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Wing Fighter Ν  作者: 屋久堂義尊
episode12 預言者
36/69

第三幕

「山梨県山梨市水口に次の目標が現れると言うのか? それは確かか?」

 本郷が聊か怒り気味に食って掛かった。

「はい。彼女の情報は信じても良いと思います」

 戸ヶ崎は通信機相手に熱く語った。

「また戸ヶ崎隊員の勘という奴か?」

「ええ、それを聞いて欲しいのです」

 本郷は腕を組み、モニターを睨んだ。正直信じられなかった。何しろ相手は預言者だと言う。だが戸ヶ崎の言う事が正しければ、その金澤という者は、プレデターを記憶していると言うのだ。そこは引っ掛かった点だった。何しろプレデターは、その恐怖性の余り普通の人間には記憶に残る事は無い。それを記憶に残す者はメサイアに入る事となっている。この事は、片桐に伝えなければならない。

「今は戸ヶ崎隊員の言う事を聞くか……」

 この会話は宮本にも伝えられた。

「どう思う? 宮本副隊長」

 本郷が問う。

「簡単に賛成出来かねないです」

「でっち上げでは無い事は証明されていると言っても良いわよね」

「確かに意識して、プレデターの事を記憶する事は出来ません。しかしながら、FANKRAの事はまだ起こってばかりの事。もしかするとまだ記憶に残っている可能性も有ります」

 本郷はそれを聞き、眉を吊り上げた。言えている。戸ヶ崎は簡単に信じてしまう癖が有る。Νの事もそうだ。結果としてΝは味方に考えても良いのかもしれない。だがそれを完全に認める事も難しい。

「どうします? あのプレデターが本当に現れると信じるならば、今すぐにでもハリアーを回します」

「そうしましょう。戸ヶ崎隊員と五藤隊員に任せてみるわ。木元隊員には引き続き今の作戦ポイントを警戒させる。一応宮本副隊長は藤木隊員とクロウ2で出撃。木元隊員のフォローをして貰う事にします」

「了解です」

「戸ヶ崎隊員、五藤隊員と合流。クロウ3にてその予言の地点を警戒せよ」


「プレデターの現れる場所が予知された?」

 五藤は閉じていた通信機を開いていた。

「ええ、予知されました。場所は山梨市水口です」

「確かな情報か?」

「それは……」

 戸ヶ崎の顔に躊躇する様子が見えた。

「分からないのね?」

「はい……」

「行く価値は有るな」

「え?」

 いつの間にか五藤のすぐそばに勝沼が立っていた。

「勝沼、貴方……」

「戸ヶ崎の感覚は間違っていない。俺はそこへ向かってみる」

「勝沼さん?」

「戸ヶ崎、有難う、助かる」

「しかし、勝沼さんが向かえば、また長峰深雪が」

「戸ヶ崎、分かって来たな……」

 勝沼が渋い顔をする。

「Ξは勝沼さんにお願いします。自分達でプレデターを」

「それで良いかしら?」

 勝沼がはっとする。

「その預言者の話は聞けないのか? もしも深雪ちゃんが攻めて来るならば、彼女に予知して貰えれば」

「恐らく無理でしょう」

 戸ヶ崎は半ば申し訳無さそうに述べた。

「どうして?」

 五藤も問う。戸ヶ崎は説明する事にした。

「彼女の預言は、彼女自身に何かしらの害が加わる時に預言出来るみたいなんです。プレデターの検出はその関係の直線状に有るから預言出来るのかもしれないのです。しかしΝは彼女に危害を加える訳では無いです。その能力を果たして使い切れるかは分からないです」

