ジュウハとモンスター狩りへ
・今回の戦力
・鎧姿ディアス(武器は戦斧、手斧)
・ジュウハ
・エイマ
・サーヒィ
・イービリス
・犬人族 12人
・ニャーヂェン族 10人
鉱山見学を終えたなら少しの休憩をしてから、危険ということで鉱山に馬を預けてから徒歩での移動を再開させた。
私とベイヤースならばモンスター相手でも戦えるだろうが、ジュウハもハルジャ種もそういった戦闘には慣れておらず、無理をさせる訳にはいかなかった。
徒歩で、いつモンスターが出てもおかしくないので警戒しながらの移動をし、投石機の実験なのか、移動方法の実験なのか、投石機で次々にぶん投げられて宙を舞う洞人族という光景を横目に見ながら足を進めて、北の山と呼んで良いだろう一帯……草が減り岩が増えた辺りで、ジュウハが声を上げる。
「そう言えばディアス、肉の切り分け方なんだがな……まぁ、アレでも悪くはないんだが、一番美味い部位を、一番の肉を自分で食べるってのも大事なんだってのを忘れるなよ。
首長が良いもんを食ってこそ、欲望を満たしてこそ、それに憧れて奮起するってやつもいるからな。
毎回あれだけじゃぁ良くはない……が、まぁ、悪くはないからな、ただの助言だ」
「ん? そう言うものか?
……まぁ、ジュウハがそう言うなら、好物が出てきた時はそうしてみるよ」
「ああ、そうしろ。
……それとだな―――」
と、ジュウハがそう言いかけた瞬間、私達の前方の地面が揺れとズゴゴゴという音と共に盛り上がる。
地面から何かが出てこようとしているのは明白で、すぐさま私は戦斧を構えて前に進み出て……犬人族やニャーヂェン族達は左右に広がって警戒を始める。
そしてサーヒィは周囲を飛び回って他に異常がないかの確認を始めて……ジュウハの気配は遠ざかっていく。
恐らくだが後方に下がって全体の状況を見ようとしているのだろう、私としてもその動きに異論はなく、何も言わずに盛り上がる地面に意識を向ける。
戦斧を振り上げ、いつでもそこから現れるだろう存在に向けて振り下ろせるようにしていると、そこから両手で抱えられる程の大きさの甲羅が現れる。
それは何度か戦ったことのある亀……アースドラゴンにそっくりではあるが、明らかに小さくて思わず、
「亀の子供か!?」
なんて言葉が口から出てしまう。
驚かされたと言うか何と言うか、動揺しながらも力を込めて戦斧を振り下ろす。
すると小亀は手足を引っ込め、甲羅でそれを受けてくる。
硬い、いつも叩いている亀とそう変わらない硬さかもしれない……が、小さいのでかなり殴りやすく、特に気にすることなく戦斧をどんどん叩き込んでいく。
一度二度三度……と、戦斧を叩きつけていると、後ろに下がっていたはずのジュウハがいつの間にか側までやってきていて、小亀のことを覗き込み、口を開く。
「……こいつは、確かにモンスターでドラゴンだが、この大きさは初めて見るな。
素材ですら見たことがない……まさか幼体が存在するとはなぁ。
いや、モンスターだろうが何だろうが、幼体がいて当然と考えるのが普通なんだがな、そこは情報の無さとモンスターだからという理由で思考放棄しちまってたな。
……もしかしてモンスターってのは地中で繁殖するのか……?」
私の攻撃が続く中でジュウハは観察を始めてしまったらしい……そんなことをブツブツと言って顔をどんどん小亀に近付けて、甲羅にこもって動かないことを良いことに口付けでもするのかという勢いだ。
「ディアスさん、他にも来ます!!」
そんな中、私の頭の上で周囲を警戒してくれていたエイマから、そんな声が上がり、それを受けてニャーヂェン族達は小亀ではなく周囲へと意識を向けての警戒態勢を取る。
「ディアス! お前はそいつを叩いていろ! 他の連中は武器を構えて待機! 指示あるまでだ、勝手に攻撃仕掛けんなよ!」
そしてジュウハの指示が飛び、周囲に緊張が走る。
周囲の様子を目視でもって確認したくなるが、ジュウハがそう言うのならと意識を小亀にだけ向けて戦斧を振るい続ける。
そうしているとだんだんと小亀の甲羅にヒビが入っていって……それと同時に周囲から土が弾ける音が聞こえてきて、一気に敵の気配が増えるのだった。
――――周囲を見回しながら ジュウハ
「……攻撃はまだするなよ!!」
