まずは調べないとね
「何か分かった〜?」
家に帰ったら珍しく符を書いていた碧が聞いてきた。
いや、珍しくって程でも無いか。
碧だってお守り用やクッション用の符を描き溜めているのだが、なんか私の印象的には源之助を遊んでいる姿の方が記憶にあるんだよねぇ。
私が大学に行っている時に描いている時が多いのかな?
それはさておき。
「政治家の名前や諸々と、そいつが会っていた退魔協会の職員の名前も分かったわ〜。
なんかこう、政治家ってプライバシーなんて無いんだね〜と実感できちゃった。
然程有名じゃない時代でもあれだけメディアとかから見張られて情報収集されているから、ちょっと偉い立場になって粗探しをされるようになった時に次から次へと不祥事のニュースが出てくるんだねぇ。
下積み時代ってちょっとやそっとやらかしても報道されないから気付かれにくいけど、いつか大臣になった時に大スクープになることを期待して暇があったら見張っているメディア関係者って意外と多いみたい」
まあ、偉くならなくても法律に定められた規定に違反しなきゃ、見張られていたって問題ないんだけどね!
不倫とかは違法じゃないけどあれもまあ、人間としてやるべき事じゃあないし。
それこそ、家族や普通の知り合いに見られても恥ずかしくない行動を常に心がけていれば、問題はないのだ。幾ら情報収集されていても不祥事さえ起こさなければそれ程メディアから露骨な付き纏いはされないで済むんだし。
何故か政治家によくある、一般人から理解できない『自分は法の範疇に収まる必要はない』とでも言うが如きな非常識な行動をしなければいいのに。
自分たちが法を提案して決める立場にあるから、バレなければそれを守らなくても良いとでも思っているのかね?
「へぇ、退魔協会の漏洩元は幹部じゃなくって普通の職員だったんだ?
ってことは、退魔協会による凛と私の引き離し工作の一環って訳じゃないっぽい?」
符を書き終わった碧が筆を置く。
「多分ね〜。
ただ、考えてみたら退魔協会って内部に潜むスパイみたいな人とか、小遣い稼ぎに情報を売る様な人をどうやって見張っているんだろうって気になるよね。
折角悪意を読める術者を調査員として雇っているんだから、内勤の職員ぐらいは全員チェックしていると思ったんだけど。
政治家に情報を売る程度なら許容範囲内なのかな?」
幹部からして、政治家のゴリ押しに弱いからなぁ。
職員だって下手をしたら『頼むよ〜』と言われたら金も受け取らずに『貸し一つ』とか言って情報を流している可能性はある。
幾ら国籍が日本でも、政治家が絶対に海外に通じていない保証はないだろうに。
マジで政治家に通じているのはオッケーで調査対象じゃないなんて状態だとしたら、退魔協会の情報管理って穴だらけなんじゃない??
遠藤氏にチクって内部で調べて処分させるか、自分で接触して調べるか。
情報を売っている程度だったら、それがバレる様にミスをさせる程度の意思誘導しか私にできることは無いからなぁ。
「退魔協会の方へ退魔師から正式に抗議を入れれば、政治家に情報を提供するのが『良くある事』だとしても名目上は個人情報保護法違反って事で組織内でそれなりに罰して、改善策を立てなきゃいけない筈だよね?」
碧が指摘する。
「確かに!
だとしたら、有耶無耶にされない様にまずは情報を流した職員が何をやっているのかを確認した上で、正式に遠藤氏の方へ抗議の連絡を入れるかな〜」
もしも手当たり次第に情報を流しているとか、誰かが退魔協会内で碧と私が分かれたら都合が良いと思って私の情報を提供させたのだったら、それはそれで退魔協会に対する今後の対応を考えなきゃだからね。
「また車をレンタルして、あの御坊ちゃまに対処した時みたいに帰り道でちょっと話をさせて貰う?」
碧がニカっと笑いながら提案してきた。
卒論も終わったし、さては符を描くのに飽きてきたな〜?
「だね!
興信所の人にその職員の平日の帰宅ルートとか時間的ルーティンを調べて貰っているから、明後日ぐらいに車を借りようか」
帰宅ルートとして最寄駅からは人が多い大通りしか通らないんだとしたら退魔協会のそばで待ち伏せする必要があるが、どうなるかな?
取り敢えず。
カーシェアの予約でも入れておこう。




