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Wing Fighter Ν  作者: 屋久堂義尊
episode10 犠牲
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序幕

 最も恐れていた事が起きた。

 DANGARUZOAを見失ったメサイア。そのDANGARUZOAはとうとう岐阜羽島の町中に現れた。人々は逃げ出し、途中で転んだ民間人は他の人間に踏み潰されて行く。DANGARUZOAは唸りを上げると、新幹線の駅の方へ向かって行った。

「民間人の避難が最優先だ、戸ヶ崎隊員と五藤隊員は、地上から攻撃。クロウ1、クロウ2、市街地に被害は出せない。エネルギー爆弾やプロメテウスカノンを使用する前に、奴を小藪まで誘導せよ」

「了解」

 DANGARUZOAは逃げ惑う人混みに頭を突っ込んだ。そして、ぐちゃぐちゃと音を立てて咀嚼し出した。非常事態に普通の人間は対処出来ない。次々と人間が餌食にされようとしている。

 その時、DANGARUZOAの背中にオレンジ色の閃光が輝いた。食事を止めて、背後を向くDANGARUZOA。本郷が操縦するクロウ3がミサイルを命中させたのだ。それを見たDANGARUZOAは、クロウ3を追撃しようとした。だがその時、紫色の光が、DANGARUZOAを包み込んだ。

「Ξが出るのか?」

 地上からイグニヴォマで攻撃をしていた戸ヶ崎は、その現象に警戒した。

「奴がここに現れるという事は、Νも現われる可能性が高いという事ね」

 木元がクロウ1を滑空させて、ミサイル攻撃をしながら述べた。

「こんな街中で戦われたら、どれだけ迷惑か分かっていないお客さんだ」

 藤木が、メーザーバルカンでDANGARUZOAを攻撃した。DANGARUZOAはその攻撃を直撃したかに思われた。だが実際は、紫色の光に遮られていた。

「攻撃が通用しない」

 藤木の叫びが聞こえた。

「ここまでなのか?」

 戸ヶ崎が呟く。

 しかし、待っていたのは不可解な結末だった。DANGARUZOAは、紫の光の粒子に包まれると、一気にその場から消え失せるのだった。

「え?」

 思わず戸ヶ崎が声を漏らす。

「目標消失。反応、有りません」

 藤木が解説する。

「何だったんだ、今のは? 何が狙いなんだ?」

 本郷が思わず独り言ちた。

 戸ヶ崎は、イグニヴォマを構えたままで、勝沼か長峰の姿を探すのだった。

 

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