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幼なじみの恋人は僕の友達 友達の幼なじみは僕のXXX 〜Crossroad Cantata (1) / Pathetic Prelude〜  作者: 御子柴 流歌
1-2. 雨音はショパンの調べ

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1-2-12. 昼は依頼人を呼び出して

 熱烈なラブコールを受けそれを了承したまではよかったのだ。


 肝心の、それをどうやって渡すかを全く考えていなかった。


 日本史の授業の間、板書を書き留める手こそ動かし続けていたが、脳細胞の2割程度はそちらの考えをまとめるために使っていたような気がする。

 今日の分のノートは時間があれば書き直したいくらいだった。


 個人的には、祐樹の居る教室に脚を運びたくはない。

 祐樹のことだ、恐らくは――一緒に居るのだろう。

 虎穴に入っていけるほどに、ボクは人間が出来ていない。


 そうかといって祐樹をこちらの教室に呼びつけるのも、申し訳が立たない。

 乱入に近い恰好でボクの机に陣取っていた彼を見て、教室に入ってくることをためらった《《あの》》だ。

 そんな娘に対してボクがその元兇を呼び寄せるなど、出来るはずがない。


 余計な波風は立てない方が良いに決まっている。


 そして結局出した答えは。



「待たせた?」

「いいや、全然。こっちこそ悪いね、わざわざ呼びつけちゃってさ」

「何言ってんだよ、ノート借りるんだからそれくらい何てこと無いよ。……っと、ちょっと待ってて、メシ買ってくるから」



 ――前回と同じ場所、コピー機の前に呼び出すことだった。


 冷静に考えれば、すぐさまコピーも取れるし、精神的に削られる必要も無い。

 利点しか無い。

 むしろ考えるまでもなかったような結論だった。


 今日も売店は混んでいる。

 今から並んだ祐樹が昼食にありつけるまでとなれば、それなりに時間がかかりそうだ。

 少し迷って、側にある自動販売機で飲み物を買っておくことにした。

 昼食用の飲み物はいつも通り既に買ってある。

 これは部活時間から帰宅するまでにかけて飲む予定のものになる。


 直感――、レモンティー。


 売店で買う方が安いのは知っているが、この場合は仕方ない。

 並んで買う分の経費がここに加わっているのだ、と自分を納得させることにする。


 ボクの後に自販機を使った人数が2桁に達しようかというところで、再度祐樹が現れた。

 それにしても、何かご満悦と言った顔だが。


「いやー、ラッキーだったー」

「ん? 何か良いの買えた?」

「エビカツサンドが残ってたんだよ」

「え、珍しい」

「いつもより多く仕入れてたらしくて」


 それは間違いなくラッキーだ。


 以前聞いた話によると、高カロリー系の惣菜パンはやはり売れ行きが良いらしく、昼休み開始直後早々に売り切れることも珍しくないとのこと。

 このタイミングでそのタイプのパンにありつけるとは素晴らしい。


「それじゃあ、はい。コレね。一応、今日のウチの授業分まで入ってるから」

「へへー! 神様、仏様、瑞希様ぁ」

「とりあえず、やめてくれ」


 恥ずかしい。

 ――って、何か前もこんな感じだった気がするんだが。

 やっぱり、コイツにノートを見せるのは、次回以降よく考えた方がいいかもしれない。


「じゃあ、また今からコピーするよ」

「あー、まぁ、明日くらいまでだったら別にいつでもいいけど」

「いやいや、流石にそれは出来ないって。見せてもらえるだけでも充分ありがたいのに、1泊2日なんて……。レンタル料発生するだろ」

「あ、払ってくれるの?」

「……テストの結果が良かったら何か奢るっ!」


 逡巡しつつも、祐樹は言い切った。

 わりと冗談めかして言ったはずだったのだが、本気だと思ったのだろうか。


「それは月謝的な意味合いの報酬ってことでOK?」

「問題なしっ!」


 先ほどよりも語気が強くなっている。

 男に二言は無い、というヤツか。

 基本的には熱意もあるし情も厚い男なのだが、――どうしてだろう。

 申し訳なく思いつつも、彼にはやはり、何となく軽さのようなものを感じてしまう。


「ええっと、とりあえず放課後までに返せるようにするわ。瑞希、今日は部活は?」

「あるよ。祐樹の方は……」

「ある。……まぁ、今日は軽く基礎練習やって、後は部室で先輩達のお土産大解放スペシャルって感じなんだけどな」

「……やっぱそっちもなんだ」

「お? ってことは吹奏楽部も?」

「うん」


 今朝の地下鉄ホームでは既読に出来ずに終わっていた吹奏楽部グループのメッセージの内容は、まさしくそれだった。

『今日の部活はいつもより早めに切り上げて、見学旅行のお土産配布会を開催するぜっ!』と、こちらも朝から部長はテンションが高かった。

 しかもそれに対して先輩達が悪乗りの限りを尽くしたようにスタンプの応酬。

 止めは『お前らがはしゃいだ所為でお知らせが流れたじゃねーか!』との部長のお叱りが入るというしょうもないオチが着いたことで、タイムラインも落ち着いた。

 どうも見学旅行特有の、ある種パリピなノリをそのまま持ち込んでしまったような雰囲気だった。



「いいよなぁー」

「ん? 何が?」


 唐突にげんなりとした顔をする祐樹。

 何かそんなに感情が沈むようなことはあっただろうか。


「吹奏楽部ってさ、女子の先輩多いよな」

「……ん、まぁ、野球部よりは多いね」


 少し暈かした言い方になったのは、多分気のせいだ。

 野球部には女子マネージャーこそいるが女子部員は不在。

 女子野球部も同好会も無い。

 女子ソフトボール部はあるものの、祐樹の話によれば野球部との交流は極めて薄いらしい。


「何。何かそんな懸念することあった?」

「いや、たぶんだけどさ。基本的なお土産のチョイスの感じが、違うんだろうなぁ、って」

「ああ、なるほど……」


 言われてみれば、小学校の修学旅行でさえ男女間でお土産チョイスのセンスはだいぶ違っていた気がする。

 ――男子のお子様感たるや。

 何でここまで来てそんなもの買うんだよ感。

 もう少し現地の空気を感じられそうな物を選べよ感。

 だけど仕方ないんだ、それが修学旅行の魔力なんだと思う。


「何か、木刀とか買ってきてそう」

「……それな。めっちゃそれやりそうな先輩、何人か居るんだよ」

「正直言えば、来年祐樹がそれをやりそうな気はしている」

「さすがにそれは思いとどまるよ。……中学の時に懲りたから」


 経験済みだったか。せめて小学校のときに懲りていて欲しかったけど。

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