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〈第二部開幕〉転生聖女の逃亡放浪記  作者: 宮本高嶺
第八章 マンベル・秘されし者達の蒐集録

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337 教導者・死越のドイシュ

予想外の凶行に気でも触れたのかと思ったけど、すぐにそうではないと理解する。

魔法によって切り刻まれた女、その肉片が光と共に四散し、刃となって私へ向かって一斉に動き出す。

直感的に触れるのはマズいと判断して、何も理解していないフェアレーターの腕を掴んで大きく飛び退る。

「うわわ、なんですかぁ!?」

間抜けた声を上げるフェアレーターを放り出し、地面を穿った刃を睨む、、、いや。

「、、、どっちが化け物よ」

視線の先、突き刺さったはずの刃は無く、代わりに切り刻まれたはずの女がまるで当然のようにそこに立っていた。

「あのような手段でオイトを葬った貴女には言われたくありません。本来ならば初対面故名乗るのが礼儀、、、しかし、我が使命の前には、、、」

「ドイシュ!リターニア様、あの女はドイシュですよ!なんだっけ、、、死なずの?とか呼ばれてますぅ!」

言葉を遮り叫んだフェアレーターに目を見開く女、ドイシュ。

さっきの口振りからすると、オイトとの戦いを遠見で監視していたはずだからフェアレーターの正体も知っているはず、、、あの眼は、まだ一縷の望みとやらを抱いていたのだろうか、本当にどいつもこいつも救いようが無い。

しかしまぁ、死なずと来たか、、、今目の前で起きた事を考えると誇張された言葉では無いのは確かだろうけど。

「死なず、ねぇ。大層な二つ名じゃない」

「、、、」

成程、これ以上の情報は貰えないらしい。

なら、さっさと手の内を明かしてもらうとしましょうか。

「フェアレーター、お前は向こうを相手しなさい」

「え~、アイツらなんか気持ち悪いんですけどぉ」

愚痴るフェアレーターのお尻を叩いてさっさと移動させると、改めてドイシュと向き合う。

しかしまぁ、何とも不思議な事にその体は傷の一つも無く、その絡繰りも分からない。

「ま、とりあえず一度試しましょう」

考えても仕方が無い、軽く手を払い、魔法を放ってドイシュの体を切り裂き、、、

「あら?」

と思ったのだけど、意外にもドイシュは体を反らして魔法を躱した。

その行動に違和感を感じ、立て続けに魔法を放つ。

「これはいけませんね」

そう小さく呟くと、彼女は軽やかに浮き上がりフェアレーターと戦う男達の傍まで後退する。

それに呼応して男達も一斉に魔法でフェアレーターを弾き飛ばすと、最初と同じようにドイシュを囲む、、、そして。

「またやったわね」

間髪入れず男共が魔法を放ち、またしてもドイシュは細かな肉片へと成り果てると、これまたさっきと同じく光を纏い、刃となって私目掛けて飛来する。

やっぱり原理は分からないけれど、今ので一つだけ気付けた事はある。

刃を躱しつつ、横目でフェアレーターと戦う四人の男を観察する。

(どうにもおかしいとは思ったけど、そういう事ね)

最初に見た時から何とも言えない違和感はあったけど、二回も見れば流石にその正体に気付ける。

それに加えて、あの刃の挙動もそうだ。

さっきも今も、全く同じ動きしかしていないとなれば、その理屈にも予想は付いてしまう、、、要は、ドイシュの攻撃は一撃必殺でなければならなかったという事だ。

再び人の姿に戻ったドイシュの顔を見れば答え合わせの必要すら無い。

「随分と焦っているわね。同じ相手に二回も手の内を見せるなんて初めて?」

「っ、、、貴女も彼女も、初めから影達を捉えていましたね。それが邪神の加護ですか」

彼女の言葉に思わず首を傾げてしまい、そこで彼女の言葉の意味に気付いて右目の聖痕で男達を確かめる。

「驚いた、、、あの男達って貴女の魔法なのね。独立型の幻影?いえ、違うわね。貴女の偽りの死と関係がある、つまりは一つの魔法という事かしら?」

私の予想ではあの男達の魔法でのみ、彼女は死ぬ事無く四散するのだと思っていたけど、どうやらそれ以上の事を彼女はしていたようだ。

これには素直に感心するばかりだけど、それが分かってしまえば最早どうにでもなる。

私の思考をフェアレーターへと伝え、それに応えた彼女が一度私の横まで後退する。

「流石リターニア様!アイツの倒し方が分かったんですねぇ!」

「これ以上のお遊びは時間の無駄、さっさと終わらせるわよ」

言い終わると同時に私はフェアレーターの頭を掴み、思い切り振り回して加速、そのままドイシュ目掛けて投げ飛ばす。

「なにをっ!?」

「アハハハハハ!おもしろーい!」

突然の事に目を丸くするドイシュと、無邪気に笑いながら体勢を変えて両足を突き出すフェアレーター。

当然、こんな見え見えの攻撃なんて当たる訳もなくドイシュは大きく横へと身を翻し、

「っ!それが狙いですか!」

フェアレーターを投げるのと同時に動き出していた私が何をしようとしているのかに気付いて声を上げるけど、もう遅い。

両手に纏った紅炎から荊の鞭を無数に呼び出し、縦横に振り回す。

影の男達も素早い動きでそれを躱すけど、私相手には全て無駄でしかない。

鞭によって逃げ道を塞がれた影共の足元から岩の槍が大量に突き立ち、その身を串刺しにしていく。

そして、

「隙だらけー!」

ほんの僅かに動きを止めてしまったドイシュの胴を、フェアレーターの腕が貫いた。

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