幕間:冒険者の街にて
多くの人達が行き交う、活気ある街並み。
ガスール共和国の自由都市クゥエイフは、別名“冒険者の街”と呼ばれるほどに、冒険者が多く集まる街だ。
街中央の一番大きな建物が、冒険者ギルドクゥエイフ本部。
今日も多くの冒険者達が依頼を受け、そして冒険に旅立っていく。
冒険を終えた冒険者達はギルドに戻り、報酬を受け取って、疲れを癒やすのだ。
「お疲れ様でした~! 今回は本当、助かりましたっ」
冒険者ギルド前で、軽やかな声が響く。
「本当、ジェレミーさんが居なければ、どうなっていたか」
「噂通り、頼りになるわぁ」
「ね~!」
女性冒険者が三人、口々に目の前の男を褒めそやす。
話題に挙げられた男──ジェレミーという冒険者は、気恥ずかしそうに頭を掻いた。
「三人の腕が良かったからさ。俺はただ、手を貸しただけだ」
「またまた、謙遜しちゃってぇ」
仲睦まじく語り合う四人に、ギルドに出入りする冒険者達が恨めしげな視線を投げかける。
美女三人と金髪碧眼の美丈夫一人、誰もが羨むハーレムパーティー。
女性達に囲まれた男は、彫りの深い顔立ちに苦笑を浮かべていた。
「出来れば次もジェレミーさんとご一緒したいのに」
「そうですよ、ジェレミーさんはロドニー王国には行かないのですか?」
「かなりの報酬が出るって話ですよぉ!」
ロドニー王国の名を出された瞬間、ジェレミーの笑みが僅かに硬くなった。
しかし、それもほんの一瞬のこと。
「いや、暫くはここクゥエイフに滞在しようと思うのでな」
しなだれかかってくる女性達に、ジェレミーがキッパリと答える。
「そっかぁ~」
「残念」
女性冒険者三人の顔には、落胆の色が浮かんでいた。
「じゃ、戻ってきたらまた一緒に冒険に行きましょうね!」
「ああ、三人とも気をつけて」
手を振る女性冒険者達に、爽やかな笑顔を向けるジェレミー。
冒険者の街クゥエイフきっての実力者であり、甘いマスクを持つ彼は、女性冒険者達の憧れの的であった。
同時に、男性達からは日々やっかみの視線を集めてもいる。
決まった仲間を持たず、ソロ冒険者として活躍するジェレミーは、誘われれば他パーティーの手助けをすることも多くあった。
しかし、誘ってくるパーティーはと言えば、女性冒険者ばかりなのだ。
声を掛ける女性冒険者にとって、ジェレミーは憧れの存在であると同時に、紳士的な態度の安心出来る相手でもあった。
破落戸のような風貌の男達が多い冒険者の中で、貴族的な落ち着いた物腰と整った美貌を持つジェレミーは、貴重な存在なのだ。
甘い蜜に誘われる蝶の如く、ジェレミーの周囲には女性冒険者達が集まっていく。
「けっ。どうして、あいつばかり……」
そんなジェレミーを快く思わない冒険者も、この街には少なくない。
その大半が、女性とは縁の無い大柄で粗野な冒険者だ。
酒場で酒を飲みながら入り口の様子を見守っていた男が、吐き捨てるように呟いた。
「おい、一つ良い考えがあるんだが」
「考え?」
そんな男に、他の冒険者が声を掛ける。
頬に傷のある、盗賊上がりの男だ。
「ああ、未開のダンジョンの探索依頼が出ていただろう」
「昨日張り出された、あれか」
魔の森で見付かったという、新しいダンジョン。
ダンジョンの存在は、貴重だ。
どこの国でも、どこのギルドでも、その内部調査には力を入れている。
「未知のダンジョン内部でなら、何が起きても不思議はない……そうだろう?」
「……へぇ」
意味ありげな言葉に、テーブルに居合わせた男達の口元が醜く歪んだ。
やがて、女性冒険者達との別れを終えてギルドに入ってきたジェレミーに、一人が声を掛ける。
「おお、ジェレミー。どうだ、今度は俺達の依頼を手伝っちゃくれないか?」
「どんな依頼だ?」
声を掛けられたジェレミーは、屈託のない笑顔を浮かべ、男達のテーブルに近付いてくる。
獲物を罠に誘い込むが如く、卑劣な魔の手が一人の冒険者に忍び寄っていた──。









