1-3-19. 2度目のパフェと最初の邂逅
12月も早くも中旬を迎えるところとなった土曜日。
この日も当然のように朝から学校だった。
が、その目的は部活動ではなく、模擬試験。
対象科目は国語、数学、英語。先日の定期試験と範囲はほぼ同じ。
『しっかりと勉強した内容が定着していれば良い成績が取れる程度の難易度だ』と先生は言ったが、そんなカンタンに点数が取れれば苦労しないわけで。
それでも、何とか乗り切ることが出来た上に、前回の模試より感触が良かった気はしている。
勉強会パワーはまだ効果を発揮してくれているのかもしれない。
継続、大事。
全日程が終了して、時刻は16時少し前くらい。
この後はそのまま部活――――ということには、残念ながらならない。
模試の受験者は直ちに学校内から退出するように、という通達が出ていた。
肩と首をぐるぐる回してストレッチ。
相変わらず試験中の姿勢が悪いようで、首がばきんと音を立てた。
――ちょっと強めの衝撃が走って、思わず動きを止めてしまう。
今後は加減しないと危険かもしれない。
そんなことを思いながら、いつものカバンを引っ掴んで廊下へ出る――。
「待った!」
「うぉわ!?」
扉の陰から左手首をいきなり掴まれ、身体がそちらへと一瞬傾いた。
何とか倒れるのだけは回避する。
「おっつかれーぃ!」
「……なんだ、神流か」
「なんだとはなんだ」
いきなり手首をがっちり掴んでおいて、その言い方か。
「で、今日の用事は?」
「やっほー、おつかれさーん」
「いえーい」
「おお、おつかれさま」
神流の陰から現れたのは、瑛里華と早希のふたり。
何となく試験疲れが見えなくもない笑顔だった。
――たぶん、他人のことは言えないだろうけど。
「今からテスト打ち上げ・パート2ってことで」
「……ああ、なるほど」
前回、このふたりは都合が悪くて参加できていなかった。
別のテストを経てのリベンジマッチ、というところだろうか。
「それで?」
「ミズキも来るでしょ? っていうか、来い」
「え。拒否権無し?」
「そりゃもう」
「……まさか、またアレじゃないよな?」
断固としていっしょに連れて行きたいその態度から、何となく嫌な予感がする。
月に2度目の『ネージュ・エトワール』はちょっと勘弁願いたい。
「いや。さすがに今回は回避するわよ。私だって、いろいろと気にするところはあるわ」
「ああ……」
「ヤだ、ミズキくんったらエッチ」
「……は?」
「あなたのその滾るモノは、夜まで取っておいて?」
「待て。勝手におかしな方向に話を曲げないでくれ」
ボクが懸念したのは、懐周りと腹回りだ。
「とりあえずこれでミズキは確保、っと……」
何も返事はしていないはずだが、もう神流の中では確定事項。
やっぱり拒否権は無いらしい。
非常任理事は辛い。
「あとはー……。あ、アッコちゃん!」
「え?」
おつかれさまー、と笑顔でボクらの脇を通り過ぎようとした仲條さんが、あっさりと神流に捕獲された。文字通り。
がっちりと上半身を抱き寄せられている。
――というか、何時の間に『アッコちゃん』呼びになっていたのだろうか。
「アッコちゃん、この後時間ある?」
仲條さんには予定を訊くのか、とちょっともにゃもにゃとしたモノが湧いてきた。
「えーっと……、とくに何も予定はないよ?」
「じゃあさ、じゃあさ! このあとこのメンバーでパフェ食べに行くんだけど、いっしょに行こ!」
「このメンバー、っていうと……?」
「はーい!」「はーい!」「はーい!」
神流、早希、エリーが息ぴったりに挙手。
「……はい」
やや遅れたのは、若干の拒否感を醸し出すためだ。
「あ、海江田くんも?」
「んー、まぁ」
「ばっちりメンバーですっ!」
「……そうらしい」
腕をがっちりと引き寄せられる。
もういい。諦めた。
「何か楽しそうだし、おじゃましようかな」
「ぜひぜひー! よーし、またひとり確保ー、っと」
神流は満足そうに宣言して、そのままの勢いで早希とエリーと肩を並べながら廊下をぐいぐいと進んでいく。
とりあえず遅れるわけにもいかないので、仲條さんといっしょに3人の後を追う。
「ごめんね、ホントは何か用事あったんじゃない?」
「ううん、全然。むしろ助かったくらい」
「だったらいいんだけど」
そういえば同じクラスの神流はともかく、早希とエリーに関しては初対面かもしれないと思って訊いてみると、案の定初対面だった。
あのふたりのノリなら勝手に自己紹介を始めそうだったが、念のため性格のタイプだけは軽く教えておいた。
「おふたりさん、早くっ!」
「はいよ」
そんなことを話していると、神流がこちらに近付いてきた。
そのままの勢いで左腕を引っ掴んで早希とエリーに合流させようとする。
「あっ」と伸ばした右手は、ちょうどよく仲條さんが掴んできた。
一瞬だけ足がもつれそうになったが、ふたりを巻き込まずに済んで一安心する。
――が。
何だ。この状況は。
半分くらいは事故だが、両腕を女子に掴まれながら廊下を歩く。
少なくとも、模擬試験直後の学校でやる行動では無い気がする。
何か、身体を貫いてくる視線のようなモノは感じているのだが、それらの発生源を見るだけの勇気は、残念ながらボクには備わっていなかった。
離してくれる様子もないので、無我の境地に達しつつ中央階段付近に差し掛かった時だった。
「お、さらに足しますか!」
「んっ!?」
思わず息を飲む。
が、その飲み方を盛大に間違って、唾液が少し気管に入った。
当然のように咽せる。
「何してんの、大丈夫?」
「だ、だいじょうぶ?」
ふたりとも心配をしてくれる。
仲條さんに至っては背中をさすってくれた。
ひとまず視線の先は気になるが、それは一旦放置。
まずは呼吸を整えるのを最優先する。
「……はぁ」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと、何か咽せちゃって」
何とか笑みを作って見せると、仲條さんもとりあえずは安心してくれたようだった。
それは、別にいいのだ。
「歌織ー!」
「あ、神流だ! って、なんかすごい、けっこう居る! どしたの、このあとどっか行くの?」
「ほら、この前はさ、エリーと早希は参加できなかったでしょ?」
「ああ、パフェ行くの?」
「そう! 歌織もどう?」
「行くぅ! やっぱりアタマ使った後は甘味でしょー!」
模試が終わってしっかりと非勉強モードの歌織は、神流と似たようなテンションでこちらに向かって手を振りながら駆け寄ってくる。
――でも、それはとくに問題はない。
「あれ? 吹部メンかと思ったら……。何で亜紀子?」
「んーと、たった今、神流ちゃんに誘われて」
「じゃあ亜紀子も来るってことね?」
「……うん」
「だったら、私も行こーっと。神流ちゃーん!」
「んー?」
「私も行ってイイ?」
「もっちろーん!」
「よしっ。それに、……海江田くんも居るしー」
「え? ……あ、ああ! ごめんねっ」
仲條さんと同じく硬式テニス部の花村さんの生暖かい視線に気付いて、慌てて仲條さんは手を離す。
――でも、それもとくに問題はない。
最大の問題は――。
「ね! 聖歌ちゃんも来るでしょ?」
「う、うん……」
何となく視線を彷徨わせていた聖歌だった。
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
あららら? って感じですね。
ではまた来週!!!!! (ここで区切るんかーい!w)
感想などなど、お待ちしてます。
とくにファンレター的なサムシングを!!





