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転生しても、現代社会じゃ魔法は要らない子?!  作者: 極楽とんぼ
大学4年

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準備はしっかりしてあったんだ

「ちなみに、今回みたいな汚物屋敷の中に入って、場合によっては遺体を探す為にゴミを掘り起こさなければならないような依頼って今後もあり得るんですか?

 その場合、こちらの衣類と靴一式を全部弁償して頂くか、しっかりした防護服みたいのを事前に手配しておいてもらいたいのですが」

 数日後、遺体に関する顛末の報告に電話を掛けてきた遠藤氏に、碧が要求を突きつけた。


 実は、先日の汚屋敷でそれほどゴミに触れないで済んだから被害はあまり無かったと思っていたのだが、何かが付着したらしく碧のズボンの裾の方が変色していたんだよね。

 捨てても良いボロな服はそうそうあるもんじゃ無いし、これからの事を考えて退魔協会にそこら辺をしっかり確認する!と碧が言い出したのだ。


 私的には汚屋敷関連の仕事自体を断りたいんだけどねぇ。

 家の掃除や取り壊しに悪霊が邪魔する場合、どうしても退魔師が中に入る必要がありそうだし。今回みたいに遺体が隠された部屋自体が封印されてて綺麗な状態である可能性なんて、かなり低いだろう。

 となると。マジであのゴミに山を掘り進む羽目になりかねない。

 積み上げたゴミの間を進むとなると中年太りしたおっさんよりは若い私らの方が良いっていうのは想像できるけど、遠慮したい事に変わりはない。

 太ってない中年の退魔師だってそれなりにいるでしょう!?

 まあ、とは言え嫌な仕事は若い者にやらせろ!ってベテラン勢は言うんだろうなぁ。


 うん、そう考えると防護服を手配して欲しいかな。

 服を賠償してもらうのってそれはそれで面倒そう。


『そうですね! 何通りかの体型に即した防護服を退魔協会の方で揃えるよう、上に提案しておきます』

 遠藤氏が妙に前向きに合意した。

 碧以外からも今までにクレームが入ってきていたのかな?

 と言うか、旧家の金持ち坊ちゃんとかお嬢様が仕事を振られていた場合、それこそブランド物の服で依頼に行って、それを経費として要求されたのかも?


『ちなみに、先日の依頼の件ですが』

 遠藤氏が続けた。

「相続とか埋葬は大丈夫そうですか?」

 ちょっと気になっていたので尋ねる。


『ええ、元々妻の方は民生委員経由で弁護士を紹介してもらって遺言書を作成し、夫の相続人に全て自分の遺産も残すと指定していたので。

 弁護士に預けてあった資金で埋葬とかもする手配になっていたのですが、その際にもしも自分たちの死後に息子の遺体が見つかった場合は自分たちと同じように葬祭業者に依頼して海へ散骨して欲しいとその分の資金を余分に預託されていたそうです。

 その事からも警察としては夫婦で長男を死に至らせた可能性は高いと判断しました。あちらにも息子が暴れていると言う通報や夫婦からの相談の記録があったので、自己防衛に近い形だったのだろうと見做したようですね。

 二人は特に他に親しい付き合いもなかったので他者が関わっていた可能性は低いだろうと言う事で、被疑者死亡で不起訴処分だそうです』

 遠藤氏が報告してくれた。


 そっか、妻の方は遺言書を書いていたんだ?

 あのゴミ屋敷を鑑みるとだらしないタイプなのかと思っていたけど、考えてみたらきっちり全部段ボール箱に入れて積み上げてあったから、ある意味几帳面だったのかも。

 と言うか、遺言書がなかったら。考えてみたらもしも妻が倒れた後に二人が実際に死んだタイミングは夫の方がちょっとでも早かった場合、法的には妻が夫の財産を全て相続してから亡くなった事になって、あの家って夫の親族じゃなくて妻側の親族が相続人になっていたのかも?

 そうなると、どっちが先に死んだかってめっちゃ重要な詳細になりかねないね。

 孤独死で遺体が見つかったのが数週間後だったりした場合、どちらが先に亡くなったかなんて、分からないんじゃない?

 そう言う場合、今回みたいな子供が居ない老夫婦が亡くなり、遺言書もなくて妻側の親族が異議を申し立てたら……相続は泥沼になりそう。


 夫の相続人に全て残しますって遺言に残すなんて、もしかして妻は介護疲れで夫を殺して自分も死のうかとか考えていたんかね?

 長男の悪霊に取り憑かれて時折夫が暴力を振るっていたらしいから、そんな事を考えていても不思議はなさそうだし。

 実際にはそうなる前に倒れたようだったけど。


「そうなんですか。

 教えて頂きありがとうございます。

 汚物屋敷の依頼は暫くお断りしますが、順番が回ってくる頃には防護服が揃っていると期待してますね」

 碧が素早く応じて、次の依頼の話なんかをされる前に電話を切った。


「海に散骨ねぇ。

 お年寄りにしちゃあ意外と新しい形だね。

 あれだけ捨てられない人だったのに、ちょっと意外」

 ゴミですら捨てられない人だったのに、自分たちの骨は海に撒けだなんてちょっと不思議。


「お墓参りしてくれる子供が居ないのは殺した本人が一番よく分かっていたんだし、他人と一緒に合祀されるよりは海の方が良いと思ったんじゃない?」

 碧が指摘した。

 そっかぁ。

 墓を管理してくれる子孫が居ないと、最終的には他の無縁になった仏たちと一緒に合祀なのか。

 だったらさっさと海に撒くほうが良いんかもね。


 そう考えると、燃えるゴミになりかねなかった長男も一緒にちゃんと火葬して散骨して貰える事になったのだ。

 祟って家の解体の邪魔をした甲斐があったのかも?


 これでこの章は終わりにします。

 明日は休みますが、明後日からまた宜しくお願いしますね。

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― 新着の感想 ―
息子と同じ墓に入って死んでからも文句言われるのがイヤだったのかも
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