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追放召喚者のダンジョンには、最強竜と魔狼(もふもふ)が住んでいます ~魔力SSSで始めるスロー・ダンジョンライフ~  作者: 黒猫ている


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22:地下19階の異変

「バゥッ」

「もう少しで出来るから、待っててね~」


調理中、ご機嫌なガルムが足下をウロウロと歩き回る。

今日のランチは、オムライス。

前に朝食として出したオムレツが好評だったから、作ってみました。


上に半熟オムレツを乗せて、切り開いたらトロッと全体を覆うような半熟オムライス……が作れたら良かったんだけど、あいにく私にそんな技術はない。

という訳で、昔ながらの薄焼き卵でチキンライスを包んだ形のオムライスだ。


ソースは市販のデミグラスソースとケチャップ、好きな方を選べるようにした。

好奇心旺盛なレムスは目新しいデミグラスソースを、リベンジに燃えるヴィルベルは、ケチャップを選んだ。

今日も今日とて、薄焼き卵に真剣な表情で絵を描こうとする死黒竜(人型)が拝めたりする。


「私が描こうか?」

「いや、自分でやる」


ケチャップのボトルを掴んで、集中するヴィルベル。

力を入れたら逆効果だと思うんだよな……案の定、今日もケチャップがべちゃっと飛び散っている。


「ふ……ふふふ……」


ダメだ、こんなの笑ってしまう。

眉間に皺を寄せた強面のヴィルベルが、頬にケチャップを付けて、真顔でオムライスを凝視しているんだもの。


「なぜ、上手く描けないんだ……」

「はいはい、食べたら同じだから」


ヴィルベルからケチャップを受け取って、私とガルムの分を仕上げてしまおう。

ガルムの為に、今日も絵を描いてあげようかな~と思ったら……、


──べちゃっ。


私が少し力を入れた瞬間、キャップごと外れてケチャップが飛び散った。


「ちょっとぉぉ!?」


ヴィルベル、あなたどれだけの力を込めていたのよ!?

非難を込めてヴィルベルの方を向けば──、


「はっ」


頬にケチャップを付けたヴィルベルに、鼻で笑われてしまった。

くそー、イケメンだから許されると思うなよー!!


「ワゥ」

「ごめんねガルム、もう一つのは綺麗に描くから……」


気付けば、私までケチャップまみれだぁ……。

これじゃヴィルベルのことを笑えない……いや、そもそもヴィルベルが力の加減を知らないのが良くないんだ。うん。




「最も先行しているパーティーですが、地下19階まで到達したようです」


賑やかな食事を終えると、レムスの近況報告タイムだ。

地下19階と言えば、遺跡エリアの深層。

エリアボスのミノタウロスが居る地下20階まで、あともう少しといったところ。


「その冒険者達は、遺跡エリアを突破出来そうなの?」

「そうですね、その内の一人はかなりの実力者ではあるのですが……」


私の問いに、レムスが眉を寄せる。


「正直、あまり連携が取れていないように見えます」

「連携?」

「ええ、即席パーティーなのでしょうが、それにしても……」


レムスの言葉は、いまいち歯切れが悪い。


「他のパーティーメンバーが、一人の突出した冒険者を邪魔しているような節が見受けられまして……」

「……本気でダンジョン攻略をしている訳ではないということ?」


私の問いに、レムスが逡巡する。

そうとも言えるし、そうではないとも言える……ってことなのかな。


「……ちょっと、気になるな」


私は食卓を立ち、管理室へと向かった。




管理用モニターに映し出された冒険者達。

柄の悪そうな大柄な男が四人と、ちょっと目を引く美男子が一人。

美男子がダンジョンを先行して、男四人がその後からついて行くという構図だ。


「うわぁ、如何にも柄が悪そうな……」

「人品は姿形に出ると言いますからね」

「あら、人は見かけによらないとも言うわよ」


レムスの言葉に注釈を入れながらも、視線はモニターに向けたまま。

人を風体で判断してはいけないと分かってはいるのだが、どうもこの状況だと、四人組が悪さを謀んでいるように見えてしまって困る。


「この先は、マッドマッシュルームの群生地ですね」

「マッドマッシュルーム?」


レムスの言葉に、思わず首を傾げた。

直訳すれば……狂気的なキノコってところ?


「植物型モンスターの一種です。彼等が発散する胞子を吸い込むと、高確率で状態異常を引き起こします」

「うわぁ」


なかなか厄介なモンスターみたい。

カメラを動かして、モニターにマッドマッシュルームの群生地の様子を映し出す。


「マッドマッシュルーム自体の戦闘力は、下の下といったところ。初心者でも簡単に狩れるでしょう。ただ──」

「状態異常を引き起こした場合、まともに戦闘出来るかは分からない……ってこと?」


私の言葉に、レムスが頷く。

幸いにして、マッドマッシュルームの群生地は、メインルートから逸れた場所にあった。

下手に足を踏みこまなければ、何ということはない。

熟練の冒険者なら、簡単に回避出来るだろう。


そう思って、胸を撫で下ろしていたところで──モニターに、彼等(・・)の姿が映り込んだ。


先頭を歩く金髪碧眼のイケメン冒険者が、チラと群生地を確認する。

どうやら的確に状況判断が出来ているらしい、踵を返して、そこから距離を取ろうとしている。


……それにしても、この冒険者、どこかで見たことがあるような……?

イケメンだし、映画俳優の誰かに似ているとか、そんな感じだろうか。


ま、危険なマッドマッシュルームの群生地とはいえ、避ければ何てことはない。

このまま彼等は地下20階まで進むのかな~なんて考えていたら──、


画面の中で、金髪冒険者の体がぐらりと揺らいだ。


「……え?」


一瞬、何が起こったか分からなかった。

後からやってきた、四人の男達──彼等がマッドマッシュルームの群生地を確認した瞬間、金髪の彼を押したように見えたのだ。


いや、見えたなんて話ではない。

間違いなく、押されていた。

マッドマッシュルームが屯するエリアめがけて、突き飛ばされていた。


監視カメラ越しで、音声は聞こえてこない。

ただ、四人の男達が浮かべた表情は──あまりに下卑た笑いだった。


「……あいつらっ」


状況を理解した瞬間、体が動いていた。


これは、いじめなんて生易しいものじゃない。

明確な殺意──いや、それ以上の悪意がなければ、こんな行動に出れるはずがない。


「ちょっと行ってくる」


モンスターとの戦いで、冒険者が犠牲になること──それは、覚悟していた。

でも、あんな酷い裏切りシーンを見てしまっては、放っておくことなんて出来ない。


私の声を聞いて、ヴィルベルがため息を吐いている。

呆れられるのも仕方ない、分かってはいるけれど……こんなの、許せないよ。


「マスター、お待ちください」


止められるかと思いきや、レムスが私に真っ白な仮面を差し出してきた。


「これを付ければ、お顔は隠せるでしょう」

「……分かった」


こうして、白い仮面を装着して──私はガルムと共に地下19階に転移した。

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