合流できる……と良いね
「相手が異世界から来た存在で、白龍さまの境界門から行ける先に移動したいと希望するならその願いを叶えて貰えないか、白龍さまにお願いするのは吝かではありませんが……。その人物が何処にいるのか、ちゃんと分かっているのですか?」
碧がちょっと首を傾げながら遠藤氏に尋ねた。
ある意味、黒魔術的な能力を持つなら認識阻害の術を自分に掛けておけば目撃者はゼロになる。
お金がなくてもタクシーや電車に乗るのだって運転手や駅員の意識を捻じ曲げて無銭乗車することが可能だろう。
黒魔術系しか能力がなかったら監視カメラとかの画像を誤魔化すのは無理だが、他にも能力があったら姿を消すとか、転移するとかも可能そうだから相手を見つけることは更に難しそうだ。
まあ、少なくとも最初に捕まえて軟禁できたんだから、無敵という訳では無いんだろうけど。
『問題を起こした後も素知らぬ顔で1日かけて万博の会場内を見て回っていましたが、今日は近くのテーマパークに行っているようです』
遠藤氏が答えた。
マジでインバウンドの観光客的な動きをしているね。
それって明日は神戸か京都じゃ無い?
体力があるアウトドア派なら四国の歩き遍路に挑戦する可能性もあるかもだけど。
でも歩き遍路は監視カメラがルート上にあまり無さそうだし、京都は私らが入るのは厳しいんじゃないかな。
この際白龍さまに京都のウザいという結界を全部吹き飛ばしてもらうというのも選択肢の一つかもだが。でもあそこは古くから国の中心だっただけあって、氏神レベルの存在の庇護を受けている家が今でも幾つかあるらしいから、下手をすると怪獣大合戦みたいな事になりそう。
再開発みたいな感じに、更地にするイメージで魔術的な構築物を全部上書きして消し去り、ちゃんと各家の敷地内だけに収まる結界を必要に応じて張る形にしたら外部の術者も頭痛を恐れずに京都に立ち入れるようになるのにね。そうしないのは各家のプライド? それとも何か利益を得られていて、権益化しているのか。
それはさておき。
「……分かりました、取り敢えずそのテーマパークに行って件の人物に会えるか、試してみましょう。
ですがその人物に会えても会えなくても。会った結果としてその人物の処理に成功しようがしまいが。明日の夕方までで2日分の日給と経費を我々二人が受け取って終わりという事で良いですか?
勿論、成功報酬は当然別立てで」
私が頷いたのを見て、碧が遠藤氏に確認する。
ちょっと面倒だけど、流石にエルフに会えるかもって言う事なら行きまっせ〜〜!
魔人はちょっと微妙だけど。
何をもって魔人とも判断したのか、ちょっと心配だね。
「ちなみに、今から新幹線に乗って行くとしても午後の3時か4時になると思います。
件の人物を見つけて直ぐに我々が合流できる様、しっかり場所の把握と合流ルートの確認をリアルタイムでお願いしますね」
テーマパークなんて、馬鹿でかい上に大量の人間が集まっているのだ。
よっぽどちゃんとターゲットの現在地を常時把握して密に連携を取り続けない限り、合流できる可能性はかなり低いだろう。
相手が監視の目を避けようとしていないなら何とかなるかもだけど、どうなんだろう?
無駄足になる確率も五分五分な気がする。
「テーマパークでの合流に失敗した場合、今晩は大阪に宿泊しても構いませんがホテルの手配はそちらでお願いしますね。
明日は何があろうと東京への新幹線の最終までには帰路に就きますので、見失った場合は他の方に依頼を回してください」
碧が釘を刺した。
確かに、こっちで目撃情報があった、あっちに行ったかもみたいな感じに引き摺り回されて何日も関西にいる羽目になるのは困る。
と言うか、そうなった場合は相手が捕まるつもりが無いか、追いかけ回す相手をおちょくって遊んでいるかなのだろう。
我々が付き合うい謂れは無い。
『心しておきます』
遠藤氏が答えたので、電話を切って急いで家を出る準備をし始めた。
まあ、必要な物は大体亜空間収納に入れてあるんで、着替えを適当に選んでバッグに入れれば良いだけなんだけどね。
「ちなみに、この相手って本当にエルフとか魔人みたいな存在だと思います?」
碧がそばに出てきた白龍さまに尋ねているのが聞こえた。
『さあのう?
『えるふ』や『まじん』は小説やあにめに偶に出てくるようだが、ツノが生えているとか耳が尖った存在を意味するのだったらそんな人物が飛行機に乗ってこの国に来て観光できているとも思いにくいが。
もっとも、単に他の世界から来た力を持つ存在と言うのだったら可能性は幾らでもあると思うぞ?』
白龍さまが応じた。
幾らでもあるの??




