけど、まぁ落ち着くなら別にどうでもいい。

「アハハハハ!たのしー!死んじゃえ死んじゃえー!」

当人も楽しそうにしているし、余計な手間が省けて私も有難い限りだ。


そうして、一つの町がフェアレーターによって滅びた。

最早私の力による紅なのか、人々の血の赤なのか分からない有り様だけど、お陰でよりこの大陸は私の領域へと染まった。

その証拠に、結界の規模が自然と狭まり、今やオセリエの皇都の目前まで後退している。

恐らくそこに、最初の壁となるであろう存在も待ち構えているだろう。

「それじゃ、神様を殺しに行くわよ」

「面白くなってきおったわ、かつてはついぞ成せなかった偉業よな!」

「やっとこの時が来ましたよぉ〜。役立たずの神様なんて引き裂いてやる、、、」

うん、二人ともやる気があってよろしい。

出来の良い配下を率いて皇都へと歩を進める。

オセリエの終焉まで、残り僅かだ。


ネイは籠城を決め込んだようで、道中に妨害は全く無かった。

幾つ町はあったけど、既に人々は避難をしていたようで、完全に放棄されていた。

店先に残された食料品などを見て、そういえば今の状態になってから空腹を覚えなくなったな、なんて呑気に考えてしまった程だ。

多分だけど、胸の聖痕が本来の力を発揮するようになって膨大な魔力が巡るようになった事で、全てが魔力で補われているのかも知れない、、、或いは、私もまた人では無い何かに成り果てたのか、、、まぁ、そんな事はどうだっていい。

全てが終われば私も終わるのだ、今はそれだけを目指し、望み、必ずや果たそう。

その為にも、

「、、、我の声は、最早届かぬのか」

悲しみと、何かの決意を秘めた眼差しを私に向ける皇王ネイ、彼女を殺さないとならない。

「嘘吐きの言葉を誰が聞くの?私にとって、お前はもう何者でもない、ただの敵よ」

ビクリと肩を震わせる皇王ネイ、だけど、それでも道を譲る気は無いようで、結界を挟んでの睨み合いが続く。

その重苦しい沈黙を、

「未だ迷うておるか、戯けが」

転移で現れたもう一人のネイが破った。

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