リゴール10
誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
誤字報告とても助かっています。ありがとうございます。
私が考えた作戦はこうだ。
今からイーツ君と私とガブリエルで親方さんのいる酒場に向かう。
そこで酒場のご主人に事情を説明し、親方のエールをノンアルにすり替えてもらう。
今回は酒を半日ほどで抜けるように、私が紅蓮のみんなの為に開発した早くお酒が抜ける薬草を使った料理も試作品といってつまみに出してもらおう。
半日もすればしらふの親方の出来上がりだ。
おかみさんとの話し合いもスムーズに進むに違いない。
「うまくいくかねぇ」
おかみさんは半信半疑だったがとりあえず今より悪くなる事はないだろうと任せてくれた。
父はやることがあると行って帰っていった、
さあ親方アルコール抜き作戦を始めよう。
酒場に着いた私たちはまずは裏口からこっそりご主人を呼んだ。
「おう、イーツじゃねえか、どうした?親方ならいつものテーブルに来てるぞ」
私達はおかみさんのこと、話し合いの為にシラフに戻したい事を説明した。
「そうか!おかみさんが見つかったか!俺も親方の酒の飲み方を何度も注意しているんだが聞きやしねぇ」
私は瓶のノンアルエールを取り出し、酒場のご主人に説明した。
「そんなもんがあるのか。わかった!喜んで協力させてもらう。酔わないエールを飲ませて帰すから心配すんな」
「ありがとうございます。これ、お酒が早く抜けるおつまみです。これも試作品といって出してもらえますか?」
ノンアルビールを何本かとガブリエルが袋から出した脱アルおつまみも渡した。
「そんなもんまであるのか。こりゃ責任重大だな」
そう言いつつ酒場のご主人は快く協力してくれるようだ。
念には念を入れ、工房にあるお酒も回収してきてもらった。
どうか話し合いがうまくいきますように。
イーツ君も今夜はロイド商会に泊まってもらい、次の日の朝、私達は再びおかみさんのいる宿屋に集まった。
「それじゃあ、入ろうかね」
おかみさんが呟いた時、工房の中から親方の大きな声が響いた。
「なんだこの状況は!?どうしてこれだけの人数で仕事をしてるんだ!他の奴らはどうした?」
「親方が出て行けって追い出したんじゃないですか。もうずっとこの状況で、俺たちはまともに寝てもいなければ飯もろくに食べてません」
どうやら正気に戻った親方が先輩職人さんと話をしているようだ。
「俺は、全く気がついてなかった…」
「そうですよ、親方はここ最近、ひどく酔って帰ってくるばかりで、工房に足を踏み入れませんでしたからね」
「すまない…。俺はなんてことを。仕事をしすぎでアイツが出ていったと思って、もう仕事なんてどうでもいいと自暴自棄になって、お前たちの事を考えず、自分勝手だった…」
「俺たちは、親方は厳しくても仕事にプライドをもっていた事を知っているから、いつか正気に戻ってくれると信じて必死に工房を守ってきた。でもこの人数じゃそれもいつまでもつか」
ガチャ!
突然おかみさんがドアを開けて工房に入っていった。
慌てて私達も後を追って中に入った。
「おかみさん!」
「お前!今までどこにいたんだ」
おかみさんは工房の職人さん達に深々と頭を下げた。
「みんな、元の原因は私が家を出たからだよ。本当に迷惑かけたね。今日から帰ってくるよ」
「俺からも謝罪する。皆本当に申し訳なかった。工房を守ってくれて感謝する」
親方は目に涙を浮かべていった。
良かった…。
私はハンカチで目頭を抑えながら物陰から見守った。
イーツ君は号泣だ。
「この人数じゃ仕事を他の工房に頼んで減らしてもらうしかないな。追い出した奴らにはほんとうに申し訳ないことをした。できることなら戻ってもらいたいが、それは虫が良すぎるな」
親方がそう言った時、父が工房へ入っていった。
「お父さん、今、感動の場面だから!」
止めようと私も入ってしまい、注目を浴びる。
慌ててイーツ君とガブリエルも入ってきた。
「イーツ、どうした?この人達は誰だ?」
先輩職人はため息をついた。
「親方。イーツは昨日親方が追い出したんですよ。それにこの人達も昨日親方が追い出したお客さんです」
「え?俺が?」
お酒って怖い。
「この人達は私を探して工房に戻るよう言ってくれたんだよ」
おかみさんがフォローする。
「そ、そうか。すまなかったな」
親方は焦ったように言った。
感動の場面が台無しだ。
読んでいただきましてありがとうございました。
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