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ズッペット

またまたロータス様から素晴らしいFAをいただきました!

超ありがとう御座います!!


138話『婚礼騒動』のおまけに書いた『朝柴物語』のイメージイラストです。

早速、138話に挿し絵として貼らせてもらいました。

それに合わせて、以前ロータス様よりいただいていた『動く小説紹介』を目次ページの下に常時展開しております。

また、各話の下に、作品ロゴが出るよう設定しました。

よかったら、見てください!(ただし、『朝柴物語』のFAについてはBL注意です)


やべえ!おかげさまで、『どうせ知将』がどんどん豪華にカスタマイズされていく。

幸せ!!

希美は走った。いや、正確には希美の乗った馬が走った。

だって、ケンさんが待ってる……。

(ケンさんは、私のズッペットだょ……!)


「語呂が悪いんじゃあああ!!!」 

「ゆべしっ!」


三好兵が、希美の振るった鋼の槍にぶちのめされて、後方へ吹き飛ぶ。

ここは戦場だ。

足軽勢の持つ槍がひしめき、将兵同士が槍や刀をぶつけ合う。

加賀と大阪に立場が分かれた一向門徒同士が特攻し合う様は、なんとも皮肉で痛々しい光景だ。

辺りには未だ硝煙の残り香がし、血と草と土の匂いと混じり合っている。


至る所で織田兵と三好兵、一向門徒がぶつかり合っているが、不思議な事に希美のまわりは、モーゼの如く兵が割れていく。


「うわ!!変態じゃあ!鎖をまといし変態じゃあ!!」

「頭にとんでもない角を生やしておるぞお!」

「背には武者も生えておる!」

「槍も刀も通らん!化け物じゃあ!変態の化け物じゃあ!!」


そりゃ、モーゼにもなるというものだ。



そのうち、交戦中の龍興の姿が見えた。傍に玄任の姿もある。

それにしても、『ふんどし兜』は、遠くからでもよく目立つ。

(ふんどし兜、改めてやべえな!)