ディアスが小亀と呼びそうなモンスターが現れて、その直後に追加のモンスターが現れたとなってジュウハは、また小亀が現れるものと思い込んでいたのだが、実際現れたのは小亀とは呼べないモンスターだった。
顔立ちはアースドラゴンそのもの、鎧のように身にまとっている甲殻もアースドラゴンのそれ。
いくらかの特徴はアースドラゴンそのものと言っても良いような外見だったのだが、問題はそのモンスターが二足歩行しているという点で……まるでアースドラゴンが人形に変形しかけているような、そんな姿をしていた。
そして……、
「まるで出来損ないだな……!」
上空のサーヒィの言葉通り、それは出来損ないで、腕の一部の肉が足りず異様に細く、脇腹の辺りからは骨が突き出し、脚の肉は腐っているのか爛れているのか、崩れ始めていて……醜悪としか言えない外見となっていた。
(一つ、生まれつきこういう姿のモンスター。
二つ、何かの事故や偶然でこうなってしまったモンスター。
三つ、……何らかの常識外の存在に姿を歪められてしまったモンスター。
……パッと思いつく可能性はこんな所か、一つ目や二つ目なら問題はないが……三つ目となると厄介だ。
悪神のような存在が、連敗を苦々しく思ってこれを作ったのだとしたら……対ディアス用、あるいは対人類用に強化したってのもありえちまう。
人類のように武器を扱い、軍のように連携した動きをするモンスターとなると、厄介極まりないが……さて、どうだろうな)
一体、二体、三体と、次々に地面から現れる歪んだモンスターを観察しながら、そんなことを考えたジュウハは、静かに剣を引き抜き……対人用の刺突の構えを取る。
(とりあえず人型なんだから、これで良いだろ、出来るなら手足落として捕獲して観察をしたいが……)
そんなことを考えたジュウハは、片手でもって地面に対し水平に、視線の高さで構えた刺突剣を人型亀の腕へと突き出す。
正確に素早く、実直に。
一撃一撃に全力を込めるディアスとは違ってジュウハは、入れる力はそこそこに器用に丁寧に、確実に相手にダメージを積み重ねていく戦い方を得意としている。
一撃で相手をふっ飛ばさなくても手首を傷つけて握っていた剣を落としたならそれで良い、そういった傷を増やして行動不能にするなり戦意を奪えたならそれで良いという、対人を前提とした戦い方を習得し、極めていた。
王宮勤めとしてはそれで十分だったし、戦時中にあっても捕虜を確保し情報を引き出せたので合理だったしで、モンスターとの戦いを苦手としながらも、それで良いと考えて他の戦い方を模索することはなかった。
仮にアースドラゴンと相対したなら苦戦は免れなかっただろうが、なんとも幸運なことに相手は人に近い姿形……なんとかなるだろうと考えてジュウハは、未だ動かずにただただ立ち続けるだけの人型亀の腕や脚へと次々に刺突を放っていく。
「お前達はしばらく様子見だ! オレ様とディアスが相手している以外のモンスターを囲んで警戒! 迂闊な手出しは控えろ!!
サーヒィ! どこかに動きがあったらすぐに伝えろ!」
何度か手紙の配達を受けた関係で、すっかり顔見知りとなっている鷹人族にも指示を出しながら刺突を何度も何度も。
軽く周囲を見回してみると、他の場所にも人型亀が出現していて、犬人族やニャーヂェン族がそれらを囲んでの警戒をしていて……そして人型亀の歪み方にはばらつきがあった。
頭がない個体もいれば、甲羅がない個体もいる……意思らしい意思も感じないそれらは、生物としてもモンスターとしても意味を成していない状態で……ジュウハは攻撃を続けながら訝しがる。
一体こいつらは何のためにやってきたのか? 何者かがそうさせたのだとしたらそこにどんな意図があるのか?
あれやこれやと考え、思考をどんどんと加速させながらジュウハが刺突を繰り返していると、ディアスから声が上がる。
「よし、砕けた! 他も私に任せろ!」
小亀を倒したらしいディアスはそう言うと駆け出し……未だ動かずにいる人型亀へと戦斧を全力で振り上げながら、凄まじい勢いでもって襲いかかるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回はVS人型亀です




