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第一回柴武会談後の反省会

お待たせしました。や、やっと更新できたよおお!

カンカンカン……ギコギコギコギコ……

外から建材を扱う音が、ひっきりなしに聞こえる。

長期戦を見越して、カラクリ屋敷には自信ニキな忍者達が兵達を指揮して、兵達の待機施設を作っているのだ。数を建てねばならぬため、藁や立ち木を利用した簡素な掘っ建て小屋であるが、この寒い時期に雪風を凌げる施設は必要不可欠である。


そんな建築ラッシュ音をバックミュージックに、第一回目の武将会談が不首尾(カオス)に終わって自陣に戻った全裸鎖姿の希美は、そのまま本陣に建てた陣屋の中にどかりと座り、腕組みして考えていた。


(上杉と武田は、やっぱりいっしょにしちゃいけないな。いいおっさん同士が、何やってんだか……)


希美はため息を吐いた。

あれではまるで、ヤンキーだ。

ヤンキー。

彼らの生態は、恐ろしく好戦的だ。

街で見知らぬ二人(ヤンキー)が偶然すれ違う。ちらりと相手を目視で確認する。ただそれだけの事。

しかし何も言わずとも、彼らは目と目で通じあうのだ。『殺すぞ!?』というお互いの熱い気持ち。

あっという間に二人の距離は縮まり、互いの頬に互いの拳がkiss☆

雄と雄の肉体同士を激しくぶつけて絡ませ合うハードボイルドなヤンキー世界は、女人禁制。

そしていつしか仲間も加わり、興奮度MAXの大乱(こう)へ。


(そんなヤンキーばりのガチタイマンだったのに、なんで最終的に信玄がサンドイッチ(マン)になってしまったんだろうな……)


希美は、目と目で通じ合った結果、確かにえろっぽくなってしまった会談現場を思い出し、遠い目をした。

何故希美の行動は、最終的にえろに収束してしまうのか。

目を閉じて腕組みし、完全なるおじさん武将スタイルで悩める希美に、会談中は自陣で加賀衆をまとめていた斎藤えろ兵衛(龍興)が尋ねた。


「お師匠様、武田との話し合いで何があったのですか?上杉殿は傷だらけですし、話し合いはうまくいかなんだとか。一体何故……」

「ああ、実はな……」


希美がえろ兵衛(龍興)の疑問に答えようとした所、河村久五郎がカットインしてきた。

「えろ兵衛よ。話し合いはうまくいかなんだが、武田の者共はわしの奥義を食らったのじゃ。あの後は存分にうまくイけたであろうよ」


「兄弟子殿、どういう事で?」

「ん?久五郎、どういう事だ?」


久五郎は、ハッハッと笑って言った。


「何やら上杉殿と武田様が一戦交え始め、それがこちらにまで飛び火して参りましたからな。そのいきり立った興奮をえろのものにしたまでで御座るよ。えろの御力により会得せしわしの必えろ技『全てはえろに帰すべし』によってな……!」

「必えろ技!?兄弟子よ、いつの間にそのような御力を……!」

「フッフッ……、この技を使えば、人の心の奥底に眠るえろを呼び覚まし、解き放つ事ができるのだ。なに、安心せよ。お主はわしの弟弟子。人々のえろを導く使徒として、お主にも使えるように修行をつけてやろう」

「おお、兄弟子よ!なんと有難い!!」


「あの恐ろしいカオスはお前の仕業かああああ!!!」


希美は久五郎に、渾身のネビ◯ラチェーンを放った。

そのまま、鎖で久五郎をしばき回す。


「なんつー恐ろしい技を会得してんだ、てめえっ!まさか、私のまわりが変態だらけなのは、お前が元凶か!!?」

「あ痛っ!何をおっしゃられますやら!わしのこの技は、関わる全てをえろに侵しゆくお師匠様を見習って会得したものですぞっ。このえろに満ちた世は、全てお師匠様が生み出したのでは御座らんかっ」