「実際に試してみたらどうか?」

 五藤が提案した。金澤さんに聞けと言うのだろう。

「分かりました。聞いてみます」

「取り急ぎ」

 戸ヶ崎は金澤を待たせている県道へ向かった。


 宮本は、藤木と共にハリアーMK9に乗り込んだ。二人共、コックピットのロックにイグニヴォマを止めていた。

「戸ヶ崎隊員がまた面白い物を見付けたみたいですね」

 藤木が話し掛けた。

「面白いで済めば良いがな」

 宮本は冷静に返した。

「クロウ2、テイクオフ!」

 δ地帯から、ハリアーMK9が一機、垂直離陸した。

「本郷隊長は戸ヶ崎をかなり気にしていますね」

「隊長がと言うよりも司令がではないか?」

「片桐司令ですか?」

「戦力としての期待と言うよりかは、彼の特性への期待だ」

 藤木は首を傾げた。

「どうい意味ですか?」

「戸ヶ崎はΝというとんでもない存在と俺達を結び付けた。それだけで無い、今回の事もそうだ」

 その為に、一時指令が乱れた事は宮本も分かっていた。そのくらいの事をしたのが戸ヶ崎だ。あいつは何か持っている。それが幸か不幸かは分からないのだが。

「ですが、今回Νは現われませんでしたね」

「ΝにはΝの事情が有るのかもしれない」

「事情、ですか……?」

「済まない、戯言だったな。急加速する」

 ハリアーMK9、クロウ2は一気に上昇した。


 戸ヶ崎は金澤の元へ向かった。金澤は、木々に凭れながら、深呼吸を繰り返していた。所謂瞑想という奴か? 戸ヶ崎は彼女に本題を切り出した。

「金澤みのりさん。貴方の力で見せて貰いたい事が有ります」

「何でしょうか?」

「黒い巨人の事です」

「黒い巨人……。そんなビジョンは確かに有ります。しかし、黒い巨人は銀色の巨人に止められます。そして黒い巨人にとっては人間を大量殺戮するよりも、もう一人の巨人を倒す事の方が重要なんです」

「Ξは現われるのか……」

「今度の奴等が現れる場所は私の実家です。早く、避難誘導をお願いします!」

 成る程そういう事か。戸ヶ崎は改めて理解した。

「隊長に掛け合ってみます。取り敢えずは、五藤隊員と合流して、目標地点へ向かいます」

 戸ヶ崎は通信機を見た。通信機のスイッチを押した。

「五藤隊員、預言の地へ向かいましょう」

「分かったわ。クロウ3の着陸地点で合流しましょう」

「五藤隊員、金澤さんはどうします?」

「彼女の事は本郷隊長の指示に従いましょう」

「了解です。隊長にも連絡をしてみます」

 戸ヶ崎はそう述べると、本郷を呼び出した。

「本郷隊長、こちら戸ヶ崎です。預言者、金澤みのりさんをどうしましょうか?」

「今、片桐司令直属の部隊が彼女の安全を確保する為に向かっているわ。戸ヶ崎隊員は五藤隊員と共に預言の地へ向かいなさい」

「預言を信じるのですか?」

「単なる嫌がらせでは無い事は重々承知。ただ私達はオカルト組織では無い事を忘れないで。もしも、FANKRAと遭遇した際には、メーザーバルカンでの攻撃をメインにしなさい。市街地から遠ざかったらエネルギー爆弾を。ΞはΝに任せるのよ」

 戸ヶ崎はそれを聞き、少し複雑な思いをした。金澤は片桐の直属のエージェントに捕まるのだ。それは防ぎたいと正直思った。だが仕方が無い。それに、彼女の能力が有れば、もしもメサイアに捕まる事が避けねばならない事態だとしても、それを預言して逃げる事が出来るはずだ。