まあ、希美の兜ほどではない。


「おーい!えろ兵衛!玄任ー!」

希美は呼びかけながら、二人に近付いていく。

馬上のえろ兵衛等は希美に気付き、衝撃のあまり槍の狙いを外してしまった。

対峙していた敵将も、希美の姿に口を開けてフリーズしている。

希美は「取り込み中に、すまんな」と、敵将と周辺の敵兵を槍で凪ぎ払い、追い払った。

「な、なんという、『えろ』な鎧か……。鎖の鎧とは、流石お師匠様!」

「な、なるほど。殿はこういうのがお好みか……。確かに、これなら、鎖をまとったまま尻を……。ならば、今度、試してみるか」

玄任が何か不穏な事を口走った。

鎖愛尊くさりーめいそん加賀支部が出来るかもしれない。


「ところで、後ろの若武者は?御仏の力で生やしたので?」

玄任の問いかけに、希美は呆れ顔で答えた。

「御仏をマッドサイエンティストみたいに言うなよ……。六角義定だ。逃げないように、くくりつけた」

龍興の眼が光る。

「なるほど、御自らを石牢と為し、六角に『えろ』いお仕置きを……」

「『エロいお仕置き』ってワード止めろ。ご褒美っぽくもなるだろ!」

希美は、『えろ』に少し汚染されているようだ。


「そんな事より」と希美は続けた。

「うちのケンさん知らないか?前戦で戦ってるみたいなんだ」

玄任が答えた。

「『ぜんせん』、かどうかは知りませぬが、ずっと前の方におりまするな。嬉々として暴れておりましたぞ?」

「あー、そっか。あの人、上杉謙信だもんな……。でも、危険な事には変わりないから、助けに行かなきゃ!」

「ならば某も供をつかまつる。杉浦(玄任)殿、ここは任せた!」

「承知」

えろ兵衛がついてくるようだ。

希美は、「急ぐぞ。はぐれるな!」と、また馬を走らせた。




希美の後に続きながら、龍興が声を張り上げている。


「敵も味方もようく御覧ごろうじろ!!これぞ、菩薩の如き御心のお師匠様が、憤怒によって目覚めたえろ大明神の明王形。『ちょうえろ大明王』じゃあ!!」


「『ちょうえろ大明王』……!えろえろえろ」

「なんと凄まじいお姿じゃ……」

「敵を『えろ』の力でボッコボコに!」

「御頭に金色のマーラ(悪魔)をそそり立たせておるぞ!やはり第六天魔王!!」

織田軍はともかく、この変態スタイルは一向門徒にマイナスに働いたようだ。

いや、それが普通の反応というものである。


だが龍興は、実況も解説もできる有能ぶりを発揮した。

「一向門徒共よ、説明しよう!御仏の『ズットモ』であるえろ大明神様は、マーラをすら従え、御仏に帰依させておる!見よ、金色の神々しきマーラはその証じゃ。えろ大明神様は『えろ』によってこの世を桃色の極楽に導いて下さる有り難い神なのじゃあ!!」

一向門徒達がざわめいた。

「な、なんと……!御仏の『ズットモ』!南無阿弥陀仏……」

「桃色の極楽……。何故かのう、妙に心惹かれるのう」

龍興は、希美の背を指差した。

「御仏の『ズットモ』、えろ大明神、いや、えろ大明王様は、三好にお怒りじゃあ!邪魔立てすると、えろ大明王様が戦利品として背に生やされた『六角義定』のようになるぞお!!」

「ヒヱ~!御仏の『ズットモ』!南無阿弥陀仏!!」

何故か敵方の門徒が説得されている。

伝導者って、怖い。



希美は、ちらと門徒等を振り返った。

「いや、お前等『ズットモ』って何か知らんだろうが……。適当な奴らめ。おい、えろ兵衛。私の実況止めろ!」

「まだ、お師匠様の肌に食い込む鎖の『えろ』き縛り方について語っておらぬのですが……」

「久五郎と語れ!これは、久五郎が編み出した縛りだ」

「おお、流石兄弟子!負けておられませぬ。某もきっと、お師匠様の『えろ』をより引き出す縛り方を考えて見せまする!楽しみにしていて下され!」

「そんなものを楽しみにできるのは、織田軍では池田恒興くらいのもんだぞ?……あ!あの旗指物は!」


少し向こう、『毘』の旗と共に、秀吉に命じて越後衆用に作らせていた、

『急な討死でも安心!敵将も釘付け☆魅惑のうる艷口紅(リップ) 柴田えすて屋にて絶賛発売中』

の広告旗指物が見えた。


「ケンさーーん!!」

希美が速度を上げて飛び込む。

そこには、三好軍との混戦の中、まさに今敵将と斬り結び、なんとか仕留めたばかりの輝虎の姿があった。

その腕からは、斬られたのだろう、血が滴り落ちている。


希美は馬から飛び降り、輝虎に駆け寄った。

「イャアーーー!!ケンさん、血、血があ!!!」

輝虎も、希美の姿を見るなり、悲鳴を上げた。

「キャアアーーー!!!変態!!ゴンさんが変態じゃあ!!」


「イャアーーー!!!」

「キャアーーー!!!」


「こんな戦場の中心で叫び合って、何やってんで御座るか?殿も上杉殿も。てか、殿はなんて格好してんですか!(笑)」

茂部茶羅郎が、槍を肩に担いでそこに立っていた。

希美は叫ぶのを止め、茶羅郎に尋ねた。

「あ、茶羅郎。色々あってな。好きでこんな格好をしているわけじゃないんだ。それよりなんで、加賀衆じゃなく越後衆のとこにいるんだ?」

「あ、そうなんですよ!うちの『てる』を見ませんでした?初めは加賀衆の辺りにいたんで御座るが、てるの奴、熱くなっちゃって。『かかれ、かかれえー!!』って雄叫び上げながら、自分がかかりまくって、いつの間にかこんな前に……」

