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坊主集めじゃき……

なんだかサブタイまとまらない……

美濃株式会社は、多くの株主や重役の承認を受け、おおむね円満に織田ホールディングス株式会社に吸収合併された。



現代なら、そんな感覚だろう。

その場合以前の社長や重役は、織田ホールディングスの方針を受けて、クビになるか続投かだろうが、時は戦国時代だ。

リアルに首を斬られる可能性もある。


織田の軍門に下り美濃一国を差し出したとはいえ、国のトップ同士の会談の場で、部下に襲撃を許してしまった不手際の責任を、斎藤龍興が追求されるのは当然の事であった。


当然希美は、信長に龍興の助命嘆願を行った。



「某は、えろ兵衛の、斎藤治部大輔の師で御座る。弟子の不手際は某が代わりに償いまする。どうか、某の首を斬りなされい!!」

「いや、お前の首には刃が通らんだろうが!」

「さあ!某はおとなしく首を差し出しておりますぞ!首が欲しくば、斬って下され!さあさあ!!」

「お前は、どこの一休さんだ!?」



信長は面倒臭くなったのか、元々龍興の首などいらなかったのか、龍興に首以外の沙汰を下した。


「首なんぞいらん。お主は恭順を示しておるしな。その代わりに、稲葉山城を差し出せ。わしの居城とする」

「ははっ!寛大なる御沙汰、有り難く!」


龍興は平伏した。

希美は『信長の居城』で思い出した。

(ちょっと待てよ……本来織田信長が美濃を統一するのが、1567年。今1561年だから七年後だよね。その間に、美濃攻略に向けて小牧山に城を建てて居城とし、美濃を手に入れてから稲葉山城を整備改修して岐阜城と改名して居城とする……あれ?もう美濃統一しちゃったんだけど、小牧山城の立場は??)

当然、建築すらされない。

「おおふ……」

希美は歴史から小牧山城を消してしまった事に、思わず呻いた。


「何、気持ち悪い声を出しておるのじゃ」

信長がじろりと希美を睨んだ。

希美は誤魔化した。

「あ、いえ、そういえば、えろ兵……治部大輔の城をどうしようかと思いましてな」

希美の言葉に龍興が反応する。

「お師匠様、わしの事は『えろ兵衛』とお呼びを。これを機にえろ教徒として邁進したく、名を改めるつもりです」

「そ、そうか……おい、マジか……」

(斎藤龍興の通称が、正式に『えろ兵衛』に……)


項垂れる希美に、信長が声をかけた。

「その事なら心配ない。どうせこやつ、その方にべったりになるだろうからな。わしが元から、与力という形でその方の下につける。彦右衛門をこちらに戻して稲葉山城の改修をさせるから、十九条城に入れよ。せいぜい美濃衆の動向をその方等でよく探るんだな」

「有り難き幸せぇっ!!」ゴィンッ

龍興が床に激突する勢いで平伏した。

希美も平伏した。

(さらば、彦右衛門!岐阜城の改修って、縄張りからやり直したんだよね。城はもちろん石垣も城下町も凄かったらしいから、改修は激務だぞー!ざまあ!!)

希美は、こっそりとにやにやした。





さて、織田に従わぬ美濃の国人衆も分が悪いと鳴りを潜め、えろ教の教えが蔓延していた美濃はそれほど大きな争乱も無く、次第に落ち着きを取り戻していった。


それとは対照的に、美濃と尾張以外の国では動揺が広がった。

中でも、『斎藤龍興がえろ教徒となり、美濃全土がえろ教に支配された』と伝わると、各宗教界宗派では蜂の巣をつついたような騒ぎになった。


早速それぞれの勢力が美濃国内の寺院関係者に連絡をとり、情報を集めだしたようだ。




「また面会希望です。今度は石山本願寺派の証恵上人ですな」

次兵衛が希美に報告した。

希美は独りごちた。

「やっぱ、こうなるよなあ」


希美はえろ教が広がりを見せたあたりから、薄々予想はしていたのだ。

戦国時代最大規模の宗教イベントといえば、やはり一向一揆である。

一向宗というと、戦国武将対象にアンケートを取れば、嫌いな勢力第一位に輝くだろう宗教勢力だ。

坊主が武器を振り回して、百姓に「逝ってこい」と鉄砲玉にする。完全に反社会的な勢力である。

そんな危ない組織が、同じ業界内で別勢力の台頭を指を加えて見ているはずがない。

下手をすれば抗争になって、タマの取り合いに発展するだろう。



そこで、希美は久五郎にえろ教の指針を周知させる事にした。


一、えろ教は、一神教に非ず。神も仏も有り難や。

ニ、えろ教は、現世利益。えろ道で楽しむ人生有り難や。

三、えろ教は、和をもって尊しと為す。みんな仲良し有り難や。

四、えろ教は、宗教の掛け持ち推奨。死後はそっちで有り難や。



他宗教に睨まれるのを面倒臭がった希美は、共存を狙ったのである。

大体、えろ大明神自体が神仏習合なのだ。

あらゆる宗教のイベントを気軽に楽しめるのも日本人ならではだ。

希美はその感覚をえろ教に持ち込んだ。

だがこの気軽さが、結局はえろ教徒を爆発的に増殖させる事になった。


結果、美濃はえろが原因で国主が代わり、ガチの宗教家の皆様が大慌てとなる。




「よし!説明会を開こう。エロ教説明会!」


いちいち個別でガチの皆様と会うのが面倒臭くなった希美は、一気に片付けてしまおうと説明会を提案した。

「面会希望の皆さんを森部にでも招いて、エロ教の半分は優しさでできている事を伝えよう!そしてもう半分のエロの部分は、久五郎に体験会を開かせよう」

次兵衛は冷静に突っ込んだ。

「それ、集まった坊主達が殺し合いになりませぬか?」

「ああー、同業他社だもんな。凌ぎを奪い合ってるんだもんなあ。大変だなあ、宗教家って」

「殿は、その宗教家の最高峰でしょう」

「そうだった。私が神だった。うわあ、面倒臭え!」

頭を抱えた希美に次兵衛が聞く。

「やめて個々に面会しますか?」

しかし、希美は本当にいい加減な奴だった。

「まあ、いいや!面倒臭いから、坊主集めよう!体験説明会だ!!」



こうして、前代未聞の『宗教法人様向けえろ教体験説明会』の開催が決定した。

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