「改めて言わないでええ!そこは直視したくない事実!!(絶望)」


直視しようが薄目だろうが、久五郎にとんでもない必えろ技を与えたのを始め、全てのえろの元凶は希美である。


「弟弟子に見られながら鎖でしばかれるのは、なかなか乙な……!流石お師匠様!」


久五郎の思考は、いつだってえろに帰しているようだ。

そんなぷれい現場に、聞き慣れた声が響いた、


「殿、てるです。上杉様の手当ては終わったわよ」

「ゴンさん、入るぞ」


そこには、全裸鎖の希美が自らの一部と化した鎖を久五郎にふるい、久五郎はといえば、腕組みをしたまま仰向けになり下半身を高くそびえさせたブリッジ状態で、希美の打撃を受けていた。

えろ兵衛(龍興)が羨ましそうにそれを見守る。

その光景は、あたかも三位一体。


「殿、あなた、また河村久五郎と戯れているの?好きねえ」

「えろ兵衛殿が羨ましそうじゃが、あれの何が羨ましいのかさっぱりわからんのう」


つまりはこの光景、加賀ではいつもの事であった。

「ギャンッ!?」

希美は、鎖を下ろして久五郎を踏みつけ、ブリッジを崩すと、久五郎の腹に足を乗せたままジト目で輝虎に向いた。


「ケンさん……、なんか私に言う事があるんじゃないのお?」

「すまぬ。因縁に呑まれた」

「大の大名が何やってんの。主の私の顔を潰したんだし、罰として次の会談には連れてかないからね!」


呆れたように希美に叱責され、輝虎は悔しそうな表情を滲ませた。


「次こそはきっと仕留められるというに……!」

「全然反省してねえな、このオッサンは。ケンさんはもう信玄NGな!信玄とはもう会わさんから」

「ぐぬ……」


何故か悔しそうな輝虎である。どんだけ会いたいんだ。もうこれ、本当は大好きなんじゃなかろうか。

そんな疑念が湧いたが、どうせ会っても同じ事の繰り返しだと、希美はその考えを振り払った。


「それで、上杉様を連れてかないでどうするの?なんだったら、私が行くわよ」


久五郎の腹の上に腰を下ろした希美に、てるも座して聞く。

「お師匠様の鎖生尻の感触……。硬と柔、冷と温のせめぎ合いが、絶妙に御座るぞおっ!!……ふう」

尻の下が騒がしいのを無視して、希美は頬杖をつき唸った。


「その事だ。正直今回の乱闘騒ぎで、向こうもこちらを警戒しているかもしれない。再度会談を行うなら、こちらも害意がないと丸裸にでもなって示さねばば……そうか。丸裸か……」


「殿?」

「ゴンさん、また何かおかしな事を思い付いたのか?」

てると輝虎が眉間に皺を寄せる。

輝虎は、流石にペットだ。希美をよくわかっている。

ろくな事を思いつかないのが希美という女?なのだ。


当の希美は、自信ありげに輝虎達を見た。

「思い出したよ。以前、信玄と会露太郎(徳川家康)が揉めた時にいっしょに湯に浸かったんだ。おかげで『まつたけ協定』なる平和条約が結ばれたんだ」

「大の男が三人、風呂で『まつたけ協定』なんて、なんだか嫌らしいわねえ」


嫌らしいのは、何か良からぬ事を想像する、てるの思考である。(ブーメラン)


