家業なら?
「え"?!」
銭湯とコインランドリーでいい感じに綺麗になり、家に帰ってソファでメールをチェックしていた私は思わず目を疑った。
先日送り返した韓国製のスマートウォッチが、返品不可だと知らせが来たのだ。
『返品処理が進められない理由:使用感、傷・汚れあり
詳細:商品に使用感があるため。』
はぁ???
使用感って、一度も腕に嵌めなかったスマートウォッチに使用感なんてあるわけないでしょう?!?!
確かに箱は開ける時にうっかり一部破いたけど。
その分減額っていうならわかるが、返品不可ってちょっと酷くない???
しかも、『希望の国内返送先住所を下記のURLからカスタマーサービスまでご連絡いただければ、着払いにて返送させていただきます。返送した商品をお受け取りいただけなかった場合は、一定期間経過後、【処分】させていただきます』
処分とは酷い。
減額して買い取りとかもないのかぁ。
これってしょうがないからフリマサイトかオークションサイトで売りに出さなきゃならないかな?
韓国社製のスマホ持ちなら普通に使える筈だから、売っても問題ないと思うが新品としての値段じゃあ売れないんだろうなぁ。
マジでムカつく。
メールを読み進めると、更に下の方に説明文が出ていた。
『■ 返品処理が進められない理由が【使用感、傷・汚れあり】の場合:
事前に申告いただいた内容の不具合が確認できず、また過度な傷や汚れなどがあったため、返金はいたしかねます』
理由ごとの詳細が下にまとめて書いてあるが、今時のAI処理を使ったメールなら、普通に理由に合った説明だけを書けばいいだろうに。
全ての理由に対する詳細が書いてあるせいで、非常に理解しにくい。
どうやら、問題なく動く製品なのに返品しようとしているが箱に傷を付けてたから返品を受付しないって事なようだ。箱の一部が破れていただけで『過度な傷』とはかなりオーバーな言い掛かりだと思うけど。
返品する時に、ソ◯ー製の携帯だと連携できないって説明を書いたのに、どうやらソ◯ー製の携帯で起動を確認しないで韓国製の機種と連携させてみて、『問題ないじゃん』と言う結論になったっぽい。
こないだメーカーのカスタマーセンターとチャットでやり取りした時に向こうの無責任な、問題を認めつつどうしようもないと書いてきたチャットのスクショはキープしてあるので、あれを送りつけたら不具合が実在する事を納得してくれるかな?
そう思って密林サイトの返品関係のウェブページを探すが、そう言う反論が出来るようなページが見当たらなかったので、カスタマーセンターから電話を受けると言うボタンをクリックしてみた。
前回密林から交換バンドが来なくてクレームの電話をした時は、夜だったせいか出てきた相手が外人だったんだよなぁ。日中だったら日本人が出てくれると良いんだけど……と思いつつ待っていたら、幸いにもかかってきた電話の相手は日本人だった。24時間対応だとどうしても日本の夜とかは海外拠点の人材を使うせいで外人が多いんだろうが、やっぱ外人相手だと意思の疎通の安心感がイマイチなんだよねぇ。
「『過度な使用感や傷』って装着していないのに、あり得ないでしょう。
多分そちらで試したらウォッチは普通に起動したから、箱が破れているので壊れてないのに返品はダメだってなったんだと思います。
でも、サム◯ンのカスタマーセンターのチャットでのやり取りで、ソ◯ー社のスマホだと起動しないのはあちらも把握している不具合で、次のアップデートまで対処できないと言われたんです。
サム◯ン社のウェブサイトにはAndroid10以上であれば大丈夫って明記してあって、『例外的に◯◯社のは現時点では使えません』なんて注意書きは無いのに。
使えないのを向こうは知っていて、アップデートまで直せず、アップデートがいつかも分からないと向こうのカスタマーセンターが認めているチャットのスクショがあるので、それを送りましょうか?」
イラっとしていたのでちょっと捲し立てるようにこちらの言いたい事を伝える。
「え〜と、お客様はサム◯ン社のカスタマーセンターと話し合ったんですね?
ちょっと確認しますので少々お待ち頂けますか?」
意外と前向きな返事が返ってきた。
そして待っていたら、なんと。
「では、こちらで返金処理を行いますので、ご購入された際に使われた密林ギフトの返還という事でよろしいでしょうか?」
え?
マジ?
スクショ見ないで良いの??
「はい、勿論です。
どうもありがとうございました」
とあっさり電話を切って終わった。
有難い。
嬉しい……けど、スクショを送らないでも良いって、私が嘘をついていたらどうするんだろ?
密林社内でも実はソ◯ー社製のスマホだとあの韓国製スマートウォッチは使えないって事を把握していたのか、それともベテランのオペレーターだったら客が適当に嘘をついているかどうか分かるのだろうか。
なんとも疑問が残る対応だった。
「大丈夫?」
帰宅後に着替えて源之助と遊んでいた碧が声を掛けてきた。
「ん〜。多分?
こないだの韓国製のスマートウォッチの返品、壊れてないからダメって返事が来たんだけど電話して、サム◯ンのカスタマーセンターが不具合を認めたスクショを送るよ??って言ったら、あっさり返金してくれる事になった。
あそこの対応ってマジでよく分かんないね〜」
碧も苦笑しながら頷いた。
「なんか疑問な対応が色々と増えてきてるよねぇ。
事業が大きくなると大雑把になるのかな?
そういえば、遠藤さんに遺体が出てきた件を伝えておいたよ〜。
どうなるったのか後で教えてくれと言っておいたから、暫くしたら捜査とか後の処理とかのことも、分かるかも」
お、それは助かる。やっぱ気になるからね〜。
「なんか私らの依頼って遺体を見つける率が何気に高い気がするんだけど、退魔師の仕事ってこんなもん?」
悪霊の除霊依頼だったら遺体が隠されている可能性は常にあるのかもだが。
こんなにゴロゴロ転がっているもんなの?
「あ〜。
まあ、両親もちょくちょく行き当たったらしいから、そんなものなのかも?
だからウチの親は絶対に高校生になるまで私に仕事をさせなかったし、高校生の時もかなり渋々な感じだったからね〜」
碧が言った。
「……考えてみたら、遺体を見つける可能性もあるこの仕事って、年齢制限は無いの??
流石に小学生とか中学生がグロい遺体とか見つけちゃったらヤバいでしょう」
悪霊の精神と触れちゃうのだって、子供の教育には良く無いだろうし。
「旧家だと中学生で一族の大人に弟子入りしている事もあるから、大人同行だったらありって感じだね〜。
決まりはないみたい」
碧が教えてくれた。
そっかぁ。
家業だと若い頃から現実を知っておけってスパルタな路線な家もあるのかな?
あまり健全じゃあないと思うけど。