「で、見失ったというわけか?」

「面目ない事で」

茶羅郎がポリポリと兜をかいた。

「よし、探しておこう。てるも大事な従業員だからな!お前も、死ぬなよ」

「はっ。では、また本陣にて」

茶羅郎は、かかってきた敵足軽を突き倒しながら、行ってしまった。



希美は輝虎に向き直ってその腕をとった。

「だ、大丈夫なの?斬られたの?」

「……ただのかすり傷じゃ。それより、ゴンさんこそ何があったんじゃ?なんで、ここにいる?」

ケンさんはドン引きした様子で希美を見つめている。

希美はちょっと傷ついた。


「まず言っておくが、私は変態じゃない」

「こんなに説得力の無い言葉は初めてじゃ」

「まあ聞いてくれ。簡単に言うと、戦ってるうちにふんどしと兜を失い、久五郎が呪いの兜を私にパ○ルダーオン。混乱状態になり、六角義定をゲロまみれにしたが、三好が来たと知り、殿やケンさんを助けるために、義定を連れてこちらに向かう事にしたんだ。で、縄がなかったので、久五郎着用の鎖で久五郎イチオシの緊縛法を用い義定をくくりつけた。つまり、変態は河村久五郎だ」

「なるほど、意味がわからない。が、ゴンさん」

輝虎は、苦笑した。

「わしを助けに来てくれたのか」


この嬉しさをどのように表そうかと輝虎は少し悩み、少し手をさ迷わせた後に、ぽんと希美の頭にその手を乗せた。

……が、『前立て(マーラ)』を握ってしまい、慌てて手を離す。

そして、嫌そうに己れの手のひらを見つめ、気を取り直して視線を希美に戻した。


「……ありがとう。わしは良い主を持ったのじゃな」


目の下頬(マスク)から覗く輝虎のうる艷リップが、弧を描いている。

希美も「ふふ」と笑んで輝虎に言った。

「ケンさんは、私の大事なペット(かぞく)だからね。ペット(かぞく)の命は、(飼い主)に責任があるんだよ。私はケンさんをペットにすると決めたその日から、ケンさんの事は一生面倒を見るつもりだからね!」

「ふ、ふん。ならば、越後ごと面倒を見なければならぬぞ!加賀ばかりにおらずにな!」

輝虎の耳が少し赤くなっている。


「『ぺっと』になれば、お師匠様に一生面倒を見てもらえるのですか……?」


龍興がぽそりと希美に聞いた。

希美は、断じた。

「ペットはこれ以上いらんぞ、えろ兵衛!私、多頭飼いはしない主義だし、龍なら間に合ってるからな!」

「糞ぅ!!」

龍興は、懐からふんどし(希美お下がりのふんどし仮面用)を取り出し、ギリギリと噛んだ。



希美達がなごやかに話し合っている中、そのまわりでは、色部勝長や、安田長秀等越後衆が、輝虎(元主)希美(現主)の会話を邪魔させまいと、襲い来る三好勢を押し止めている。


その猛将等の隙をついて、一人の若武者が希美達の前に飛び込んできた。

旗指物に『南無阿弥陀仏』とある。

一向門徒の武士のようだ。

若武者は、希美の異様な出で立ちにギョッとして少し固まったようだったが、刀を握り直し希美に問うた。

「お前、まさか、えろ大明神の柴田権六か……?」

「そうだけど?」


希美の答えに、若武者が吠えた。

「おのれぇっ!父の仇……!!」


「……どの人の事だろう?」


心当たりが多すぎてわからない。


武士なんて、職業上、絶対誰かの『仇』だもの。

しかも柴田勝家は、数多の戦を経験した武将だもの。

戦国時代とは、『仇』増産フル稼働の哀しい時代なのである。


希美は、己れの罪と向き合うように、鋼の槍を構えた。

『マーラ』とは……

仏道を邪魔する悪魔。ブッダの悟りを邪魔しようとして失敗して挫折した辛い過去を持つ。

マーラの名前から、『魔羅』という言葉が生まれたとか。

『魔羅』ってなに?という人は、ググれ下さい!




いつも『どうせ知将』を読んでいただき、ありがとう御座います!

ブクマして下さった方、評価ポイントを入れて下さる方、感想を書いて下さる方、FAを描いて下さる方、お気に入り登録までして下さった方、本当にありがとうございます!

いつも励みになっています。

なかなか伝えるタイミングもなく、今日がチャンス!とばかりに、感謝を伝えてみました。

更新がんばりますので、今後ともよろしくお願いします。

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