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おかえり、そして、いってらっしゃい

芦名さんにまでなかなかたどり着けないっ!

今回、短めです。

伊達家が越後入りし、えろ女としっぽり混浴?した挙げ句、希美がカミングアウトしてしまった怒濤の一日が過ぎた。

そして、翌日の朝を迎える。

この日は、芦名止々斎がやって来る日でもある。伊達家との事もあり、春日山城内は、朝から皆が忙しそうに立ち働いていた。


希美はバタバタと駆け回る侍達の中を、執務室に向かってさくさくと歩いていく。

廊下を行く侍達が、すれ違い通信の如く、続々と希美に声をかけてくる。



「殿、えろ良う御座いますにゃあ」

「うむ。えろ良う!」


「殿、えろ良う御座る。伊達家の笑窪の方様より、『昨夜の出来事をKwsk(詳しく)!』という言伝てが……」

「えろ良う。Kwsk(詳しく)は、紫に説明させよう。紫に伝言頼むわ」


「殿、えろ良う御座います。本日のお召し物は、鎖ではないので?」

「期待すんのやめろ。私の普段着は、全裸鎖じゃない!」


「殿、えろ良う御座るにゃ!芦名様の受け入れ準備は整っておりますにゃ」

「サンキュー、ネッコ!過ごしやすいよう、芦名さん用石牢の掃除は徹底してな!」


「殿、ゆうべはお楽しみでしたにゃー」

「たたた楽しんでねえわっ(動揺)」



とりあえず、猫が増えている。

絶対、あの人(直江さん)が元凶なのは間違いない。

だが、朝からいちいち突っ込んで精神力を消耗したくない、と希美はスルーしまくっていた。

昨日は、BLと痴女でお腹いっぱいだった。

今日は今日とて、芦名止々斎(ドM)伊達晴宗(女性下着愛好家)の板挟み予定。

毎日毎日、どうしてこうも変態ライフなのか。

希美は、心の中で自問自答する。


(私は、武将として戦国時代に逆行転生したんだよね?普通は、近隣の戦国武将と()()()()()のハードボイルドライフとか、知識チートで内政ライフとかじゃないの?)


そんなまともな逆行転生など、許さない。


希美は、謎の大いなる意思を感じた気がして、立ち止まってふるふると頭を振った。

その時、廊下の曲がり角で何やら怪しい動きをしている男達が見えた。

そっと近付いてみる。



いかつい男が猿顔の男に顔を寄せ、話しかけている。

「……ブツは用意できたか?」

「ここに。望みは、白、で御座いましたな?」

猿顔の懐から、白いものがちらと見えた。

「左様。よく見せてくれ」

相手にねだられ、猿顔の男は懐から出したものを、いかつい男の手に握らせた。

猿顔が、にちゃりと笑う。

「とくと、ご覧あれ。混ぜ物無しの、最高品質で御座いますぞ」

「……見事。これは対価じゃ」

「確かに。今後の付き合いを願って、今回だけ特別に、こちらもつけまする。尻に使いなされ」

「……!恩に着る。今後もお主を贔屓にしよう」



希美は声を放った。

「何をしておる!!」


弾かれたようにこちらを見る武士二人。

驚く猿顔は、会露柴秀吉。そして、いかつい男は、上杉家最強と謳われる、柿崎景家。

景家は、真っ白な猫耳と猫尻尾を手に持ち、固まっている。

秀吉は、声をかけたのが希美とわかるなり、にぱっと破顔した。

「社長!ご無沙汰しておりますぎゃっ」

「おお、藤吉。こちらに戻ってきたか。で、お前こんな所で何してんだ」 

「へえ。実は昨日殿にご挨拶に伺ったのですが、お取り込み中だとの事で会えなかったのですぎゃ。その時に、ご同僚の方に猫耳を自慢している直江様にお会いしましてね。これは商いの好機と、殿にご挨拶がてら、朝から売りさばいておりますぎゃ」

「ご挨拶がてら、じゃねえよ!春日山城が猫だらけになりつつあるじゃねえか!助長すんなよ……」

秀吉は首をすくめた。

「そうは言いましても、最早猫耳が広まるのは時間の問題だったかと。京の流行りがわしから買えると聞きつけて、宣伝せずとも皆様こぞってお買い求めになられておりますぞ?」

「マジか……」

頭を抱える希美に、早速耳を装着した柿崎景家(猫)が言う。

「大殿、この猫耳は最高にゃ!これを身につければ、わし等のような田舎武者も雅になれるにゃ。それに、この気持ちの高ぶりよ!今なら、武田の騎馬隊など蹴散らして、信玄めの首を簡単に取れそうにゃあっ!!」

しゃあーーっといきり立つ景家を、希美は諌める。

「こらっ。信玄は私の同盟相手だから、首を取ったらダメだぞ」

「にゃにっ」

残念そうな景家に、希美は尋ねた。

「ところで、ケンさんはどこにいる?」

「殿にゃら、毘沙門堂に籠って、朝のお勤めをされておりますにゃ」

「ああ。なら終わり次第、伊達さんの所に来させてくれない?私も少し仕事してから、伊達さんの所に顔を出すから」

「にゃにゃっ」


景家は、尻に装備した尻尾を揺らしながら、のしのしと去っていった。

希美は秀吉に向き直る。

「すまんな。知っておろうが、今芦名を迎えるのにバタバタしてるんだ。報告は執務室で聞こう」

「へえっ」

二人は、連れ立って執務室に向かう事になった。



希美は執務室で、(デスク)の上に積まれた報告書に目を通しながら、秀吉の報告も聞いていく。


「というわけで、島津様は、薩摩芋の逆輸入の話にいたく興味を示され、『今後とも末永く良い取引を』と社長に書状を預かっておりますぎゃ」

「ふむ……。確かに書状を見る限り、好感触のようだな。正直、越後は寒いから、じゃが芋ならともかく薩摩芋が育ちにくい。薩摩で薩摩芋を大量に作らせて、輸入した方が効率が良いからな。火山灰も、ほぼただ同然の値で仕入れられるし、こちらも末永く島津殿とは良い関係を続けていきたいものよ。そういえば、薩摩にえろの使徒はいたか?」

「何名か確認しましたぎゃ。薩摩芋の畑を作りながら、布教をしておりましたぎゃ」

「もう、そんな所にまで行ってたのか……。奴ら、どこまで足を伸ばす気なんだ……」


えろ使徒が既に薩摩で活動している事に、希美はなんとも言えぬ気持ちでため息を吐いた。

正直彼らの努力と行動力は凄い。称賛に値するが、彼らはボランティアだけでなく、えろまで広めるのだ。

日本がえろ色に染まりつつあるのを、希美はひしひしと感じていた。

だが、秀吉は思いもかけぬ事を口にした。


「わしの聞いた話では、『琉球』という島国に、薩摩芋作りとえろの教えを伝えたえろ使徒がおるんだそうで。どうも向こうの大名に受け入れられて、暮らしているらしいですぎゃ。それから、海を渡って、『まかお』なる地に向かった者もおるとか」

「うおおいっ!!既に、海外に羽ばたいとるやんけ!?」



えろは、知らぬ間に海外進出を果たしていた。

混乱した気持ちをなんとか切り替えた希美は、秀吉の次の出張先をそっと『琉球王国』に決めた。


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