岡田家
岡田家から歩いて30メートルぐらいなところに小さな公園があったので、そこのベンチに座って碧が待つ間に私はハネナガに岡田家に調査に入って貰う事になった。
こういう住宅地の中に突然ある小さな公園って何のためにあるんだろ?
鉄棒とベンチしかないんだけど。
下手にスイングして近くにいる子供に当たったり、子供が落ちたりするかも知れないブランコよりは鉄棒の方が安全かもだけど、今時鉄棒を回る様な子供ってそうそう居ないと思うけど。
しかも二つ有る方の片方はかなり高いから、あれって懸垂が出来なきゃ使えなくない??
ワンチャン近所のマッチョおっさんが懸垂する為にあるのかもだけど、その想像図は微妙に夢がない。それともお父さんが鉄棒の上に子供を持ち上げて、大車輪(?)をやらせてあげる為にあるとか?
母親でもいいけど。身軽な子供だったら横に鉄棒からつたって自分で登るのも多分可能かも?
鉄棒の使用者と使用目的はさておき、公園そのものはキャッチボールとか縄跳びの練習をするためのスペースなのかね?
だとしたらちょっと狭いと思うけど。
それとも、現代版井戸端会議用のスペースなのか。
今じゃあ近所の人と立ち止まって話すよりもSNSで色々チャットしそうだが、考えてみたら若くない年代は普通に人と話す場所を求めるのかな?
というか、鉄棒やベンチのボロさを見るに、この公園はSNSが流行る前に整備されたのかも。
考えてみたら、2000年でも携帯を持っている人はそこまで多くなかったし、持っている人も基本的に通話用のガラケーだったからSNSなんて存在しなかったって母が言ってたっけ。
そう考えると、この公園の角にあるぶっとい桜の木って携帯電話が世に出る前から生きてるのかも?
う〜む。
ちょっと時代の流れが大きく感じるねぇ。20年ちょっとで世界がガラッと変わった感じ。
まあ、それを言うなら私の両親が生まれた頃だった高度成長期の三種の神器はテレビと冷蔵庫と何かもう一つだったって聞いた記憶があるから、つまりうちの親が子供だった時代って下手したら冷蔵庫が家になかったんだよね??
SNSどころじゃない文明度の違いだなぁ……。
それはさておき。
ハネナガが岡田家に辿り着き、中に入った。
あれ、誰もいない?
祖父がまだ定年退職前で仕事に出ているにしても、祖母はいるかと思ったんだけど。
一階を見て回ると、やはりちゃんと主婦がいる家らしく、それなりに整理されている。
新聞がリビングに置いてあるのはちょっと目新しい。
今時、デジタルじゃなくて物理的に新聞を取っている人なんてまだ居るんだね〜。
ウチの親も最近はデジタル版に切り替えたって言っていたのに。
雑誌もそれなりにある。
どうやら岡田夫妻は物理的な媒体を読む派らしい。
角にある書斎っぽい部屋にPCとプリンターがあるが、本棚と大量の本もある。
子供が描いたらしき絵や工作っぽい何かが棚や壁に飾ってあるが、デジタルフォトフレームには幼児と中年(初老?)夫婦の写真が数十秒ごとに切り替わって表示されている。
幸いにも子供は愛されているみたいだ。けど、父親の写真が一度も出てこないのはどうしてなのかね〜?
と思っていたら、一枚だけ何やら若い男性に肩車されて幼児が木の枝に手を伸ばしている写真が出てきた。
おう。
どうやら没交渉では無いらしい。
良かった。
リビングにも子供のおもちゃが幾つか籠の中に転がっているし、食卓には子供用の椅子がある。
あれ?
考えてみたら、父親の部屋には子供用の椅子が無かったね?
どうやって食事を食べさせるんだろう?
椅子の上に箱でも乗せて高さを調整するのだろうか。
『2階も回ってみてくれる?』
取り敢えずざっと1階を見終わったので、ハネナガに頼む。
『うむ』
階段を上がった先の階では、夫婦の部屋らしいシングルベッドが二つ並んでいる部屋が正面にあり、横は子供部屋だった。
セミダブルぐらいのサイズのマットレスが床に置いてあり、部屋一面にクッションマットレスっぽいのが敷き詰められており、子供の服やおもちゃが整理されているとは言え、溢れるほどある。
うん、どうやら子供はそれなりに大切にされているっぽいね。良かった。父親の所の服とオモチャだけじゃあちょっと少ないと思ったんだよね。
取り敢えず。
あの子供の主たる生活の場は、ここみたい?
まあ、シングルファーザーが乳幼児を一人で働きながら育てるのは難しいんだろうけど。
これって小学生とか中学生になると父親のところに戻るんかね?
『下に人が来たぞ』
ちょっと悩んで(まあ、私が悩む話じゃないけど)いたら、ハネナガが教えてくれた。
祖母が帰ってきたのかな?
出来れば先にお向かいの家にいた猫の話を聞いておきたかったんだけど、まあ取り敢えず様子を見させてもらおう。
子供を連れて帰って来たならだけどね。




