序幕
最も恐れていた事が起きた。
DANGARUZOAを見失ったメサイア。そのDANGARUZOAはとうとう岐阜羽島の町中に現れた。人々は逃げ出し、途中で転んだ民間人は他の人間に踏み潰されて行く。DANGARUZOAは唸りを上げると、新幹線の駅の方へ向かって行った。
「民間人の避難が最優先だ、戸ヶ崎隊員と五藤隊員は、地上から攻撃。クロウ1、クロウ2、市街地に被害は出せない。エネルギー爆弾やプロメテウスカノンを使用する前に、奴を小藪まで誘導せよ」
「了解」
DANGARUZOAは逃げ惑う人混みに頭を突っ込んだ。そして、ぐちゃぐちゃと音を立てて咀嚼し出した。非常事態に普通の人間は対処出来ない。次々と人間が餌食にされようとしている。
その時、DANGARUZOAの背中にオレンジ色の閃光が輝いた。食事を止めて、背後を向くDANGARUZOA。本郷が操縦するクロウ3がミサイルを命中させたのだ。それを見たDANGARUZOAは、クロウ3を追撃しようとした。だがその時、紫色の光が、DANGARUZOAを包み込んだ。
「Ξが出るのか?」
地上からイグニヴォマで攻撃をしていた戸ヶ崎は、その現象に警戒した。
「奴がここに現れるという事は、Νも現われる可能性が高いという事ね」
木元がクロウ1を滑空させて、ミサイル攻撃をしながら述べた。
「こんな街中で戦われたら、どれだけ迷惑か分かっていないお客さんだ」
藤木が、メーザーバルカンでDANGARUZOAを攻撃した。DANGARUZOAはその攻撃を直撃したかに思われた。だが実際は、紫色の光に遮られていた。
「攻撃が通用しない」
藤木の叫びが聞こえた。
「ここまでなのか?」
戸ヶ崎が呟く。
しかし、待っていたのは不可解な結末だった。DANGARUZOAは、紫の光の粒子に包まれると、一気にその場から消え失せるのだった。
「え?」
思わず戸ヶ崎が声を漏らす。
「目標消失。反応、有りません」
藤木が解説する。
「何だったんだ、今のは? 何が狙いなんだ?」
本郷が思わず独り言ちた。
戸ヶ崎は、イグニヴォマを構えたままで、勝沼か長峰の姿を探すのだった。




