29:はじめての一歩
という訳で、初めてのお出かけが決定しました!
犬型になったガルムと私とヴィルベルと、保護者枠のジェレミーさん。
冒険者として活動するには戦力過多な気はするけれど、そこはそれ。
どちらかというと、社会勉強みたいなものなのだ。
「どう、かわいい?」
アイテムクリエイトで作り出したフード付きのローブを纏って、くるりと回る。
身に付ける物も、全部この世界に合わせて作り出した。
ただのローブと侮ることなかれ。
厚手の生地で、見た目よりずっと防御力があるのだ。
「ええ、とても」
世慣れたジェレミーさんは笑顔で答えてくれたけれど、ノンデリなヴィルベルは、ぶっきらぼうな口調で一言。
「そんなひ弱で大丈夫か? 飛竜の一撃で潰れてしまいそうだ」
「普通の冒険者は、飛竜とタイマン張らないと思う」
ダメだ、ヴィルベルとは“普通”の基準が違い過ぎる。
「そもそも重い鎧なんて着けても、動けなくなるだけだから!」
もう、防御力がどうとかそんなことは聞いてなくて、ただ良い感じのローブが作れたから、見てほしかっただけなのに……。
そういうとこやぞ、このノンデリドラゴン!
初めてのお出かけを前に、私達は地上階に転移した。
冒険者達が出入りする区域とはまた別の、一方通行エリアの先にある、管理者しか立ち入れない場所だ。
普段は管理室に詰めているレムスも、今日はお見送りに来てくれている。
「マスター、こちらを必ず肌身離さずお持ちください」
「うん」
レムスから受け取ったのは、ダンジョン機能を外部から操作する為の端末。
日本のスマホやタブレットをイメージしてクリエイトした物で、これを通して管理室のレムスとやりとりをしたり、ダンジョンクリエイト以外の項目──アイテムクリエイトとモンスタークリエイトを使用出来るようになっている。
これさえあれば、立派なテイマーになれるのだ!
ちゃんとダンジョンマスター以外は使えないようになっているから、誰かに奪われたとしても安心。
勿論、そんなことは起きないのが一番だけれど。
「俺が持っていた方が安心なのではないか?」
大事な物だと分かっているから、ヴィルベルは私に持たせておくのが不安みたい。
「大丈夫、盗まれても悪用される心配はないし。誰かに強奪されるような心配は、最初っからないでしょ?」
ひったくりでも現れようものなら、相手の方が心配になってしまう。
主に、ヴィルベルに殺されないかという点で。
「必ず一日に一回は連絡を入れてください。帰りがいつになるか、その日何があったかも、きちんと報告を……」
「わ、分かったって」
初めて私をダンジョンの外に送り出すものだから、レムスがあれこれ注意事項を並べ始める。
おかんか。
くすぐったい反面、あれこれ気を揉んでくれるのは、素直に嬉しかったりもする。
「ジェレミーさん、マスターをよろしくお願いします」
「勿論」
レムスが、ジェレミーさんに頭を下げる。
「おい、俺にはないのか」
どうも、ヴィルベルにはそれが面白くないらしい。
「おや、貴方は何も言わずともマスターをお守りくださるでしょう?」
レムスが、揶揄うような視線を送る。
ヴィルベルは無言のまま、眉間に皺を寄せている。
これは、二人の間に信頼関係が築かれていると思って良いのかなぁ……?
私に何かあれば、今の生活は全て壊れてしまうものね。
ヴィルベルだって、それは嫌なはずだ。
「ガルム殿も、マスターをよろしくお願いしますね」
「ワンッ!」
レムスの声に、ガルムが元気に答える。
ガルムも、ダンジョンの外に出るのが楽しみみたい。
この子もダンジョンに生まれて、外の世界をいまだ知らない。
……そう。
ガルムも私と同じなんだ。
初めての異世界、楽しまなきゃ損だよね。
「じゃ、いってきます!」
「マスター、どうかお気を付けて」
一方通行エリアを出れば、すぐそこにダンジョンの出口がある。
久しぶりに見る、外の景色。
久しぶりに感じる、外界の風。
一歩足を踏み出せば──初めて自ら望んで立つ“異世界”の景色が、そこに広がっていた。









