適性って重要
「解呪用の鑑定・・・ですか?」
コタツで寝転がって源之助のスピスピ眠っている様子を見ながらうたた寝していたら、電話が鳴った。
またもや退魔協会の職員で留守電ホールドで待たれたので、渋々と電話を取った碧が怪訝そうな声で返事をしていた。
解呪用の鑑定??
解呪が上手く出来るかの鑑定??
そんなもの、碧ではなく退魔協会の調査部に行くべき話だろうに。
「えぇ?
あれが分からなかったんですか?
でも、解呪は出来たんですよね??
・・・そんな良い加減な。
それだったら依頼する人間全員に呪詛返しを施せば良いじゃ無いですか」
なんか普段の依頼と違った感じに話が進んでいるようだ。
こたつに入ったまま手が届く所にある電話は子機なので、スピーカー会話にすると雑音がかなり酷く入る。
だから碧が受話器に直接話しているのだが・・・お陰で今回は碧側だけの会話しか聞こえないので余計話が見えない。
呪詛返しっていうと。こないだの地縛霊さんの弟の事かね?
碧にそれとなく解呪しなきゃどれだけ検査しようが投薬しようが治らんよって言ってもらったんだが・・・変な事になっているのかな?
何やらごにゃごにゃ職員が電話で食いついているのが聞こえる。
いつとか幾らとかの話題も出る前に揉めているってことは普通の依頼じゃないのかな?
白龍さまの愛し子相手に変なゴリ押しはしないだろうけど、相手が余程金を積んでいるのかね?
「でも今回は私達で何とかなるかも知れませんが、他の退魔師が出来ない仕事を普通に受けていたら我々が結婚したり妊娠したりして休業したり、何かの事故で死んだりしたら困りますよね?
ちゃんと出来る人を見つけた方が良いですよ。
・・・依頼主を利用するんですか!?
まあ、相手が合意しているなら良いですけど。
ちょっと待って下さいね」
碧がホールドボタンを押してこちらに向く。
「ちょっと何人か、呪詛を受けているか鑑定して欲しいらしいんだけど、いつだったら空いてる?」
変な話だ。
「春休み中だし、来週まではいつでも大丈夫だよ」
来週は実家に遊びに行く予定。まあそれも変更は可能だけど、金持ちの呪詛鑑定なんて変な仕事の為に変えたく無い。
「では明後日の午後でどうです?」
碧が日付を向こうにぶっ込んだ。
今週中ならいつでもOKなんて言って、向こうに都合のいい日を指定させる気はない様だ。
基本的に上から目線な交渉が、退魔協会へゴリ押し要求をしてくるお偉いさん系には正解なのだそうだ。
碧パパによると、気を遣った対応すると最初は感謝されるが数回で都合の良い下っ端扱いになってくるらしい。
何やらもう少し話し合ったあと、電話を切って碧がため息を吐いた。
「こないだの門沢氏、退魔協会に頼んで肝臓周りの解呪をして貰ったら5年ぐらいずっと薬の効きが悪かった肝臓の病状が一気に改善されたんだって。
そのことを同じく薬が効かないって文句を言っていた病院の愚痴仲間に言ったら、その人らからも退魔協会に解呪依頼が来たらしいんだけど・・・」
病院仲間ねぇ。
経済界の偉い人とかだったら病気の弱みなんて秘密にしそうなものだが・・・ああ言うVIPフロアで長期的に入院して検査したり治療したりしていたら、そのうち常連同士ではお互いの情報がバレバレになるか。
「解呪すりゃあ良いじゃん」
と言うか、あんな金持ち用の病院だったら回復術の使える白魔術系の力を持つ退魔師も配下に居るんじゃないの?
「実は、門沢氏の呪詛、退魔協会の調査部の人間には見えなかったんだって。
それでも私があるって言ったからって事で肝臓部分の呪詛扱いで呪詛返しをやらせたら成功したらしい。
金だけ貰って呪詛があるかも分からずにダメ元でやったとは今更言えないから、私らに呪詛が掛かっているかを確認して貰いつつ、退魔協会の調査部の人間にも呪詛を見つけられるのが居ないか調べたいんだって」
碧が説明を続けた。
マジか。
視えなかったんだ??
「視えなくても悪い部分を狙って呪詛返しすれば良くない?」
何とは無しに面倒な話になりそうなので思わず聞いてみる。
「人間の体ってそれなりに複雑に機能が絡み合っているからねぇ。
諸悪の根源が痛みや不調が出ている場所とも限らないから、できれば当てずっぽ解呪はしたくないらしい」
肩を竦めながら碧が言った。
まあ、今回の依頼自体は別にいい。
でも、変に呪詛関係で頼りになるなんて思われたら面倒そう。
「黒魔術系の適性持ちだと呪詛への適性も高いから見つけやすいのかも。
多分碧も注意していれば視えると思うから、白魔術系の適性持ちでも大丈夫だろうね。
調査部の人間に回復系の才能持ちがいないなら、病院なりに勤めている回復系の退魔師にも視させたらどうかね?」
調査部の人間がどう言う適性持ちが多いのか知らないが。
そこら辺、ちゃんと退魔協会の方で把握してるんかね?
つうか、VIPなんだから病院で抑えている回復系の力を持つ退魔師を引っ張り出して治療に当たらせれば良いのに。