「取り敢えず金澤さんは避難所へ向かって下さい。危険な行動は慎むように」

「分かりました」

 戸ヶ崎は走ってその場を後にして行った。


「……来る」

 五藤が戸ヶ崎と合流しようとした時、勝沼が呟いた。

「え?」

 五藤が見ると、戸ヶ崎のペンダントがエメラルドグリーンの光を放ちだした。それは心臓の鼓動を打つように、光り輝いていた。

「奴が現れる。地点は先程の指示が出た所だ」

 五藤がそれを聞き、信じられないという表情を作った。

「確かなの?」

「ああ、奴だ。俺を誘い出しているんだろう」

「Ξと戦うのね?」

「それが目的だろう。深雪ちゃんは俺を誘い出そうとしているつもりなんだ」

「行くのね?」

「深雪ちゃんを止められるのは俺しかいない。化け物は任せる」

「分かった」

「俺の事は、報告しないのか?」

 五藤は溜め息を吐いた。

「報告したら、貴方の立場が怪しくなるのよ」

「分かっている。ただ報告を怠る事で、君が危なくなるのも事実であろう」

「こんな時に私の心配?」

 勝沼はフッと笑みを零した。

「俺の方が危ないか……」

「そうよ」

「有難う。じゃあ、俺は行く」

 勝沼は、胸のペンダントを手に握ると、森の奥へ消えて行った。


 戸ヶ崎の元に五藤がやって来たのはそれから暫く経ってからだ。

「遅れてごめん」

 五藤が肩で息をしながらやって来た。

「勝沼さんと会ったのですね?」

「ええ、彼の事が気になっているのね?」

 戸ヶ崎は聞かれて少し動揺した。勿論それは、戸ヶ崎が彼女を信頼しきっていない為に起こった感情だった。もしかすると、五藤が勝沼の事を上に報告するかもしれない、いや、本来はそれが任務だ。義務なのだ。

「戸ヶ崎隊員、貴方が心配しているような事はしないわ」

「え?」

「勝沼の事は報告しない。勿論、今の所だけれどね。奴が悪に走るならば、私は迷わず隊長に報告するし、Νも攻撃する」

「それで充分です」

 戸ヶ崎は少し安堵の表情を浮かべた。

「さあ、行きましょう」

 五藤がそう言うと、操縦席に座り込んだ。戸ヶ崎も銃座に就くのだった。

「クロウ3、発進」

 五藤の掛け声と共に、ハリアーMK9は離陸した。


 山梨市水口に、不審な影が現れた。それは段々と形になって行き、実体化した。まるで頭足類のような姿、ねばねばの粘膜に包まれたそれは、確かに以前現われたFANKRAだった。

 そこに、クロウ3が到着した。

「隊長、目標発見!」

「出たのね。攻撃を開始せよ」

「了解です」

 クロウ3は、メーザーバルカンで攻撃を始めた。爆発が起き、FANKRAが悲鳴を上げる。

「あんだけ水分が有ると、メーザーが良く効くだろうな」

 五藤がにんまり笑う。

「もっと攻めます、奴の背後に周り込んで下さい」

「了解」

 その時、FANKRAは一旦地面にへばりついたかと思うと、一気にジャンプした。クロウ3は触手を広げて襲い掛かって来たFANKRAを回避した。眼から、黒い光線を放つFANKRA。五藤はそれを回避してみせた。宙返りすると、戸ヶ崎がメーザーで攻撃を続けた。墜落するFANKRA。そこを狙って戸ヶ崎は更に攻撃を加える。爆発が起きて、煙を立ち込めさせるFANKRAだが、確実にメーザーバルカンは効いていた。

「戸ヶ崎隊員、良いぞ」

「間もなく残りの二機が合流します。それまで奴を足止めしなくては」

 所がその時、紫色の光弾がクロウ3を掠めた。

「何だ?」

 五藤が光弾を放たれたポイントに機体を向けた。

「何にも見えない」

「良いから撃て!」

「はい! メーザーバルカン、ファイア!」

 戸ヶ崎は半ば闇雲にその部分を攻撃した。だがメーザーは全て弾かれてしまった。

「まさか?」

 そこには、Ξが座り込んでいた。

「長峰深雪か……」

 戸ヶ崎は下唇を噛んだ。

「振動ミサイル、ファイア!」

 戸ヶ崎の放ったミサイルはΞを目掛けて直進した。Ξはそれを左腕で払った。橙色の炎がΞを包む。Ξが空を飛ぼうとした瞬間、紅い光弾がΞに向けて放たれた。Ξはそれをシールドで防いだ。