「つまり、湯殿で会談すれば武器も持てないし、心地よさで心も緩み、平和に腹を割って話せるかもしれない。そもそも丸腰どころか裸なんだから、家臣達も安心だ」


そう説明を続けた希美の尻の下から、アピールが聞こえる。


「殿。わしは、丸裸に備え付けられた凶悪な武器を所持しておりますぞ!」

「黙れ、小刀め」

「刀は大きさでは御座らぬ!相手を昇天させられるかどうかに御座るぞ?」

「なんか、いいこと言った!ド下ネタだけど!」


壁の中から「河村様……感動しました!!」などと百地正永の声が微かに聞こえてきた。陣屋を魔改造していたようだ。

それに気付かぬ輝虎が、希美を心配して声を上げる。


「それにしても、相手はあの糞信玄坊主ぞ?腹だけでなく、尻を割られたらどうするのじゃ」

「大丈夫よ、ケンさん。尻は元から割れてる」

「それはそうじゃが、あやつはこれまで散々に小姓の尻を割ってきた男ぞ!わしは心の中で、あやつの事を『信玄坊主』とか『尻割り坊主』などと呼んでおるくらいじゃ」

「『瓶割り柴田』の悪口バージョンみたいなアダ名やめて!そもそも、その名付け方なら、うちの殿を始めそこら中の武将が、『尻割り武将』になるぞっ」


この時代、小姓の『尻割り』は、武将の嗜みである。

そこへ、てるが思い詰めたように会話に入ってきた。


「わかったわ。私もいっしょに湯に入るわ。そして殿の代わりに、私が武田に尻を割られます。でも、いくら殿でも恥ずかしいから、あまり裸を見ないでね……」

「いらんわ、そのサービスショット!それに、もしまかり間違って()()の尻が割られたら、お前の旦那に私が怒られるだろ!」

「てる殿、信玄めと因縁があるのはわしじゃ。あやつに割られるなら、わしの尻じゃ!」

「だから落ち着いて、ケンさん?いや、もしかして、やっぱりそういう事なの?『憎い……けど、あやつがわしの唯一の男!』みたいなパターンのやつなの??」

「ゴンさんこそ、何を訳のわからぬ事を……」

「信玄に尻を掘られたいとか言い出したの、ケンさんでしょ!」

「そんなおぞましい事、誰が望むかあ!!」

「ええー……」


「いい加減にしてくだされ、お二方。話が進みませぬぞ!」


えろ兵衛(龍興)の叱責に、希美と輝虎の言い合いはピタリと止まった。

まだ十代の年若き者ながら、流石は元一国の大名であった男である。

希美と輝虎は気まずげに顔を見合わせた。


希美は告げた。

「あー、とにかく、ケンさんと信玄はNGで!お前等、裸だろうがお構いなしに組んずほぐれつして、いつの間にか『まつたけ』で『モーゼ』してたらやだから、絶対NG。あと、てるもな!お前の肉体的な性別はともかく、一応妻やってんだから、他の男といっしょに風呂に入らんでいい」

「あら、そうなの?」

「松茸がまうぜ??またゴンさんは、わからぬ言葉を……」

「要は、ケンさんもてるも、連れていかない。私と信玄の二人で入る。面倒臭いから、もうそれでいくし」


輝虎は眉をひそめた。

「ゴンさん、信玄坊主は、お主に散々恋文を寄越したと聞いておる。ならばお主の尻を割ろうとするのではないか?」

「大丈夫だ」

希美は力強く言い切った。

「私はこれでも、御仏から加護をもらったような気がする男。つまり私の尻は、これ以上割れない。例えあのモーゼであってもな」

「そうか、そうだったな……なるほど、男の尻を割るのが得意な『まうぜ』とやらでも、ゴンさんの尻は割れぬ。そう言いたいのだな?」


違います。『まうぜ』のキャラ設定が大間違いです。

しかし輝虎が知るはずもない。

希美は「違います。モーゼさんにそんな特技ないです」と言いたかったが、話がややこしくなりそうなので、口をつぐんだ。

そうと知らぬ輝虎は、希美の肉体チートを思い出し、安堵の息を吐いた。


そこへ河村久五郎が、希美の尻の下から言った。


「お師匠様、ご安心を!わしがこっそり湯殿を見張りまする。何かあれば、わしの持てる全えろの奥義を解放して、お師匠様の尻を守りますぞ!」


「お前がえろ奥義全解放したら、むしろ松茸の攻撃力がMAXまで強化されんだろーが!!絶対留守番しとけ、このエロバフ野郎ーーー!!!」


そのシャウトは、遠く武田の陣営にまで、微かに聞こえたらしい。




その日、第二回柴武会談の詳細について、柴田家の使い番によって、武田にもたらされた。

家臣達は困惑していたが、露出趣味も手伝って、当の信玄がノリノリであったため、次の武将会談の会場は、湯殿に決まってしまったのである。

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