「勝沼さん」

 空からエメラルドグリーンの光が降り注いだと思うと、Νを形成した。

「長峰は勝沼に任せるんだ」

 五藤が戸ヶ崎に述べた。だがそれは残酷な事だと戸ヶ崎は感じた。

「五藤隊員はどこまでご存知か分かりませんが、勝沼さんをΞと戦わせるのは酷です」

「勝沼自身が自分で蹴りを付けたがっているのよ? 私達が邪魔をする方が聊か無神経ではなくて?」

 戸ヶ崎はそう言われて、迷いの海へと沈んで行った。そうか、そう考える事も出来る……。だが、長峰を、勝沼が本気で救いたがっている事は事実だ。ならば勝沼に任せる方が良いかもしれない。しかしきっと、勝沼ではΞ――長峰を倒せないだろう。被害は広まる一方だ。それで勝沼が精神的な負担を感じないならば話は変わる。だがそうでは無い。勝沼はきっと誰よりも責任を感じているはずだ。

 Νは迷う事無く、Ξの前に躍り出た。注意を引き付けるつもりだろう。勝沼はもう全力で長峰を止めるつもりでいるのだ。ただ、矢張り倒す事は出来ないと戸ヶ崎は睨んだ。何の為に、出て来たか。戸ヶ崎達を或る程度のレベルながら信頼しているのだろう。自分がΞを抑え込んでいる間、戸ヶ崎達がプレデターを倒してくれると。それに応えなければならない。

 ΝとΞは肉弾戦を行っていた。ΞがΝの下腹部に拳を叩きつける。それをまともに浴びたΝは蹲ってしまう。ΞはΝを強引に立たせると、顔面目掛けて右ストレートを放った。後退するΝ。Ξが、光弾をΝに向けて発射する。Νがそれを右手で払う。

「竜ちゃん、強くなったね」

 長峰の声が聞こえる。

「深雪ちゃん、君を止める為に俺は力を求めたんだ」

 Νはダッシュし、Ξに飛び掛かった。倒れるΞ。Νはマウントポジションをとった。そしてそのまま、Ξの顔を押さえ付けた。

「従姉妹の顔にそんな乱暴を働くのね?」

 Ξが一瞬笑った――かのように見えた――。Νはそれを見て、怯んだ。ΞはΝの腹部に片脚を掛けると、巴投げを加えた。Νの身体が宙を百八十度周って、背中から地面に叩き付けられた。土砂がドッと飛び上がる。Ξは、立ち上がり、Νの腹部を蹴り上げた。Ξは吹き飛ぶΝに追い討ちを掛けるように、光弾を放った。爆発するΝ。勝ち誇ったように立ち上がり、炎に照らされるΞ。Νの身体から、エメラルドグリーンの光が漏れていた。

「深雪ちゃん、もう止めてくれ。君とは戦いたく無い」

「竜ちゃんに無くてもこちらには有るのよ!」

 Ξの眼が真っ赤に染まる。Ξは両腕を高く掲げて、掌にエネルギーを溜める。必殺の一撃ダークネスレイの為の動作だ。あの攻撃を浴びればこちらがやられる。Ξが光線を放つ。Νはバリアーを張って、眼の前で攻撃を防いだ。爆発して、炎の柱が上がる。

「竜ちゃん、あっさりやられちゃうのね」

 長峰の残念そうな声が響く。

 それは戸ヶ崎や五藤にも聞こえた。

「勝沼さん!?」

 戸ヶ崎は、そちらへ気を取られた。

「戸ヶ崎隊員、彼を助けたいならば今はFANKRAを攻撃しなさい」

 五藤にも苛つきが見える。戸ヶ崎は、FANKRA目掛けて、メーザーバルカンを放った。だがそれは、紫色のシールドに阻まれた。

「奴が妨害を!」

「こちら宮本。目標に対してジャベリンミサイルを使用する事を認める」

「了解。ジャベリン発射します」

 戸ヶ崎がキーボードを叩き、トリガーを引く。徹甲弾が放たれ、シールドにぶつかる。先端のビーム幕がゆっくりとシールドを浸食して行く。そのまま貫通したミサイルは、FANKRAの身体を直撃した。突き刺さるジャベリン。真っ黒い墨のような血が溢れ出る。

「命中!」

 FANKRAは、触手を使ってジャベリンを引っこ抜いた。そして眼をクロウ3へ向けると真っ黒い光弾を放った。避ける五藤。だが動きが鈍い。

「さっきΞに攻撃された部分が悪かったか……」

 段々と高度が下がるクロウ3。するとFANKRAは、それを捉えようとするかのように飛び上がった。クロウ3の直上にFANKRAが触手を広げて浮かんだ。覆い被さろうというつもりなのだろう。やられるか……!? 戸ヶ崎が覚悟を決めた時、青白いメーザーバルカンがFANKRAの触手に命中した。触手は二本も寸断されて、吹き飛んだ。身体から離れた触手が波打っていた。

「藤木隊員!」

 クロウ2が、メーザーバルカンを撃ちつつ前進していた。

「助けに来ましたぜ!」

 藤木の明るい声がインカムに響く。

 傷付いたFANKRAは、身体中をモザイク状に点滅させた。

「まずい、また逃げられる」

「させない」

 戸ヶ崎はジャベリンを放った。それはFANKRAの何本も有る触手の一つを貫通し、地面に串刺しにした。

「良いぞ、エネルギー爆弾で仕留める!」

 宮本の通信が入り、クロウ2はFANKRAの直上にホバリング、エネルギー爆弾で爆撃を始めた。次々と炎が上がり、FANKRAの姿が見えなくなる。

 Νと戦っていたΞも、思わずそちらの方を向く。そこをΝは見逃さなかった。一気に起き上がったΝは、Ξの身体にタックルを仕掛けた。Ξがふらつく。

 爆撃の痕には、ジャベリンで串刺しにされ焼け焦げた触手が残されていた。

「やったみたいだ」

 戸ヶ崎はホッと呟いた。

「目標をΞに変更。直ちに攻撃せよ!」

 宮本から命令が下った。戸ヶ崎と五藤は、Νを援護すべく、二体の巨人が戦う間へ向かった。

 Νは身体中から緑色の光を放ちながらも立ち上がっていた。

「とんだ邪魔者の登場ですね」

 戸ヶ崎の頭にその声は響いた。

「決着はお預けとしましょう。それでは皆さん、またお会い出来る時を楽しみします」

 Ξは、紫色の光の粒子となって、天へと昇って行くのだった。

 それを見たΝは、地面に倒れ伏し、暫く息を吐いた。

「勝沼……」

 五藤が呟く。それに応じるように、Νはエメラルドグリーンの光となって、宙を舞い散るのだった。


「金澤みのりさんですね?」

 韮崎に残っていた金澤を、片桐が訪れていた。

「矢張り来ましたね、黒服の方々」

 金澤は怯む様子も見せずに、片桐に向き直った。

「貴方はプレデターの出現を預言してみせた。その力はどこで?」

「生まれ付きです。今に始まった事では無いです」

「貴方はプレデターの記憶も保持しているのですね?」

「ええ」

「では、私達の事は予知していましたか?」

「メサイアの方が訪れる事は分かっていました。これから何をされるのかも」

 片桐は、フッと笑みを浮かべた。

「話が早くて助かります。一緒に来て頂けますね?」

「分かりました」

 片桐に促され、金澤はVTOL輸送機に案内されるのだった。しかし金澤の眼には、怯えも無ければ期待も無かった。

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